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この記事のポイント
- クリニック居抜きは「単純な物件居抜き」と「医院承継(M&A)」の2種類に分かれ、患者情報・スタッフ・保険医登録の引継ぎ可否が根本的に違います。出発点の分岐を誤ると開業計画が崩れます。
- 診療科別に必要設備が大きく違うため、前医院の診療科と新院の診療科の一致度が流用率を決めます。内科→内科なら流用率90%超、内科→整形外科では60%程度まで下がります。
- レントゲン室(放射線管理区域)は他業種に一切ない独自の論点。放射線防護壁、管理区域の表示、使用許可の再取得が必要で、既設を流用できれば300〜800万円のコスト削減になります。
- クリニックの内装坪単価は35〜70万円(スケルトン60〜100万円)。医療機器を含めない建築工事のみの数字で、機器リース残債は別途確認が欠かせません。
- 新規開業の資金は診療科により3,000〜8,000万円(MRI導入時は1〜2億円)。居抜きなら1,500〜4,000万円規模まで圧縮できる事例があり、医療融資の返済負担を大きく軽減できます。
本記事のご利用について
本記事は2026年4月時点の一般的な参考情報であり、特定の物件・事業に対する法的助言ではありません。各種法令(食品衛生法・旅館業法・消防法・風営法・建築基準法・都道府県条例等)は改正や解釈の変更があり、また自治体ごとに運用が異なる場合があります。実際の開業にあたっては、必ず弁護士・行政書士・建築士・消防設備士・所轄保健所/消防署/警察署等に個別にご相談のうえ、最終判断をお願いいたします。本記事の内容に基づく判断・行動の結果について、当サイトは責任を負いかねます。
クリニック居抜きの出発点「居抜き取得 vs 医院承継」
クリニックの居抜き開業を検討する最初の分岐は、「単純な居抜き取得」なのか「医院承継(M&A)」なのかの選択です。飲食業や美容業の居抜きとは異なり、医療機関特有の承継制度があるため、このスキームの違いで開業の全体設計が変わります。
居抜き取得(物件・設備のみ)
前医院が退院し、物件と内装・医療機器のみを引き継ぐ形態です。建物オーナーと新しく賃貸借契約を結び、前医院との間で造作譲渡契約を締結します。患者情報・スタッフ・保険医登録・医療法人格は引き継がれず、すべて新規で立ち上げます。
- 引き継ぐもの:物件・内装・医療機器・医事会計システム
- 引き継がないもの:患者カルテ・スタッフ雇用・保険医登録・医療法人
- 新規に必要:開設届・保険医登録・スタッフ採用・集患
- 立上げ期間:3〜6か月
- 初期投資:1,500〜4,000万円(新規より40〜60%減)
医院承継(M&A・事業譲渡)
前医師からクリニック事業そのものを譲り受ける形態。患者カルテ・スタッフ・営業権(のれん)・医療法人格(有限責任社員の交代)を含めて引き継ぎます。開業直後から既存患者の来院が見込めるため、集患コストが大幅に低くなります。
- 引き継ぐもの:物件・内装・機器・カルテ・スタッフ・営業権
- 引き継がないもの:保険医個人登録(新院長の個人登録が必要)
- 新規に必要:開設届出(承継届出)・保険医登録
- 立上げ期間:2〜3か月(既存スタッフが継続)
- 初期投資:3,000〜8,000万円(営業権の買取が加算)
両者の決定要因
居抜き取得を選ぶべき
投資1,500-4,000万
ターゲット独自コンセプト
診療科前医院と違っても可
立地前と同じ必要なし
医院承継を選ぶべき
投資3,000-8,000万
ターゲット既存患者の継続
診療科同一科目が前提
立地診療圏がそのまま継承
医療法に基づく診療所の施設基準
クリニック(診療所)は医療法(e-Gov法令検索)に基づき、施設基準が求められる場合があります。厚生労働省「医療法(抜粋)」で関連条文が公開されています。
診療所の定義
医療法上の「診療所」は、入院施設を持たない施設または患者19床以下の入院施設を持つ施設を指します。20床以上は「病院」となり、別枠の施設基準が適用されます。一般的なクリニック開業は無床診療所か19床以下が対象です。
診療所の構造設備基準
- 診察室(プライバシー確保)
- 処置室(清潔操作可能な広さ)
- 調剤所(院内処方時)または外部調剤薬局
