原状回復工事の費用相場【2026年最新】住宅・店舗・オフィス別の坪単価/㎡単価と通常損耗・特約の正しい判断軸

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結論:原状回復工事の費用は、住宅と事業用(店舗・オフィス)で構造がまったく異なります。住宅は㎡1,000〜3,000円が目安で国土交通省ガイドラインが事実上の基準。一方、店舗・オフィスは坪2〜50万円という幅広いレンジで、ガイドラインの直接適用がなく契約書の特約と工事区分(A/B/C工事)で費用負担が決まります。1社見積もりでは相場の2〜3倍を払う典型パターンが多発しており、相見積もりで30%以上下げられるケースもあります。本記事では3区分マトリクスを軸に、民法621条・主要判例・通常損耗の耐用年数表・退去スケジュールまで網羅します。店舗内装ドットコムは、店舗・オフィスのテナント向けに、全国の内装会社・解体会社から無料で一括見積もりを取れるマッチングサービスです。

基本原状回復工事とは?住宅と事業用(店舗・オフィス)の違い

原状回復工事とは、賃貸借契約の終了時に、賃借人が借りた時点の状態に物件を戻すための工事を指します。改正民法621条で明文化された賃借人の義務に基づくものですが、住宅と事業用では「どこまで戻すか」「誰が何を負担するか」のルールが大きく異なります。

店舗・テナントに絞った実務(契約条文の確認と退去スケジュール)は店舗の原状回復ガイドで解説しています。

適用法令

  • 住宅(居住用)民法・借地借家法・消費者契約法
  • 事業用(店舗・オフィス)民法・借地借家法(消費者契約法適用なし)

国交省ガイドライン

  • 住宅(居住用)事実上の基準
  • 事業用(店舗・オフィス)原則として直接適用外

通常損耗・経年劣化

  • 住宅(居住用)原則オーナー負担
  • 事業用(店舗・オフィス)特約で賃借人負担とすることが多い

費用単位

  • 住宅(居住用)㎡単価・部位別
  • 事業用(店舗・オフィス)坪単価

業者選定権

  • 住宅(居住用)テナント側にあるケース多い
  • 事業用(店舗・オフィス)オーナー指定(B工事)が多い

費用相場

  • 住宅(居住用)1Kで3〜10万円程度
  • 事業用(店舗・オフィス)10坪で30万〜500万円超

「原状回復」と「スケルトン戻し」の違い
原状回復は契約締結時の状態に戻す広い概念。スケルトン戻しはその中でも「躯体露出まで戻す重い工事」を指す業界用語です。事業用テナントで「スケルトン状態にて返還」と特約がある場合、原状回復の中でも最も範囲が広く費用も高くなります。スケルトン戻しの詳細はスケルトン戻し費用の相場完全ガイドで別途整理しています。

相場原状回復工事の費用相場早見表【住宅/店舗/オフィス】

用途別の費用相場を一覧で把握できる早見表です。条件により大きく変動するため、実勢価格は複数社の見積もりで確認してください。

住宅(賃貸アパート・マンション)

  • 単価レンジ㎡1,000〜3,000円
  • 中央値の目安㎡1,500円

住宅 1K・1DK(20〜25㎡)

  • 単価レンジ3〜10万円
  • 中央値の目安5〜7万円

住宅 1LDK・2DK(30〜45㎡)

  • 単価レンジ5〜15万円
  • 中央値の目安8〜12万円

住宅 2LDK・3LDK(50〜75㎡)

  • 単価レンジ10〜30万円
  • 中央値の目安15〜25万円

店舗 飲食(軽飲食)

  • 単価レンジ坪3〜10万円
  • 中央値の目安坪5〜7万円

店舗 飲食(重飲食)

  • 単価レンジ坪7〜50万円
  • 中央値の目安坪10〜20万円

店舗 物販・サービス

  • 単価レンジ坪2〜8万円
  • 中央値の目安坪3〜5万円

店舗 美容室・サロン

  • 単価レンジ坪5〜10万円
  • 中央値の目安坪7万円

店舗 クリニック・歯科

  • 単価レンジ坪3〜8万円
  • 中央値の目安坪5万円

オフィス 小規模(30坪以下)

  • 単価レンジ坪3〜6万円
  • 中央値の目安坪4〜5万円

オフィス 中規模(30〜100坪)

  • 単価レンジ坪3〜10万円
  • 中央値の目安坪5〜7万円

オフィス 大規模(100坪超)

