店舗の造作譲渡 完全ガイド|売り手・買い手・相場・契約・税務まで

店舗内装デザイン業者に
無料で一括見積もり相談

¥0ご利用無料
店舗内装専門サイト
全国対応業種問わず

業種・エリア問わず対応。
全国の内装業者から最適な1社を比較できます。

無料内装業者に一括相談する
店舗内装ドットコムからのしつこい営業はなし

※ご利用無料・ご相談だけでもOK・契約義務なし

↓ 記事を読む

この記事の要点

  • 造作譲渡とは、店舗の内装・什器・設備一式を退去オーナーから新規開業者へ譲り渡す取引。原状回復義務の免除と引き換えに、買い手が対価を支払うのが基本構造
  • 造作譲渡料の構成は ①内装造作の残存価値(30〜50%)/②設備の残存価値(25〜40%)/③営業権・のれん(10〜30%)/④原状回復免除の対価(5〜20%) の4要素
  • 業態別の坪単価相場:飲食重飲食 30〜80万円/坪、軽飲食 20〜50万円/坪、クリニック 40〜100万円/坪、サロン 15〜40万円/坪、物販 10〜25万円/坪、オフィス 8〜18万円/坪(標準レンジ)
  • 取引は 売り手・買い手・大家の3者間契約。大家の承諾なしに譲渡しても法的に成立しない(賃貸借契約の信義則・条項違反になる)
  • 進め方は 5段階(準備→募集・査定→交渉・合意→契約締結→引渡し)。標準期間 3〜6ヶ月、急ぎ売却は 30〜50%減額 されやすい
  • 査定で評価される要素は 設備の鮮度・立地の魅力・営業実績・デザイン汎用性・書類整備 の5つ。減点される要素は 老朽化・特化デザイン・法令不適合・営業実績の問題・大家承諾の不確実性
  • 税務取扱:売り手は譲渡所得・事業所得、買い手は減価償却資産として15年で按分。消費税はインボイス対応を確認
  • トラブル予防の核心は ①事前準備の充実 ②契約書の精緻化 ③立会い検査の徹底。これだけで主要トラブルの大半は予防可能

造作譲渡の基礎知識

造作譲渡という言葉は、店舗業界では日常的に使われていますが、正確な定義・関連用語・取引フレームワークを理解している方は意外と少ないのが実情です。基礎を整理することで、後の交渉・契約段階でのトラブルを大幅に予防できます。

造作譲渡の3者間取引フレームワーク 造作譲渡の3者間取引フレームワーク

売り手(前テナント) 閉店・移転オーナー 原状回復義務を回避 造作売却で資金回収 処分費の節約

買い手(次テナント) 新規開業オーナー 初期投資の圧縮 開業期間の短縮 既存設備の活用

大家(建物オーナー) 承諾・新賃貸契約 空室期間の短縮 原状回復免除の判断

造作譲渡契約 対価支払い・所有権移転

退去・解約

新規賃貸契約

造作譲渡の定義

造作譲渡とは、テナント側が店舗運営のために設置・取り付けた「造作」(内装・設備・什器・サイン等)の所有権を、退去するテナントから新たに入居するテナントへ譲り渡す取引のことです。退去側にとっては原状回復義務を免除してもらいながら造作物の対価を回収できるメリット、入居側にとっては既存設備を活用して開業初期コストと工期を圧縮できるメリットがあります。

業界では「居抜き」「居抜き売買」「造作売買」とも呼ばれますが、厳密には次のように区別されます。

用語 意味 取引対象
造作譲渡 造作物の所有権譲渡 内装・設備・什器
居抜き 造作付きで物件を引き継ぐ状態 物件+造作(包括的概念)
居抜き売買 居抜き状態で取引する行為全般 造作譲渡+賃貸借契約変更
営業譲渡 事業全体の譲渡(造作+営業権) 造作+顧客+ノウハウ+スタッフ

取引の3者関係

造作譲渡は、売り手(前テナント)・買い手(次テナント)・大家(建物オーナー)の3者間取引です。買い手と売り手の間で造作譲渡契約を締結すると同時に、大家との間で新規賃貸借契約を結ぶのが標準的な流れです。大家の承諾なしに造作譲渡を進めても、賃貸借契約の信義則違反となり、最悪契約解除のリスクがあります。

「居抜き」と「造作譲渡」の使い分け

同じ取引でも使われる用語が違うため、初見の人には混乱しがちです。実務上の使い分けの目安は次の通りです。

居抜きと言うとき

「居抜き物件」「居抜きで開業」のように、物件の状態や開業形態を指すときに使います。買い手の視点で「すでに内装がある状態の物件」というニュアンス。物件情報サイトでも「居抜き物件特集」のような形で使われます。

造作譲渡と言うとき

取引そのもの・対価支払い・契約に焦点を当てるときに使います。売り手の視点で「自分の造作を譲り渡す」、契約書では「造作譲渡契約」という形で記載されます。譲渡料の交渉や税務処理の際は造作譲渡という用語が一般的です。

関連法令と契約上の論点

造作譲渡には複数の法令・契約条項が関わります。主なものを整理します。

論点 関連法令・条項 影響
大家の承諾 民法612条(賃借権譲渡の制限) 無断譲渡は契約解除事由
原状回復義務 賃貸借契約の特約 免除合意で売り手の費用節約
建物附属物 民法242条(不動産の付合) 大家所有か借主所有かの判別
所有権移転 民法176条(物権変動) 契約と引渡しで所有権移転
瑕疵担保責任 民法562条(契約不適合責任) 譲渡後の不具合対応ルール
消費税の取扱 消費税法 課税取引(売り手が課税事業者)
建設業法 許可業者要件 大規模改修時の確認

3者間契約の実務的な進め方

造作譲渡は法律上、複数の契約・合意が組み合わさって成立する取引です。それぞれの契約・合意をどのタイミングで・誰と結ぶかを整理しておくと、抜け漏れを防げます。

契約・合意 当事者 タイミング 主な内容
大家承諾書 売り手・大家 準備段階 造作譲渡承認・原状回復免除
造作譲渡契約書 売り手・買い手 契約段階 譲渡対象・対価・条件
新規賃貸借契約書 大家・買い手 契約段階 賃料・契約期間・条項
3者間覚書 3者全員 契約段階 取引全体の条件確認
引渡し書 売り手・買い手 引渡し段階 譲渡完了の確認

「居抜き」と「造作譲渡」の業界実務での違い

業界実務では、両者の使い分けが業者・地域によって異なります。混乱を避けるため、契約段階で用語の定義を当事者間で確認しておくと安心です。具体的には、譲渡契約書の冒頭で「本契約における造作譲渡とは〜を意味する」と定義する形で明示します。

不動産仲介業者の用語

不動産業界では「居抜き物件」が一般的で、物件情報サイトでも「居抜き」表記が主流。造作譲渡料は「居抜き料」「造作買取料」と表現されることもあります。

飲食業界の用語

飲食業界では「造作譲渡」が正式用語として使われやすく、契約書・帳簿・税務処理ではこの用語が標準です。閉店オーナーが税理士に相談する際もこの用語が使われます。物件取得の選定軸は居抜き物件ガイド、内装費用全般の相場は内装費用ガイドでも整理しています。

「造作買取請求権」との違い

造作譲渡と混同されやすい概念に「造作買取請求権」があります。両者は法的に全く別の制度です。

項目 造作譲渡 造作買取請求権
法的根拠 当事者間の合意 借地借家法33条
取引相手 次のテナント 大家
対価 合意した譲渡料 時価(裁判所判断)
大家の同意 必要(賃借権譲渡承諾) 大家には拒否権なし
対象物 内装・設備・営業権 大家承諾済の造作のみ
実務頻度 多い(一般的な取引) 少ない(特殊事例)

造作買取請求権は、契約書で排除されているケースが多く、実際に行使される事例は限られます。造作譲渡のほうが圧倒的に一般的な取引形態です。

賃貸借契約書の確認ポイント

造作譲渡を進める前に、現在の賃貸借契約書で確認すべき条項があります。条項によっては取引が成立しない可能性もあるため、最初に確認します。

確認①|賃借権譲渡禁止条項

「無断譲渡禁止」が標準条項です。大家承諾なしの譲渡は契約解除事由になります。承諾を得る前に譲渡契約を進めるのは避けます。

確認②|原状回復条項

退去時の原状回復範囲が記載されています。「スケルトン返し」(完全撤去)か「現状有姿」(そのまま返却)かで、造作譲渡の必要性・価値が大きく変わります。

確認③|造作買取請求権の排除条項

「造作買取請求権を行使しない」旨の特約が含まれていることが多いです。この特約があると、大家への買取請求は法的に困難です。

確認④|中途解約の予告期間

中途解約に必要な予告期間(一般的に3〜6ヶ月前)。閉店スケジュールから逆算して、早めに大家に伝える必要があります。

造作譲渡料の相場と決まり方

造作譲渡料は、業態・規模・物件状態・営業実績で大きく変動します。「いくらが妥当か」を判断する材料として、構成要素と相場帯を整理します。

造作譲渡料を構成する要素分解 造作譲渡料の構成要素

①内装・造作残存価値 床・壁・天井の仕上げ カウンター・什器 パーテーション 構成比 30〜50%

②設備・機器の残存価値 厨房機器・空調 給排水設備 電気容量設備 構成比 25〜40%

③営業権・のれん 立地・集客力 過去の売上実績 常連客の継承 構成比 10〜30%

④原状回復免除の対価 解体費の節約 廃材処分費の節約 退去工期の短縮 構成比 5〜20%

合計:造作譲渡料(売り手の希望価格 vs 買い手の妥当性検証)

