カフェ居抜き開業ガイド|厨房・排気・造作譲渡の見極めと費用削減

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この記事のポイント

  • 居抜き物件の活用でカフェ開業費は坪25〜55万円、スケルトン40〜80万円より3〜5割安く抑えられます。
  • 前テナントが「カフェ→カフェ」なら厨房・排気ダクト流用率8割超、「非飲食→カフェ」は給排水・排気新設で追加150〜400万円かかります。
  • 造作譲渡金は相場より3〜10倍請求されがち。内訳検証と値切り交渉で実勢の1/3〜1/5まで下がる事例が多いです。
  • 営業許可は前店舗の許可を引き継げず、保健所で再検査が必要。ハンドソープ・厨房仕切り・手洗い器の整備不良で再検査リスクが高まります。
  • 20坪モデル予算は居抜き500〜1,100万円、スケルトン800〜1,600万円、高級仕様1,600〜2,400万円。造作譲渡込みで比較すると差は縮まるケースもあります。

本記事のご利用について

本記事は2026年4月時点の一般的な参考情報であり、特定の物件・事業に対する法的助言ではありません。各種法令(食品衛生法・旅館業法・消防法・風営法・建築基準法・都道府県条例等)は改正や解釈の変更があり、また自治体ごとに運用が異なる場合があります。実際の開業にあたっては、必ず弁護士・行政書士・建築士・消防設備士・所轄保健所/消防署/警察署等に個別にご相談のうえ、最終判断をお願いいたします。本記事の内容に基づく判断・行動の結果について、当サイトは責任を負いかねます。

なぜカフェで居抜きが選ばれるのか

カフェ開業で居抜き物件が選ばれる最大の理由は、初期投資を3〜5割圧縮できるという費用面のインパクトです。スケルトンから内装・厨房・客席を新設する場合、東京都心の20坪カフェで内外装工事800〜1,600万円が必要になりますが、居抜きなら500〜1,100万円に収まるケースが多く見られます。

もう一つの大きなメリットは開業までの時間短縮です。スケルトンから工事する場合、設計から引渡しまで3〜5か月かかりますが、居抜きは造作譲渡契約から最短2週間〜1か月で開業可能な物件もあります。家賃発生期間の圧縮は運転資金の負担軽減に直結します。

さらに、前テナントが営業していた実績があることで周辺需要の見極めがしやすい点も見逃せません。スケルトン物件は「なぜ前テナントが出て行ったか」が読み取りづらいですが、居抜き物件は売上推移・客単価・客層の情報が仲介業者経由で開示されることがあります。

初期投資削減

30-50%

スケルトン比

開業までの期間

2週-1月

最短ケース

厨房設備流用率

60-90%

前テナントがカフェ時

造作譲渡相場

50-500万

15-30坪

一方で、居抜き物件には固有のリスクもあります。設備の老朽化、隠れた瑕疵、保健所基準の不適合、前テナントの退店理由(立地不良)を見落とすと、スケルトンより高くつくケースも存在します。本記事では設備判定から契約実務まで、カフェ特有の論点を体系的に解説します。

設備流用判断マップ(厨房・排気・給排水・電気)

居抜き物件で最も費用インパクトが大きいのが、既存設備の流用可否です。カフェ業態では厨房・排気・給排水・電気容量の4系統を順番に判定していきます。

厨房設備の流用判定

保健所の飲食店営業許可で最低限必要な設備は、2槽シンク(または1槽シンク+食器洗浄機)、手洗い器(ハンドソープ・ペーパー完備)、厨房区画の仕切り(跳ね上げカウンター等)、冷蔵・冷凍設備、食品庫の5点です。東京都基準では2槽シンクは幅45cm×奥行36cm×深さ18cm以上が目安とされます。東京都福祉保健局「食品営業はじめてナビ」で詳細基準が公開されています。

排気ダクトの再利用判定

排気ダクトは新設すると10〜20坪で50〜300万円、屋上まで引き回す縦ダクトなら100〜300万円に達します。前テナントがカフェや軽飲食だった場合は再利用可能性が高いですが、以下のチェックを丁寧に行います。

