飲食店の造作譲渡実務ガイド|居抜き売却の譲渡金額算定・契約交渉・税務・引き渡しの全工程

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この記事の要点

居抜きで売るなら、解約の通知の前に契約書と貸主の意向を確かめ、退去日から逆算します。

最初の一手
契約書で予告の期間・原状回復・造作の扱いを読み、通知の前に貸主へ居抜きでの退去を相談する。
逆算の目安
契約が終わる日は「通知の日+契約書の予告の期間」で決まります。買い手が未定のまま退去の3か月前になったら、退去工事の会社を決める(施工会社の例)。
売れない物
リース・割賦で所有権が残る機器と貸主の設備は、譲渡対象の一覧から外す。
原状回復との関係
承諾と買い手がそろえば退去工事を省ける見込み(貸主が求める撤去・補修は別)、そろわなければ原状回復。退去工事は名古屋市の施工会社1社の公表で坪約5万円前後(軽飲食)〜坪10万円前後(重飲食)・税区分の明示なし。20坪で約100万〜200万円前後(計算で、見積もりではない)。

金額と期間は、法令・公的な資料と施工会社の公表例、確かめ先を示すものです。契約・税・許可の判断は、貸主・税理士・保健所などに確かめてください。

造作譲渡とは──撤退時の出口戦略

造作譲渡(居抜き譲渡・居抜き売却)は、店の内装・設備・什器を次の借主に譲って退去することです。貸主が承諾すれば、退去時の撤去の工事(原状回復)の全部または一部が要らなくなり、造作譲渡の代金(譲渡金額)を受け取れることがあります。

飲食店の閉店・移転・事業の整理のときに選ばれる出口の1つで、売り手(今の借主)・買い手(次の借主)・貸主の三者がそろって成り立ちます。この記事は売り手の側から、退去日までの段取り、売れない物、原状回復との比べ方、税と届出を順に整理します。

造作譲渡の3つのメリット(売り手側)

メリット
中身
確かめること
1. 撤去の工事が減る
中身次の借主が使う内装・設備は撤去しなくてよい。どこまで残せるかは貸主との合意しだい
確かめること貸主が求める撤去・補修の範囲(書面で)
2. 譲渡金額を受け取れる
中身譲渡金額は買い手との交渉で決まる。期限が近いと0円で造作譲渡することもある
確かめること譲渡金額から引かれる仲介の手数料・税
3. 明け渡しまでが短くなる
中身撤去の工事が減れば、営業の終わりから明け渡しまでの日数が減ることがある
確かめること解約の日と引き渡しの日の並べ方

造作譲渡の3つのメリット(買い手側)

買い手の利点を知っておくと、貸主への説明や価格の交渉の材料になります。

メリット
中身
1. 工事費を抑えられる
中身当サイトの費用の記事「飲食店の内装費用相場」では、スケルトン(設備のない区画)から作る場合 坪60万〜80万円、居抜きの場合 坪30万〜55万円が中心です。
2. 開業までが早い
中身使える内装・設備が多いほど工事が少なく、工期が短くなることがある。
3. 設備をそのまま使える
中身厨房・空調・給排水・ダクト。使えるかどうかは、買い手が内見と点検の記録で確かめる。

居抜き売却・事業譲渡・株式譲渡の違い

店を手放す方法は3つあり、渡す物と、飲食店の営業許可の扱いが違います。造作譲渡は「物」を渡す方法で、店の営業そのものは渡しません。

方法
譲渡する物
飲食店の営業許可
向く場面
居抜き売却(造作譲渡)
譲渡する物内装・設備・什器などの物。屋号・従業員・取引先は含まない
飲食店の営業許可売り手は廃業届。買い手が自分の名義で新しく許可を取るのが一般的
向く場面閉店・移転で店を手放す
事業譲渡
譲渡する物店の営業(設備のほか、屋号・取引先などを選んで含める)
飲食店の営業許可2023年12月13日から、譲り受けた人が保健所への届出で営業者の地位を承継できる
向く場面店を続けてもらいたい
株式譲渡(会社の場合)
譲渡する物会社の株式。店は会社のまま
飲食店の営業許可許可を受けた会社は変わらない(代表者などの変更の届出の要否は保健所で確かめる)
向く場面会社ごと引き継いでもらう

出典:食品衛生法第56条、厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されます」、杉並区「廃業届」(営業者が変わる場合は廃業届に加えて新たな許可の申請、事業を譲渡した場合は地位承継届)。どれに当たるかは管轄の保健所に確かめます。

造作譲渡 vs 原状回復──撤退総コストの差

造作譲渡で退去するか、原状回復で退去するかは、譲渡金額と費用を同じ物差しで並べて決めます。次の式に、自分の店の見積もりと契約の数字を入れます。

造作譲渡で退去したときの差=①省ける退去工事の費用+②造作譲渡の代金(譲渡金額)−③仲介・契約書などの費用−④それでも要る工事(貸主が求める撤去・補修・清掃)−⑤買い手を待って、契約が終わる日が延びた月数分の家賃

  • ①の目安:名古屋市の施工会社1社の公表の坪単価×坪数。20坪に掛けると、軽飲食(坪約5万円前後)で約100万円前後、重飲食(坪10万円前後)で約200万円前後(計算であって見積もりではありません)。
  • ⑤の目安:月額の家賃×契約が終わる日が延びる月数。
  • ②〜④を除くと、延びる月数が「①÷月額の家賃」を超えると、⑤が①を上回ります。月額の家賃を1とすると、①が5に当たる店は5か月分、10に当たる店は10か月分までが目安です。自分の店は、退去工事の見積もりを契約書の家賃で割ります。

解約の通知を出した後は、契約が終わる日までの家賃は、買い手が決まらなくてもかかります(民法第617条・第618条・契約書の予告の期間)。⑤に入れるのは、通知を出す日を遅らせた分や、貸主と合意して退去日を延ばした分です。

坪単価は貝沼建設(名古屋市)の公表の目安(2026年2月・税区分の明示なし)で、当サイトの費用の記事「店舗の原状回復費用と進め方」と同じ帯です。①と④は同じ範囲の見積もりで、②と③は買い手との交渉と仲介会社との取り決めで確かめます。

造作譲渡が向く店舗・向かない店舗

区分
特徴
向く店舗
特徴次の店もそのまま使える設備(厨房・空調・ダクト・給排水)が動き、点検の記録がある。貸主が居抜きでの入れ替えに前向き。賃料が周りの物件と比べて高すぎない。解約の期限まで時間がある。
向かない店舗
特徴設備が古く修理が多い。業態が限られる特殊な間取り。貸主がスケルトンでの返還を求め、承諾の見込みが無い。期限が近い。

📌 造作譲渡は「貸主の承諾」が大前提

造作譲渡は売り手・買い手・貸主の三者の合意で成り立ちます。賃借権を次の借主に譲るには貸主の承諾が要ると民法は定めています(民法第612条)。契約書に「退去時はスケルトンに戻す」などの特約があっても、貸主が認めれば造作譲渡で退去できることがあります。最初に契約書の条項を確かめます。買い手の目線は居抜き物件の改装ガイドでも整理しています。

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造作譲渡が成立する3条件

成り立つのは、①貸主の承諾、②期限までに買い手が決まる、③売り手・買い手・貸主の書面がそろう、の3つがそろったときです。1つでも欠けると、契約どおりの原状回復で退去することになります。

条件1:貸主の承諾

次の借主に店を引き継ぐ形は、大きく2つあります。どちらにするかで、売り手に残る義務とお金の流れが変わるため、貸主と最初に決めます。

形
仕組み
売り手が確かめること
合意解約+新しい契約
仕組み売り手の契約を貸主と合意して終え、買い手が貸主と新しく契約する
売り手が確かめること原状回復の義務を免除する範囲と、敷金・保証金の精算の内容を書面に残す
賃借権の譲渡
仕組み売り手の借主の立場を買い手に譲渡する(貸主の承諾が要る:民法第612条)
売り手が確かめること敷金は売り手に返るのが原則で、買い手には自動では移らない(民法第622条の2)。造作買取請求権の放棄の特約の有無

貸主が承諾しない理由は、「次の借主を自分で選びたい」「賃料を見直したい」「別の用途に使いたい」などです。承諾を得るには、退去の意向を伝える段階から貸主との交渉を始めます。

条件2:後継テナントの確保

造作譲渡をしたくても、買い手(後継テナント)が見つからなければ成り立ちません。立地・賃料・設備の状態がよければ決まりやすく、そうでなければ長くかかります。解約の通知の前から買い手を探し始め、期限までに決まらない場合に原状回復へ切り替える日を先に決めておきます(切り替えの期限の決め方)。

条件3:契約書の整備

売り手と買い手の造作譲渡契約書と、貸主の承諾の書面(または三者の合意書)を用意し、賃貸借の契約と日付をそろえます。書面が無いと、造作の持ち主、設備の故障の責任、賃貸借の引き継ぎをめぐって争いになりやすくなります。弁護士や仲介会社に確かめながら作ります(項目は造作譲渡契約書の必須項目)。