  • 単価レンジ坪5〜15万円
  • 中央値の目安坪8〜10万円

オフィス ハイグレードビル

  • 単価レンジ坪10〜44万円
  • 中央値の目安坪15〜25万円

住宅住宅の原状回復費用|㎡単価とハウスクリーニング相場

住宅の原状回復は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が事実上の基準として機能します。通常損耗・経年劣化は原則オーナー負担で、賃借人が負担するのは「故意・過失・善管注意義務違反」による損傷分のみです。

主要工事の単価目安

ハウスクリーニング(1K〜1LDK)

  • 単価目安20,000〜40,000円
  • 備考業者・物件状態で変動

クロス(壁紙)張替

  • 単価目安1,000〜1,500円/㎡
  • 備考耐用年数6年で減価償却

フローリング張替

  • 単価目安30,000〜60,000円/畳
  • 備考耐用年数の概念

クッションフロア張替

  • 単価目安3,000〜4,500円/㎡
  • 備考耐用年数6年

カーペット張替

  • 単価目安4,000〜6,000円/㎡
  • 備考耐用年数6年

畳表替え(1帖)

  • 単価目安4,000〜10,000円
  • 備考消耗品扱い

畳新調(1帖)

  • 単価目安10,000〜25,000円
  • 備考耐用年数の概念

襖張替(1枚)

  • 単価目安3,000〜10,000円
  • 備考消耗品扱い

故意・過失による損傷の負担例

タバコのヤニで部屋全体がヤニ色になっている、結露を放置してカビが拡大、ペット禁止物件で飼育して傷をつけた、釘・ネジ穴の数が常識を超えている等は、賃借人負担となります。一方、家具設置による床のへこみ、日焼けによるクロス変色、画びょう程度の穴は通常損耗としてオーナー負担です。

店舗店舗の原状回復費用|業態別坪単価

店舗の原状回復は契約書の特約により「スケルトン状態にて返還」「賃借開始時の状態にて返還」など多様な定義があり、業態によって設備の量と複雑さが大きく異なるため、坪単価のレンジが幅広くなります。

カフェ・喫茶(軽飲食)

  • 坪単価レンジ3〜10万円
  • 主な変動要因厨房設備・床下排水・ダクト

居酒屋・バー

  • 坪単価レンジ5〜10万円
  • 主な変動要因カウンター造作・座敷

ラーメン店

  • 坪単価レンジ4〜8万円
  • 主な変動要因ウェットキッチン・床はつり

焼肉・中華・重飲食

  • 坪単価レンジ7〜50万円
  • 主な変動要因無煙ロースター・大型ダクト・グリストラップ

物販(アパレル・雑貨)

  • 坪単価レンジ2〜4万円
  • 主な変動要因什器撤去・壁面什器

美容室・理容室

  • 坪単価レンジ5〜10万円
  • 主な変動要因シャンプー台給排水・床上配管

ネイル・エステ

  • 坪単価レンジ4〜8万円
  • 主な変動要因個室造作・配管

クリニック・歯科

  • 坪単価レンジ3〜8万円
  • 主な変動要因医療廃棄物・医療設備

学習塾・教室

  • 坪単価レンジ2〜4万円
  • 主な変動要因パーテーション撤去

フィットネスジム

  • 坪単価レンジ3〜6万円
  • 主な変動要因床補強材・防音材

40坪のカフェなら坪単価5万円×40坪=200万円、30坪の焼肉店なら坪単価15万円×30坪=450万円が中央値の目安になります。店舗内装の見積もり比較ガイドもあわせて確認すると、見積書のチェックポイントが整理されています。

オフィスオフィスの原状回復費用|規模別・グレード別坪単価

オフィスの原状回復は、ビルの規模・グレードによって坪単価が大きく変わるのが特徴です。大手不動産・原状回復コンサルが調査した適正査定価格と、初回見積もり価格の差は数百万〜数千万円規模になることもあります。

小規模オフィス(30坪以下)

  • 坪単価レンジ3〜6万円
  • 代表的なビル例マンションオフィス・小規模事務所

中規模オフィス(30〜100坪)

  • 坪単価レンジ3〜10万円
  • 代表的なビル例中規模ビル・C級ビル

大規模オフィス(100〜300坪)

  • 坪単価レンジ5〜15万円
  • 代表的なビル例B級ビル

大規模オフィス(300坪超)

