日本政策金融公庫の創業計画書|店舗内装費の書き方と見積書類【2026年版】

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日本政策金融公庫の創業融資を通すには、創業計画書「設備資金」欄に書く内装費の金額に説得力ある根拠が必要です。1社見積もりや業界相場から大きく乖離した金額では審査が長引いたり、減額・否決されます。3社以上の相見積もりを取って、見積書を計画書に添付するのが審査を通すための実務的な正解です。

本ガイドでは、公庫の審査担当者が内装費欄でチェックしている3つのポイント、業態別の内装費レンジ、見積書のフォーマット要件、相見積もりの取り方を、融資申請まさにこれからの方向けに整理しました。

2024年度の制度改正により、新規開業資金の自己資金要件は撤廃されました。ただし実務上は依然「自己資金の3倍が借入額の目安」とされており、内装費を含む設備資金の根拠書類の重要性は変わっていません。本ガイドは2026年5月時点の最新運用に基づいて整理しています。

目次

  1. 公庫の創業計画書で内装費が見られる3つの審査ポイント
  2. 業態別・規模別の内装費レンジ(公庫が認識する相場)
  3. 1社見積もりで融資が通らない典型パターン5
  4. 公庫推奨「3社相見積もり」が根拠資料になる仕組み
  5. 創業計画書に添付する内装費見積書の必須要件
  6. 業態別の内装費根拠資料の組み立て方
  7. 融資審査と業者選定を並行させるスケジュール
  8. 信用保証協会・銀行融資との違い
  9. よくある質問

公庫の創業計画書で内装費が見られる3つの審査ポイント

日本政策金融公庫の創業融資では、創業計画書の「必要な資金と調達方法」の項目に設備資金として内装工事費を記入します。審査担当者がここで見ているのは金額そのものよりも、その金額がどう算定されたかです。具体的には次の3点が論点になります。

業界相場との整合性

公庫の審査担当者は、業態ごとの内装費の一般的なレンジ(坪単価・総額)を把握しています。書かれた金額が相場から大きく外れていると、計画の現実性が疑われ、面談で具体的な質問を受けます。

金額の根拠書類の有無

「内装工事費 320万円」と書くだけでは不十分で、その金額がどの業者の、どんな工事内容の見積書から導かれたかを示す資料の添付が事実上求められます。複数業者の見積書があれば、適正価格を比較検討した跡として強い根拠になります。

自己資金と借入額のバランス

内装費を含めた設備資金の総額と、自己資金・借入希望額のバランスが審査の最後の論点です。自己資金が不足している中で内装費だけ大きいと、計画の堅実性が疑われます。

この3点を満たすために最も実効的な方法が、創業計画書を書く前に複数社から内装の見積もりを取得し、その見積書を添付資料として準備することです。

業態別・規模別の内装費レンジ(公庫が認識する相場)

業態と規模が決まると、おおまかな内装費のレンジが見えてきます。下表は業態別・坪単価の一般的な水準で、公庫の審査担当者もこの程度のレンジを参照していると考えられます。

カフェ・喫茶

居抜き坪単価20〜40万円
スケルトン坪単価50〜80万円
10坪総額200〜800万円
20坪総額400〜1,600万円

飲食店(一般)

居抜き坪単価30〜50万円
スケルトン坪単価60〜100万円
10坪総額300〜1,000万円
20坪総額600〜2,000万円

ラーメン・定食

居抜き坪単価25〜45万円
スケルトン坪単価55〜85万円
10坪総額250〜850万円
20坪総額500〜1,700万円

美容室

居抜き坪単価20〜35万円
スケルトン坪単価40〜70万円
10坪総額200〜700万円
20坪総額400〜1,400万円

クリニック

居抜き坪単価40〜60万円
スケルトン坪単価70〜120万円
10坪総額400〜1,200万円
20坪総額800〜2,400万円

物販店・アパレル

居抜き坪単価15〜30万円
スケルトン坪単価30〜60万円
10坪総額150〜600万円
20坪総額300〜1,200万円

レンジから外れた金額を書く場合は理由が必要

このレンジの下限を大きく下回る場合は「居抜きで内装を活かす」「自分で施工する範囲を含む」など合理的な説明が、上限を超える場合は「特殊厨房設備」「設計デザインへの投資」「広い坪数」などの説明が、創業計画書または面談で必要になります。なお、内装費を含む見積書の読み方の詳細は店舗内装の見積書の見方完全ガイド、内装費を抑える方向の検討は店舗内装を安く抑える方法完全ガイドを参照してください。