価格の決まり方: 売り手の希望価格 → 査定(残存価値の客観評価)→ 買い手の交渉 → 双方合意 業態・規模・築年数・設備状態・立地・売上実績で大きく変動

構成要素①|内装・造作の残存価値(30〜50%)

床・壁・天井の仕上げ材、カウンター、棚、パーテーション、造作家具など、退去側が施工した内装造作の残存価値です。新品時の施工費から経年減価を差し引いた金額が基本ですが、買い手にとっての利用価値(撤去せずに使えるか)も加味されます。築3年以内なら新品時の60〜70%、築5年以上なら30〜50%程度が目安です。

構成要素②|設備・機器の残存価値(25〜40%)

厨房機器・空調・給排水設備・電気設備など、店舗運営に必要な設備の残存価値です。設備は耐用年数と稼働状態で価値が変動します。新品から3年以内・主要機器が現役なら高値、7年超なら買い替え検討域で減点対象です。一般的に厨房機器は7〜10年、空調は10〜15年が耐用年数の目安です。

構成要素③|営業権・のれん(10〜30%)

過去の売上実績、立地の魅力、常連客の継承可能性、SNS・予約サイトの評判などが含まれます。実績のある人気店は営業権部分が大きく、無実績や不振店ではほぼ評価ゼロになります。営業権の評価は、過去の月商・収益性・常連客リストの開示が前提になります。

構成要素④|原状回復免除の対価(5〜20%)

売り手が大家に支払うべき原状回復費用を、買い手が引き継ぐ形で間接的に売り手の費用負担を肩代わりする部分です。通常の原状回復費用は 坪10〜30万円(業態・物件状態で変動)。この対価相当分が造作譲渡料に上乗せされる構造です。

業態別 坪単価相場

業態によって設備の重さ・内装の特殊性・営業権の価値が異なるため、坪単価相場には大きな幅があります。

業態別 造作譲渡相場の目安 業態別 造作譲渡相場の目安(坪あたり)

業態 低レンジ 標準レンジ 高レンジ 特性

飲食(重飲食) 10〜30万 30〜80万 80〜150万 設備重

飲食(軽飲食) 5〜20万 20〜50万 50〜100万 中庸

クリニック・歯科 15〜40万 40〜100万 100〜200万 高単価

サロン・美容室 5〜15万 15〜40万 40〜80万 配管重

物販・小売 3〜10万 10〜25万 25〜50万 什器のみ

オフィス 3〜8万 8〜18万 18〜35万 軽装

バー・スナック 8〜25万 25〜60万 60〜120万 夜業特化

フィットネス・ジム 5〜15万 15〜35万 35〜70万 機材重

標準レンジは「築3〜5年・主要設備が現役・営業実績あり」という条件での目安です。物件タイプ別の特性は物件タイプガイドを参照してください。築年数が古い・設備が老朽化・営業不振の場合は低レンジ、築浅・人気店・好立地の場合は高レンジを参考にしてください。

査定額の決まり方の流れ

実際の取引では、次のような流れで査定額が決まっていきます。

ステップ①|売り手の希望価格設定

売り手側が「この価格で売りたい」という希望価格を設定します。残存価値(簿価ベース)と市場相場(業態別坪単価)の中間が現実的な希望価格になります。残債のあるリース機器がある場合は、その残額を加味する必要があります。

ステップ②|査定(客観評価)

買い手候補が現地調査を行い、「この物件の造作にいくら払う価値があるか」を評価します。設備の状態、内装の汎用性、立地、営業実績などを総合的に判断します。複数の買い手候補がいる場合は、各社の査定額を比較できます。

ステップ③|価格交渉

売り手の希望価格と買い手の査定額に開きがある場合、交渉で双方の合意点を探ります。一般的に、売り手の希望価格と買い手の査定額の中間付近で合意することが多いです。複数の買い手候補がいる場合は競争原理で売り手有利、急ぎの売却の場合は買い手有利になります。

ステップ④|最終合意

合意した価格で契約締結に進みます。条件(譲渡対象品目・引渡し時期・支払い条件・瑕疵担保期間)も合わせて文書化します。価格だけ決めて条件が曖昧なまま進めると、後でトラブルの原因になります。

希望価格と査定額のギャップを埋める方法

売り手の希望価格と買い手の査定額に乖離が出るのは普通のことです。両者のギャップを段階的に埋めていく実務的なアプローチを整理します。

ステップ①|双方の根拠を共有

売り手は「希望価格の内訳」、買い手は「査定額の内訳」を可視化し、お互いの根拠を文書で共有します。「設備残存価値はいくら」「営業権はいくら」など、構成要素ごとに比較すると、どこに認識ズレがあるかが明確になります。

ステップ②|第三者査定の活用

売り手・買い手のどちらか一方の主観だけで決めず、不動産仲介・建築士・税理士など第三者の査定を取り入れます。中立的な査定額が出ると、双方が納得しやすい合意点が見つかります。

ステップ③|減点項目の交渉

買い手が「ここに不安がある」「ここは追加投資が必要」と指摘する項目を一つずつ確認し、売り手が改善できる部分は改善、できない部分は減額交渉で対応します。例えば「冷蔵庫の動作不良」が指摘されたら、引渡し前に修理するか、修理費分を減額するかを協議します。

ステップ④|支払い条件で調整

価格そのものは譲らない代わりに、分割払いや支払いタイミングを調整する形でも合意点が見つかります。買い手の資金繰りに余裕を持たせることで、価格そのものを維持できる場合があります。

急ぎ売却を避ける戦略

急ぎ売却は買い手側に「足元を見られる」原因になります。閉店期限が近づいているほど、買い手は値下げ交渉を強めます。次の戦略で急ぎ売却を回避します。

戦略 具体策 効果
早期募集の開始 閉店3〜6ヶ月前から募集 買い手候補の確保
段階的な閉店スケジュール 営業継続しながら譲渡先探し 退店期限の余裕
大家との閉店期限延長交渉 2〜4週間の延長を依頼 急ぎ感の解消
マッチングサービス活用 複数社見積もりで買い手獲得 競争原理で価格上振れ

売り手側の論点(閉店・移転オーナー)

店舗を閉店・移転する側のオーナーが造作譲渡を選ぶ理由、得られるメリット、注意すべきリスクを整理します。原状回復で全撤去するより造作譲渡のほうが経済的に有利な場合が多いですが、条件次第ではデメリットもあります。

売り手のメリット

項目 原状回復の場合 造作譲渡の場合
解体費用 坪5〜15万円の支出 不要(買い手が引き継ぐ)
廃材処分費 坪3〜8万円の支出 不要
退去工期 2〜6週間 1日〜1週間
追加収入 なし 造作譲渡料を受け取れる
大家との関係 退去で完了 新賃借人を紹介で良好

30坪のカフェを閉店する場合、原状回復で 240〜690万円の支出 が必要なところ、造作譲渡なら支出ゼロで 500〜2,000万円の収入 が得られる計算になります。経済的なインパクトは非常に大きいです。

売り手の論点①|大家承諾の事前確保

賃貸借契約には「無断譲渡禁止」が標準条項として含まれることが多く、大家の承諾なしに造作譲渡を進めると契約解除事由になります。閉店を決めたら、まず大家に造作譲渡の意向を伝え、承諾を取り付けることが先決です。承諾の有無で取引全体が成立するかが決まります。

売り手の論点②|原状回復免除の合意

大家との間で「造作譲渡が成立した場合、原状回復義務を免除する」旨の書面合意を取り付けます。口頭合意のままだと、新賃借人とのトラブル時に売り手側の費用負担が再発するリスクがあります。書面化のタイミングは、買い手候補との交渉を始める前が望ましいです。

売り手の論点③|希望価格の根拠整理

「いくらで売りたい」を主張するためには、根拠資料が必要です。設備の購入履歴・領収書・施工費の記録・残債情報を整理して、買い手候補に提示できる状態にしておきます。「言い値」では交渉が難航し、買い叩かれやすくなります。

売り手の論点④|閉店スケジュールの管理

閉店日が迫ってからの造作譲渡募集は、買い手側に「急ぎ売却」と察知されて買い叩かれる原因になります。理想は閉店3〜6ヶ月前から募集を開始すること。複数の買い手候補と交渉する余裕を持つことで、適正価格での成約確率が高まります。

売り手の論点⑤|売却益の税務対応

造作譲渡で得た収入は、個人事業主なら譲渡所得・事業所得、法人なら法人所得として課税対象になります。設備の取得価額・残存価値・売却額の関係で課税額が変わるため、事前に税理士に相談しておくと安心です。

売り手の失敗パターン

造作譲渡で売り手側が陥りやすい失敗パターンを整理します。事前に把握しておくことで予防策が打てます。

失敗パターン①|大家承諾の確認漏れ

「閉店の手続き」と「造作譲渡」を別物と考え、大家への伝達を後回しにするパターン。譲渡契約締結後に大家から拒否されると、買い手にも迷惑がかかります。閉店の方針を固めた段階で、最優先で大家面談に臨みます。

失敗パターン②|希望価格の根拠不足

「これくらいで売れるはず」という主観だけで希望価格を設定し、買い手から「根拠を見せて」と求められて答えられないパターン。設備購入時の領収書・施工費の請求書・改修履歴を整理しておくと、根拠ある価格交渉ができます。