3条件のチェックフロー

  1. 契約条項の確認:賃貸借契約書で、造作の譲渡・残置、原状回復の範囲、解約予告の期間を確かめる。
  2. 貸主との協議:居抜きでの退去ができるか、承諾の条件と手続きを聞く。
  3. 後継テナントの募集:仲介会社・地域の不動産会社・知人などで買い手を探す。
  4. 契約書の整備:造作譲渡契約と、貸主の承諾の書面(または三者の合意書)を作る。

⚠️ 賃貸契約に「造作譲渡禁止」条項がある場合

「造作物は退去時にスケルトンに戻す」と書かれていても、貸主と話し合い、条件を見直してもらえることがあります。賃料の見直しの交渉に応じることを条件に、造作譲渡での入れ替えを認めてもらう進め方もあります。これから出店する店は、契約の段階で退去時の造作の扱いを確かめておきます。交渉の進め方は店舗の賃料交渉ガイドを参照してください。

造作譲渡の全工程(11ステップ)

退去日(契約が終わる日)から逆算し、解約の通知の前に、貸主への相談と退去工事の見積もりを済ませます。そのうえで、買い手探しと退去工事の準備を並べて進めます。主な流れは下の6つの節目で、11ステップは各段階でやることの細目です。

退去日から逆算する手順(半年前から動く場合)

1今すぐ(退去の6か月前)契約書を読み、貸主に造作譲渡での退去を相談。退去工事の見積もりを頼む
2解約予告の期限まで通知の時期と書き方を貸主と決め、書面で出す
34か月前撤去する物と残す物の範囲を、貸主と立会いで決める
43か月前買い手が決まっていなければ、退去工事の会社を決める
51〜2か月前引き渡し(または工事)の工程表、不要品の撤去・清掃
6退去日とその後引き渡し・鍵の返却、届出、敷金・保証金の精算

月数は、退去工事の会社(名古屋ナカテック・2026年3月のコラム)が示す段取りの例(6か月前に契約の確認、4か月前に範囲の確定、3か月前に業者の決定、1〜2か月前に工程表)を、居抜きの準備と並べたものです。予告の期間や建物の手続きで変わります。

11ステップの全体像

11ステップの表を開く(やること・いつまでに)
ステップ
造作譲渡でやること
いつまでに(目安)
1. 撤退判断
造作譲渡でやること閉店か移転かを決め、退去日の候補を置く
いつまでに(目安)―
2. 賃貸借契約書の確認
造作譲渡でやること解約予告の期間、原状回復の範囲(特約)、造作の譲渡・残置、造作買取請求権の放棄、定期借家かどうか
いつまでに(目安)撤退を決めたらすぐ
3. 貸主への打診
造作譲渡でやること造作譲渡で退去したい意向を伝え、承諾の条件と手順を聞く
いつまでに(目安)解約の通知を出す前
4. 譲渡対象の一覧と見積もり
造作譲渡でやること持ち主(自社・リース・貸主)を分け、動作の記録を残す。買い手が決まらない場合の退去工事の費用と工期を見積もる
いつまでに(目安)通知の前〜4か月前
5. 希望の譲渡金額を決める
造作譲渡でやること0円でも省ける退去工事の費用と、買い手が浮かせる工事費の両方を物差しにする
いつまでに(目安)募集を始める前
6. 後継テナントの募集
造作譲渡でやること仲介会社・知人・自店のSNSなど。営業中に内見を受ける
いつまでに(目安)通知の前から期限まで
7. 条件交渉と貸主の承諾
造作譲渡でやること譲渡金額・引き渡し日・譲渡対象・不具合の扱いを交渉して決める。承諾は書面で
いつまでに(目安)退去工事の会社を決める日(例:3か月前)より前
8. 契約
造作譲渡でやること造作譲渡契約と、買い手と貸主の賃貸借契約(または賃借権の譲渡の承諾)。日付と、成立しないときの扱いをそろえる
いつまでに(目安)引き渡しの前
9. 引き渡しの準備
造作譲渡でやること不要品の撤去・清掃、取扱説明書と点検の記録、リースの機器の扱いを決める
いつまでに(目安)引き渡しの前
10. 引き渡し・残金決済
造作譲渡でやること一覧と現物を照らす立会い、鍵と書類の受け渡し、残金の支払い
いつまでに(目安)引き渡しの日
11. 引き渡しの後の手続き
造作譲渡でやること保健所の廃業届、税務署の届出、電気・ガス・水道の停止や名義変更、敷金の精算
いつまでに(目安)引き渡しの後(期限は窓口ごと)

11ステップ全体で必要な期間目安

全体の期間は、「解約予告の期間」と「買い手が決まるまでの期間」で決まります。予告の期間は契約書で決まります。契約で予告の期間を決めていない場合は、期間の定めのない建物の賃貸借や、期間中に解約する権利を残した契約なら、解約の申入れの日から3か月で終わるのが民法の原則とされます(民法第617条・第618条)。定期建物賃貸借は、解約できる特約が無ければ、期間中は原則として解約できないとされます(日本政策金融公庫「起業家応援マガジン」VOL.79・日本弁護士連合会の弁護士の解説)。

各ステップの並行進行

上の11ステップのうち、3(貸主への打診)・4(一覧と見積もり)・6(募集)は、同時に始められます。退去工事の見積もりを早く取っておけば、買い手との交渉で下げてよい額と、待てる期間が決まります。7(条件交渉と承諾)と8(契約)は並べて進めますが、貸主の承諾の前に造作譲渡契約を確定させないようにし、承諾が得られない場合は契約を解除できる条項を入れます。

退去予告のタイミング設計

解約の通知を出すと、契約が終わる日が決まります。その日までに買い手が決まらなければ、原状回復をして明け渡すことになります。通知の前に、「次の借主が決まってから解約する」といった段取りを相談できるかは、契約と貸主の意向しだいです。通知は書面で出し、受け取った記録を残します。

💡 退去予告は「正式予告」より前の「内々打診」が有効

書面の通知の前に、口頭やメールで貸主の意向を聞いておくと、準備の方向を早く決められます。「次の借主を探してほしい」と前向きな答えなら居抜きの準備を本格的に始め、「退去後は別の用途に使う」と答えがあれば原状回復の準備を先に進めます。見積もりのための現地調査で貸主・管理会社に連絡が行くこともあるため、相談の順番を決めておきます。

👥 従業員がいる店は、伝える時期も逆算する

労働基準法は、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払うことを定めています(第20条)。社会保険・雇用保険の手続きは、年金事務所・ハローワークで確かめます。

買い手が決まらない場合に備えて、退去工事の費用と工期を先に知る

造作譲渡が成り立つかは、期限までに買い手が決まるかしだいです。退去工事(原状回復)の見積もりがあれば、いつまで買い手を待てるかを決められます。契約書の原状回復の条項と、貸主が求める返し方が分かれば一緒に伝えてください。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。ご紹介するのは工事の会社です。2つ目の画面の「依頼事項」に退去工事の選択肢は無いため、近いもの(今の店の工事ならリニューアル)を選び、「依頼内容・希望詳細」に「退去工事(原状回復)」と、退去日・広さ・貸主が求める返し方を書いてください。

売れない物を先に分ける──リース品・貸主の設備・持ち主の確かめ方

売れるのは、売り手が持っている物だけです。リースの機器(持ち主はリース会社)、支払い中で所有権が残る割賦の機器、貸主の設備は、譲渡対象の一覧から外して扱いを確かめます。

持ち主ごとの扱い

持ち主
例
造作譲渡での扱い・確かめ先
自分(自社)
例自分で買った厨房機器・家具・内装の造作
造作譲渡での扱い・確かめ先売れる。知っている不具合は一覧に書いて渡す(購入の記録・固定資産の台帳で確かめる)
リース会社
例リース契約の厨房機器・空調・レジなど
造作譲渡での扱い・確かめ先売れない。残りのリース料の精算と返却、買い手への引き継ぎ、移転先での使い続けのどれができるかをリース会社に確かめる
割賦(分割払い)で支払い中
例信販会社などの分割払いで買った機器
造作譲渡での扱い・確かめ先契約に所有権を残す定めがあれば、払い終わるまで売れないことがある(割賦の契約書・信販会社)
貸主(ビル側)
例入居時からある設備、ビル側の工事で付けた空調・防災設備など(A・B・C工事の区分)
造作譲渡での扱い・確かめ先売れない。残すか撤去するかを貸主と決める(入居時の図面・写真・工事区分表)
前の借主から買った物
例居抜きで入ったときに引き継いだ造作
造作譲渡での扱い・確かめ先自分の物になっていれば売れる。前の契約で、原状回復の義務まで引き継いでいないかを確かめる

持ち主の確かめ方(譲渡対象の一覧の作り方)