  • ダクト内部のグリス付着状況(目視・内視鏡で確認)
  • 排気量(CMH)がメニュー構成に合っているか(焙煎やグリル多用なら不足)
  • ダクトの経年劣化(錆・穴・接合部のずれ)
  • 屋外排気口の位置が近隣住戸と干渉しないか
  • 防火ダンパーの動作確認
  • 消防法上の点検記録の有無

給排水の流用判定

カフェ間の居抜きなら給排水は流用率9割超ですが、異業種からのコンバートではグリストラップの有無が分かれ目です。美容室・物販からのコンバートではグリストラップが未設置のケースが多く、新設に30〜80万円必要です。また、東京都区部ではグリストラップ未設置だと排水規制に抵触する場合があります。

電気容量の流用判定

エスプレッソマシン、グラインダー、オーブン、製氷機を同時稼働させると15坪カフェでも単相200V・動力10〜20kVAが必要になります。前テナントが物販や事務所だった場合は家庭用の単相100Vしか引き込まれていないことが多く、電力会社への増設申請(2〜4週間)と変圧器設置(30〜80万円)が発生します。

流用判定のコツ:前テナントが同業種カフェであっても、メニューが大きく変わる場合(ドリップ専門→エスプレッソ主体、スイーツ中心→食事提供)は設備要件が変わります。既存設備の能力がメニューに対応できるかを、開業前に事前に確認を推奨します。

前テナント別の流用率とリスク評価

前テナントの業態によって居抜き物件の流用率と追加工事費は大きく変動します。以下のマトリクスは、20坪カフェ開業を想定した流用率と追加工事費の目安です。

カフェ→
流用率85% / 追加50-200万
喫茶店→
流用率75% / 追加100-300万
ベーカリー→
流用率65% / 追加150-350万
居酒屋→
流用率55% / 追加200-450万
ラーメン→
流用率40% / 追加350-600万
焼肉→
流用率30% / 追加500-900万
物販→
流用率20% / 追加600-1200万
美容室→
流用率15% / 追加700-1300万

カフェ→カフェ(流用率85%)

最も理想的なパターンです。厨房機器・排気・給排水・客席什器の多くがそのまま使え、追加工事は塗装・看板付替え・レイアウト微調整で済むことが多いです。ただし、メニュー構成の違いによる能力不足(エスプレッソマシン容量・冷蔵庫台数等)は要確認です。

居酒屋→カフェ(流用率55%)

排気ダクトと給排水は流用できることが多いですが、客席照明・厨房レイアウト・席間隔が大きく違うため、内装改修で150〜300万円かかります。また、居酒屋時代のタバコ臭が壁紙・天井に染み込んでいるケースが多く、クロス張替え・天井塗装で50〜100万円が別途必要です。

ラーメン・焼肉→カフェ(流用率30-40%)

強力な排気設備が裏目に出るパターンです。排気量がカフェのメニュー規模に対し過大で電気代が嵩むほか、油煙で壁・天井が汚染されており、スケルトン戻し相当の工事が必要になることも珍しくありません。見た目の居抜き感に騙されず、工事見積もりを事前に取得してください。

物販・美容室→カフェ(流用率15-20%)

事実上のスケルトン工事に近く、給排水・排気・電気の3系統とも新設が必要です。「居抜き」と呼ばれていても、追加工事費を加算するとスケルトン物件とほぼ同額かそれ以上になるため、造作譲渡金を支払うメリットが薄いことが多くなります。

注意:物件募集広告では「居抜き」と表記されていても、前テナントの業態と残置設備によって実態は大きく異なります。現地内見時に前テナントの業態、厨房・排気・給排水の有無、電気容量を事前に確認を推奨します。