失敗パターン③|閉店間際の急ぎ売却

閉店日の1〜2週間前まで募集を始めず、買い手不在で泣く泣く原状回復するパターン。または最後の数週間で買い手が現れたものの、足元を見られて当初想定の50〜70%で手放すパターン。閉店3ヶ月前からの募集開始が定石です。

失敗パターン④|契約書を簡易に済ませる

口約束+簡単な引渡し書だけで契約を進め、後で譲渡対象範囲・瑕疵担保期間で揉めるパターン。標準的なひな形をベースに、専門家の確認を経た契約書を使うことで予防できます。

失敗パターン⑤|税務処理の見落とし

売却収入の税務処理を考慮せず、確定申告時に想定外の課税で資金繰りが悪化するパターン。契約締結前に税理士に相談しておくことで、節税対策・資金計画が立てやすくなります。

売り手が成功するための準備チェックリスト

  • 大家との承諾合意(書面)
  • 原状回復義務免除の合意(書面)
  • 譲渡対象品目リスト(写真・型番付き)
  • 設備の購入履歴・保証書整理
  • 過去3年の売上履歴(営業権評価用)
  • 残債のあるリース機器の整理
  • 閉店3〜6ヶ月前からの募集開始
  • 複数の買い手候補との交渉
  • 税理士との事前相談
  • 専門家確認済みの契約書ひな形

売り手の経済的インパクト試算

造作譲渡を選ぶか、原状回復で全撤去するか。それぞれの選択でどれだけ経済的インパクトが変わるか、規模別に整理します。

規模 原状回復のコスト 造作譲渡の収入 差額
10坪 軽飲食 80〜200万円 200〜500万円 280〜700万円
20坪 軽飲食 160〜400万円 400〜1,000万円 560〜1,400万円
30坪 軽飲食 240〜600万円 600〜1,500万円 840〜2,100万円
30坪 重飲食 360〜900万円 900〜2,400万円 1,260〜3,300万円
50坪 オフィス 250〜500万円 400〜900万円 650〜1,400万円

差額は閉店オーナーにとっての経済的なメリットの大きさを示しています。次店舗を検討中なら店舗デザインガイド店舗フロー設計ガイドもあわせて確認できます。造作譲渡を選択する経済合理性は、ほぼすべての規模・業態で確認できます。例外は「内装が極端に老朽化している」「業態特化が強すぎて買い手不在」「立地が極端に弱い」場合のみです。

退店スケジュール逆算の組み立て

閉店日を起点に、造作譲渡を成功させるためのスケジュール逆算を整理します。

時期 主なアクション
閉店6ヶ月前 大家承諾の確認、希望価格設定、譲渡対象リスト作成
閉店4〜5ヶ月前 買い手募集開始、複数のマッチングサービス活用
閉店3ヶ月前 買い手候補の現地調査対応、価格交渉
閉店2ヶ月前 契約条件詰め、契約締結準備
閉店1ヶ月前 契約締結、引渡し準備
閉店日 引渡し実施、対価受領

買い手側の論点(新規開業オーナー)

新規開業を検討するオーナーが造作譲渡(居抜き)を選ぶメリット、検証すべきポイント、注意すべきリスクを整理します。スケルトン開業より総コストを大幅に圧縮できますが、見落としやすいリスクもあります。

買い手のメリット

項目 スケルトン開業 居抜き(造作譲渡)
初期投資 坪80〜150万円 坪40〜80万円(造作譲渡料含む)
開業期間 2〜4ヶ月 1〜2ヶ月
設計自由度 高(フルオーダー) 中(既存制約あり)
設備の信頼性 新品保証 中古・状態次第
失敗リスク 未知数 前店の実績で予測可能

初期投資を 30〜50%圧縮、開業期間を 1〜2ヶ月短縮 できるのが最大のメリットです。資金調達面でも有利になり、開業後のキャッシュフローに余裕が生まれます。

買い手の論点①|業態×物件の適合性

居抜き物件の業態が、自店の業態と合致するかを慎重に判断します。例えば、前店が中華料理だった物件で和食を開業する場合、給排水・換気・厨房レイアウトは流用できますが、冷蔵・冷凍庫の容量、調理スペースの広さ、客席配置の最適化で改修が必要になることがあります。

買い手の論点②|設備の動作チェック

造作譲渡で引き継ぐ設備の動作状態を、契約前に必ず確認します。冷蔵庫・コンロ・空調・給湯器など、稼働確認を売り手立会いで実施。動作不良の設備が含まれていれば、その分の減額交渉ができます。専門の設備業者に同行してもらい技術的な状態確認を依頼するのが理想です。買い手が見落としがちな追加費用は追加費用ガイドでも整理しています。

買い手の論点③|法令不適合の事前調査

前店時代に無許可改修が行われている場合、入居時の検査で発覚し是正命令を受けるリスクがあります。建築確認・消防設備・保健所基準への適合性を、契約前に事前調査します。違反が見つかれば、是正費用を造作譲渡料から控除する交渉が可能です。

買い手の論点④|閉店理由のヒアリング

「なぜ閉店するのか」を売り手にヒアリングします。「移転(事業拡大)」「個人都合(健康・家族)」なら立地・業態に問題がない可能性が高いですが、「売上不振」「近隣トラブル」が理由なら立地・業態に構造的問題がある可能性があります。経営面の本質的な問題を見抜くための重要な確認事項です。

買い手の論点⑤|資金調達の準備

造作譲渡料は通常、契約締結時に一括または2段階(契約時・引渡し時)で支払います。スケルトン開業より総コストは安いものの、初期に大きな金額を用意する必要があります。日本政策金融公庫の創業融資・銀行融資・自己資金の組み合わせで計画的に準備します。資金計画の組み立て方は資金調達ガイド、開業全体の費用構成は開業総費用ガイドを参照してください。

買い手の論点⑥|物件の長期視点

居抜きで開業した後、数年で移転する場合、自分自身も次の造作譲渡で買い手を見つける必要があります。立地・業態・物件の汎用性を長期視点で評価することで、出口戦略まで含めた判断ができます。

買い手の現地調査チェックリスト

居抜き物件を検討する際の現地調査で、必ずチェックすべき項目を整理します。1度の見学では見落としやすいため、複数回・時間帯を変えて確認するのが理想です。

建物・物件の確認

  • 物件の築年数・耐震基準(新耐震1981年以降か)
  • 建物の用途・建築確認の整合性
  • 共用部の状態(廊下・エレベーター・階段)
  • 近隣店舗・住居との位置関係
  • 搬入経路の確認(大型機材の搬入可否)
  • 駐車場の有無・台数
  • 店舗前の歩行者通行量(時間帯別)

設備の動作確認

  • 冷蔵庫・冷凍庫の冷却動作・温度
  • コンロ・グリドル・オーブンの加熱動作
  • 給湯器の温水動作・水量
  • 空調の冷暖房動作・効き具合
  • 換気扇の風量・異音
  • 給排水の漏れ・流量
  • 電気容量(契約アンペア)の十分性
  • コンセント数・配置の適切性
  • 照明の点灯・電球切れ
  • サインの点灯・状態

法令・許認可の確認

  • 消防検査の合格状況(消防設備の現役性)
  • 保健所許可(飲食店営業許可)の継承可能性
  • 用途地域・営業時間制限
  • 過去の改修工事の建築確認の有無
  • 看板・サインの設置許可
  • 近隣条例(騒音・夜間営業等)

営業実績の確認

  • 過去3年の月商推移
  • 客層・客単価・回転率
  • SNS・口コミサイトの評判
  • 常連客リスト・継承可能性
  • 閉店理由(事業拡大・売上不振・個人都合)
  • 近隣トラブルの有無

買い手の交渉成功パターン

パターン①|減点項目を活用した減額交渉

現地調査で発見した減点項目(設備の老朽化・法令不適合の可能性等)をリストアップし、修理・是正費用の見積もりを取った上で、譲渡料からの減額を交渉します。客観的な見積もり書があると交渉が円滑に進みます。

パターン②|支払い条件の柔軟化

価格そのものより支払いタイミングで調整する形。「契約時20%・引渡し時50%・3ヶ月後30%」のような分割払いを提案し、売り手側の納税対応も考慮した交渉が成立しやすいです。

パターン③|瑕疵担保期間の延長

標準3ヶ月を6ヶ月に延長してもらう、特定設備(厨房機器・空調等)の動作保証期間を1年に延長する交渉。買い手のリスクヘッジになり、心理的に安心して契約締結できます。

造作譲渡の進め方 5段階フロー

造作譲渡の取引を進める標準的な5段階フローを整理します。各段階で売り手・買い手・大家がそれぞれ何をするか、所要期間の目安を含めて見ていきます。

造作譲渡の進め方5段階フロー 造作譲渡の進め方 5段階フロー

①準備 物件・大家確認 設備リスト作成 希望価格設定 2〜4週間

②募集・査定 情報公開 買い手候補対応 現地見学 1〜3ヶ月

③交渉・合意 価格交渉 条件詰め 大家承諾 2〜4週間

④契約締結 譲渡契約書作成 大家との3者契約 対価支払い 1〜2週間

⑤引渡し 立会い検査 所有権移転 鍵引渡し 1日〜1週間

標準的な期間:3〜6ヶ月(売り手の閉店スケジュールから逆算) 繁忙シーズン(2〜3月・8〜9月)は買い手が多く高値で売れる傾向 退店期限が迫った急ぎ売却は買い叩かれやすい→3ヶ月以上の余裕を確保 複数社の見積もりサービス活用で買い手候補を効率的に集められる