  • 機器の表示:リースの機器には、リース会社の所有を示す標識が貼られていることがあります(リース事業協会の参考の契約書でも、リース会社が標識を貼るとしています)。
  • 契約書類:リース契約書・割賦の契約書・前の店からの造作譲渡契約書を集めます。
  • 入居時の記録:入居時の図面・写真・工事区分表で、貸主の設備かどうかを確かめます。
  • 一覧の列:品目・型番・購入時期・持ち主・動作の状態・残すか持ち帰るか。写真を添えます。

リースの機器が残っている場合

リースの契約は、契約に定める場合を除いて途中で解除できず、物件の所有権はリース会社にあり、返すときはリース期間中の損傷を直して返す、というのが参考の条項です(公益社団法人リース事業協会「リース契約書の主な条項」)。譲渡対象には入れず、残りのリース料を精算して返すか、買い手に引き継いでもらうか、移転先で使い続けるかを、リース会社に確かめます。引き継ぎの可否と手続きはリース会社が決めるため、買い手との条件交渉より前に話を通します。移転先へ持っていく機器は、取り外し・運搬・再設置・試運転の担当と費用を見積もりで確かめます。

譲渡対象から外す設備の撤去・移設を先に段取りする

リースの機器の返却、貸主に返す設備のまわりの補修、移転先へ持っていく機器の取り外しは、退去工事と同じ日程に乗せると工期と費用を比べやすくなります。持ち主の分かる一覧があれば伝えてください。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。ご紹介するのは工事の会社です。2つ目の画面の「依頼事項」は近いもの(今の店の工事ならリニューアル)を選び、「依頼内容・希望詳細」に「撤去・移設の工事」と、持ち主の分かる一覧の有無を書いてください。

譲渡金額の算定方法3パターン

決まった計算式は無く、①帳簿の残り、②作り直す費用から古さを引いた額、③買い手の数と需要、の3つの物差しを組み合わせ、売り手と買い手の交渉で決めます。売り手は、下限(0円でも省ける退去工事の費用)と期限を先に決めておきます。

算定方法1:未償却簿価方式

取得価額から減価償却の累計を引いた帳簿の残り(未償却残高)を基準にする考え方です。帳簿で根拠を示しやすく、売り手の税の計算の起点にもなりますが、買い手から見た価値とは離れることがあります。

算定方法2:時価方式(再調達原価ベース)

同じ内装・設備を今から作ったらいくらか(再調達原価)から、使った年数の分を引く考え方です(例:再調達原価×(1−使った年数÷使える年数))。作り直す費用の見積もりが要ります。この式は目安で、買い手にとって使える価値とは一致しません。経過年数だけで決めないでください。

算定方法3:需要・供給による交渉方式

売り手の希望と買い手の予算・評価を、交渉ですり合わせて決める方法です。買い手の候補が多ければ売り手の交渉の力が強くなり、少なければ下げる交渉になります。

3方式の使い分け

3方式の使い分けの表を開く
店の状態
譲渡金額の主な物差し
補う物差し
設備が新しい
譲渡金額の主な物差し未償却簿価方式
補う物差し交渉方式で調整
設備がふつうの状態
譲渡金額の主な物差し時価方式
補う物差し交渉方式ですり合わせ
設備は古いが立地がよい
譲渡金額の主な物差し交渉方式
補う物差し時価方式で根拠を示す
立地が不利・買い手が少ない
譲渡金額の主な物差し交渉方式
補う物差し下限(0円でも省ける退去工事)と期限で下げ幅を決める

譲渡金額に含まれる主要項目

譲渡金額に含まれる主な項目を開く
譲渡対象の項目
内容
内装造作
内容床・壁・天井・カウンター・客席の仕切り
厨房設備
内容冷蔵庫・コンロ・フライヤー・製氷機・ダクト
客席の什器
内容テーブル・椅子・パーテーション
空調・電気
内容エアコン・換気扇・増設した電気の容量
給排水
内容シンク・グリストラップ・配管
サイン・看板
内容外の看板・店内のサイン
備品
内容食器・調理器具(含めるかは別に決める)

売り手の下限と、買い手の上限の物差し

売り手の下限の物差しは、0円で造作譲渡しても省ける退去工事の費用です(20坪の軽飲食なら、名古屋市の施工会社の公表単価×20で約100万円前後:計算の式)。期限が近いほど、0円での造作譲渡も選択肢になります。交渉の前に、下げてよい幅を決めておきます。買い手の上限の物差しは、居抜きで浮かせる工事費(スケルトンから作る場合との差)です。造作譲渡料の相場の見方、交渉の材料、契約書の項目は、当サイトの「居抜き物件の造作譲渡契約」にまとめています。

📌 立地は買い手の数を左右する

同じ業態・同じ設備でも、立地と賃料で買い手の数が変わり、買い手の数が交渉の強さを決めます。人通りの多い1階の店は買い手が集まりやすく、地下や駅から遠い店は買い手が限られ、原状回復に切り替える判断が早く要ることがあります。

後継テナントの探し方と仲介選定

買い手は、居抜きを扱う仲介会社、地域の不動産会社、取引先や同業の知人、自店のSNSなどで探します。仲介会社を使うなら、手数料の決め方と、誰の代わりに動くのかを書面で確かめます。

後継テナント募集の5チャネル

5つの探し方の特徴と確かめることを開く
探し方
特徴
確かめること
1. 居抜きを扱う仲介会社
特徴居抜きの店を探す人に情報が届く
確かめること手数料の決め方、店名を伏せて募集できるか
2. 地域の不動産会社
特徴その地域で物件を探す人に情報が届く
確かめること貸主の管理会社と同じ会社か(誰の代わりに動くか)
3. 居抜き物件の掲載サイト
特徴広い地域に情報を出せる
確かめること掲載の費用、成立したときの手数料、写真の公開の範囲
4. 取引先・同業の知人
特徴相手の顔が分かる
確かめること条件は書面で。貸主の承諾の手続きは同じ
5. 自店のSNS・ホームページ
特徴直接やり取りできる
確かめること従業員・常連・取引先に知られる時期

居抜き専門仲介業者の選定ポイント

仲介会社を選ぶときの6つの確認点を開く
確認点
確かめる内容
1. 得意な業態・地域
確かめる内容飲食店の居抜きの取り扱いがあるか、店の地域で買い手に情報を届けられるか
2. 手数料
確かめる内容料率と計算の元(譲渡金額か、賃料か)、支払う時期、成立しなかったときの費用
3. 契約の形
確かめる内容1社だけに任せるか、何社にも頼めるか。期間と途中でやめるときの扱い
4. 誰の代わりか
確かめる内容売り手と買い手の両方から手数料を受けるか、貸主の管理会社を兼ねるか
5. 情報の出し方
確かめる内容店名を伏せた募集ができるか、内見の受け方
6. 手伝う範囲
確かめる内容造作譲渡契約書の案、貸主の承諾の段取り、引き渡しの立会いまで

宅地建物取引業法は、宅地・建物の売買・交換と、売買・交換・貸借の代理・媒介を宅地建物取引業としています(宅地建物取引業法第2条第2号)。媒介契約の書面や専任の期間の決まり(第34条の2)は宅地・建物の売買・交換の媒介について、報酬の上限(第46条・国土交通大臣の告示)は売買・交換・貸借の代理・媒介についての決まりです。譲渡金額にかかる手数料をどう決めているかは会社ごとに違うため、契約の前に書面で確かめます。

独占媒介と一般媒介の使い分け

造作譲渡の仲介は、宅地・建物の売買の媒介契約(専任・一般)の決まりがそのまま当たるとは限りません。ここでは「1社だけに任せるか、何社にも頼むか」として比べます。

1社に任せる場合と何社にも頼む場合の比べを開く
頼み方
よい点
気をつける点
1社だけに任せる
よい点窓口が1つで進み具合が分かりやすい。買い手の情報が1か所にまとまる
気をつける点ほかに頼めない期間と、途中でやめるときの扱い
何社にも頼む
よい点募集が広がる。対応の早さを比べられる
気をつける点同じ店の情報が何か所にも出る。条件の食い違い、窓口の整理

仲介選定の実務ステップ

  1. 候補を選ぶ:居抜きを扱う会社と、地域の不動産会社から候補を選ぶ。
  2. 面談・見立て:現地を見てもらい、希望の譲渡金額の見立てと、決まるまでの見込みを聞く。
  3. 契約の形と手数料を決める:1社か何社か、料率と計算の元、支払う時期を書面で。
  4. 資料をそろえる:写真・図面・設備の一覧・賃料と契約の条件。
  5. 募集と内見:内見の受け方と、買い手との交渉の窓口を決める。

💡 売り出し方は「営業中での内見」が有利

営業しているうちに内見を受けると、買い手は設備が動くところや店の使い方を確かめられ、交渉が進みやすくなります。閉店してから設備を止めると、動くかどうかを見せにくくなります。昼前のカフェや午後のレストランなど、お客の少ない時間に内見を受けます。