- エックス線装置を備える室(放射線管理区域)
- 感染症を有する患者の隔離室(必要に応じて)
- 機能訓練室(整形外科等)
- 給食施設(入院対応時)
- 医療機器・薬品・血液等の保管設備
- 待合室(診察待ちの患者用)
- 便所(患者用・職員用の分離が望ましい)
人員配置基準
医療法施行規則に基づき、診療所にも最低人員の配置が求められます。無床診療所の場合、医師1名のほか、業務内容に応じて看護師・診療放射線技師・臨床検査技師の配置が必要です。医院承継の場合はスタッフを引き継げますが、居抜き取得では新規採用が欠かせません。
開設届と使用許可
診療所の開設には開設届(無床)または開設許可(有床)が必要です。保健所への提出書類は以下のとおり。
- 診療所開設届(開設許可申請書)
- 管理者(院長)の医師免許証
- 診療所の平面図・周囲略図
- 医療機器のリスト
- 医療従事者の名簿・資格証写し
- 放射線装置の届出(エックス線装置設置時)
- 薬剤師の免許(院内処方時)
診療科別の設備要件と必要坪数
クリニック居抜きの評価は、前医院の診療科と新院の診療科のマッチングが基本です。診療科ごとに必要設備・必要坪数が大きく違います。
診療科別の標準的な坪数と設備
内科・小児科
30-50坪
診察2-3・処置・待合
皮膚科
25-40坪
診察・処置・レーザー室
整形外科
50-80坪
レントゲン・リハビリ室
耳鼻咽喉科
30-45坪
診察・ユニット・待合
眼科
30-50坪
暗室・視力検査・手術
歯科
20-40坪
ユニット3-5台・レントゲン
婦人科
30-45坪
診察・処置・エコー室
心療内科
25-35坪
診察・カウンセリング室
診療科別の医療機器費用
診療科の変更に伴うコスト
前医院の診療科と新院の診療科が違う場合、間取り変更・医療機器入替え・放射線管理の再取得が必要になります。以下は主な入替パターンと追加コストの目安です。
- 内科→内科:追加100〜300万円(機器軽微な更新)
- 内科→皮膚科:追加200〜500万円(レーザー機器等)
- 内科→整形外科:追加400〜900万円(リハ室改修・大型レントゲン)
- 皮膚科→眼科:追加500〜1,200万円(暗室・視力検査機器)
- 一般科→美容医療:追加600〜1,500万円(特殊機器・豪華内装)
レントゲン室(放射線管理区域)の流用判定
クリニック居抜きで他業種に一切ない独自の論点が、レントゲン室(エックス線装置を置く室)です。放射線防護と管理区域の設定が法令で厳格に規定されており、既存設備を流用できれば大幅なコスト削減になります。
放射線管理区域の構成要素
- 放射線防護壁(鉛1〜2mm相当の鉛板または鉛ガラス)
- 管理区域の表示(出入口の標識)
- エックス線装置本体(フィルム撮影/デジタル)
- 照射室内の安全装置(インターロック)
- 操作室の遮蔽
- 防護衣(鉛エプロン・甲状腺防護カラー)
- 放射線測定器(線量計)
- 漏洩線量の測定記録
新設コスト
エックス線装置
500-2,000万
一般撮影機
放射線防護壁
150-400万
6畳程度の室
CR/DR画像装置
300-800万
デジタル化
照射室工事
200-500万
内装・空調・電源
全新設の場合、総額1,100〜3,700万円となり、居抜きで流用できれば最大級のコスト削減項目になります。
居抜きで確認すべき項目
エックス線装置の使用届
エックス線装置は、保健所への装置設置届(または使用届)の新規提出が必要です。前医院の届出は承継できず、新開設者名義で提出し直します。漏洩線量の測定を伴う検査が欠かせず、基準値(実効線量1.3mSv/3か月以下)を満たさない場合は防護壁の補強工事が発生します。
医療機器の流用とリース残債の処理
クリニックには多数の医療機器が設置されており、購入・リース・レンタルの3形態が混在しています。居抜きでの引継ぎ判定では、この所有形態の確認が欠かせません。
医療機器の所有形態と引継ぎ
購入品
自由に譲渡可
価格中古査定で決定
手続売買契約のみ
リスク経年劣化の把握
リース品
残債の扱い要
対応1残債完済で買取
対応2リース契約の承継
対応3返却して新規契約
レンタル品
契約終了で返却
対応新院で再契約
リスク機器が残らない
移行空白期間を防ぐ
リース残債の処理3パターン