段階①|準備(2〜4週間)

取引のスタート段階で、売り手は閉店スケジュールの確定・大家承諾の取得・設備リスト作成・希望価格設定を行います。買い手は新規開業の業態・規模・予算・立地条件の整理を進めます。

売り手の準備項目

  • 大家との面談で造作譲渡の意向を伝え、承諾と原状回復免除を確認
  • 譲渡対象の品目リストを作成(設備機器・什器・造作の詳細)
  • 設備の購入履歴・領収書・保証書を整理
  • 希望価格の根拠資料(査定根拠)を整える
  • 売却募集の方法を決定(仲介業者・ポータルサイト・SNS)

買い手の準備項目

  • 業態・規模・予算・立地条件の整理
  • 資金調達計画(自己資金・融資申請)
  • 建築士・コンサルタントなど専門家の確保
  • 複数の居抜き物件の比較検討

段階②|募集・査定(1〜3ヶ月)

売り手は買い手募集を開始します。募集経路は仲介業者・専門ポータルサイト・SNS・知人ネットワーク・複数社見積もりサービスなど複数あります。買い手側は条件に合う物件を見つけ、現地調査・査定を行います。複数の買い手候補が集まると、競争原理で適正価格に収束しやすくなります。

段階③|交渉・合意(2〜4週間)

条件交渉と価格交渉を進めます。譲渡対象品目・譲渡料・引渡し時期・支払い条件・瑕疵担保期間などを詰めていきます。同時に、大家からの承諾と新賃貸契約の条件確認も並行して進めます。3者すべてが合意することで取引が成立に向かいます。

段階④|契約締結(1〜2週間)

合意した条件を造作譲渡契約書に文書化し、双方の記名押印で締結します。同時に、買い手と大家の間で新規賃貸借契約を締結。契約締結時に手付金(譲渡料の20〜30%程度)を支払い、引渡し時に残額を清算するパターンが一般的です。

段階⑤|引渡し(1日〜1週間)

立会い検査を行い、契約書記載の譲渡対象品目がすべて引き渡されているかを確認します。検査リストにチェックを入れ、双方記名で完了を確認。鍵の引渡しと残金支払いを同時に行うのが標準です。引渡し後は、買い手が改修・追加工事を経て開業準備に入ります。改修工事のリスクや対処はリノベーションガイド、追加費用・トラブル予防はトラブル・追加費用ガイドを参照してください。

各段階での予算計画

造作譲渡の取引には、譲渡料以外にも様々な費用が発生します。買い手・売り手それぞれの想定費用を整理します。

項目 売り手 買い手
仲介手数料 譲渡料の3〜5% 譲渡料の3〜5%
契約書作成費 1〜5万円(折半or売り手) 1〜5万円(折半or買い手)
専門家確認費 1〜3万円 3〜10万円(建築士・税理士)
第三者査定費 1〜5万円(オプション) 1〜5万円(オプション)
引渡し時の清掃費 3〜10万円 不要
追加改修費 不要 坪10〜30万円(業態転用時)
許認可申請費 不要 3〜10万円

譲渡料以外の付帯費用は、合計で譲渡料の10〜20%程度を見ておくと余裕のある予算になります。とくに買い手側は譲渡料に加えて改修・許認可・備品購入費が発生するため、総予算は譲渡料の1.5〜2倍を見積もっておくと安心です。

譲渡対象 含む/除外の判別

「何を譲渡対象に含めるか」を契約段階で明確にしておかないと、引渡し時のトラブルの原因になります。標準的に含めるもの・除外するものを整理します。

譲渡対象 含む/除外の典型品目 譲渡対象 含む/除外の典型品目

譲渡対象に含めるもの ✓ 床・壁・天井の仕上げ材 ✓ カウンター・棚・パーテーション ✓ 厨房機器(冷蔵庫・コンロ・グリドル) ✓ 空調設備・換気扇 ✓ 給排水管・電気配線・コンセント ✓ 照明器具・ダクト ✓ サイン・看板(取付物) ✓ 造作家具(造作カウンター等) ✓ 防音工事・防火工事の付加価値 ✓ 内装デザイン・壁画 ✓ ブラインド・カーテン

譲渡対象から除外するもの ✗ 商品在庫・原材料 ✗ レジ・POS・ICT機器(移転持出) ✗ 個人持ち込みの装飾・備品 ✗ ロゴ・店舗名・商標権 ✗ 営業権・許認可(法的に別取引) ✗ 顧客リスト(個人情報保護) ✗ レシピ・ノウハウ(別契約) ✗ スタッフの引継ぎ(労働契約別) ✗ 残債のある設備(リース等) ✗ 老朽化で撤去前提の物 ✗ 大家所有の建物附属物

含めるべき品目

店舗運営に直接関わる物理的な設備・造作は基本的に譲渡対象に含めます。具体的には次のようなものです。

カテゴリ 具体例 注意点
内装造作 床・壁・天井仕上げ、カウンター、棚 建物附属物との境界を明確化
厨房機器 冷蔵庫、コンロ、グリドル、製氷機 動作確認・型番リスト化
空調設備 エアコン、換気扇、ダクト 容量・電源仕様を明示
給排水 シンク、給湯器、排水管 配管経路の確認
電気設備 分電盤、コンセント、照明 容量・契約アンペアの確認
サイン 看板、誘導サイン(取付物) 業態変更時の更新コスト考慮
什器 椅子、テーブル、ソファ 状態・点数のリスト化

除外すべき品目

商品在庫・個人持ち込み・別契約の対象になるものは除外します。曖昧にすると引渡し時のトラブルの原因になります。

カテゴリ 具体例 除外理由
商品・原材料 食材、商品在庫、消耗品 事業用資産は別取引
ICT機器 レジ、POS、PC、Wi-Fi機器 移転持出または別売却
個人持ち込み 装飾品、観葉植物、書籍 所有権が個人
知的財産 店舗名、ロゴ、商標 商標権は別契約
営業権・許認可 営業許可、酒類販売免許 法的に承継不可
顧客情報 常連客リスト、メアド 個人情報保護法上譲渡困難
残債のある資産 リース機器、ローン残資産 債務関係の整理が先
大家所有物 建物本体、共用部設備 大家との別契約

境界が曖昧な品目の扱い

判断に迷う品目は、契約段階で書面に明記して曖昧さを排除します。例えば、エアコンが「テナント設置(造作)」か「建物附属(大家所有)」かは、設置時の経緯と賃貸借契約の付則を確認する必要があります。

境界判別のチェックポイント

  • 誰が購入・設置したか(領収書・請求書の確認)
  • 賃貸借契約の付帯設備リストに記載されているか
  • 建物の構造・配管と一体化しているか(一体化なら大家所有の可能性)
  • 大家との改修工事承諾書に記載があるか

譲渡対象品目リストの作成方法

譲渡対象品目を漏れなくリスト化するための実務的な手順を整理します。引渡し時のトラブル予防の核心になります。

ステップ①|エリア別に分類

店内をエリア別(厨房・客席・トイレ・カウンター・収納・外部)に分け、各エリアの品目を順番にリスト化。エリアごとに番号を付けることで、後の照合作業が円滑になります。

ステップ②|各品目の詳細記録

品目名・型番・メーカー・購入日・状態(良好/中程度/不良)を記録。型番が分からない場合は、現物の写真も合わせて添付。重要設備(厨房機器・空調等)は購入領収書のコピーも添付するのが理想です。

ステップ③|「含む/除外」の明示

すべての品目に「譲渡対象に含む」「譲渡対象から除外」「売り手撤去」「協議要」のいずれかを記載。曖昧な品目は「協議要」とし、契約段階で個別協議します。

ステップ④|双方記名押印

完成したリストに売り手・買い手双方が記名押印し、契約書に添付。引渡し時の検査リストとしても使用します。リストは業者間で共有し、お互いがコピーを保管します。

ステップ⑤|引渡し前後の差分確認

契約締結時のリストと引渡し時の現状を照合。差分があれば「品目消失」「不要品の残置」として書面で記録。協議の上、対応を決定します。

査定で評価される5つの要素

造作譲渡料を高く評価してもらえるかは、5つの要素で決まります。売り手にとっては高値で売る・買い手にとっては妥当な価格を見極める判断材料になります。

査定で価格を押し上げる5つの要素 造作譲渡で評価される5つの要素

①設備・什器の鮮度 ・築3年以内 ・主要厨房機器が現役 ・空調・給排水が良好 ・電気容量が十分 ▶ 価格20〜40%増

②立地・物件の魅力 ・駅徒歩5分以内 ・路面店・視認性高 ・周辺人口・購買力 ・賃料が相場並 ▶ 価格30〜50%増

③営業実績・継承価値 ・売上履歴の開示 ・常連客リスト ・SNS・予約サイト評判 ・許認可継承可能性 ▶ 価格10〜25%増

④デザイン・コンセプトの汎用性 ・特化しすぎないデザイン ・広い業態で使える内装 ・撤去せずに使える什器 ・トレンドに左右されにくい ▶ 買い手候補が増えて競争 → 5〜15%増

⑤書類・記録の整備 ・設備の購入履歴・保証書 ・原状回復義務免除の合意書 ・賃貸契約書のコピー ・営業許可・改修履歴 ▶ 信頼性向上 → 5〜10%増

要素①|設備・什器の鮮度(価格20〜40%増)