居抜き坪単価の相場とスケルトン比較

東京23区のカフェ内装工事の坪単価相場は、2026年時点で以下のレンジが業界コンセンサスです。地方都市では0.6〜0.8倍、沖縄など特殊相場地域では変動します。

居抜き改装

坪25〜55万円

10坪250-550万

20坪500-1,100万

30坪750-1,650万

主要工事内装改修・設備補修

スケルトン標準

坪40〜80万円

10坪400-800万

20坪800-1,600万

30坪1,200-2,400万

主要工事躯体から新設

高級・こだわり仕様

坪80〜120万円

10坪800-1,200万

20坪1,600-2,400万

30坪2,400-3,600万

主要工事造作家具・特注建材

居抜きの坪単価が上下する要因

居抜きの坪単価25〜55万円は幅があります。下限の25万円付近は「前テナントがカフェ・残置設備を無償譲渡・クロス塗装のみ」のケース、上限の55万円付近は「前テナントが異業種・給排水or排気を部分新設」のケースに相当します。造作譲渡金は別途計上されるため、トータル予算は譲渡金を加算して判断してください。

地方エリアの注意

地方では登録施工会社が都市部に集中するため、15坪未満の小規模案件は施工会社が見つかりづらい傾向があります。相見積もり成立の目安は、居抜きで400万円以上、スケルトンで600万円以上の案件規模です。小規模すぎる案件は地元の個人工務店に直接発注するほうが現実的な場合があります。

造作譲渡金の相場と交渉実務

造作譲渡金は居抜き物件固有の費用で、前テナントから内装・厨房機器・什器を譲り受ける対価として支払います。相場は50〜500万円と幅広く、立地・築年数・機器状態・前テナントの退店理由で大きく変動します。

造作譲渡金の内訳構造

譲渡金は次のような内訳で構成されます。請求された総額を鵜呑みにせず、内訳と帳簿の裏付けを求めるのが交渉の第一歩です。

  • 内装造作(壁・天井・床・建具)の減価償却残存価値
  • 厨房機器(冷蔵庫・コンロ・製氷機・シンク等)の中古市場価格
  • 客席什器(テーブル・椅子・カウンター)の中古市場価格
  • エアコン・排気ダクト・給湯器の残存価値
  • のれん代(立地・客層の引継ぎ分)※理論的には査定対象外

値切り交渉の具体的アプローチ

カフェ経営者の公開事例では、400万円提示の造作譲渡金が交渉で1/10以下に下がった例が報告されています。交渉の切り札となる論点は次のとおりです。

論点1:原状回復義務。前テナントが退店する場合、契約上はスケルトン戻しの原状回復義務があり、通常その工事費は100〜300万円かかります。譲渡交渉は「原状回復費を負担する代わりに造作を譲ってもらう」という相互利益の構造であることを前提に話を進めます。

論点2:機器の中古市場価格。厨房機器の新品価格を持ち出す譲渡者が多いですが、中古市場での実勢価格(新品の1/5〜1/10)で査定するのが妥当です。テンポスバスターズなど中古厨房機器店の価格表を根拠資料にします。

論点3:修繕必要箇所の減額。現地内見で故障・老朽化箇所を洗い出し、修繕見積もりを取って提示します。「動作しない製氷機の買替30万円」「破損している椅子の張替え15万円」のように具体的減額根拠を積み上げます。

のれん代の扱い

譲渡者が「立地と売上を引き継げる対価」として「のれん代」を計上するケースがあります。しかし、カフェは客が前店舗のブランドではなく新店舗のコンセプトで来店するため、のれん代は原則として支払う合理性がないと考えるのが一般的です。ただし、固定客の多い地域密着型店舗の引継ぎ案件では一定の譲渡価値が認められる場合もあります。

交渉の注意:造作譲渡契約書には「現状渡し」条項が含まれることが多く、引渡し後の故障・不具合は新借主負担になります。契約前に全機器の動作確認(火入れテスト含む)を済ませておいてください。

保健所・消防・自治体の再検査ポイント

居抜き物件であっても、前テナントの営業許可は新借主に引き継げません。カフェとして営業するには、新規に飲食店営業許可を取得が求められる場合があります。この過程で保健所・消防署・自治体から設備・運用の再検査を受けます。

保健所検査の要点

2021年6月の食品衛生法改正で喫茶店営業許可が廃止され、飲食店営業許可に統合されました。食品衛生法(e-Gov法令検索)および厚生労働省の食品衛生法改正ページで詳細が確認できます。居抜きで特に落としやすい検査項目は以下です。