医療機器のリースは5〜7年契約が一般的で、期間中に前医院が退院する場合、残債処理が必要になります。
- パターン1:前医院が残債を完済し、所有権を移転してから譲渡(最もシンプル)
- パターン2:新院がリース契約を承継(リース会社の審査と承認が必要)
- パターン3:リース品を返却し、新院で同等品を新規リース契約
医療機器の中古査定
主な医療機器の中古市場価格(築5-7年機)は以下が目安です。造作譲渡金の交渉材料として活用できます。
バリアフリー法と動線設計
クリニックは、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法・e-Gov法令検索)の特別特定建築物に含まれます。延床2,000㎡以上では建築物移動等円滑化基準への適合が義務、これ未満でも地方自治体の条例で独自の基準が設けられているケースがあります。
バリアフリー要件の主要項目
- 出入口の幅(車椅子で通れる800mm以上)
- 段差の解消(スロープ勾配1/12以下)
- 多機能トイレ(車椅子対応・オストメイト対応)
- 待合室の車椅子スペース
- 診察室の車椅子での入退室
- 処置室・レントゲン室の車椅子アクセス
- エレベーター(2階以上の場合)
- 手すり・段差解消の表示
- 受付カウンターの高さ(車椅子対応ロー)
前医院の対応状況を確認
築10年以内のクリニック居抜き物件なら、概ねバリアフリー基準に対応しています。一方、築15年超の物件では現行基準を満たさない場合があり、改修に100〜400万円が発生します。特に多機能トイレの新設・拡張は工事費が高くなります。国土交通省のバリアフリー法関連ページで現行基準が確認できます。
動線設計の要点
クリニック特有の動線設計では、以下の4分離が重要です。
前テナント別の流用率とリスク評価
前テナントの業態・診療科によって、クリニック居抜きの流用率と追加工事費は大きく変動します。30坪クリニック開業を想定したマトリクスです。
同科クリニック→同科(流用率90%)
最理想形。診察室・処置室・待合・レントゲン室・医療ガス・給排水・電源容量すべてが流用可能。追加工事は内装リフレッシュ・看板・クロス張替え等の軽微な改修で済みます。医院承継の場合は患者カルテ・スタッフも継承でき、立上げ期間2〜3か月で開業可能です。
他科クリニック→他科(流用率70%)
医療インフラ(電源・給排水・空調・管理区域・バリアフリー)は流用できますが、診察室レイアウト・医療機器・動線は診療科に合わせて変更。追加500〜1,200万円。内科→小児科、皮膚科→眼科など、必要機器が重ならない診療科間の転換で発生します。
歯科→医科(流用率60%)
歯科と医科は施設基準が別なため、一部流用可能ですが、歯科ユニットの撤去と医科診察室への変更が必要。レントゲン室は歯科用(パノラマ・セファロ)と医科用(一般撮影)で違うため、装置入替えが必要です。追加700〜1,500万円。
調剤薬局→クリニック(流用率50%)
調剤薬局は医療施設に近い基礎設備を持ちますが、診察室・処置室・レントゲン室がないため新設が必要。電源・給排水は比較的スムーズに転用可能ですが、診察室の壁工事・医療機器導入で追加900〜1,800万円。
事務所・物販・飲食→クリニック(流用率15-30%)
事実上スケルトン工事。医療施設の基準を満たす配管・配線・放射線防護壁の全てを新設。追加投資1,500〜4,000万円で、スケルトン予算との差がほぼなくなります。立地だけを理由に選ぶケースに限られます。
居抜きクリニックの坪単価とスケルトン比較
東京23区のクリニック内装工事の坪単価相場は、2026年時点で以下のレンジが業界コンセンサスです。飲食業より坪単価が高くなる傾向があります。
居抜き改装
坪35〜70万円
25坪875-1,750万
35坪1,225-2,450万
50坪1,750-3,500万
主要工事部分改修・機器入替
スケルトン標準
坪60〜100万円
25坪1,500-2,500万
35坪2,100-3,500万
50坪3,000-5,000万
主要工事配管・遮蔽壁・動線
美容医療・高級仕様
坪100〜180万円
25坪2,500-4,500万
35坪3,500-6,300万
50坪5,000-9,000万
主要工事意匠・個室・機器
クリニック特有の坪単価上振れ要因
- レントゲン室の放射線防護壁工事