  • 坪単価レンジ8〜25万円
  • 代表的なビル例A級ビル

スーパープレミアム(インテリジェントビル)

  • 坪単価レンジ15〜44万円
  • 代表的なビル例S級・スーパープレミアムビル

大型ビルの初回見積もりは適正査定価格より3割程度高い傾向
業界調査によれば、ビル指定業者の初回見積もりは適正査定価格より3割程度高いケースが多く報告されています。これは指定業者制度で市場原理が働かないためです。セカンドオピニオン見積もりを取得して交渉資料に使うことで、大幅な減額が見込めます。

エリアエリア別の費用差|東京・大阪・主要都市・地方

同じ用途・規模でも、エリアによって坪単価には1.3〜2倍の差が出ます。主な要因は人件費水準、廃棄物処理場までの運搬距離、競合業者数です。

東京23区(特に都心5区)

  • 店舗(飲食)5〜15万円
  • オフィス(中規模)5〜15万円

東京23区外・神奈川・埼玉・千葉

  • 店舗(飲食)4〜10万円
  • オフィス(中規模)4〜10万円

大阪市中心部

  • 店舗(飲食)4〜12万円
  • オフィス(中規模)4〜10万円

名古屋市中心部

  • 店舗(飲食)4〜10万円
  • オフィス(中規模)4〜8万円

福岡市中心部

  • 店舗(飲食)4〜9万円
  • オフィス(中規模)3〜7万円

地方政令市

  • 店舗(飲食)3〜8万円
  • オフィス(中規模)3〜6万円

地方都市・郊外

  • 店舗(飲食)3〜7万円
  • オフィス(中規模)2〜5万円

47都道府県別の店舗内装費用相場から、自エリアの実勢価格を確認できます。

まず「誰が・どこまで」を決めてから単価を比べる

原状回復の見積が高いか安いかは、単価だけでは判断できません。先に住宅か事業用かで負担のルールが分かれ(住宅は国交省ガイドラインと改正民法621条、事業用は契約書の特約と工事区分表)、次に「原状」の範囲(入居時の状態に戻すのか、スケルトン戻しか、造作はどちらの所有か)を確定し、その範囲に対して相見積もりで単価を比べる、という順番です。範囲を確定せずに見積を取ると、業者ごとに前提が違う金額を比べることになり、安い方を選んでも追加請求で逆転します。

図|「誰が・どこまで」を決める負担判定フロー物件は住宅か事業用か住宅店舗・オフィス国交省ガイドライン+改正民法621条通常損耗・経年劣化は原則オーナー負担耐用年数で負担割合を按分契約書の特約+工事区分表が基準ガイドライン・東京ルールは直接適用されない通常損耗まで賃借人負担の特約が多い特約は3要件を満たすときだけ有効客観的合理性・賃借人の認識・義務負担の意思表示(最判H17.12.16)「原状」の範囲を特約と図面で確定入居時の状態/スケルトン戻し/造作の帰属A・B・C工事のどれが誰の負担かを工事区分表で範囲が決まってから相見積もり2〜3社で単価を比較

原状回復費用チェッカー

本ページの早見表・エリア差・7つの要因を使って、用途と条件から原状回復費用の目安帯と負担の考え方を出します。届いた見積の「高い・安い」の物差しにお使いください。

※早見表の単価帯にエリア係数(東京23区・首都圏=1.0、都心5区1.15、大阪・名古屋・福岡0.9、地方政令市0.75、地方0.65)と要因の倍率を掛けた目安。契約書の特約・工事区分表・建物の状態で変動し、金額の確定は現地調査後の見積で。

要因原状回復費用が高くなる7つの要因

🏢 1. ビルのグレードが高い

A級・スーパープレミアムビルは内装材・設備のレベルが高く、原状回復の基準も厳格。坪単価が中規模の2〜3倍になることが珍しくありません。

🔧 2. ビル指定業者制度(B工事)