築3年以内・主要厨房機器が現役・空調や給排水が良好・電気容量が十分といった「現役設備」が揃っていると、買い手にとって追加投資が不要で開業初日から運用できる魅力があります。築年数が浅いほど、評価が高くなります。

要素②|立地・物件の魅力(価格30〜50%増)

駅徒歩5分以内・路面店・視認性の高さ・周辺人口・購買力の高さ・賃料が相場並、こうした物件特性は買い手候補が集まりやすく、競争原理で価格が上昇します。立地は造作譲渡料に最も大きく影響する要素の一つです。

要素③|営業実績・継承価値(価格10〜25%増)

過去の月商・収益性・常連客リスト・SNS評判・予約サイトの口コミなど、営業実績が良好な店舗は「成功している事業の継承」として高評価されます。許認可(飲食店営業許可・深夜営業許可・酒類販売免許)の継承可否も評価ポイントです。

要素④|デザイン・コンセプトの汎用性(価格5〜15%増)

過剰に業態特化していない、広い業態で使える内装、撤去せずに使える什器、トレンドに左右されにくいデザインは、買い手候補の幅が広がり競争原理で価格が上昇します。逆に業態特化が強すぎると買い手が限定されて減点要素になります。

要素⑤|書類・記録の整備(価格5〜10%増)

設備の購入履歴・保証書・原状回復義務免除の合意書・賃貸契約書のコピー・営業許可・改修履歴などが整備されていると、買い手の信頼性が高まり交渉が円滑に進みます。書類の整備状況は、売り手の管理水準を示すシグナルとして評価されます。

査定で減点される5つの要素

逆に、造作譲渡料を下げられる要因も5つに整理できます。売り手にとっては事前に把握して可能な限り対策、買い手にとっては減額交渉の根拠材料になります。

査定で価格を下げる5つの要素 造作譲渡で減点される5つの要素

①設備の老朽化 ・築7年以上 ・主要機器の故障歴 ・修理頻度が高い ・耐用年数を超過 ▶ 価格30〜60%減

②過剰な特化デザイン ・極端な業態特化 ・撤去前提の什器 ・趣味性の強い装飾 ・流行り廃りの強いトレンド ▶ 価格20〜40%減

③法令不適合のリスク ・無許可改修の履歴 ・消防法不適合 ・防火区画の不備 ・建築確認なしの増築 ▶ 是正費用を全額減額

④営業実績の問題 ・売上低迷・連続赤字 ・近隣トラブル歴 ・SNS・口コミの低評価 ・閉店理由が業態起因 ▶ 営業権がほぼ無価値 10〜30%減

⑤大家承諾の不確実性 ・原状回復免除の合意なし ・大家との関係が悪化 ・新賃料の引き上げ要求 ・建物自体の建替え予定 ▶ 取引不成立リスクで30〜50%減

減点①|設備の老朽化(価格30〜60%減)

築7年以上・主要機器の故障歴・修理頻度の高さ・耐用年数超過などは、買い手の追加投資(買い替え・修理)を生むため大幅な減点対象になります。特に厨房機器は7〜10年、空調は10〜15年が耐用年数の目安で、これを超えると残存価値はほぼゼロと評価されることがあります。

減点②|過剰な特化デザイン(価格20〜40%減)

極端な業態特化・撤去前提の什器・趣味性の強い装飾・流行り廃りの強いトレンドは、買い手候補が限定されるため減点対象です。例えば「ピンク基調のメイドカフェ」「ガレージ風バー」のような特化デザインは、同業態の買い手しか想定できず競争が起きにくくなります。

減点③|法令不適合のリスク(是正費を全額減額)

無許可改修・消防法不適合・防火区画の不備・建築確認なしの増築などが見つかれば、買い手はその是正費用を全額譲渡料から差し引く交渉をします。是正費用は数十万〜数百万円に達することがあり、最大の減点要因の一つです。

減点④|営業実績の問題(価格10〜30%減)

売上低迷・連続赤字・近隣トラブル歴・SNSや口コミの低評価・閉店理由が業態起因(立地不適合等)の場合、営業権部分の評価がほぼゼロになります。買い手は「立地や業態に構造問題がある」と判断するため、立地評価も連動して下がります。

減点⑤|大家承諾の不確実性(価格30〜50%減)

原状回復免除の合意がない・大家との関係悪化・新賃料の引き上げ要求・建物自体の建替え予定などは、取引そのものが不成立になるリスクを生みます。買い手は不確実性を避けるため、大幅な減額か取引離脱を選びます。事前の大家承諾確保が、売り手にとって最も重要な準備です。

地域別 造作譲渡相場の傾向

同じ業態でも、地域によって造作譲渡相場は大きく変動します。主要エリアの傾向を整理します。

エリア 飲食軽飲食 標準レンジ 傾向
東京都心(渋谷・新宿・銀座) 40〜80万円/坪 立地評価が極めて高い
東京近郊(吉祥寺・自由が丘) 30〜60万円/坪 競争強い人気エリア
大阪・名古屋都心 25〜50万円/坪 東京より2〜3割安
地方政令指定都市 15〜35万円/坪 都心と地方の中間
地方主要都市 10〜25万円/坪 立地評価が抑えめ
郊外・ロードサイド 8〜20万円/坪 駐車場の有無が重要

店舗規模別 造作譲渡の特性

店舗規模によっても、造作譲渡の特性が変わります。規模ごとの傾向を整理します。

小規模(10坪以下)

カウンターのみのバーやテイクアウト専門店が多い規模。譲渡料の総額は低めですが、坪単価では高めになる傾向。買い手は個人事業主が中心で、設備の信頼性が最重要視されます。

中規模(10〜30坪)

最も流通量が多い規模で、買い手候補も多く市場が活発です。坪単価は標準的な相場が形成されやすく、相場感に基づいた交渉ができます。新規開業オーナーの主戦場です。

大規模(30坪以上)

大規模店は買い手候補が限定されるため、譲渡料の坪単価は中規模より低くなる傾向があります。法人・経験豊富な買い手が中心で、財務状況・運営計画の確認が重視されます。

業態別 造作譲渡の特性

業態によって造作譲渡で評価される要素が異なります。自店の業態の特性を理解しておくことで、売り手は強みを活かす準備、買い手は重点的にチェックすべきポイントが明確になります。

飲食(重飲食:焼肉・ラーメン・天ぷら等)

給排水・空調・防火設備の充実度が最も評価される業態です。重飲食特有の排煙ダクト・グリストラップ・無煙ロースター・大容量電源は新規施工で坪あたり50〜80万円かかるため、これらが現役なら造作譲渡料が高値になります。一方、業態特化が強いため、買い手も同業態に限定されやすいのが特徴です。重飲食の事例は飲食店全業態の施工事例から確認できます。

飲食(軽飲食:カフェ・ベーカリー)

カウンター造作・エスプレッソマシン用電源・SNS映えするデザインが評価ポイント。重飲食より設備の特殊性は低いものの、デザインの汎用性が高いため、別業態(ベーカリー→カフェ等)への転用も可能です。カフェ開業ガイドカフェ施工事例も参考になります。買い手候補が広がりやすい業態です。

クリニック・歯科

給排水・電気容量・遮音性能の整備が評価対象。医療機器(X線・ユニット・滅菌器)は別売却または持出が一般的で、造作部分だけでも坪40〜100万円の譲渡料が標準。同じ診療科の継承なら許認可の名義変更で開業期間を大幅短縮できます。

サロン・美容室

シャンプー台・カラー席・スタイリストカウンターの造作が評価対象。給排水ルートが整備されていると流用価値が高いです。デザインの汎用性が低いと(過剰なテーマ性・強すぎる色味)、買い手の幅が狭まり減点されやすいです。

物販・小売

ディスプレイ什器・サイン・什器電源の整備が評価対象。設備が比較的軽装な業態のため、譲渡料の総額は低め(坪10〜25万円)ですが、立地が良ければ営業権部分で価値が乗ります。立地に大きく依存する業態です。

オフィス・コワーキング

パーテーション・配線・ICT環境の整備が評価対象。譲渡料は最も低レンジ(坪8〜18万円)ですが、什器・パーテーションの活用度が高いと評価されます。賃料の妥当性が買い手判断の最大要素です。

バー・スナック・夜業特化型

カウンター・防音・照明・音響設備が評価対象。深夜営業許可の継承可能性も価値を持ちます。業態特化が極端なため、買い手は同業態にほぼ限定されますが、許認可の継承メリットで譲渡料が高めに設定される傾向があります。

フィットネス・ジム

更衣室・シャワー・大型機材スペース・床補強・換気設備が評価対象。マシンは別売却が一般的ですが、造作部分(床補強・更衣室・シャワー設備)の流用価値で坪15〜35万円が標準的な譲渡料です。

他業態への転用パターン

居抜きを買う際、前店と同じ業態を続けるとは限りません。他業態への転用パターンと、その際の注意点を整理します。

前店業態 転用しやすい業態 注意点
カフェ ベーカリー、軽食店、スイーツ 厨房レイアウト調整
ラーメン店 うどん・そば、中華料理、定食 排煙ダクトを流用
イタリアン カフェ、ビストロ、ワインバー 客席配置の調整
居酒屋 バー、ダイニングバー、定食 夜業設備を活用
美容室 ネイルサロン、エステ、整体 給排水ルートを確認
クリニック 歯科、整骨院、整体(同医療系) 許認可継承の可否
物販店 セレクトショップ、雑貨 什器の活用・サイン更新
オフィス コワーキング、教室、レンタルスペース パーテーション再配置