- 医療ガス配管(酸素・吸引)
- 感染管理のための排気設備
- バリアフリー対応(多機能トイレ・スロープ等)
- 動線分離のための間仕切り壁
- 医療施設向けの抗菌・耐水性材料
- 電源容量増強(機器同時使用)
- 空調の独立系統化(診察室・処置室)
医療機器は別計上
クリニックの内装工事坪単価には、医療機器本体の価格は含まれません。診療科により機器費用は500万円〜2億円と大きく違うため、工事費と機器費を分けて予算を組みます。居抜きで機器も含めて引き継ぐ場合は、造作譲渡金に医療機器の価格が加算されます。
保健所の立入検査と事前相談
クリニックの開業には、保健所の立入検査と診療所開設許可(または開設届)が欠かせません。医療法と厚生労働省令に基づく厳格な検査が行われます。
立入検査の主な確認項目
- 診療所の名称・管理者の明示
- 部屋の使用用途(診察室・処置室・レントゲン室)
- 放射線設備・放射線管理区域の表示
- 医療従事者の免許証原本
- 医療に係る安全管理指針・委員会・研修記録
- 感染対策指針と実施記録
- 医薬品の管理(麻薬・向精神薬を含む)
- 個人情報保護管理体制
- 医療廃棄物の処理契約
- 救急時の対応体制
- 患者掲示物(診療時間・管理者名等)
事前相談のタイミング
居抜き物件での開設では、物件契約前と工事完了前の2段階で保健所への事前相談を行うのが基本。物件契約前の相談で現状の構造で開設許可が取れるかを確認し、工事完了前の相談で平面図と医療機器配置の最終確認を行います。
立入検査の流れ
保険医療機関の指定
保健所の開設届とは別に、地方厚生局への保険医療機関の指定申請が必要です。これは保険診療を行うための手続きで、通常は開設届の後1〜2か月以内に指定されます。指定前は自由診療のみとなるため、開業タイミングの計画が重要です。
造作譲渡金・承継金の相場と交渉実務
クリニックの造作譲渡金・承継金は500〜3,000万円と幅広く、医療機器の有無と営業権(のれん)の評価で大きく変動します。
譲渡金の内訳構造
- 内装造作(診察室・処置室・待合)
- 放射線管理区域の防護壁
- 医療機器(購入品・リース所有権移転後)
- 電子カルテ・医事会計システム
- 医療事務用品・消耗品ストック
- 営業権(のれん)※医院承継のみ
- 患者カルテ情報 ※医院承継のみ
- リース契約の承継権
- 保健所との関係(近隣住民との関係含む)
営業権(のれん)の評価
医院承継における営業権は、一般的に直近1〜2年の営業利益の1〜3倍が目安です。患者数・診療科・立地・競合状況で変動します。譲渡側(前医師)は高く売りたい、譲受側(新医師)は低く買いたいという利害対立があり、M&Aアドバイザーの仲介が一般的です。
値切り交渉の3つの論点
論点1:原状回復義務の相互利益。前医院がスケルトン戻し退院する場合、放射線管理区域の撤去・医療ガス配管の除去・バリアフリー設備の撤去で500〜1,500万円の原状回復費がかかります。新院が引き継ぐことで大きな相互利益が生まれます。
論点2:医療機器の中古市場価格と経年劣化。エックス線装置・超音波・内視鏡は築5年を超えると中古価格が急落します。新品価格の30〜50%を基準に査定し、メーカー保守契約の継続可否で更に減額交渉します。
論点3:リース残債と契約承継条件。リース機器の残債を新院が引き継ぐ場合、月額リース料+契約期間の条件を精査します。残債が大きい機種はリース返却・新規契約が有利なケースもあります。
クリニック居抜きで失敗する7パターン
実務で発生しやすい失敗を7パターンに類型化します。契約前にこの7つが自院に当てはまらないか点検してください。
失敗1:居抜き取得と医院承継を混同
「居抜き」と思って契約したが、実は営業権込みの医院承継で、営業権買取金が上乗せされて想定予算の1.5倍に。対策は最初に「物件のみ」「物件+機器」「物件+機器+営業権(承継)」の3パターンを整理し、スキームを明確にすることです。
失敗2:診療科マッチング軽視
内科居抜き物件を皮膚科で開業しようとしたが、診察室レイアウト・レーザー機器導入・排気設備の追加で500万円超の追加工事。対策は前医院の診療科と新院の診療科のマッチング確認、不一致時の改修見積もりを取ることです。
失敗3:レントゲン装置の経年故障