  • 手洗い器のハンドソープ・ペーパータオルの設置(切れていると再検査)
  • 厨房区画の扉・跳ね上げカウンターの設置(撤去されていると不合格)
  • 2槽シンク(または1槽+食器洗浄機)の寸法適合
  • 食品庫の独立設置(厨房と兼用は不可)
  • トイレと厨房の手洗い器の分離
  • 冷蔵庫の温度管理(10℃以下)・冷凍庫(-15℃以下)
  • ネズミ・害虫の侵入防止措置
  • 給湯設備(60℃以上のお湯が出ること)

消防署の検査

防火管理者選任(延床面積30㎡以上)、自動火災報知設備の点検、消火器の設置(床面積150㎡未満でも任意設置推奨)、防炎カーテンの使用が主な検査項目です。前テナントから自動火災報知設備を引き継ぐ場合、受信機のバッテリー交換や定期点検記録の継続が必要です。

自治体固有の規制

東京都区部では受動喫煙防止条例により原則屋内禁煙(客席面積100㎡以下の既存店の例外あり)、廃棄物処理条例でグリストラップ清掃記録の保管義務があります。地域によっては深夜営業の届出(風営法)や景観条例の看板規制もあります。

再検査のリスクコスト:保健所再検査は1回あたり3,000〜16,000円の手数料に加え、営業開始が2〜4週間遅れます。家賃10万円の物件なら機会損失10〜20万円が発生するため、事前チェックで一発合格を目指してください。

隠れた瑕疵・設備老朽化の見極め

居抜き物件で最もトラブルが起きやすいのが、引渡し後に発覚する瑕疵・老朽化です。事前調査で見落としやすいポイントを体系化します。

厨房機器の隠れた不具合

製氷機、業務用コーヒーマシン、エスプレッソマシンは特に注意が必要です。製氷機は内部の衛生状態(カビ・水垢)と製氷能力(表示通り出るか)を半日〜1日稼働させて確認します。エスプレッソマシンはボイラー圧力・抽出圧・スチーム圧を実測し、劣化があれば50〜200万円の買替えを想定します。

水まわりの劣化サイン

  • シンク下の配管に錆・水漏れ跡がないか
  • グリストラップの清掃記録と清掃頻度の確認
  • 排水の流れの実測(満水時の吸込みスピード)
  • 給湯器の製造年(10年超は交換想定で15〜40万円計上)
  • 床下防水層の健全性(タイル目地のヒビ・浮き)

電気設備の老朽化

分電盤の製造年、ブレーカーの動作音、漏電遮断器の動作確認が要点です。築30年以上の物件では分電盤ごと交換が必要なケースがあり、15〜40万円が追加発生します。照明器具も蛍光灯からLEDへの更新が推奨され、20坪で20〜40万円の予算を見込みます。

建物本体の瑕疵

雨漏り痕、シロアリ被害、床の沈み、壁のひび割れは建物オーナーの責任範囲ですが、居抜き契約では新借主が負担させられる条項が紛れ込んでいる場合があります。契約前に建物オーナーに修繕責任を文書で確認してください。

カフェ居抜きで失敗する5パターン

実務の失敗事例を5パターンに類型化します。契約前にこの5つが自店に当てはまらないかを事前に点検を推奨します。

失敗1:造作譲渡金を相場の3〜10倍支払う

前テナントの言い値で200〜500万円を支払ったが、中古市場価格で査定すると50〜100万円が適正だった、という事例が多発します。対策は内訳明細の提出要求、中古機器店の価格参照、原状回復義務のリバース交渉の3点です。

失敗2:異業種居抜きで追加工事費が膨張

居抜き価格で契約したものの、排気・給排水・電気の新設で追加500〜1,000万円が発生し、結局スケルトンより高くなる。特にラーメン→カフェ、美容室→カフェ、物販→カフェのコンバートで頻発します。

失敗3:保健所再検査で開業が1か月遅延

前テナント時代の基準では合格していた設備が、現行の基準(2021年改正以降)で不合格になる事例。手洗い器・厨房仕切り・2槽シンク寸法が主な引っかかりポイントです。内見時に保健所の事前相談を済ませるのが確実な予防策です。