空調・防災・分電盤・外部看板など、B工事に区分される範囲が広いほど、市場原理が働かず1.5〜3倍の見積もりに。

🍖 3. 特殊な内装・設備

バーカウンター・暖炉・シャンデリア・特注什器など、撤去・復旧に専門技術が必要な内装は単価が大幅に上がります。

💧 4. 水回り・厨房設備

飲食店の厨房・グリストラップ・床下排水管・ダクトは撤去工事が複雑。研究室・実験室の設備も同様。

📋 5. 契約書の特約範囲が広い

「経年劣化・通常損耗を含めて原状回復」と特約に明記されている場合、本来不要な工事まで負担することに。契約書の精査が重要。

⚠️ 6. アスベスト含有建材

2023年10月以降、有資格者による事前調査が必須。レベル1〜3の含有が判明すると除去費が1〜数百万円規模で発生します。

📅 7. 退去日直前の駆け込み発注

時間がないと1社の言い値で発注せざるを得ず、相場の2〜3倍を払うパターンが典型。早期計画が最大のコスト削減策。

見積見積書の内訳と読み解き方

妥当な内訳割合

仮設工事費(養生・足場)

  • 全体に占める割合5〜10%
  • 確認ポイント養生範囲が明示されているか

内装・建築工事費

  • 全体に占める割合30〜45%
  • 確認ポイント項目別の単価×数量が記載されているか

設備工事費(電気・空調・給排水)

  • 全体に占める割合20〜30%
  • 確認ポイント「一式」表記がないか

産業廃棄物処分費

  • 全体に占める割合10〜20%
  • 確認ポイント材質別の単価が明記されているか

諸経費・現場管理費

  • 全体に占める割合5〜15%
  • 確認ポイント20%を超える場合は内訳説明を求める

消費税

  • 全体に占める割合10%
  • 確認ポイント税抜・税込が明示されているか

見積書チェックリスト

  1. 「電気一式」「設備一式」「内装一式」などの曖昧表記がないか
  2. 面積基準が「内法」「壁芯」「登記」のどれか明示されているか
  3. 本来不要な工事(グレードアップ・新品交換)が含まれていないか
  4. 前テナントの工事内訳と比較して矛盾がないか
  5. 工事区分(A/B/C)の負担区分が明示されているか
  6. 夜間・休日割増の根拠が記載されているか
  7. アスベスト事前調査費(法定義務)が計上されているか
  8. 消費税の扱いが明示されているか

法令法的背景|民法・ガイドライン・東京ルール

改正民法621条(賃借人の原状回復義務)

2020年4月施行の改正民法621条は、賃借人の原状回復義務を明文化しました。「賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷」を原状に復する義務を負うとしつつ、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と規定。これは賃借人責めに帰さない損傷も除外する任意規定であり、特約による別段合意が可能です(e-Gov法令検索(民法))。

改正民法622条の2(敷金返還義務)

2020年新設の民法622条の2は、賃貸物返還を受けたときに、控除後の残額返還義務を明文化しました。事業用契約では消費者契約法10条が適用されないため、敷金償却特約は広く有効とされます。ただし、未施工の原状回復費は保証金から控除できない(東京地判H29.9.6)など、慎重な判例運用があります。

国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は住宅向け

国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(H23再改訂版)は、対象が民間賃貸住宅であり、店舗・事務所等の事業用には原則として直接適用されません。事業用テナントは事業者間取引であり、消費者契約法10条による無効主張も困難です。ただし、「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」というガイドラインの原状回復の定義は、事業用でも参考になる点があります。

住宅の場合、ガイドライン別表が示す「貸主負担(通常損耗・経年変化)」と「借主負担(故意・過失・手入れ不足)」の典型例を押さえると、退去時の見積で争える項目が具体的に分かります(ガイドライン(再改訂版)のダウンロード:国土交通省)。

貸主負担になりやすい(通常損耗・経年変化)

  • 家具設置によるへこみ・設置跡
  • テレビ・冷蔵庫の後部の黒ずみ(電気ヤケ)
  • ポスター・画鋲程度の穴
  • 畳・クロス日照による変色
  • 設備寿命による故障・鍵の取替え(破損紛失なし)
  • 清掃通常清掃をしていれば専門クリーニング

借主負担になりやすい(故意・過失・手入れ不足)

  • 引越作業の引っかき傷・こぼした飲食物のシミ
  • タバコのヤニ・臭い、下地まで達する釘穴・ネジ穴
  • 壁・柱ペットの傷・臭い、落書き
  • 水回り結露を放置して拡大したカビ、手入れ不足の油汚れ
  • 紛失・破損による取替え
  • 共通経過年数を考慮した残存価値分のみ負担(クロス6年等)

東京ルールも住宅向け(事業用対象外)