築10年超のエックス線装置を引き継いだが、開業3〜6か月で画像劣化・故障。更新に800〜1,500万円の緊急支出。対策は引渡し前の専門業者による保守点検と、更新時期を見越した予備資金確保です。
失敗4:リース残債の想定漏れ
医療機器がすべて自院所有と思って譲渡金を支払ったが、実はリース残債が月30万円×残3年。リース会社との契約承継審査に不合格で、機器返却と新規契約で500万円の追加。対策は契約前に機器リストの所有形態(購入/リース/レンタル)を書面確認することです。
失敗5:バリアフリー基準の不適合
築20年の居抜き物件で多機能トイレ・スロープが未整備。バリアフリー法対応工事で250〜500万円の追加。対策は築年数を確認し、築15年超の物件ではバリアフリー改修予算を初期計画に組み込むことです。
失敗6:放射線管理区域の使用許可漏れ
エックス線装置の使用届を新開設者名義で出し直すのを忘れ、開業直前の保健所検査で指摘。2〜4週間の開業遅延。対策は保健所事前相談時に必要書類チェックリストを入手し、使用許可を計画的に取得することです。
失敗7:立地と診療圏のミスマッチ
前医院の診療科と違う診療科で開業し、想定患者層が集まらず収支悪化。対策は新院の診療科に応じた診療圏分析(周辺人口・競合密度・通院距離)を物件契約前に実施することです。
契約書で確認すべき12項目
クリニック居抜き契約は「賃貸借契約」「造作譲渡契約」「医院承継契約(承継時)」の複層構造です。クリニック固有の項目を含む12点を確認します。
クリニック固有の確認項目
競業避止義務条項は、医院承継で特に重要。前医師が近隣で同じ診療科を再開業すると、患者流出で新院の経営が立ち行かなくなります。半径1〜3km圏内・5年程度の再開業制限を契約書に明記してください。
患者カルテの取扱いは、医療法・個人情報保護法の両方が関係します。居抜き取得では患者カルテは引き継がないため、前医院側で適切な保管(5年間)または廃棄の手続きが必要です。契約書に前医院側の責任として明記してもらいます。
モデル予算3ケース+居抜き×スケルトン判断
実際のクリニック居抜き開業を想定したモデル予算を3規模で提示します。地域係数は東京23区(1.0)で計算しています。
ケース1:25坪・皮膚科クリニック(内科居抜き転用)
物件取得費
400万円
保証金10か月+礼金
造作譲渡金
600万円
内装・基礎機器
内外装工事
900万円
皮膚科用改修
医療機器追加
700万円
レーザー・診察台
什器・備品
200万円
電子カルテ・消耗品
運転資金
900万円
6か月分
合計予算:約3,700万円。都心2等立地、家賃35〜50万円の物件を想定。診察2・レーザー室1・受付・待合の皮膚科クリニックで、スケルトン同規模開業(5,500〜7,500万円)に比べ1,800〜3,800万円の節約が見込めます。
ケース2:35坪・内科クリニック(同科居抜き)
物件取得費
600万円
保証金10か月+礼金
造作譲渡金
1,200万円
レントゲン・超音波込み
内外装工事
1,000万円
内装リフレッシュ
医療機器追加
800万円
電子カルテ更新
什器・備品
300万円
椅子・消耗品
運転資金
1,500万円
6か月分
合計予算:約5,400万円。住宅街駅近立地、家賃50〜75万円の物件を想定。診察3・処置・レントゲン・待合の内科クリニックで、スケルトン同規模開業(7,500〜10,000万円)に比べ2,100〜4,600万円の節約が見込めます。
ケース3:50坪・整形外科(医院承継)
物件取得費
800万円
承継時の保証金継承
承継金(営業権)
2,500万円
利益×1.5倍想定
造作譲渡金
1,500万円
レントゲン・リハ機器
内外装工事
800万円
部分改修・看板
医療機器追加
1,000万円
電子カルテ・追加機器
運転資金
2,000万円
6か月分
合計予算:約8,600万円。駅近商業ビル1-2階、家賃80〜120万円の物件を想定。診察3・処置・レントゲン・リハ室・待合の整形外科で、スケルトン同規模開業(1億2,000万〜1億6,000万円)と比べ3,400万〜7,400万円の節約。営業権買取分を含めた承継ならではの価格帯です。
居抜き×スケルトン判断フロー
居抜きを選ぶべき条件
- 前医院が同じ診療科または近い診療科
- 医療機器が築5年以内で状態良好
- レントゲン室・バリアフリー対応が現行基準適合