公庫の実態調査データ(参考)

日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業時の自己資金平均は279万円、金融機関等からの借入平均は827万円で、借入額は自己資金の約3倍が実態です。本ガイドの業態別レンジは、この調達総額のうち内装費の一般的な配分を業界実務から整理したものです。

1社見積もりで融資が通らない典型パターン5

創業計画書を書く段階で1社の見積もりしか取らずに進めた場合、審査でつまずく典型パターンがあります。

パターン1:金額が相場の上限を超えている

1社目の見積もりが相対的に高めだった場合、これを根拠に書くと審査担当者から「他社にも当たったか」「内訳の妥当性は」と質問されます。他社見積もりが手元になければ反論できず、減額査定または否決のリスクが高まります。

パターン2:見積書の内訳が「内装工事一式」だけ

金額だけ書かれた一式表記の見積書は審査資料として弱く、解体・電気・水道・空調・造作・什器などの内訳が分かる見積書が必要です。1社見積もりだと、業者が出してきた書式に従うしかなく、内訳が不十分なケースが頻発します。

パターン3:追加費用の発生リスクが高い

1社見積もりで進めると、契約後に「想定外の工事が必要」と言われて費用が上がるリスクが高くなります。融資実行後の追加費用は自己資金から出すしかないため、運転資金がショートする原因になります。

パターン4:仕様の妥当性が比較できない

見積書の内容(厨房機器のグレード、什器の品質、設備の容量)が業界水準として妥当かは、複数社の見積もりを並べて初めて見えます。1社だけでは過剰仕様か不足仕様かを判断する材料がありません。

パターン5:審査担当者の質問に即答できない

面談で「なぜこの業者に決めたのか」「他にどんな業者を検討したか」と聞かれた際、明確に答えられないと事業計画の検討の深さが疑われます。3社比較していれば「3社の中で内訳の透明性と保証内容が最も良かったため」など合理的に説明できます。

1社見積もりで進めた場合に発生しやすい追加費用の典型パターンと予防策は店舗内装の追加費用トラブル徹底ガイドに詳しくまとめています。

自己資金3倍ルールと内装費の関係

公庫の創業融資では、実務上「借入額は自己資金の3倍程度が目安」とされています。これは公的に定められた基準ではなく、公庫の新規開業実態調査が示す実勢値(自己資金平均279万円・借入平均827万円)から導かれる経験則です。内装費がこのバランスを大きく崩すと、審査でつまずく原因になります。

業態別に内装費と必要な自己資金の目安を整理すると、必要な準備の規模が見えてきます。

カフェ(10〜15坪)

内装費目安:300〜500万円

必要な自己資金目安:100〜170万円

借入希望額(公庫):300〜500万円

1,000万円以内に収まりやすく審査も比較的スムーズ。

飲食店(15〜20坪)

内装費目安:500〜1,000万円

必要な自己資金目安:170〜330万円

借入希望額(公庫):500〜1,000万円

厨房設備込みで1,000万円を超える場合は本部審査になる可能性。

美容室(10〜15坪)

内装費目安:300〜600万円

必要な自己資金目安:100〜200万円

借入希望額(公庫):300〜600万円

給排水工事の有無で内装費が大きく変動。

クリニック(20坪以上)

内装費目安:1,000〜2,400万円

必要な自己資金目安:330〜800万円

借入希望額(公庫):1,000〜2,400万円

1,000万円超で本部審査、長期化に注意。

内装費を低く抑えるか、自己資金を増やすか

業態別レンジの上限に近い見積もりになった場合、選択肢は2つ。居抜き活用や仕様調整で内装費を抑えるか、自己資金を増やして3倍ラインに収めるか。前者を選ぶ場合の方針は店舗内装を安く抑える方法完全ガイドを参照してください。

1,000万円の壁と高額内装費の融資戦略

公庫の創業融資で実務上意識されているのが「1,000万円の壁」です。これは1,000万円を超える融資案件が支店長の決裁範囲を超え、本部審査の追加プロセスに入るためです。審査期間が長くなり、求められる根拠書類のレベルも上がります。