「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」(東京ルール)は、その名称のとおり居住用住宅のみを対象とし、店舗・事務所等の事業用は対象外です。所管の東京都住宅政策本部の公式情報でも、適用範囲が居住用に限定されている旨が明示されています。

判例主要判例まとめ|通常損耗特約の有効性

最判H17.12.16

  • 要旨住宅の通常損耗負担特約の有効性につき3要件を示す。①客観的・合理的理由、②賃借人の認識、③義務負担の意思表示。

東京高判H12.12.27

  • 要旨典型的オフィスビルの「契約締結時の原状回復」特約を有効と判示。「市場性原理と経済合理性の支配するオフィスビル賃貸借」では通常損耗負担特約も有効。

東京地判H27.8.17

  • 要旨契約書に「スケルトン」の文言がなくとも、添付された現況写真・図面で「写真の状態に復元」と規定されていればスケルトン戻し義務が認められた。

東京地判H29.9.6

  • 要旨賃貸人が現実に原状回復工事をせず新賃借人に貸し渡した事案で、未施工分の費用を保証金から控除できないと判示。

東京簡判H17.8.26

  • 要旨事務所マンションでも実態が居住用と変わらない場合は、住宅ガイドラインを参照できる場合がある。

大阪高判H12.8.22

  • 要旨契約書文言が曖昧(包括的記載のみ)の場合、特約は無効・不成立とされる場合がある。

判例の射程は事案ごとに異なります。具体的な紛争事案については、契約書の文言や個別事情によって判断が分かれるため、弁護士等の専門家への相談をおすすめします。

耐用年数通常損耗・経年劣化の判断基準と耐用年数表

住宅向けですが、事業用でも通常損耗の判断軸として参考になる耐用年数の目安です(国交省ガイドラインに基づく)。

クロス(壁紙)

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方6年経過で残存価値1円相当(住宅)

クッションフロア

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

カーペット

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

フローリング

  • 耐用年数耐用年数考慮なし(部分補修)
  • 判定の考え方経過年数で減価せず

畳表

  • 耐用年数耐用年数考慮なし(消耗品)
  • 判定の考え方消耗品扱い

畳床

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方本体は耐用年数の概念

ユニットバス・浴槽

  • 耐用年数15年
  • 判定の考え方耐用年数の概念

給湯器

  • 耐用年数15年
  • 判定の考え方同上

冷蔵庫

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

エアコン

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

洗濯機

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

電気カーペット

  • 耐用年数6年
  • 判定の考え方同上

区分A工事・B工事・C工事の区分と費用負担(事業用)

商業ビル・オフィスビルのテナント契約では、工事区分が3つに分かれます。これは法律上の定義ではなく業界慣行ですが、費用負担に直結する重要な区分です。

A工事

  • 工事範囲躯体・外装・共用部・基幹設備
  • 発注オーナー
  • 業者選定オーナー
  • 費用負担オーナー

B工事

  • 工事範囲テナント要望だが建物全体に影響(空調・消防・防災・給排水・防水・分電盤・外部看板)
  • 発注テナント
  • 業者選定オーナー指定
  • 費用負担テナント

C工事

  • 工事範囲テナント専有部内装・什器・LAN等
  • 発注テナント
  • 業者選定テナント自由
  • 費用負担テナント

B工事は業者選定権がオーナーにあるため市場原理が働かず、市場価格の1.5〜3倍に膨らむのが典型的なパターンです。詳細はA工事・B工事・C工事の違い完全ガイドを参照してください。