失敗4:設備故障で開業後すぐに100万円出費

現状渡し契約で引き渡された厨房機器が、営業開始1〜3か月で故障。製氷機・冷蔵庫・エスプレッソマシンは特に故障リスクが高く、修理不能なら買替えに30〜200万円かかります。引渡し前の動作確認と、保証期間を契約書に明記するのが対策です。

失敗5:立地不良を見落として前テナントと同じ道を辿る

前テナントが撤退した理由を確認せず契約したところ、商圏人口・動線・競合の問題で売上が伸びず、同じく1〜2年で撤退。仲介業者に前テナントの売上推移・客数・退店理由の開示を求め、周辺の人流データ(国土交通省「全国人流オープンデータ」等)で裏付けを取ってください。

失敗回避の鉄則:居抜き物件は「安く早く開業できる」のが魅力ですが、事前調査を怠ると逆にコストが膨らみます。現地内見3回以上、施工会社2社以上の見積もり、保健所事前相談の3点を徹底してください。

契約書で確認すべき10項目

居抜き契約は「賃貸借契約」と「造作譲渡契約」の二重構造です。双方の契約書で以下の10項目を事前に確認を推奨します。

1原状回復の範囲スケルトン or 造作残し
2造作譲渡の内訳機器リスト・金額明細
3瑕疵担保の期間引渡し後1〜6か月
4リース契約の残債厨房機器・レジ等
5賃料と共益費更新料・保証金も含む
6業種制限酒類提供・深夜営業可否
7営業時間制限近隣住民への配慮
8解約予告期間標準6か月前通告
9保健所基準適合現況で許可取得可能か
10設備更新費の負担エアコン・給湯器等

特に見落としやすい条項

リース契約の残債引継ぎは見落としがちです。前テナントが厨房機器をリース契約で導入していた場合、リース会社の承認なしに譲渡できず、残債の支払義務が新借主に移転する条項が紛れ込むことがあります。リース会社名・契約残期間・月額・残債総額を事前に確認を推奨します。

原状回復の範囲も要注意です。新借主が退店する際に、スケルトン戻し(100〜300万円)が対象とされのか、造作を次の借主に譲渡できる条項があるのかで出口戦略が変わります。退店時の費用負担を初期契約で明確にしておくのが賢明です。

居抜き活用のコストダウン戦略

居抜きのメリットを最大化する戦略を、費用削減インパクトの大きい順に解説します。

戦略1:造作譲渡金ゼロ物件を狙う

前テナントが急いで退店したい事情(破産・家族事情・転居等)がある物件では、造作譲渡金ゼロ(無償譲渡)で引き渡されるケースがあります。物件仲介業者に「譲渡金ゼロ条件で探してほしい」と明示的にオーダーすると、月に1〜3件の候補が出てくることがあります。

戦略2:排気・給排水を活かすメニュー設計

既存設備の能力に合わせてメニューを設計すると、設備追加投資をゼロに抑えられます。エスプレッソマシン中心のドリンク業態、軽食(サンドイッチ・スイーツ)中心のフードコントロールで、追加厨房機器を最小化します。

戦略3:中古機器の追加購入

前テナントから譲り受けられない機器は中古で揃えます。テンポスバスターズ、マルゼン中古、ヤフオクで新品の1/5〜1/10で入手できます。ただし、業務用コーヒーマシンとエスプレッソマシンだけは新品または信頼できる中古業者からの購入を推奨します(故障リスクが営業に直結するため)。

戦略4:内装DIYで塗装・床材を自力施工

壁塗装、床のビニルタイル貼り、什器の組立は自力でできる範囲です。施工会社に依頼すると20坪で30〜80万円の項目を、DIYで5〜15万円に圧縮できます。ただし、電気・給排水・ガスはプロに依頼するのが安全です。

戦略5:設計事務所を通さず施工会社直発注

居抜き改装は大規模な設計が不要なケースが多く、設計事務所を介さずに施工会社へ直発注することで設計費10〜15%を節約できます。店舗内装に強い施工会社2〜3社で相見積もりを取り、最適な1社を選定するのが定石です。