- 造作譲渡金が機器中古市場価格の1.5倍以内
- 立地が新院の診療圏に合致
- 開業までの期間を3〜6か月に抑えたい
スケルトンを選ぶべき条件
- 前医院が異業種(事務所・物販・飲食)で流用率30%未満
- 独自のクリニックコンセプトで差別化
- レイアウト・動線を抜本的に変えたい
- 造作譲渡金が機器価格を上回り経年劣化大
- 初期投資1億円以上の投下が可能
よくある質問
Qクリニック居抜きの最低開業費用はいくらですか
A25坪・内科クリニック・同科居抜き・運転資金6か月込みで3,200〜3,700万円が最小ラインです。医療機器の中古活用とリース併用、DIY施工比率の引き上げで更に200〜400万円の圧縮が可能です。これ以下はMRI等の高額機器が不要な診療科に限定されます。
Q居抜き取得と医院承継、どちらを選ぶべきですか
A前医院と同じ診療科で診療圏を継承したいなら医院承継、別診療科または独自コンセプトで開業したいなら居抜き取得です。医院承継は営業権の買取が加算される分高額ですが、開業初日から既存患者が来院する集患リスクの低さが最大の利点。居抜き取得は投資が軽い分、集患ゼロからのスタートを覚悟が求められる場合があります。
Qレントゲン装置は居抜きで流用すべきですか
A築5年以内で専門業者の保守点検をクリアするなら積極的に流用、築10年超は個別判定、築15年超は更新前提が安全ラインです。装置の漏洩線量測定、画質確認、メーカーの部品供給継続性の3点を確認してください。流用できれば500〜2,000万円のコスト削減になる重要設備です。
Q前医院の患者カルテは引き継げますか
A医院承継の場合は引継ぎ可能ですが、個人情報保護法に基づく患者への告知と同意取得が欠かせません。居抜き取得では原則引き継がず、前医院側で5年間の保管または適切な廃棄が必要です。契約書に前医院側の保管責任を明記してください。
Q医療機器リースの残債はどう処理しますか
A3パターンあります。①前医師が残債完済して所有権移転後に譲渡、②リース契約を新医師が承継(リース会社の審査と承認が必要)、③機器返却で新院が新規リース契約。最もトラブルが少ないのは①ですが、残債が大きいと前医師側が負担を嫌がる場合があります。機器リストと残債一覧を契約前に書面で取得してください。
Q前医院の保険医療機関指定は引き継げますか
A引き継げません。保険医療機関指定は医療機関ごと・管理者ごとに地方厚生局へ申請するもので、新開設者名義で再申請が必要です。通常、開設届の後1〜2か月で指定されますが、指定前は自由診療のみとなるため、開業スケジュールの計画が欠かせません。
Qバリアフリー対応で追加工事が必要かどうか判断するには
A築15年超の物件では現行のバリアフリー法基準を満たさないケースが多くなります。多機能トイレ・スロープ・出入口幅・受付カウンター高さの4項目を現地確認し、不適合なら100〜400万円の改修を予算に組み込んでください。築10年以内の物件なら概ね対応済みの想定で大丈夫です。
Q造作譲渡金・承継金の値切り交渉の目安は
A居抜き取得の造作譲渡金は言い値から30〜50%の減額が狙えます。機器別の中古市場価格査定、経年劣化による減額、原状回復義務の相互交渉、リース残債の精査の4軸で積み上げます。医院承継の営業権は利益の1〜3倍が交渉幅で、利益減少傾向がある場合は1倍以下まで下がる事例もあります。
Q地方でクリニック居抜き開業する場合の注意点は
A医療施設対応の施工会社が都市部に集中するため、25坪未満の小規模案件は対応業者が限られます。居抜きで800万円以上、スケルトンで1,500万円以上の案件なら相見積もりが成立しやすくなります。地方では医師不足地域への開業補助制度(自治体)があり、都市部より地方の方が融資・補助の両面で有利なケースもあります。
最終確認のお願い
上記は2026年4月時点の一般情報としてまとめたものです。法令・条例は随時改正され、解釈や運用も自治体ごとに差があります。物件固有の条件によって結論が変わるため、実際の契約・開業判断の前に、所轄自治体の窓口および弁護士・行政書士・建築士・消防設備士等の専門家にご相談いただき、書面で確認を取ることを強く推奨します。
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