内装費が大きい業態(クリニック・大型飲食店・物販大店舗)では、創業資金総額が容易に1,000万円を超えます。ここで取れる戦略は3つあります。

戦略1:内装費を圧縮して総額1,000万以内に

居抜き物件の活用、仕様グレードの見直し、什器の中古活用などで、内装費の総額を1,000万以内に収める。支店決裁で完結するため、審査スピードと通過率の面で有利。

戦略2:内装費+運転資金で7,200万円まで設計

「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)を活用し、本部審査を前提にしっかり書類を整える。クリニック等の大型業態に向く。

戦略3:分割融資(公庫+制度融資の併用)

公庫から1,000万円以内、信用保証協会付き制度融資から不足分という分割構成。両方が「3社相見積もり」を見るので、根拠書類は共通で使える。

業態と内装費規模に応じて、どの戦略が現実的かを創業計画書を書く前に決めるのが鉄則です。書き始めてから戦略を変えると、見積もり取り直しなど大きな手戻りが発生します。

公庫推奨「3社相見積もり」が根拠資料になる仕組み

公庫を含む金融機関が創業融資の審査で暗黙に推奨しているのが「3社以上の相見積もり」を取ったうえで業者を決定する進め方です。これには明確な理由があります。

適正価格の範囲が見える

3社の見積もりを並べると、内装費の中央値が見えてきます。極端に高い/安い1社を除いた価格帯が、その物件・その業態における適正価格レンジです。

仕様の透明性が確保される

各社の見積もりを比較すると、含まれる工事範囲・除外項目・追加可能性が明確になります。「A社は厨房込みでB社は別」のような差異が見える化されます。

計画の検討の深さが伝わる

「複数社を比較検討した結果、〇〇社のこのプランを採用」と説明できると、創業者として丁寧に進めている印象を審査担当者に与えます。

追加費用リスクが低減される

相見積もりで仕様が明確化された業者を選べば、契約後の「想定外工事」が大幅に減ります。融資実行後の資金繰り計画が安定します。

業者タイプ別の特徴や悪徳業者の見分け方など、業者選定の具体的な進め方は内装業者の比較・選び方完全ガイド店舗内装業者の選び方完全ガイドを参照してください。

創業計画書に添付する内装費見積書の必須要件

融資審査を通すために添付する内装費見積書は、いくつかの要件を満たす必要があります。チェックリストとして整理します。

  • 業者名・所在地・連絡先が明記されている
  • 見積書の発行日が3ヶ月以内
  • 工事内容の内訳が項目別に分かれている(解体・造作・電気・水道・空調・厨房・什器・諸経費)
  • 各項目の数量・単価・金額が記載されている
  • 合計金額と税込・税抜の区別が明確
  • 工期が記載されている(融資実行時期の目安となる)
  • 支払い条件が記載されている(着手金・中間金・完成時など)
  • 一式」表記が極力少ない

「一式」表記は審査担当者が嫌う

見積書に「内装工事一式 320万円」のような一式表記が多いと、何の工事に対する金額か分からず、追加費用の温床になります。審査担当者も警戒します。最低でも工事カテゴリ別に金額を分けてもらいましょう。

見積書を契約書に落とし込む際の必須条項・修正交渉のポイントは店舗内装工事の契約書チェックガイドを参照してください。

業態別の内装費根拠資料の組み立て方

業態によって、内装費の根拠として求められる資料の重点が異なります。

飲食店の場合

飲食店は厨房機器費用と内装造作費用を分けて把握する必要があります。厨房機器は新品/中古/リースで金額が大きく変動し、業者によっては内装工事費に含めず別見積もりを出します。創業計画書では:

内装造作費解体・造作・電気・水道・空調
厨房設備費厨房機器(コンロ・冷蔵庫・シンク・換気扇)・グリストラップ
什器・備品テーブル・椅子・食器・調理器具

を分けて記載するのが正解です。

美容室・サロンの場合

美容室は給排水工事とセット面(シャンプー台)の費用が内装費の中心になります。物件の給排水位置によって工事費が大きく変動するため、見積書には「給排水経路の延長◯m」など具体的な数値が入っている必要があります。

クリニックの場合

クリニックは診療科目によって設備要件が大きく異なるため、内装業者だけでなく医療機器ディーラーとの連携が必要です。レントゲン室・処置室・診察室の区画ごとに見積もりを出してもらうのが標準です。