モデル予算3ケース(10坪/20坪/30坪)

実際の居抜きカフェ開業を想定したモデル予算を3規模で提示します。地域係数は東京23区(1.0)で計算しています。

ケース1:10坪・ミニマルコーヒースタンド

物件取得費

80万円

保証金6か月+礼金

造作譲渡金

50万円

前カフェの居抜き

内外装工事

300万円

塗装・看板・照明

厨房機器追加

100万円

エスプレッソマシン等

什器・備品

50万円

中古・什器DIY

運転資金

200万円

3か月分

合計予算:約780万円。家賃11万円、駅徒歩3分、2等立地の都内物件を想定。前カフェからの居抜きで造作譲渡金と厨房流用を活かし、自力開業可能なコストに抑えたモデルです。

ケース2:20坪・標準フルサービスカフェ

物件取得費

180万円

保証金10か月+礼金

造作譲渡金

150万円

交渉後相場

内外装工事

600万円

客席改修含む

厨房機器追加

200万円

エスプレッソ・冷蔵庫

什器・備品

100万円

椅子・テーブル更新

運転資金

400万円

3-4か月分

合計予算:約1,630万円。都心2-3等立地、家賃25〜35万円の物件を想定。ランチとカフェタイムの両輪で回す標準業態で、同規模のスケルトン開業(2,200〜2,800万円)に比べ550〜1,170万円の節約になります。

ケース3:30坪・高級こだわりカフェ

物件取得費

300万円

保証金10か月+礼金

造作譲渡金

250万円

高品位居抜き

内外装工事

1,400万円

こだわり仕様

厨房機器追加

350万円

業務用フル装備

什器・備品

200万円

特注家具

運転資金

600万円

4か月分

合計予算:約3,100万円。都心1-2等立地、家賃50万円前後を想定。コーヒー専門性と食事メニューを両立した高級業態で、スケルトン高級仕様(3,800〜4,500万円)より700〜1,400万円を圧縮できます。

居抜き×スケルトンの判断フロー

居抜きとスケルトンのどちらを選ぶかは、以下の5軸で判定します。

1前テナント業態カフェ/飲食/非飲食
2設備流用率50%超なら居抜き有利
3造作譲渡金200万超で再考
4デザイン自由度独自性追求ならスケルトン
5開業時期3か月以内なら居抜き

居抜きを選ぶべき条件

  • 前テナントがカフェ・喫茶店で設備流用率70%超
  • 造作譲渡金が設備中古価格の1.5倍以内
  • 開業までの時間を3か月以内に抑えたい
  • 初期投資を1,500万円以下に抑えたい
  • 内装デザインの独自性は優先度が低い

スケルトンを選ぶべき条件

  • 前テナントが異業種(美容室・物販等)で流用率50%未満
  • 独自の店舗デザインを重視する業態(ブランド展開・SNS集客)
  • 厨房配置・客席レイアウトを抜本的に変えたい
  • 造作譲渡金が500万円超で設備老朽化が進んでいる
  • 初期投資2,500万円以上の投下が可能

居抜き物件の探し方

カフェ居抜き物件は以下の5つのチャネルから入手できます。各チャネルで得られる情報の質と希少性が異なります。

1. 居抜き専門サイト

飲食店ドットコム、居抜き店舗ABC、居抜きスター等が主要サイトです。掲載数は多いですが、競争が激しく好条件物件は数日で申込が入ります。毎日チェックと即断即決が必要です。

2. 一般の店舗仲介サイト

SUUMOテナント、アットホーム店舗、不動産連合隊等。居抜き特化サイトより掲載は遅いですが、地方物件や個人オーナー物件が見つかることがあります。

3. 居抜き専門仲介業者

店舗流通ネット、ABC店舗、テンポスバスターズ系列等。サイトに載る前の「水面下物件」を持っていることがあり、希望条件を伝えて優先紹介を受けるのが王道です。成約時に仲介手数料(家賃1か月分+造作譲渡金の5〜10%)が発生します。