業態転用での追加コスト

業態転用には、流用できる部分と新規施工が必要な部分があります。一般的には、譲渡料を支払いつつ、追加で坪10〜30万円の改修費が必要になります。

流用できる部分

  • 給排水管の経路(飲食→飲食ならほぼ流用可)
  • 電気容量・分電盤(同等以下の業態なら流用可)
  • 空調・換気設備(業態による調整)
  • 床・壁・天井仕上げ(デザイン許容範囲なら流用)

新規施工が必要になりやすい部分

  • 厨房機器(業態が変わると機器も変わる)
  • カウンター・什器(業態固有の造作)
  • サイン・看板(店名・デザイン更新)
  • 客席レイアウト(席数・テーブル配置)
  • 装飾・コンセプト(ブランド変更)

造作譲渡相場 概算シミュレーター

業態・規模・築年数・設備状況・立地の5軸を入力すると、造作譲渡料の概算レンジと主な構成要素を表示します。発注前のおおよその相場感把握にご活用ください。

💰 造作譲渡相場 概算シミュレーター





契約書に組み込むべき条項

造作譲渡契約書には、業界標準のひな形に準じて12〜15項目の条項を盛り込むのが標準です。条項の抜け漏れがトラブルの原因になるため、契約締結前に1項目ずつ確認します。

必ず盛り込むべき条項

条項 記載内容 抜け漏れ時のリスク
譲渡対象の品目 具体的な物件・什器・設備リスト(写真添付) 引渡し時の認識ズレ
譲渡対価 金額・支払いタイミング・支払い方法 支払いトラブル
所有権移転時期 引渡し完了時に移転する旨 所有権の所在不明
引渡し条件 引渡し時期・引渡し場所・立会い検査 引渡しトラブル
瑕疵担保責任 譲渡後に発覚した不具合への対応期間(標準3〜6ヶ月) 不具合対応の責任不明
大家承諾 承諾済みの確認・承諾書の添付 賃借権侵害リスク
原状回復義務 免除合意の確認・買い手の引継ぎ 退去時のトラブル
契約解除事由 不履行・支払い遅延等の場合の解除条件 紛争解決手段の不在
残債の取扱 リース・ローン残のある資産の整理 残債負担の不明確化
表明保証 売り手の所有権・法令適合の保証 事後の権利関係紛争
消費税の取扱 税抜・税込の明示、課税事業者の有無 課税処理のトラブル
準拠法・裁判管轄 適用法・紛争時の管轄裁判所 訴訟手続きの遅延

盛り込めると有利な条項

標準条項に加えて、状況に応じて追加すると有利になる条項があります。

分割払い条項

譲渡料が高額(500万円超)の場合、買い手の資金繰りを考慮して分割払いに対応できる条項を入れます。「契約時30%・引渡し時40%・3ヶ月後30%」のような構成が一般的です。

動作保証条項

主要設備(厨房機器・空調等)の動作保証期間を契約書で明記します。引渡し後3〜6ヶ月の保証期間を設けるのが標準です。期間内の故障は売り手負担で修理または減額交渉の対象になります。

譲渡禁止条項の代わりに継承条項

買い手が将来再譲渡する際の条件を、契約書に予め定めておく形があります。売り手にとっての関心事ではない場合は不要ですが、ブランド名・店舗名の継承を求める場合は明記が必要です。

業界標準のひな形と参考資料

造作譲渡契約書のひな形は、不動産業界団体・建設業界団体・各種フランチャイズ本部が公開しています。これらをベースにし、専門家(弁護士・司法書士)に修正してもらう形が安全です。修正費用は1〜5万円程度が目安です。

引渡し前後の実務

契約締結後、引渡しを経て新オーナーが運営開始するまでの実務を整理します。チェックリストとしてご活用ください。

売り手・買い手の理想的な準備状態 売り手・買い手 双方の理想的な準備

売り手の理想的な準備

✓ 閉店3〜6ヶ月前から募集開始 ✓ 大家との原状回復免除合意 ✓ 設備リスト・購入履歴の整備 ✓ 売上履歴の開示準備 ✓ 査定額の根拠資料 ✓ 法令適合の証明書類 ✓ 譲渡対象品目の写真記録 ✓ 税理士への相談 急ぎの売却を避ける

買い手の理想的な準備

✓ 業態×物件の適合性確認 ✓ 設備の動作チェック ✓ 賃貸条件・新賃料の確認 ✓ 改修・追加工事費の見積もり ✓ 法令不適合の事前調査 ✓ 売り手の閉店理由ヒアリング ✓ 複数物件比較で相場感把握 ✓ 資金調達計画 焦って即決しない

引渡し前1週間で実施すること

引渡し直前の1週間は、双方が同時並行で複数のタスクをこなします。漏れがあると引渡し当日にトラブルになります。

売り手が実施すること

  • 譲渡対象品目以外の私物・在庫の搬出
  • 主要設備の最終動作確認・清掃
  • 鍵のスペアキー・マスターキーの整理
  • ガス・電気・水道の検針メーター数値記録
  • 近隣店舗・大家への退去挨拶
  • 引渡しチェックリストの最終確認

買い手が実施すること

  • 残金の準備・支払い手段の確認
  • 営業許可・各種申請の準備
  • 新規ガス・電気・水道契約の開始日確定
  • 追加改修工事の業者手配
  • 什器・備品の搬入計画
  • 従業員(採用済みの場合)への引渡し日通知

引渡し当日のチェックリスト

引渡し当日は、双方立会いで全項目をチェックします。漏れがあれば書面で記録し、後日対応の合意を取ります。

  • 譲渡対象品目リストとの照合(品目・点数・状態)
  • 主要設備の動作確認(冷蔵庫・コンロ・空調・給排水)
  • 電気容量・コンセント数の確認
  • 給排水の漏れ・詰まりチェック
  • 店内の清掃状態・廃材残置の有無
  • 鍵の引渡し・スペアキー数の確認
  • ガス・電気・水道の検針メーター数値
  • 各種許認可・契約書類の引渡し
  • 残金支払いの完了
  • 引渡し完了書面の双方記名

引渡し後の対応事項

引渡し後すぐに対応すべき事項を整理します。期限のあるものが多いので、計画的に進めます。引渡し後に発生しがちな追加費用は追加費用ガイド、トラブル予防はトラブル・追加費用ガイドで詳しく整理しています。

事項 期限の目安 注意点
営業許可の名義変更 引渡し前後すぐ 保健所・消防署への届出
賃貸借契約の名義変更 引渡し時 大家との新契約締結
火災保険・店舗賠償保険 引渡し当日 無保険期間ゼロに
各種公共料金の名義変更 1週間以内 引落口座の登録
振込口座・カード決済の登録 営業開始前 収入の入金準備
SNS・Googleビジネスの新店登録 営業開始時 口コミ・予約の継続
瑕疵担保期間の開始 引渡し当日 不具合発見時の対応

引渡し書面の標準フォーマット

引渡し時に作成すべき書面の標準フォーマットを整理します。これらを契約書とセットで保管することで、後のトラブル予防に直結します。

書面①|引渡しチェックリスト

譲渡対象品目を1つずつチェックし、状態・動作確認・引渡し完了を記録。双方記名押印して保存。引渡し当日中に作成し、お互いのコピーを保有します。

書面②|現状写真記録

引渡し時の店内の状態を、各エリア(厨房・客席・トイレ・カウンター・収納等)ごとに写真で記録。動作確認の動画も撮影しておくと、後の不具合時の証拠になります。クラウドストレージで双方が共有しておきます。

書面③|公共料金検針メーター記録

ガス・電気・水道のメーター数値を引渡し時に記録。前テナント時代の使用量と新テナントの使用量の境界を明確化します。各事業者への名義変更手続きの基準にもなります。

書面④|立会い議事録

引渡し時の立会い参加者・確認した内容・指摘事項・対応合意を簡潔に記録。後で「言った言わない」の論争を避けるための文書証拠になります。

引渡し後3ヶ月の運用ポイント

引渡し後の最初の3ヶ月は、買い手の運営が軌道に乗る重要期間です。この期間に瑕疵担保期間も重なるため、計画的に対応します。

期間 主な対応事項 注意点
引渡し直後 営業許可名義変更・SNS新規登録 無届期間ゼロに
1週間以内 各種公共料金の名義変更 引落口座登録
2週間以内 火災保険・店舗賠償保険の加入 無保険期間ゼロに
1ヶ月以内 不具合発見と売り手への通知 瑕疵担保請求の準備
3ヶ月以内 瑕疵担保期間内の対応完了 期間後は買い手負担

引渡し時に発生しやすい法的論点

引渡し段階で生じやすい法的論点を整理します。事前に把握しておくことで、当日の対応が円滑になります。

所有権の移転時期

民法176条により、所有権は契約と同時に移転するのが原則ですが、実務では「対価完済時」「引渡し完了時」を所有権移転時期と契約書に明記するのが標準です。明記がないと、引渡し前の事故・損害の責任所在が曖昧になります。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)

民法562条による契約不適合責任は、引渡し時点での状態と契約書記載に違いがあった場合に、買い手が修補請求・代金減額・契約解除を請求できる権利です。期間は契約書で定められ、標準は3〜6ヶ月。期間後は買い手の責任で対応します。