貸主との交渉ポイント

貸主が気にするのは、次の借主が賃料を払えるか、建物に合う使い方か、手続きと費用の負担です。最初に造作譲渡での退去の可否と条件を聞き、買い手の候補がそろったら書面で承諾をもらいます。

貸主との交渉で押さえる5論点

貸主との交渉の5論点の表を開く
論点
貸主の関心
売り手側の対応
1. 後継テナントの信用
貸主の関心賃料を払える借主か
売り手側の対応買い手の事業計画・資金の資料をそろえて渡す
2. 賃料の水準
貸主の関心周りの相場に合うか
売り手側の対応賃料の見直しの交渉に応じる姿勢を示す
3. 業態の整合
貸主の関心建物や近隣に合う業態か
売り手側の対応臭い・音・営業時間など、建物の決まりとの合い方を説明する
4. 賃貸借の条件
貸主の関心契約期間・更新の条件
売り手側の対応新しい契約の条件を話し合える余地を示す
5. 手続きと費用
貸主の関心書類の手続きと費用の負担
売り手側の対応仲介や書類の手続きの分担を提案する

貸主が承諾しやすくなる「3提示」

貸主に示す3つのことを開く
提示
内容
1. 信用のある後継テナント候補
内容事業計画・資金の資料・経営者の経歴を整えて示す
2. 賃料の見直しへの協力
内容相場に合わせる交渉に応じる
3. 業態の継続性
内容同じ業態か近い業態の候補を先に紹介する

貸主との交渉タイミング

交渉は2段階に分けます。最初の段階では、解約の通知の前に、造作譲渡での退去ができるか、承諾の条件と手続きを聞きます。ここで断られれば、原状回復の準備に力を移せます。次の段階では、買い手の候補がそろったところで、承諾を書面でもらいます。貸主は次の借主を審査するため、候補の資料を早めに渡せるようにしておきます。

貸主への手土産的な譲歩条件

承諾を得やすくするための譲歩を、先に考えておく方法もあります。例えば、小さな修繕を退去の前に済ませる、承諾の条件の書面づくりに協力する、賃料の見直しの交渉に応じる、敷金・保証金の扱いを話し合う、などです。どこまで譲れるかは、造作譲渡で退去したときの差の計算の範囲で決めます。

⚠️ 貸主との関係悪化リスク

交渉の途中で貸主との関係が悪くなると、造作譲渡での退去そのものが難しくなります。感情的な対立を避け、やり取りは書面を基本にし、必要なら不動産会社や弁護士に間に入ってもらいます。貸主との関係づくりは店舗の賃料交渉ガイドでも整理しています。

移転して営業を続ける方へ

旧店の造作譲渡の段取りと並べて、移転先の内装と、旧店から持っていく設備の移設を相談できます。移転の費用の全体は店舗移転の費用と流れ、内装の雰囲気は飲食店内装の施工事例で確かめられます。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。2つ目の画面の「依頼事項」は、移転先の物件に合わせて「スケルトンから新規出店」か「居抜き物件」を選べます。

造作譲渡契約書の必須項目

売り手が守りたいのは、①譲渡対象の一覧(持ち主・状態)、②譲渡金額と支払いの日、③引き渡しの条件、④不具合の扱い(契約不適合責任)、⑤貸主の承諾が得られないときの扱い、の5点です。

ここでの「必須」は法律で決まった項目ではなく、売り手が押さえたい項目です。買い手が確かめる項目と契約不適合責任の読み方は「居抜き物件の造作譲渡契約」で整理しています。ここでは売り手が守る項目に絞ります。

譲渡契約書の必須12項目

造作譲渡契約書の12項目の表を開く
譲渡契約書の項目
記載内容
1. 当事者
記載内容売り手・買い手の氏名または法人名・住所・代表者
2. 譲渡対象
記載内容造作・設備・什器の一覧(写真を添える)。リースの物・貸主の物は含めない
3. 譲渡金額
記載内容総額・内訳・税抜か税込か
4. 支払条件
記載内容手付金・残金・支払いの日と方法
5. 引き渡し条件
記載内容引き渡しの日・場所・状態・立会い
6. 所有権の移転
記載内容所有権が移る時期と条件
7. 危険負担
記載内容引き渡しの前に壊れた・なくなった場合の扱い
8. 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
記載内容引き渡しの後の不具合の扱いと、知らせる期間
9. 契約の解除
記載内容貸主の承諾が得られない、買い手の契約が成立しない場合の解除と、受け取った譲渡代金の返し方
10. 賃貸借契約との関係
記載内容貸主の承諾を、譲渡が成り立つ条件にする条項
11. 損害賠償
記載内容約束が守られなかった場合の賠償の範囲
12. 紛争の解決
記載内容裁判所などの取り決め

譲渡対象リストの作り方

「店内設備一式」のような書き方は、引き渡しのときの食い違いのもとになります。品目・数量・状態を一覧にします。

譲渡対象リストの書き方を開く
譲渡対象の区分
記載内容
厨房機器
記載内容品目・型番・購入時期・状態(例:A 新品同様/B 良好/C 使用感あり/D 要修繕)・持ち主
客席の什器
記載内容テーブル・椅子・パーテーションの数・素材・状態
内装造作
記載内容カウンター・収納・装飾の写真
空調・給排水
記載内容エアコンの台数・換気扇・グリストラップ・配管の経路
サイン・看板
記載内容看板の種類・大きさ・照明の有無
備品(含める場合)
記載内容食器・調理器具・消耗品(含めるかを別に決める)

契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の決め方

2020年4月1日施行の改正民法で、売主の責任は、渡した物が「契約の内容に適合しない」場合の責任(契約不適合責任)として定められました(それまでの「瑕疵担保責任」)。民法では、種類・品質・数量が契約の内容に合わない物を渡した場合、買い手は修理などを求められ(民法第562条)、種類・品質の不適合は、知った時から1年以内に売り手へ知らせないと、その請求ができなくなるとされています(第566条)。責任を負わない特約(「現状のまま引き渡す」など)を結んでも、知りながら告げなかった事実については責任を免れないとされています(第572条)。商人どうし(事業者どうし)の売買では、受け取った買い手が遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに知らせる決まり(商法第526条・直ちに見つけられない不適合は6か月以内)が先に当たることがあり、知らせる期間はさらに短くなる場合があります。売り手は、知っている不具合を一覧に書いて渡し、責任を負う範囲と知らせる期間を契約書に書き、弁護士に確かめます。

専門家の関与

契約書は、仲介会社の書式を使う場合でも、設備の特殊な事情、賃貸借の特約、税の論点があれば弁護士に確かめます。費用は事前に見積もりを取ります。

📌 三者契約 vs 二者契約+合意書

造作譲渡の契約の形には、「売り手・買い手・貸主の三者契約」と、「売り手・買い手の二者契約+貸主の承諾書(合意書)」があります。三者契約は一度で済む代わりに調整に時間がかかり、二者契約+合意書は柔軟な代わりに、書類どうしの日付と条件をそろえる必要があります。仲介会社や弁護士と相談して選びます。

引き渡しの前に、設備の点検・修理・清掃を済ませる

契約不適合の争いを避けるには、譲渡対象の動作を確かめ、直せる不具合は引き渡しの前に直し、直さない不具合は一覧に書いて渡します。厨房機器・空調・給排水・ダクトの点検と修理、引き渡しの前の清掃を相談できます。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。ご紹介するのは工事の会社です。2つ目の画面の「依頼事項」は近いもの(今の店の工事ならリニューアル)を選び、「依頼内容・希望詳細」に「引き渡しの前の設備の点検・修理」と書いてください。

税務上の取り扱い(売り手・買い手)

売り手が消費税の課税事業者なら、造作譲渡の代金(譲渡金額)には消費税がかかるのが一般的とされます。利益の扱いは、個人なら多くは譲渡所得(建物附属設備などは分離課税になる場合あり)、会社なら法人の所得の計算に入ります。インボイスの登録の有無は買い手の税に関わるため、契約の前に伝えます。

売り手側の税務処理

税
造作譲渡での扱い
根拠・確かめ先
消費税
造作譲渡での扱い課税事業者が、事業に使っていた建物・機械などを売るのは、事業に付随する取引として消費税の対象とされる。譲渡金額は税抜か税込かを契約書に書く
根拠・確かめ先消費税法基本通達5-1-7
インボイス
造作譲渡での扱い適格請求書を出せるのは、登録を受けた事業者だけ
根拠・確かめ先国税庁 No.6498
個人の譲渡益
造作譲渡での扱い事業に使っていた機械器具などの売却は、原則として譲渡所得(総合課税)。建物附属設備・構築物にあたる物は分離課税になる場合がある(下の注)。使用可能期間1年未満・取得価額10万円未満の資産や、一括償却資産(20万円未満)などの売却は事業所得など(業務の性質上基本的に重要なものを除く)
根拠・確かめ先国税庁 No.3105
会社の譲渡益
造作譲渡での扱い譲渡金額と帳簿価額の差(譲渡損益)が、法人の所得の計算に入る
根拠・確かめ先顧問の税理士
売らずに捨てる物
造作譲渡での扱い帳簿に残る物を捨てるときの扱い(除却)
根拠・確かめ先顧問の税理士