4. 店舗内装会社からの紹介

施工会社は前クライアントから退店案件を把握していることがあり、表に出ない物件を紹介してもらえます。tenponaiso.comのようなマッチングプラットフォーム経由で複数の内装会社に相談すると、候補が集まりやすくなります。

5. 直接ネゴシエーション

閉店を告知したカフェに直接打診する手法です。「店舗を引き継ぎたい」と打診することで、仲介手数料ゼロ・譲渡金も直接交渉できます。ただし、オーナーとの信頼関係構築に時間がかかり、契約実務も自力でこなす対象となる場合があります。

物件選定の優先順位:立地(商圏・動線)>物件コンディション(築年・設備)>家賃>造作譲渡金、の順で評価します。家賃と譲渡金は交渉余地がありますが、立地は変えられません。立地を最優先にして、その他の条件で調整するのが鉄則です。

よくある質問

Q居抜きカフェの開業費用は最低いくらから可能ですか

A10坪のコーヒースタンド業態で、前カフェからの居抜き・造作譲渡金50万円・運転資金3か月込みで600〜800万円が最小ラインです。これ以下に抑えるには、DIY比率を上げるか、家賃8万円以下の地方立地が推奨されます。

Q造作譲渡金の相場はどう判断すればよいですか

A残置設備の中古市場価格の1.0〜1.5倍が妥当なラインです。例えば中古で100万円相当の厨房機器と什器があれば、譲渡金100〜150万円が妥当です。200万円超の提示があれば内訳を明示してもらい、相場に合わない項目は値切り交渉してください。

Q前テナントのリース契約は引き継ぐ対象ですか

Aリース契約はリース会社の承諾がなければ譲渡できません。また、借主側(新借主)に残債の支払義務が自動的に移ることはありません。ただし、契約書に「リース残債を新借主が引き継ぐ」旨の条項が入っていないか、契約前に事前に確認を推奨します。

Q保健所の事前相談はどのタイミングで行うべきですか

A物件契約前の内見段階で行うのが理想です。保健所は無料で事前相談に応じてくれるため、現地の写真と図面を持参して、現状で営業許可取得が可能か、追加工事が必要か、具体的な指摘を受けられます。契約後に問題が発覚すると手戻りコストが大きくなります。

Q居抜きで開業後、設備が故障した場合の責任は誰にありますか

A原則として現状渡しの契約が多く、引渡し後の故障・修繕は新借主の負担になります。ただし、契約時に「引渡し後3〜6か月の瑕疵担保期間」を設定できる場合があり、この期間内の故障は前テナントに修繕責任を負わせられます。契約書に明記することが重要です。

Q居抜き物件で業態変更(カフェ→居酒屋等)は可能ですか

A契約書の業種制限条項と、建物用途(用途地域・建築確認申請の用途)の両方で判定します。建物オーナーの承諾と保健所・消防の再申請が必要で、排気・給排水・席レイアウトの追加工事も発生します。業態変更でコスト増を避けたい場合は、変更可能性のない固定業態として契約するほうが賢明です。

Q営業許可の引継ぎはできないとのことですが、なぜですか

A飲食店営業許可は事業者(法人または個人)に付与されるもので、店舗設備や物件に付与されるものではありません。事業者が変われば再取得が必要です。法人のM&A(株式譲渡)で同一法人を継続させれば許可は引き継げますが、一般的な居抜き譲渡では再取得が原則です。

Q地方でカフェ居抜き開業をする場合の注意点は何ですか

A施工会社の登録が都市部に集中しているため、相見積もりを取れる会社数が限られます。15坪未満の小規模改装は引き受け手が少なく、居抜き規模400万円・スケルトン600万円以上の案件なら相見積もり成立しやすくなります。小規模案件は地元工務店への直発注も選択肢です。

最終確認のお願い

上記は2026年4月時点の一般情報としてまとめたものです。法令・条例は随時改正され、解釈や運用も自治体ごとに差があります。物件固有の条件によって結論が変わるため、実際の契約・開業判断の前に、所轄自治体の窓口および弁護士・行政書士・建築士・消防設備士等の専門家にご相談いただき、書面で確認を取ることを強く推奨します。

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