建設業法の対応

譲渡後に大規模改修を実施する場合、建設業法の許可業者への発注が必要になります。500万円超の工事は建設業許可が要件、それ以下は不問ですが、専門工事業の許可がある業者への発注が安全です。買い手は譲渡後の改修計画も含めて準備します。

トラブル類型と対処

造作譲渡で発生しがちなトラブル類型を整理します。事前に類型を把握することで、契約段階の予防策が明確になります。

造作譲渡で起きるトラブル類型と発生段階 造作譲渡トラブルの類型と発生段階

交渉 契約 引渡し 引渡し後

①価格の食い違い・買い叩き →売り手 急ぎ売却が原因

②大家承諾が得られない →事前確認不足

③譲渡対象範囲の認識ズレ →契約書記載が曖昧

④原状回復義務の所在不明 →大家との3者合意なし

⑤設備の隠れた故障発覚 →事前検査の不足

⑥撤去予定品の混入 →品目リスト不整備

⑦法令不適合が発覚 →無許可改修の発見

⑧引渡し後の不具合 →保証範囲の合意不足

予防策の3軸 ①事前準備の充実 ・大家承諾の事前確保 ・設備リスト作成・点検 ・希望価格の根拠整理 ②契約書の精緻化 ・譲渡対象の品目リスト添付 ・瑕疵担保期間明記 ・原状回復免除の3者合意 ③立会い検査の徹底 ・引渡し時の現状写真記録

類型①|価格の食い違い・買い叩き

売り手の希望価格と買い手の査定額に大きな乖離が出るパターン。売り手が急ぎ売却の状況だと、買い手から大幅な減額を要求されやすくなります。対処:閉店3〜6ヶ月前から募集を開始し、複数の買い手候補を確保することで競争原理を働かせる。

類型②|大家承諾が得られない

賃貸借契約に「無断譲渡禁止」条項があるのに、事前に大家承諾を取らずに進めるパターン。最悪、契約解除のリスクがあります。対処:閉店を決めた段階で最優先で大家承諾を確認。承諾を取り付けてから買い手募集を開始する。

類型③|譲渡対象範囲の認識ズレ

「これは含まれていると思っていた」「いや、それは個人持ち込み」といった認識ズレが、引渡し時に発覚するパターン。対処:契約段階で譲渡対象の品目を写真付きでリスト化し、契約書に添付。境界が曖昧なものは1つずつ「含む/除外」を明記する。

類型④|原状回復義務の所在不明

退去時の原状回復義務が、売り手・買い手・大家のどこに残るのかが不明確で、退去段階で揉めるパターン。対処:3者間で書面合意を取り、譲渡時点で原状回復義務がどう移転するかを明示する。

類型⑤|設備の隠れた故障発覚

引渡し後に冷蔵庫・空調・給湯器などが故障して、買い手が修理・買い替えに大きな費用を要するパターン。対処:契約書に瑕疵担保期間(3〜6ヶ月)を明記。引渡し時の動作確認を徹底し、不良品は減額対象として交渉する。

類型⑥|撤去予定品の混入

売り手が「撤去予定」と認識していた物が、引渡し時に残置されるパターン。逆に、買い手が「含まれる」と思っていた物が引渡し時に持ち出されるパターン。対処:譲渡対象リストに「撤去予定(売り手持出)」「残置(譲渡対象外)」「譲渡対象(含む)」の3区分を明記する。

類型⑦|法令不適合の発覚

引渡し後に消防検査・保健所検査で違反が発覚し、買い手に是正費用が発生するパターン。対処:契約前に売り手に法令適合状況を表明保証してもらう。発覚時は契約上の表明保証違反として減額・損害賠償を請求できる。

類型⑧|引渡し後の不具合

瑕疵担保期間内に発覚する各種不具合(壁紙の剥がれ・床のきしみ・水漏れ等)。対処:瑕疵担保期間と保証範囲を契約書に明記。期間内の不具合は売り手負担で修補または減額対応の合意を取る。

トラブル予防の3軸

上記8類型のトラブルは、3軸の予防策で大半を防げます。

軸①|事前準備の充実

大家承諾の事前確保、設備リスト作成・点検、希望価格の根拠整理、表明保証の準備など、契約前段階での準備を徹底します。準備期間に2〜4週間を確保することで、後の段階のリスクが大幅に減ります。

軸②|契約書の精緻化

譲渡対象の品目リスト、瑕疵担保期間、原状回復免除の3者合意、表明保証、紛争解決手続きなど、契約書条項を抜け漏れなく整備します。専門家(弁護士・司法書士)の事前チェックを受けると、後のトラブルを大幅に予防できます。

軸③|立会い検査の徹底

引渡し時の立会い検査で、譲渡対象品目の状態・動作確認を1項目ずつチェックします。検査結果を写真記録として保存し、後日のトラブル時の証拠になります。立会い検査を省略すると、不具合発生時の責任所在が曖昧になります。施工前後のトラブル類型と対処はトラブル・追加費用ガイド、開業時の失敗予防は失敗予防ガイドでも整理しています。

典型的なトラブル発生時の対処手順

主要なトラブル類型ごとに、発生時の対処手順を整理します。早期対応で大半のトラブルは適切な解決に導けます。

大家承諾トラブルの対処

大家から造作譲渡承諾が得られない場合、まず大家の懸念点(買い手の信頼性・新賃料の水準・建物の将来計画等)をヒアリングし、対応策を提示します。買い手の財務状況を開示する、新賃料を相場並に調整する、改修工事の事前承諾を取るといった手段で承諾を得られる可能性が高まります。それでも難しい場合は、別の物件を検討します。

譲渡対象範囲の認識ズレへの対処

引渡し時に「これも含まれていると思っていた」「いや、含まれていない」という主張が出た場合、契約書の譲渡対象品目リストに戻って事実確認します。リスト記載なら売り手側の引渡し義務、未記載なら別途協議。曖昧な物は別途有償譲渡か売り手撤去の合意を取ります。

設備故障の対処

引渡し直後の主要設備故障は、瑕疵担保期間内なら売り手負担で修補請求します。書面で売り手に通知し、修補費用または減額対応を協議。期間後の故障は買い手負担ですが、契約上の動作保証条項があれば対象になります。

法令不適合の発覚への対処

無許可改修・消防法違反・建築確認違反などが発覚した場合、買い手は契約上の表明保証違反として、是正費用の減額・損害賠償を売り手に請求できます。専門家(弁護士・建築士)の意見書を添えて交渉すると有効です。

原状回復責任の所在不明への対処

退店時に「誰が原状回復するのか」が不明確な場合、契約書を確認します。3者間で原状回復免除合意があれば買い手の継承責任、なければ売り手の責任。書面合意がない場合、大家との交渉で再確定する必要があります。

第三者相談窓口の活用

トラブル解決が難しい場合、第三者相談窓口の活用が有効です。

窓口 得意分野 費用
建設工事紛争審査会 技術的な工事関連トラブル 数万円〜数十万円
建築士会 施工品質・改修工事の判断 初回相談無料
消費者センター 個人事業主の取引トラブル 無料
弁護士会・法テラス 本格的な法的紛争 初回相談無料
商工会議所 初期方向性相談 無料

税務取扱(売り手・買い手)

造作譲渡には、売り手・買い手それぞれに税務上の論点があります。契約前に税理士に相談しておくことで、思わぬ課税で資金繰りが圧迫される事態を予防できます。

造作譲渡の税務取扱フロー 造作譲渡の税務取扱(売り手・買い手)

売り手側の税務取扱

譲渡所得(個人事業主) ・売却額 − 残存価値 − 譲渡費用 ・5年超所有=長期譲渡(税率低) ・5年以下=短期譲渡(税率高)

事業所得・法人税(法人) ・固定資産除却・売却益 ・帳簿価額との差額が課税対象 ・消費税課税取引

税理士への確認推奨

買い手側の税務取扱

減価償却資産(個人・法人) ・取得価額として資産計上 ・耐用年数で按分減価償却 ・建物附属設備:15年

消費税の取扱い ・課税仕入として仕入税額控除 ・売り手が課税事業者なら適用 ・インボイス対応の確認

取得価額按分の合意必要

※税務処理は個別事情により異なるため、契約前に税理士への相談推奨

売り手側の税務取扱

個人事業主の場合(譲渡所得・事業所得)

造作譲渡で得た収入は、譲渡所得または事業所得として課税対象になります。譲渡所得の場合、所有期間5年超なら長期譲渡所得(税率約20%)、5年以下なら短期譲渡所得(税率約40%)となり、税負担が大きく異なります。事業用資産の譲渡として事業所得扱いになる場合もあるため、税務処理は税理士確認が必要です。

法人の場合(事業所得・法人税)

法人の固定資産売却益・除却益として法人所得に算入されます。帳簿価額(取得価額 − 減価償却累計額)と売却額の差額が課税対象。帳簿価額より高く売れた場合は売却益課税、低く売れた場合は売却損で他の所得と相殺できます。

消費税の取扱

売り手が課税事業者なら、譲渡対価に消費税が課税されます。インボイス制度開始後は、買い手が仕入税額控除を受けるためにインボイス(適格請求書)の交付が必要です。免税事業者の売り手から購入する場合、買い手の消費税負担が大きくなります。

買い手側の税務取扱

減価償却資産としての処理

譲渡で取得した造作・設備は、固定資産として帳簿に計上され、耐用年数に応じて減価償却されます。建物附属設備は15年、什器備品は5〜8年、空調設備は15年が一般的な耐用年数です。譲渡対価を品目別に按分する必要があるため、契約書に内訳を明記すると後の処理が円滑です。