注:建物附属設備・構築物にあたる物の売却は、「建物等」として総合課税ではなく分離課税の扱いになる場合があります(国税庁 No.3105 の表、租税特別措置法第31条・第32条)。借りた店に付けた造作がどちらにあたるかは物ごとに違うため、税理士に確かめます。

買い手側の税務処理

買い手側の税務処理の表を開く
項目
扱い
取得価額
扱い譲渡金額に、買うためにかかった費用を足す
資産の区分
扱い品目ごとに、器具及び備品・建物附属設備・機械及び装置などに分けて計上する
耐用年数
扱い中古の資産は、使える年数を見積もるか、簡便法で短い年数にできる場合がある(国税庁 No.5404・耐用年数の表)
消費税
扱い仕入税額控除を受けるには、売り手の適格請求書が要る

譲渡金額の内訳設計が税務に影響

譲渡金額の内訳(どの物にいくら)をどう分けるかで、買い手の償却の年数が変わります。器具及び備品は品目ごと(電気冷蔵庫・ガス機器などは6年)、厨房の設備を一体とみれば飲食店業用設備の8年、建物附属設備は給排水・ガス設備15年などです。借りている建物に付けた内装の造作は、建物の耐用年数や造作の種類・用途から合理的に見積もるとされています。内訳は、売り手・買い手それぞれの税理士に確かめてから契約書に書きます。

消費税の扱い

譲渡金額にかかる消費税は、税込か税抜かを契約書に書くことが大切です。インボイス制度では、登録の無い事業者からの購入は、買い手が仕入税額控除を全額は受けられず、仕入税額相当額の一定の割合を控除できる経過措置があります。割合は課税仕入れを行った日(資産を譲り受けた日。造作は一般に引渡しを受けた日とされます)で決まり、令和8年9月30日まで80%、令和10年9月30日まで70%、令和12年9月30日まで50%、令和13年9月30日まで30%です(国税庁 インボイスQ&A 問113・No.6498・消費税法基本通達11-3-1)。

売り手の立場ごとの消費税と、買い手の控除の表を開く
売り手の立場
譲渡金額の消費税
買い手から見た控除
課税事業者(インボイスの登録あり)
譲渡金額の消費税譲渡金額に消費税がかかる
買い手から見た控除適格請求書で仕入税額控除を受けられる
課税事業者(登録なし)
譲渡金額の消費税譲渡金額に消費税がかかる
買い手から見た控除適格請求書が無いため、経過措置の割合だけ
免税事業者
譲渡金額の消費税売り手に消費税の申告・納税は無い
買い手から見た控除適格請求書が無いため、経過措置の割合だけ

個人事業主と法人での違い

個人の売り手は、譲渡益が総合課税の譲渡所得か、分離課税の譲渡所得か、事業所得かで計算が変わります(国税庁 No.3105)。閉店して事業をやめる場合は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業した年分の所得税の確定申告期限までに、青色申告をしていた人は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を取りやめる年の確定申告期限までに、消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」を速やかに出します(国税庁「廃業する場合」・No.6603)。個人事業をやめたときに、売らずに手元に残した事業用の資産(車両など)は、やめた時点で譲渡したものとみなされ(みなし譲渡)、非課税取引でない限り消費税の対象になるとされています(No.6603)。法人は、譲渡益が法人の所得の計算に入ります。店を閉めても会社が続く場合の届出(事業所の廃止など)は、税理士・税務署に確かめます。いくつも店を持つ会社は、譲渡益が出る事業年度も考えて時期を決めます。

⚠️ 税務は税理士に確かめる

造作譲渡の税は、内訳の分け方、消費税とインボイス、所得の区分、廃業の届出が重なります。この記事は税務の助言ではありません。具体的な扱いは、税理士・税務署に確かめてください。

居抜きの厨房機器の耐用年数(国税庁の表で確かめる)

厨房機器の法定耐用年数は、器具及び備品として品目ごとに決まり(電気冷蔵庫・ガス機器などは6年)、厨房の設備を一体とみるときは機械及び装置の「飲食店業用設備」で8年です。居抜きで引き継いだ中古の機器は、簡便法で短い年数にできる場合があります。

主な法定耐用年数:電気冷蔵庫・ガス機器 6年/冷暖房用の機器 6年/冷蔵機付の陳列ケース 6年/食器(陶磁器・ガラス)2年/看板 3年/飲食店業用設備(厨房設備を一体とみる場合)8年/給排水・ガス設備 15年/冷暖房設備(冷凍機22キロワット以下)13年。

省令の別表の書き方で12品目の表を開く
区分
品目(省令の別表の書き方)
法定耐用年数
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器
法定耐用年数6年
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)冷房用又は暖房用機器
法定耐用年数6年
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)陳列だな及び陳列ケース(冷凍機付・冷蔵機付)
法定耐用年数6年(その他のものは8年)
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)氷冷蔵庫及び冷蔵ストッカー(電気式のものを除く)
法定耐用年数4年
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)食事又はちゅう房用品
法定耐用年数陶磁器製・ガラス製 2年、その他 5年
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)応接セット・その他の家具(接客業用)
法定耐用年数5年
器具及び備品
品目(省令の別表の書き方)看板、ネオンサイン及び気球
法定耐用年数3年
機械及び装置
品目(省令の別表の書き方)飲食店業用設備(別表第二)
法定耐用年数8年
建物附属設備
品目(省令の別表の書き方)給排水又は衛生設備及びガス設備
法定耐用年数15年
建物附属設備
品目(省令の別表の書き方)電気設備(照明設備を含む)のうち蓄電池電源設備以外
法定耐用年数15年
建物附属設備
品目(省令の別表の書き方)冷暖房設備(冷凍機の出力が22キロワット以下)
法定耐用年数13年
建物附属設備
品目(省令の別表の書き方)店用簡易装備
法定耐用年数3年

出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一・別表第二(e-Gov 法令検索)。厨房の設備の構成や使い方が通常の飲食店の設備と同様なら「飲食店業用設備」の8年とする国税庁の質疑応答(耐用年数等の見直し(平成20年度税制改正)に関するQ&Aの問6)。

中古の機器は簡便法で年数を出せる

中古の資産は、使える年数を見積もるのが原則で、見積もりが難しいときは簡便法が使えます(国税庁 No.5404)。法定耐用年数の全部を過ぎた物は「法定耐用年数×20%」、一部を過ぎた物は「(法定耐用年数−過ぎた年数)+過ぎた年数×20%」で、1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年とします。中古の資産を使うために、その取得価額の50%を超える改良の費用をかけた場合は、簡便法が使えないとされています。中古の耐用年数の算定は、その資産を事業に使い始めた事業年度にするもので、その年度にしなかったときは、後の年度に算定することはできないとされています。

簡便法の計算の例を開く
例
計算
年数
6年の電気冷蔵庫を、4年使われた状態で引き継ぐ
計算(6−4)+4×20%=2.8
年数2年
8年の飲食店業用設備を、3年使われた状態で引き継ぐ
計算(8−3)+3×20%=5.6
年数5年
8年の飲食店業用設備を、5年使われた状態で引き継ぐ
計算(8−5)+5×20%=4
年数4年
8年の飲食店業用設備を、10年使われた状態で引き継ぐ
計算8×20%=1.6(2年に満たない)
年数2年

借りている建物に付けた内装の造作は、その建物の耐用年数、造作の種類・用途・材質などから合理的に見積もるとされ、更新できない賃借期間の定めがあり、有益費や買取の請求ができない場合は、その賃借期間を耐用年数にできるとされています(国税庁 No.5406)。どの区分に当たるかは資産の実態で決まるため、税理士・税務署に確かめます。売り手にとっては、品目ごとの帳簿の残り(未償却残高)を一覧にしておくと、内訳と譲渡益の計算が進めやすくなります。

居抜きの店を引き継ぐ側の方へ

引き継ぐ設備が予定の営業に使えるか(能力・動作・保健所の基準)と、修理・入れ替え・改装の範囲は、工事と一緒に見積もると比べやすくなります。設備の一覧や写真があれば伝えてください。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。2つ目の画面の「依頼事項」は「居抜き物件」を選べます。

引き渡し時の注意点とトラブル予防

引き渡しの日は、一覧と現物を照らす立会い、動作の確認、鍵と書類の受け渡しを一度に行います。飲食店の営業許可は、店の営業そのものを譲る「事業譲渡」でなければ、買い手が自分で取り直すのが一般的です。