物販・小売店の場合

物販店は什器・棚・照明・サインが主要な投資対象です。シンプルな造作なら坪単価は低めですが、ブランディングを重視するアパレル等は単価が上がります。サイン(看板)は別工事になることが多く、見積もりの取り漏れに注意します。

融資審査と業者選定を並行させるスケジュール

融資申請から融資実行まで、また業者選定から着工までを並行で進めると、開業日の逆算スケジュールが組みやすくなります。

開業希望日の6ヶ月前

事業計画の骨子作成、物件探し開始、複数業者へ概算見積依頼。

5ヶ月前

物件契約、本見積もり依頼(3社以上)、創業計画書ドラフト作成。

4ヶ月前

業者選定、創業計画書完成、公庫面談予約。

3ヶ月前

公庫面談、融資申込み、業者と工事契約(融資内定後)。

2ヶ月前

融資実行、着手金支払い、工事着工。

1ヶ月前

工事完了、保健所等の許認可申請、開業準備。

業者選定が遅れると融資審査も遅れる

業者が決まらないと正確な見積書が揃わず、創業計画書の内装費欄が確定しません。結果として融資申込みが遅れ、開業日も後ろにずれます。物件契約後すぐに複数業者へ見積依頼するのが、スケジュールを守る最大のコツです。

融資・物件・設計・施工・許認可を含む店舗開業の全体工程は店舗開業ロードマップ完全ガイドに整理しています。

信用保証協会・銀行融資との違い

創業期の資金調達は公庫だけでなく、信用保証協会付き融資(制度融資)や民間銀行からのプロパー融資も選択肢になります。内装費の根拠資料の要求水準は、いずれも共通しています。

日本政策金融公庫

根拠資料要求:3社相見積もり推奨、内訳明確な見積書

審査の特徴:面談で計画の妥当性を細かく質問

信用保証協会付き融資

根拠資料要求:公庫と同等、自治体によって書類追加

審査の特徴:金融機関と保証協会の二段階審査

民間銀行プロパー

根拠資料要求:3社見積もり、信用調査も実施

審査の特徴:担保・保証人の検討が中心

いずれのルートでも「複数社の見積もりを比較して妥当性を確認した」という実績が共通の前提です。創業計画書の品質を上げるには、まず相見積もりを揃えることから始まります。

よくある質問

Q:内装業者から「相見積もりを取ると話を進めない」と言われましたが普通ですか?

金融機関の創業融資審査では複数社見積もりが事実上の前提です。相見積もりを断る業者は、金融機関対応に慣れていない可能性があり、慎重に検討するのが賢明です。

Q:1社で工事を頼みたいのですが、見積もりだけ3社取るのはマナー違反では?

創業融資の世界では、3社見積もりを取ること自体が業界慣行として認知されています。各業者にも「融資審査用に相見積もりを取っている」と伝えれば理解されます。

Q:見積もりが揃うまで創業計画書の提出を待つべきですか?

そのほうが審査がスムーズです。概算の段階で計画書を提出して、後から見積書を追加することも可能ですが、確定した見積書がある状態のほうが審査担当者の質問数が減ります。

Q:内装費を低めに見積もっておいた方が融資が通りやすいですか?

業界相場から乖離するほど低くしても、面談で「実際にはもっとかかる」と指摘されるとかえって心証が悪くなります。正確な金額を、根拠を持って提示するのが審査を通す王道です。

Q:見積書は内装業者からもらった原本をそのまま添付すれば良いですか?

原本またはコピーで問題ありません。複数社の見積書を一括で揃えて、創業計画書に添付資料として提出すれば、審査担当者の比較作業がスムーズです。

Q:相見積もりを取るにはどうすれば効率的ですか?

業態と物件情報・希望条件を一度入力すれば、複数の内装会社から見積もりが届くマッチングサービスを使うと、業者探し・連絡・条件提示の手間が大幅に省けます。

まとめ:複数社の見積もりを揃えて融資審査を確実に通す

店舗内装費の融資申請で審査を通す鍵は、業界相場と整合した金額を、複数社の見積書という根拠資料で裏付けることに尽きます。1社見積もりで進めると追加費用リスク・仕様不透明・面談で苦しむなど、複数の問題が一度に発生します。

創業期の業者選定は、本業の事業設計と並行する負担の大きい作業です。複数社から無料で見積もりを受け取れる仕組みを使えば、業者探し・連絡・調整の労力を最小化しつつ、融資審査に必要な根拠資料を揃えられます。

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