節約原状回復費用を抑える6つの方法

① 相見積もり2〜3社の取得

複数社の見積もりは30〜50%の差が出ることも珍しくありません。店舗内装ドットコムの一括見積もりサービスを使えば、最初の窓口を1つにまとめられます。

② 指定業者見積もりのセカンドオピニオン

B工事の指定業者見積もりに対しても、別業者にセカンドオピニオン見積もりを取り、適正価格の根拠資料としてオーナーと交渉できます。

③ 居抜き退去で工事費自体を回避

次の借り手が見つかれば、造作譲渡契約で工事費自体を免れる可能性があります。居抜き物件の選び方完全ガイドも参考に。

④ 原状回復範囲のオーナー交渉

契約書の文言が曖昧な場合、本来不要な工事まで請求されているケースが。範囲を明確化することで数十万〜数百万円減額の余地があります。

⑤ 工事区分の見直し交渉

B工事に分類されている項目の一部をC工事化することで、業者選定権を取り戻し、競争原理を働かせることができます。

⑥ 解約予告から3〜6ヶ月の余裕ある計画

退去日直前の駆け込み発注は1社見積もりで進めざるを得ず、相場の2〜3倍を払うパターンが典型。早期に動き出すことが最大のコスト削減策です。

計画退去スケジュール逆算ガイド

6ヶ月前

  • 必須アクション賃貸借契約書の解約予告期間を確認(事業用は3〜6ヶ月が一般的)/オーナーに退去意思を内容証明で通知

5ヶ月前

  • 必須アクション居抜き売却の検討/契約書の原状回復条項・特約・図面写真の再精査

4ヶ月前

  • 必須アクション原状回復業者の相見積もり開始/指定業者見積もりの取得/工事区分確認

3ヶ月前

  • 必須アクション業者決定/契約締結/工事範囲の最終確認/オーナーとの工事区分協議

1ヶ月前

  • 必須アクション什器・設備の搬出計画/保健所・消防への廃止届/取引先への通知

2週間前

  • 必須アクション原状回復工事着工/建設リサイクル法届出(80㎡以上は着工7日前まで)

1週間前

  • 必須アクション近隣挨拶/搬出立会/産業廃棄物マニフェスト確認

引渡当日

  • 必須アクションオーナー立会/鍵返還/敷金・保証金精算の協議

業者業者選びの実務ポイント

住宅と事業用で違う業者選定権

住宅の場合、原状回復業者の選定権は通常オーナー側にあり、賃借人は原則として業者を選べません。一方、事業用テナントは契約書とビルの規程によりますが、C工事範囲については自由に業者選定が可能です。B工事はオーナー指定業者のみ、A工事はオーナー発注のため賃借人は関与できません。

許認可の確認方法

請負代金500万円以上の解体・原状回復工事は建設業許可(解体工事業)が必須です。国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで許可番号から会社情報を確認できます。500万円未満の場合は、各都道府県知事の解体工事業者登録名簿で確認します。

悪徳業者の8つのサイン

🚩 サイン1

会社所在地が不明、またはマンション一室登記。

🚩 サイン2

現地調査なしで見積もりを提示する。

🚩 サイン3

見積書の「一式」表記が多く、内訳がない。

🚩 サイン4

契約書・領収書の発行を渋る。

🚩 サイン5

前金(全額または大半)を要求する。

🚩 サイン6

専門用語でごまかし、質問への説明が曖昧。

🚩 サイン7

建設業許可番号・解体工事業登録番号を提示できない。

🚩 サイン8

極端な安値、または相場と乖離した高値。

注意よくあるトラブル類型と相談窓口

⚠️ 過剰請求

本来不要な工事や経年劣化分まで請求されるケース。国民生活センターでも多数報告。複数社見積もりで相場との乖離を確認。

⚠️ 経年劣化・通常損耗の範囲争い

住宅では本来オーナー負担の通常損耗まで請求されるケース。耐用年数表を根拠に交渉可能。

⚠️ 特約の有効性争い

通常損耗負担特約や原状回復特約の有効性は最判H17.12.16の3要件で判断。曖昧な記載は無効主張の余地あり。

⚠️ B工事指定業者の高額請求

市場原理が働かないため1.5〜3倍に膨らむのが典型。セカンドオピニオン見積もりで交渉資料を作成。

⚠️ 工事範囲の解釈違い

「どこまで戻すか」の認識がオーナーと食い違い、追加工事を要求される事案。契約書添付の写真・図面で具体化を。

⚠️ 敷金返還の遅延・拒否

改正民法622条の2で控除後の残額返還が明文化。未施工分は控除不可(東京地判H29.9.6)。

相談窓口一覧

  • 国民生活センター(消費者向け一般相談)
  • 各都道府県の宅地建物取引業協会(賃貸紛争相談)
  • 法テラス(法的相談・弁護士紹介)
  • 各地方裁判所の民事調停(少額訴訟・支払督促)

関連スケルトン戻しとの違い

原状回復工事の中でも、最も範囲が広く費用も高い形態が「スケルトン戻し」です。事業用テナントで「スケルトン状態にて返還」と特約に明記されている場合、躯体露出まで戻す重い解体工事が必要になります。スケルトン戻しの坪単価・業態別費用・判例の詳細は、別記事のスケルトン戻し費用の相場完全ガイドで整理しています。