引き渡し時のチェックリスト10項目

引き渡しの10項目の表を開く
項目
確認内容
1. 譲渡対象の現物確認
確認内容契約書の一覧と現物を、売り手・買い手の立会いで照らす
2. 設備の動作確認
確認内容厨房機器・空調・給排水の通電・通水・ガスの確認
3. 鍵の引き渡し
確認内容店・倉庫・金庫などの鍵の本数と種類(貸主に返す鍵と分ける)
4. 取扱説明書・保証書
確認内容主な設備の取扱説明書・保証書・点検の記録
5. メンテナンス契約
確認内容空調・グリストラップなどの点検の契約を引き継ぐか、解約するか
6. 公共料金
確認内容電気・ガス・水道・通信の停止か名義変更、検針の数字の共有
7. 賃貸借契約
確認内容買い手と貸主の契約(または賃借権の譲渡の承諾)が済んでいるか
8. 営業許可
確認内容事業譲渡なら買い手が地位の承継を届け出る。設備だけの譲渡なら売り手は廃業届、買い手は新しく許可を申請
9. 残金決済
確認内容残金の支払いと領収書
10. 引き渡し書類への調印
確認内容引き渡しが済んだことを確かめる書面に、売り手・買い手が署名

営業許可は「事業譲渡」なら届出で引き継げる(2023年12月から)

飲食店営業は、都道府県知事(保健所)の許可を受けて営む営業とされています(食品衛生法第55条)。2023年12月13日から、飲食店営業などの事業譲渡では、譲り受けた人が新しい許可を取らずに、保健所への届出で営業者の地位を承継できるようになりました(食品衛生法第56条・厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されます」)。届出には、営業の譲渡があったことを証する書類(譲渡契約書の写しなど)を添えます(食品衛生法施行規則第67条の2)。厚生労働省は、譲渡人(譲り渡す人)に、管轄の保健所へ前もって相談するよう求めています。許可を受けた事業の一部だけを譲る場合などは、この手続きの対象外となり、新しい申請が要ることがあるとされています。

一方、内装と設備だけを造作譲渡し、買い手が自分の店を始める居抜きでは、売り手が廃業届を出し、買い手が新しく許可を申請するのが一般的です(杉並区の「廃業届」の案内では、営業者が変わる場合は廃業届に加えて新たな許可の申請、事業を譲渡した場合は地位承継届)。どちらに当たるかと必要な書類は、管轄の保健所に確かめます。許可の全体は店舗の許認可・行政手続きガイドを参照してください。

引き渡し時のトラブル予防

引き渡しのトラブルと予防策の表を開く
起こりうること
予防策
設備の動作不良が見つかる
予防策引き渡しの前に、立会いで動作を確かめ、写真や動画で記録する
譲渡対象の数が合わない
予防策契約書の一覧と現物を1点ずつ照らし、写真を添える
清掃の状態の認識が違う
予防策引き渡しのときの清掃の水準を契約書に書く
残した物の扱いでもめる
予防策譲渡対象でない物は、引き渡しの前に売り手が撤去する
公共料金の未払い
予防策引き渡しの直前の検針の数字を、売り手・買い手で共有する
知っていた不具合を後で言われる
予防策知っている不具合は一覧に書いて渡す(民法第572条)

引き渡しの後の届出と解約の連絡

主な届出は、保健所への営業許可の廃業届(食品衛生法施行規則第71条の2。期限と方法は保健所ごと)、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」(廃業した年分の確定申告期限まで)と、消費税の課税事業者の「事業廃止届出書」(速やかに)です。水道・電気・ガスは停止か名義変更を申し込みます(例:東京都水道局は引越しの手続きを3〜4日前までに)。

届出の窓口・内容・期限の例の表を開く
窓口
何をするか
期限・方法の例
保健所
何をするか営業許可の廃業届(営業許可書を持っていく)。事業譲渡で買い手が地位を承継するなら、売り手の廃業届は要らない
期限・方法の例期限と方法は保健所ごと(例:埼玉県の朝霞保健所は廃業の後にメールなどでも受け付け)
税務署(個人)
何をするか個人事業の開業・廃業等届出書。青色申告なら取りやめの届出
期限・方法の例廃業した年分の確定申告期限まで(国税庁)
税務署(消費税の課税事業者)
何をするか事業廃止届出書(インボイスの登録もこの届出で取りやめる)
期限・方法の例速やかに(国税庁 No.6603)
水道局
何をするか使用の中止か名義変更
期限・方法の例例:東京都水道局は引越しの手続きを3〜4日前までに。中止の届けが無いと、使わなくても基本料金がかかる(渋谷営業所の案内・令和7年2月)
電気・ガス
何をするか使用の停止か名義変更
期限・方法の例契約先の案内で確かめる
警察署・消防署・年金事務所など
何をするか深夜の酒類の提供の届出、防火管理者、従業員の社会保険などがある店は、それぞれの廃止・変更の届出
期限・方法の例それぞれの窓口で確かめる

移転して同じ名義で営業を続ける場合も、移転先の店の営業許可は別に要ります(杉並区の案内:お店を移転した場合は、廃業届に加えて新たな許可の申請)。閉店の手続きの全体は店舗の閉店・撤退ガイドにまとめています。

引き渡し後の保険対応

引き渡しの後の店の運営は買い手の責任になります。売り手の保険(火災・施設の賠償など)を解約する日と、買い手の保険が始まる日の間に空白ができないよう、引き渡しの日とそろえます。保険の切り替えは店舗の保険・リスク管理ガイドでも扱っています。

💡 引き渡し当日のタイムライン例

当日の順番の例は、①立会いで一覧と現物を照らす、②設備の動作を確かめる、③書類に署名し、残金を決済する、④鍵を渡す、です。動作の確認は時間がかかるため先に行い、売り手・買い手・仲介会社で進め方を前もって共有しておきます。

造作譲渡 vs 原状回復──意思決定フロー

原状回復の見積もりを先に取り、「省ける工事費」と「契約が終わる日が延びた分の家賃」を比べて、原状回復に切り替える期限を決めます。期限までに貸主の承諾と買い手がそろわなければ、原状回復で退去します。

造作譲渡を選ぶべき条件

造作譲渡を選ぶ5つの条件を開く
条件
判断の目安
1. 立地
判断の目安人通りや駅からの近さなど、次の店が集客しやすい
2. 設備
判断の目安厨房・空調・給排水が動き、点検の記録がある
3. 期限
判断の目安切り替えの期限まで、買い手を探す時間がある
4. 貸主
判断の目安居抜きでの入れ替えに前向き
5. 賃料
判断の目安周りの物件と比べて高すぎない

原状回復を選ぶべき条件

原状回復を選ぶ5つの条件を開く
条件
判断の目安
1. 立地
判断の目安次の店が集客しにくい立地
2. 設備
判断の目安古く、修理や入れ替えが多い
3. 期限
判断の目安切り替えの期限が近く、買い手を探す時間が無い
4. 貸主
判断の目安居抜きを認めない特約があり、承諾の見込みが無い
5. 業態
判断の目安特殊な厨房・客席で、次の業態が限られる

原状回復の費用の目安と、切り替えの期限

民法の原状回復は、借りた後に生じた損傷(通常の使用による傷みと経年変化は除く)を元に戻す義務で(民法第621条)、借主が付けた物を取り外す義務(分離できない物などを除く)も定めています(第622条・第599条)。店舗では、スケルトンに戻す条件を契約書の特約で決めていることが多く、居抜きで入った店でも、前の借主から買った内装を含めて退去時のスケルトンの費用は借主の負担になるとされます(日本政策金融公庫『起業家応援マガジン』VOL.79)。

区分
坪単価の目安
20坪の計算
一般的なスケルトン戻し(撤去が中心)
坪単価の目安坪約3万〜5万円
20坪の計算約60万〜100万円
軽飲食
坪単価の目安坪約5万円前後
20坪の計算約100万円前後
重飲食(設備・配管・ダクトが多い)
坪単価の目安坪10万円前後
20坪の計算約200万円前後

出典:貝沼建設(名古屋市)(2026年2月・税区分の明示なし。軽飲食・重飲食の総額は「条件により変動」)。当サイトの費用の記事「店舗の原状回復費用と進め方」と同じ帯です。20坪の計算は坪単価×20で、見積もりではありません。

待てる月数の目安は「省ける退去工事の費用÷月額の家賃」です(譲渡金額・仲介の費用・それでも要る工事を除く)。退去工事の見積もりが月額の家賃の6倍なら、6か月が目安です。工期については、名古屋ナカテックのコラムが、名古屋市内の20坪のカフェのスケルトン戻し(厨房機器・給排水・ダクトの撤去を含む)の例として、約1週間(うち夜間作業2日)・総額80万円を挙げています。工事が終わっても、貸主の検査・手直し・鍵の返却が残るため、明け渡しの日に詰め込まないようにします。

意思決定フローの5ステップ

1現状評価立地・設備・契約の条件を整理
2貸主打診造作譲渡での退去の可否と条件を確認
3仲介の見立て希望の譲渡金額と、決まるまでの見込みを聞く
4原状回復の見積もり退去工事の費用と工期を見積もる
5総コスト比較計算の式で比べ、切り替えの期限を決める