取得価額の按分

譲渡対価を「内装造作」「設備機器」「什器」のような品目別に按分すると、それぞれの耐用年数で減価償却できます。一括計上すると最も長い耐用年数(15年)に統一されてしまうため、按分するほうが税務上有利です。契約書に内訳を明示することで、買い手の按分根拠が明確になります。

消費税の仕入税額控除

買い手が課税事業者なら、譲渡対価に含まれる消費税を仕入税額控除できます。前述の通り、インボイス制度下では売り手のインボイス交付が前提です。インボイスがない取引は、買い手の税負担が大きくなる点に注意が必要です。

税務面で抜け漏れを防ぐためのチェックリスト

  • 売り手・買い手それぞれの課税事業者の状態確認
  • インボイス対応の有無確認
  • 譲渡対価の品目別内訳の合意・明記
  • 譲渡対象資産の取得時期・取得価額の整理
  • 減価償却累計額の算出・帳簿価額の確定
  • 譲渡所得・事業所得の判定(個人事業主の場合)
  • 譲渡費用(仲介手数料等)の記録
  • 契約締結前の税理士相談

税務処理の判断は、業界・所有期間・取引規模で大きく異なるため、契約前に税理士への相談を強く推奨します。費用は1〜3万円程度で、後の税務リスクを大幅に削減できます。

税務面で抜け漏れを防ぐ実務的ポイント

税務処理は売り手・買い手それぞれに複雑な論点があります。実務的に抜け漏れを防ぐためのポイントを整理します。

ポイント①|契約書での内訳明示

譲渡対価を「内装造作」「設備機器」「什器」「営業権」のように品目別内訳で契約書に記載。買い手の減価償却資産の按分根拠になり、売り手の税務処理でも区分整理が容易になります。一括計上ではなく、品目別の内訳記載が望ましいです。

ポイント②|消費税の取扱明示

譲渡対価が税込か税抜か、消費税額がいくらかを契約書に明示。インボイス制度下では、売り手が課税事業者の場合にインボイス(適格請求書)の交付が必要です。インボイスの形式・交付タイミングも事前に合意します。

ポイント③|売却時期の調整

個人事業主の譲渡所得は、所有期間5年超なら長期譲渡(税率約20%)、5年以下なら短期譲渡(税率約40%)と税負担が大きく異なります。所有期間がボーダーライン(4〜5年)の場合、5年超になるまで売却時期を調整する選択肢もあります。

ポイント④|法人の場合の益金・損金

法人の場合、固定資産売却益は益金、売却損は損金として処理されます。決算月との関係で、売却時期によって税負担額が変動するため、決算対策の観点でタイミング調整が可能です。

まとめ|重要数値とFAQ

造作譲渡の重要数値早見表

項目 標準的な目安
標準的な取引期間 3〜6ヶ月(準備〜引渡し)
急ぎ売却の減額幅 30〜50%減
飲食重飲食の坪単価 30〜80万円/坪(標準レンジ)
飲食軽飲食の坪単価 20〜50万円/坪(標準レンジ)
クリニックの坪単価 40〜100万円/坪(標準レンジ)
サロンの坪単価 15〜40万円/坪(標準レンジ)
物販の坪単価 10〜25万円/坪(標準レンジ)
瑕疵担保期間の標準 3〜6ヶ月
支払い構成の標準 契約時30%・引渡し時70%
建物附属設備の耐用年数 15年
厨房機器の耐用年数 7〜10年
空調設備の耐用年数 10〜15年
原状回復費用の節約効果 坪10〜30万円

よくある質問(FAQ)

Q1. 造作譲渡の対価はいつ支払いますか?
標準は契約時に手付金(譲渡料の20〜30%)、引渡し時に残金を清算する2段階払いです。譲渡料が高額(500万円超)の場合は3段階以上の分割もありますが、引渡し時には全額清算するのが一般的です。前払い100%は売り手側のリスクが小さい反面、買い手の信頼性確認が前提になります。
Q2. 大家の承諾は誰がどう取り付けますか?
通常、売り手(前テナント)が大家との交渉を主導します。「次のテナント候補(買い手)を紹介し、新賃貸契約を締結すると同時に、自分の原状回復義務を免除してほしい」という形での合意取り付けです。買い手の人物・業態・財務状況を大家が確認した上で承諾するため、売り手だけで判断せず、買い手と一緒に大家面談に臨むのが効率的です。
Q3. 譲渡料の相場が分かりません。どう確認すれば?
複数の方法があります。①不動産仲介業者・居抜き専門サイトで類似物件の譲渡料を比較、②複数の買い手候補から査定額を取り中央値を参考にする、③税理士・建築士などの専門家に査定を依頼する(費用1〜5万円)。複数社見積もりサービスを使うと買い手候補を効率的に集められ、競争原理で適正価格に収束しやすくなります。
Q4. 営業権・のれんは具体的にどう評価しますか?
過去の売上実績(月商・利益率)、常連客リストの提供可否、SNS・予約サイトの評判、立地の魅力で総合判断します。月商の0〜3ヶ月分を上乗せするケースが多いですが、営業不振店ではゼロ評価です。営業権の評価には売上履歴の開示が前提になるため、売り手は数字の整理を準備しておくことが重要です。
Q5. 譲渡後に設備が壊れたら誰の負担?
契約書の瑕疵担保条項に従います。期間内(標準3〜6ヶ月)の故障は売り手負担で修補または減額交渉、期間後は買い手負担になります。引渡し時の動作確認で問題なかった設備が短期間で故障した場合、買い手は契約上の権利として修補請求できます。期間設定は契約締結時に必ず合意しておきます。
Q6. 造作譲渡で得た収入の税金はどうなりますか?
個人事業主は譲渡所得または事業所得(5年超所有なら長期譲渡で税率約20%、5年以下なら短期譲渡で約40%)、法人は固定資産売却益として法人所得に算入されます。インボイス制度下では消費税の取扱も論点になるため、契約前に税理士相談が推奨です。費用1〜3万円で大きなリスクを予防できます。
Q7. 営業許可は買い手に承継されますか?
飲食店営業許可は、設備の同一性が保たれていれば名義変更で承継可能なケースが多いです。深夜営業許可・酒類販売免許は別途申請が必要で、保健所・警察署への確認が必要です。許認可の継承可能性は譲渡料の評価にも影響するため、契約前に売り手・買い手で確認しておきます。
Q8. 売り手と買い手のマッチングはどうすればいい?
主な経路は5つあります。①不動産仲介業者(手数料3%程度)、②居抜き専門ポータルサイト(成約報酬型)、③SNS・自店舗での告知、④知人ネットワーク・業界つながり、⑤複数社見積もりサービス。マッチングサービスは買い手候補を効率的に集められ、競争原理で適正価格に収束しやすい利点があります。
Q9. リース機器がある場合はどう扱う?
リース機器は所有権がリース会社にあるため、そのまま譲渡することはできません。①リース契約を解除して残債を売り手が清算、②リース会社の同意を得て買い手にリース契約を引き継ぐ、③買い手が新規でリース契約を結び直す、の3パターンがあります。リース会社との事前協議が必要です。
Q10. 大家から新賃料の引き上げを要求されたら?
居抜き入居の場合、大家が新賃料の引き上げを要求してくることがあります(市場相場に合わせる名目)。買い手にとっては想定外コストになるため、契約交渉で売り手・買い手・大家の3者で賃料水準を合意します。引き上げ幅が大きい場合は、譲渡料の減額で調整する交渉が一般的です。

売り手・買い手それぞれの優先アクション

記事内容を実際の取引に活かすための、優先順位の高い実行アクションを整理します。

段階 売り手のアクション 買い手のアクション
準備段階 大家承諾と原状回復免除合意 業態×物件の適合性確認
準備段階 譲渡対象品目リスト整備 資金調達計画策定
募集段階 マッチングサービスで複数買い手 複数物件比較で相場把握
募集段階 希望価格の根拠資料整備 専門家同行の現地調査
交渉段階 第三者査定で客観性 減点項目の見積もり取得
交渉段階 支払い条件の柔軟化 瑕疵担保期間の延長交渉
契約段階 専門家の契約書チェック 表明保証条項の追加
契約段階 税理士相談による節税対策 取得価額按分の合意
引渡し段階 立会い検査と書面記録 動作確認・写真記録
引渡し後 瑕疵担保対応の準備 許認可・保険手続き

本記事の主要メッセージ

造作譲渡は、売り手・買い手・大家の3者の利害が一致することで成立する取引です。一方の都合だけで進めようとすると、必ずどこかで歪みが生まれ、取引不成立やトラブルにつながります。3者全員にとってメリットのある条件を作り、書面で明文化することが、円滑な取引の本質です。複数の選択肢を持つこと(売り手なら複数の買い手候補、買い手なら複数の物件候補)が、結果として最も良い条件での合意につながります。物件タイプ別の選び方は物件タイプガイド、賃料交渉のコツは賃料交渉ガイド、見積もり比較の手順は見積比較ガイドを参照してください。



店舗内装ドットコム

条件にぴったりの内装業者を
無料で選定します

店舗内装の見積もり相談に特化。
店舗・予算・エリアに合った業者を提案します。

¥0ご利用無料
店舗内装専門サイト
全国対応業種問わず
無料内装業者に一括相談する
店舗内装ドットコムからのしつこい営業はなし

※ご利用無料・ご相談だけでもOK・契約義務なし

×
お問い合わせ
×
お問い合わせ