FAQよくある質問

Q. 住宅と事業用の原状回復の違いは?

住宅は国土交通省ガイドラインが事実上の基準で、通常損耗・経年劣化は原則オーナー負担。事業用は契約書の特約が広く有効で、通常損耗まで賃借人負担とすることが多いです。

Q. 原状回復工事の費用相場はいくら?

住宅は1Kで3〜10万円、店舗は坪2〜50万円(業態により大きく異なる)、オフィスは坪3〜44万円(規模・グレードで異なる)が目安です。

Q. 国交省ガイドラインは店舗にも適用される?

原則として住宅向けで、店舗・オフィスには直接適用されません。ただし、ガイドラインの原状回復の定義は事業用でも参考になります。

Q. 通常損耗・経年劣化は賃借人が負担する?

住宅は原則オーナー負担、事業用は特約により賃借人負担とすることが多いです。契約書の文言を確認してください。

Q. ハウスクリーニング特約は有効?

住宅では最判H17.12.16の3要件(客観的合理性・賃借人の認識・義務負担の意思表示)を満たせば有効ですが、要件を欠く場合は無効と判断されるケースもあります。

Q. 経年劣化したクロスの張替費用は誰が払う?

住宅の場合、クロスの耐用年数は6年で、6年経過後は残存価値が1円相当とされます。通常使用による劣化は原則オーナー負担、故意・過失による損傷分は賃借人が時価相当分を負担します。

Q. 大家指定業者の見積もりが高すぎる場合は?

別業者にセカンドオピニオン見積もりを取得し、適正価格の根拠資料としてオーナーと交渉できます。B工事の高額化は商業ビルで典型的な問題です。

Q. 原状回復費用を安くする最も効果的な方法は?

相見積もり2〜3社の取得です。次に居抜き売却の検討、工事範囲の交渉、退去スケジュールの早期計画。これらの組み合わせで30〜50%の削減が見込まれるケースがあります。

Q. 退去日が直前ですが間に合いますか?

2週間〜1ヶ月前でも対応可能な業者は存在しますが、1社見積もりで進めることになり相場の2〜3倍を払うパターンが典型。可能な限り早く相見積もりを取ることをおすすめします。

Q. 原状回復工事を自分でDIYできますか?

請負代金500万円以上の解体工事には建設業許可が必須で、500万円未満でも解体工事業者登録が必要です。テナント自らが本格的な工事を行うことは法令上ほぼ不可能です。

Q. 原状回復費用の目安を自分で概算するには?

本ページの早見表の単価(軽飲食坪3〜10万円、重飲食坪7〜50万円、物販坪2〜8万円、オフィス坪3〜15万円、住宅㎡1,000〜3,000円)に面積を掛け、エリア(東京都心は高く地方は安い)と、B工事の範囲・スケルトン戻し特約・退去直前の駆け込み発注といった要因の倍率を掛けます。本ページの原状回復費用チェッカーで条件を選ぶと目安帯が出ます。ただし先に契約書の特約と工事区分表で「誰が・どこまで」を確定しないと、見積の比較自体が成り立ちません。

Q. 店舗の原状回復とスケルトン戻しは何が違う?

原状回復は契約書で定めた「原状」(多くは入居時の状態)に戻す工事、スケルトン戻しはそのうち最も範囲が広く、内装・設備・造作をすべて撤去して躯体露出の状態まで戻す工事です。「スケルトン状態にて返還」と特約にあれば後者で、費用は通常の原状回復の1.5〜1.8倍になりやすい構造です。居抜き退去(次の借主に造作を譲渡)が認められれば工事自体を回避できるため、解約予告の前にオーナーへ打診します。

次の一歩まとめ|店舗内装ドットコムの一括見積もりで適正費用を確認

原状回復工事の費用は、住宅・店舗・オフィスで構造がまったく異なります。住宅は㎡1,000〜3,000円、店舗は坪2〜50万円、オフィスは坪3〜44万円という幅広いレンジで、契約書の特約、工事区分、ビルのグレード、業態の特殊性によって大きく変動します。1社見積もりでは相場の2〜3倍を払う典型パターンが多発しており、相見積もりが最も効果的なコスト削減策です。

店舗内装ドットコムは、店舗・オフィスのテナント向けに、全国47都道府県の内装会社・解体会社から無料で一括見積もりを取れるマッチングサービスです。退去工事の見積もり比較から、次の入居先の内装見積もりまで、ワンストップで対応できます。

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