「ハイブリッド型」の選択肢

造作譲渡を本命にしつつ、原状回復の準備も並べて進める方法です。退去工事の会社を決める時期(施工会社の段取りの例では3か月前)を切り替えの期限にし、それまでに買い手と貸主の承諾がそろわなければ原状回復に切り替えます。見積もりを先に取っておけば、切り替えたときの段取りが短く済みます。

多店舗チェーンの撤退戦略との整合

いくつも店を持つ会社は、店ごとに造作譲渡できる見込みを先に評価しておくと、退去の費用と時期を計画しやすくなります。多店舗の費用の管理は飲食チェーンの内装コスト管理ガイドを参照してください。

📌 撤退判断は「数値ベース」で機械化する

撤退の判断は気持ちに左右されがちです。「営業利益率が○%以下の月が△か月続いたら」「賃貸借の残りの期間が□か月になったら」など、数字の基準を先に決めておくと判断が遅れにくくなります。判断の後は、立地・設備・契約の条件で、居抜きか原状回復かを決めます。業態の転換も含めた選択肢は店舗の業態転換ガイドで整理しています。

原状回復の見積もりと比べて決める

貸主が求める返し方(スケルトンか、一部を残すか)で退去工事を見積もると、造作譲渡で退去する場合との差と、切り替えの期限が具体的になります。所在地・広さ・退去日と、契約書の原状回復の条項を伝えてください。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。ご紹介するのは工事の会社です。2つ目の画面の「依頼事項」に退去工事の選択肢は無いため、近いもの(今の店の工事ならリニューアル)を選び、「依頼内容・希望詳細」に「退去工事(原状回復)」と、貸主が求める返し方(スケルトンか、一部を残すか)を書いてください。

業態で変わる、買い手が確かめる設備(譲渡金額の材料)

業態ごとの決まった倍率は無く、譲渡金額の交渉は「次の店がそのまま使える設備がどれだけあるか」で動きます。買い手は、排気(ダクト)、給排水とグリストラップ、電気とガスの容量、空調の状態を特に確かめます。

業態別の譲渡可能性の傾向

業態ごとに買い手が見る点の表を開く
業態
譲渡で引き継がれやすい物
買い手が気にする点
カフェ・喫茶
譲渡で引き継がれやすい物給排水・空調・カウンター
買い手が気にする点コーヒーマシンなどの電気の容量
居酒屋・バー
譲渡で引き継がれやすい物厨房・カウンター・冷蔵の設備
買い手が気にする点排気、音、深夜の営業の条件
レストラン・ダイニング
譲渡で引き継がれやすい物厨房・客席
買い手が気にする点予定の料理に合わせた厨房の作り替え
ラーメン・中華
譲渡で引き継がれやすい物火力・排気・給排水・グリストラップ
買い手が気にする点ダクトの汚れ、床の防水、ガスの容量
カウンター業態(寿司・割烹)
譲渡で引き継がれやすい物カウンター・冷蔵の設備
買い手が気にする点特殊な造作は次の業態が限られる
焼肉・鉄板焼き
譲渡で引き継がれやすい物各席の排気の設備
買い手が気にする点ほかの業態には排気が過剰で、撤去の費用が大きい

譲渡金額が上振れしやすい条件

  • 人通りが多い、駅から近い、1階の路面の店。
  • 設備が新しく、点検や清掃の記録がそろっている。
  • 営業中で、内見で設備が動くところを見せられる。
  • 客席の数や厨房の能力が、次の業態に合わせやすい。

譲渡金額が下振れしやすい条件

  • 駅から遠い、地下や上の階で、集客がしにくい。
  • 設備が古い、修理の記録が多い、清掃が行き届いていない。
  • 賃料が周りの物件と比べて高い。
  • 特殊な形の区画や業態で、次の店が限られる。
  • 閉店してから時間がたち、設備の動作を見せられない。

営業中譲渡 vs 閉店後譲渡

営業中なら、買い手は設備が動くところと店の使い方を確かめられ、売り手も閉店の後の家賃を払わずに済みます。閉店した後は、営業しない月の家賃がかかり続けます(月額の家賃1か月分が、売上のないまま出ていきます)。閉店の日は、買い手が決まりそうか、切り替えの期限はいつかを見ながら決めます。

居抜きで店を始めたい人は少なくありません。当サイトに届いた相談(全業種・2026年4〜9月)では、居抜き物件の相談が約35%でした。

出典:当サイトの提案依頼の一覧(2026年10月7日時点の控え)のうち、送信日が2026年4〜9月の依頼を、相談の入力の「相談の種類」の欄で数えた割合です(件数は出していません。四捨五入。氏名・連絡先・本文は使っていません)。

💡 譲渡準備は「営業中」のうちに完結させる

閉店してから譲り先を探し始めると、営業しない月の家賃と、設備を見せにくいことが重なり、原状回復に切り替えざるを得なくなることがあります。撤退を決めたら、営業しているうちに準備を始めます。

造作譲渡で想定される失敗パターン6つと対策

ここまでの内容から、起こりやすい典型パターンを6つ想定しました。特定の店の出来事ではありません。

失敗1:退去予告ギリギリで動き出す

想定されるケース:解約の期限が近づいてから居抜きを考え始め、期限までに買い手が決まらず、原状回復で退去することになる。

対策:撤退を決めたら、解約の通知の前に契約書の確認・貸主への相談・退去工事の見積もりを済ませ、切り替えの期限を決める。

失敗2:貸主の承諾を取らずに譲渡交渉を進める

想定されるケース:買い手との条件が固まってから貸主に話し、承諾が得られず白紙に戻る。買い手との信頼も損なう。

対策:最初に貸主の意向と条件を聞き、承諾は書面でもらう。承諾が得られない場合に契約を解除できる条項を入れる。

失敗3:譲渡金額の希望が高すぎて買い手が決まらない

想定されるケース:帳簿の残りや作ったときの費用を基準に希望の譲渡金額を決め、買い手が集まらないまま期限が近づく。

対策:下限(0円でも省ける退去工事の費用)と期限から、下げてよい幅を先に決める。交渉の前に、仲介会社の見立ても聞く。

失敗4:契約書が不十分で引き渡し後トラブル

想定されるケース:譲渡対象の一覧があいまいで、リースの機器が含まれていたり、引き渡しの後に不具合の扱いでもめたりする。

対策:一覧に持ち主・状態・知っている不具合を書き、写真を添える。契約不適合責任の範囲と期間を契約書に書く。

失敗5:税務処理を考慮せず譲渡金額を決定

想定されるケース:税込か税抜かを決めないまま譲渡金額を決め、インボイスの有無で買い手の負担が変わって話がこじれる。

対策:譲渡金額を決める前に、消費税・インボイス・所得の扱いを税理士に確かめ、契約書に書く。

失敗6:引き渡し時の現物確認を省略

想定されるケース:立会いを省き、後になって「一覧にあった物が無い」「動かない」と言われ、修理の費用でもめる。

対策:引き渡しの日に、売り手・買い手(必要なら仲介会社)の立会いで現物と動作を確かめ、書面に署名する。

⚠️ 失敗パターンに共通する根本要因

どれも、造作譲渡を「物の売り買い」だけと考えて準備が遅れることから起こります。造作譲渡は、貸主・買い手・専門家との調整、税、契約書が重なる手続きです。解約の通知の前から計画的に準備し、必要なところで専門家に確かめます。店の運営の失敗を避ける考え方は店舗運営の失敗回避ガイドもあわせて参照してください。

次の店へ設備を移す・入れ替える方へ

旧店から持っていく機器の取り外し・運搬・再設置と、次の店の内装を、工程を並べて見積もると、二重の家賃の期間を短くしやすくなります。持っていく機器の一覧と、旧店の退去日を伝えてください。

押すと相談の入力(無料・会員登録不要)に進みます。一度の入力で、事務局が候補の内装会社へ1社ずつ対応できるかを確かめ、対応できる会社をご紹介します。紹介先と直接相談・見積もりをして、提案を比べて自由に選べます。2つ目の画面の「依頼事項」は次の店の物件に合わせて選び、持っていく機器を「依頼内容・希望詳細」に書いてください。

よくある質問(FAQ)

造作譲渡の譲渡金額はどれくらいが目安ですか?

決まった目安はなく、売り手の下限と買い手の上限のあいだで交渉して決まります。下限の物差しは0円で造作譲渡しても省ける退去工事の費用(20坪の軽飲食なら、名古屋市の施工会社の公表単価×20で約100万円前後)、上限の物差しは買い手が居抜きで浮かせる工事費です。相場の見方は当サイトの「居抜き物件の造作譲渡契約」にまとめています。

退去予告から実際の譲渡完了までどれくらい期間が必要ですか?

決まった期間はなく、造作譲渡の期間は、契約の解約予告の期間と、買い手(譲渡先)が決まるまでの期間で決まります。解約の通知の前に貸主への相談と退去工事の見積もりを済ませ、買い手探しを始めます。買い手が決まらないまま退去の3か月前になれば、退去工事の会社を決める時期という段取りの例があります。

貸主が造作譲渡を認めてくれません。どうすればいいですか?

まず契約書で原状回復と造作の扱いの条項を確かめます。賃借権を譲渡するには貸主の承諾が要ると民法は定めています(第612条)。買い手の信用の資料を示し、賃料の見直しの協議に応じる姿勢を見せます。それでも承諾が無ければ、契約どおりの原状回復で退去します。解釈に争いがあれば弁護士に相談します。

譲渡先(買い手)はどう探せばいいですか?

譲渡先は、居抜きを扱う仲介会社、地域の不動産会社、取引先や同業の知人、自店のSNSなどで探せ、いくつかを並べて使えます。仲介会社を使うなら、手数料の決め方(料率・計算の元・支払う時期)と、店名を伏せて募集できるかを書面で確かめます。営業中に内見を受けると、設備が動くところを見せられます。

譲渡金額の内訳はどう決めるべきですか?

厨房機器・家具・内装の造作・空調や給排水などに分け、品目ごとに譲渡金額を割り振ります。買い手は区分ごとの耐用年数で償却するため、内訳が買い手の税に関わります(電気冷蔵庫・ガス機器は6年、厨房設備を一体とみれば飲食店業用設備の8年など)。双方の税理士に確かめて契約書に書きます。

造作譲渡で出た譲渡益には税金がかかりますか?

かかることがあります。個人が事業に使っていた機械器具などを売った利益は原則として譲渡所得(総合課税)で、取得価額10万円未満の資産や一括償却資産などは事業所得などになるとされています(国税庁 No.3105)。会社なら譲渡金額と帳簿価額の差が所得の計算に入り、課税事業者なら譲渡金額に消費税がかかります。建物附属設備・構築物にあたる物の売却は分離課税になる場合があり、どちらにあたるかは税理士に確かめます(租税特別措置法第31条・第32条)。

飲食店営業許可は買い手に引継ぎできますか?

店の営業そのものを譲る「事業譲渡」なら、2023年12月13日から、譲り受けた人が保健所への届出で営業者の地位を承継できるようになりました(食品衛生法第56条)。内装と設備だけを譲渡する居抜きでは、売り手が廃業届を出し、買い手が新しく許可を取るのが一般的です。どちらに当たるかは保健所に確かめます。

引き渡し後に設備の不具合が発覚した場合、誰が修繕費を負担しますか?

造作譲渡契約の決め方によります。民法では、契約に合わない物を渡したとき買い手は修理などを求められ(第562条)、不適合を知ってから1年以内に売り手へ知らせるとされています(第566条)。「現状のまま」と決めても、知りながら告げなかった不具合は責任を免れないため(第572条)、知っている不具合は一覧に書いて渡します。事業者どうしの売買では、商法第526条で知らせる期間が短くなる場合があります。

仲介手数料はどれくらいかかりますか?

決まった率はなく、仲介会社ごとに違います。宅地建物取引業法の報酬の上限(第46条)は宅地・建物の売買・交換・貸借の代理・媒介についての決まりで、譲渡金額にかかる手数料をどう決めるかは会社によります。料率と計算の元(譲渡金額か賃料か)、支払う時期、成立しなかったときの費用を、契約の前に書面で確かめます。

営業中での譲渡と閉店後の譲渡、どちらが有利ですか?

営業中に造作譲渡の内見を受ければ、買い手は設備が動くところを確かめられ、閉店の後の家賃もかかりません。閉店した後は、営業しない月の家賃がかかり続けます(月額の家賃1か月分が、売上のないまま出ていきます)。閉店の日は、買い手が決まりそうか、原状回復に切り替える期限はいつかを見ながら決めます。

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マッチングサイトは造作譲渡の譲渡金額にどう影響しますか?

居抜きの掲載サイトで募集の場が広がると、買い手の候補が増えることがあります。ただし譲渡金額は設備の状態・立地・賃料・期限で決まり、場を広げただけで上がるとは限りません。掲載の費用、成立したときの手数料、店名や写真をどこまで出すか(従業員や取引先に知られる時期)を確かめてから使います。

造作譲渡を成立させるか、原状回復で退去するか、どう判断すべきですか?

原状回復の見積もりを先に取り、「省ける退去工事の費用+譲渡金額−仲介などの費用−それでも要る工事−契約が終わる日が延びた分の家賃」で比べます。「省ける退去工事の費用÷月額の家賃」で、買い手を待てる月数の目安が出ます(譲渡金額などを除く)。

造作譲渡(居抜き)で売れない物は何ですか?

リース契約の機器(持ち主はリース会社)、支払い中で所有権が売主や信販会社に残る機器、入居時からある貸主の設備やビル側の工事で付けた設備です。譲渡対象の一覧から外し、リース会社・貸主に扱いを確かめます。居抜きで入った店は、前の借主から買った物かどうかも契約書で確かめます。

リースの厨房機器が残っている場合はどうすればいいですか?

譲渡対象には入れず、リース会社に、残りのリース料の精算と返却、買い手への引き継ぎ、移転先での使い続けのどれができるかを確かめます。リース契約は契約に定める場合を除き途中で解除できず、返すときは損傷を直して返すのが参考の条項です(リース事業協会)。引き継ぎの可否はリース会社が決めるため、買い手との条件交渉の前に話を通します。

居抜きの厨房機器の耐用年数は何年ですか?

法定耐用年数は品目ごとに決まり、電気冷蔵庫・ガス機器や冷暖房用の機器は6年です。厨房の設備を一体とみる場合は、機械及び装置の「飲食店業用設備」で8年とされています。中古で引き継いだ機器は、簡便法(法定耐用年数−過ぎた年数+過ぎた年数×20%など)で短い年数にできる場合があります(国税庁 No.5404)。

居抜き譲渡で、売り手にはどんな費用がかかりますか?

仲介会社の手数料、契約書を専門家に確かめてもらう費用、清掃や不要品の撤去、貸主が求める部分の撤去・補修、買い手を待って契約が終わる日が延びた分の家賃、税(譲渡益と消費税)が主なものです。費用の額は会社と契約で決まるため、見積もりと書面で確かめます。比べる相手は、居抜きにしない場合の退去工事の費用です。

造作譲渡の代金に消費税はかかりますか?インボイスは必要ですか?

売り手が課税事業者なら、事業に使っていた設備などの売却は消費税の対象とされます(消費税法基本通達5-1-7)。買い手が仕入税額控除を受けるには、登録した売り手の適格請求書が要り、登録の無い売り手からの購入は経過措置で一定割合だけ控除できます(課税仕入れの日が令和8年10月1日〜令和10年9月30日なら70%。令和13年9月30日まで段階的に下がる)。税込か税抜かを契約書に書きます。

敷金・保証金はいつ戻りますか?

民法では、賃貸借が終わって物件を明け渡したとき、未払いの賃料などを差し引いた残りが返されるのが原則です(第622条の2)。賃借権を次の借主に譲渡する場合も敷金は売り手に返る扱いで、買い手には自動では引き継がれません。償却(例:解約時に1か月分)の定めがあれば減るため、戻る時期と金額を契約書で確かめます。

閉店するとき、保健所や税務署には何を届け出ますか?

保健所には営業許可の廃業届を出します(期限と方法は保健所ごと)。個人事業なら税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業した年分の確定申告期限までに出し、消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」を速やかに出します(国税庁)。水道・電気・ガスの停止、従業員の社会保険の手続きもあります。

造作買取請求権で貸主に造作を買い取ってもらえますか?

借地借家法は、貸主の同意を得て付けた造作を、契約が期間の満了または解約の申入れで終わるときに、時価で買い取るよう貸主に求められると定めています(第33条)。ただし、この権利を使わない特約は有効と考えられ(第37条の強行規定に入っていない)、店舗の契約には排除の特約が入っていることが多いとされます。まず契約書の特約を確かめます。

⚠️ ご注意

この記事の金額・期間・税の扱いは、法令・公的な資料と施工会社の公表例から整理した目安で、地域・物件・契約・時期で変わります。造作譲渡の判断・契約・税の処理は、貸主・税理士・弁護士・保健所などに確かめてください。この記事は法務・税務の助言ではありません。

造作譲渡で退去する準備は、契約書と退去日から始める

飲食店の造作譲渡は、原状回復の工事を減らし、譲渡金額を受け取れることがある出口です。一方で、貸主の承諾・期限までの買い手・書面の3つがそろわなければ成り立ちません。解約の通知の前に契約書と貸主の意向を確かめ、退去工事の見積もりから切り替えの期限を決め、譲渡対象から売れない物を分けてから募集を始めます。税と届出は、税理士・税務署・保健所に確かめながら進めます。

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