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「店が古くなってきた」「個室を増やして宴会や接待を取りたい」「大衆酒場から少し上の業態へ変えたい」——営業中の居酒屋を改装するとき、多くのオーナーがまず費用を調べます。ですが、すでに営業している居酒屋の改装は、ゼロから作る開業とは別物です。本記事は、厨房と排気という居酒屋の心臓部をどう扱い、どの席種を何席にして客単価と宴会を伸ばすかという視点から、費用相場・営業しながらの可否・個室化・設備の流用判断・業者選び・法令までをまとめた発注者向けガイドです。内装デザインや個室造作の費用そのものを詳しく知りたい方は居酒屋の内装ガイド、新規開業は居酒屋開業ガイド、移転を伴う場合は居酒屋の移転ガイドもあわせてご覧ください。
この記事の要点
- 居酒屋改装は「内装の見た目」より先に、大衆回転・個室・カウンターの席ミックスをどう組み替えるかから考える
- 居酒屋は厨房(火力・焼き場・揚げ場・排気)が改装の核心。カフェと逆で、営業しながらは難しく「いつ休むか」が勝負
- 居抜き改装は坪15〜30万円が一つの目安。ただし解体・原状回復・既存撤去が乗り、坪単価では割り切れない
- 既存の排煙ダクト・グリストラップ・焼き場を「残す」か「替える」かが費用を二分する
- 路面店は業者を選べる。ビル・地下・空中階は排気の幹線がビル指定(B工事)になりやすい
目次
居酒屋改装は「内装」より「席ミックスの再設計」から
営業中の居酒屋を改装するとき、最初に置くべき判断軸は「どんな内装にするか」ではありません。「大衆回転の席・個室・カウンターを、それぞれ何席にするか」という席ミックスの再設計です。居酒屋は1組あたりの単価が高く、宴会・接待というまとまった需要があります。だからこそ、席種の比率を変えるだけで客単価と売上の作り方が大きく変わります。
たとえば大衆オープン席は回転重視で坪あたりの席数を多く取れますが、個室や座敷はその逆で席密度が下がります。一方で、個室は1組単価が高く、接待・家族・宴会といった「予約で埋まる」需要を取り込めます。つまり改装の本質は、「回転で稼ぐ席」と「単価で稼ぐ席」のバランスを、自店の立地と客層に合わせて組み替えることにあります。内装の色や素材を決めるのは、その後です。
この席ミックスの考え方は、内装デザインの良し悪しとは別のレイヤーにあります。見た目をきれいにしても、席種の構成が客層と合っていなければ売上は伸びません。逆に、席ミックスが正しければ、内装は身の丈に合った範囲でも十分に機能します。「何を変えるか」の前に「どの席種で、誰の宴会・接待を取りに行くか」を言語化する——これが居酒屋改装で失敗しないための出発点です。デザインのテイストや個室造作の具体的な費用は居酒屋の内装ガイドで詳しく扱っています。
居酒屋改装の費用相場・坪単価【物件・目的別】
公開されている各社の情報を整理すると、居酒屋の工事費はおおむね次のレンジが目安として共通して示されています。自店の設備を活かす居抜きベースの改装で坪あたり15〜30万円、前店が同系の居抜きを活用する場合で坪20〜50万円、レイアウトや設備までやり直すスケルトン化を伴う改装で坪あたり45〜80万円が典型的な範囲です。たとえば15坪のスケルトンなら設計費・厨房設備込みで600〜1,200万円前後になるケースもある、という構成が複数の公開情報で共通して見られます。
ただし、ここが開業との決定的な違いです。改装の費用は坪単価で割り切れません。開業はゼロから内装と設備を積み上げますが、改装は既存の解体・撤去・原状回復・養生・営業しながらの段取り替えといった費用が上乗せされ、現況によって大きく振れます。とくに居酒屋は厨房と排気が重いため、既存設備をどこまで残せるかで総額が数百万円単位で変わります。
内訳を読むときのコツは、項目を「①壊す・戻す費用」「②客席・内装の費用」「③厨房・排気・設備の費用」「④個室などの造作」「⑤諸経費」に分けて見ることです。開業の見積もりと違い、改装では①の解体・撤去・養生・原状回復が必ず乗り、ここが現況で大きく動きます。見積書を受け取ったら、まず①と③がどこまで含まれているかを確認すると、各社の金額差の理由が見えてきます。
公開情報で示される一例として、20坪の居抜き居酒屋を改装した場合の費用配分を見てみましょう(金額は目安)。
この例では総額に対する坪単価が約30万円ですが、同じ20坪でも炭火の焼き場を新設したり、排気ダクトを引き直したりすれば坪単価は跳ね上がります。配分は現況と目的で変わるため、自店の数字は現地調査を踏まえた見積もりで確かめてください。範囲をどこまで広げるかで費用感は大きく変わります。
部分改装
全面・スケルトン
費用の全体像は店舗内装の費用ガイド、業態別の内装の違いや個室造作の費用そのものは居酒屋の内装ガイドでも詳しく扱っています。
なお、部分改装で内装材だけを張り替える場合の単価の目安(公開情報)は、壁紙(クロス)が1,000〜2,000円/㎡、床のクッションフロアが2,000〜5,000円/㎡、床タイルが3,000〜8,000円/㎡、天井クロスが1,500〜3,000円/㎡、壁の塗装が1,000〜3,000円/㎡ほどです。「壁だけ」「床だけ」といった部分的な改装では、この㎡単価から概算できます。
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業態・広さ・立地・改装レベルに加えて、改装する部位や手を入れる設備(厨房・排煙ダクト・グリストラップなど)を選ぶと、あなたの状況に合わせて工事費の概算・内訳・想定休業・注意点までその場で変わります。居酒屋の改装は厨房と排気の現況で大きく振れるため、予算の当たりをつけるための目安としてお使いください。
営業しながら改装できる?「いつ休むか」が勝負
ここがカフェと逆になる、居酒屋改装の最大のポイントです。カフェは厨房が小さく客席が改装の主対象なので、半分ずつ・定休日施工で営業を止めずに進めやすい業態でした。ところが居酒屋の心臓は厨房(火力・焼き場・揚げ場・海鮮・排気)で、改装の動機そのものが厨房の刷新や老朽化であることが少なくありません。厨房を止めれば営業はできず、客席だけの工事に比べて「営業しながら」は構造的に難しくなります。
だから居酒屋改装では、「営業しながら続けられるか」よりも「いつ・どれだけ休むか」を設計するほうが現実的です。客席や内装だけの意匠改装なら定休日や休業日を組み合わせて進められますが、厨房や排気に触れるなら短期集中で休業したほうが、結果的に工期も費用も読みやすくなります。
居酒屋ならではのコツは、休業のタイミングを「宴会予約の谷」に合わせることです。忘年会・新年会の年末年始、歓送迎会の3〜4月といった繁忙シーズンを外し、比較的予約が少ない時期に短期集中で工事を行えば、機会損失を最小化できます。カフェが「常連の来店習慣の谷」を気にするのに対し、居酒屋は「宴会・予約の谷」を狙うのが効きます。継続できる工事と休業が必要になりやすい工事の線引きを押さえておきましょう。
- 【継続しやすい】客席の内装・床・壁、照明、サイン、カウンターの一部手直し
- 【継続しやすい】定休日や休業日で完結する範囲の意匠工事
- 【休業が要りやすい】厨房の移設・増設、焼き場・揚げ場の新設
- 【休業が要りやすい】排煙ダクトの引き直し、グリストラップの容量変更
- 【休業が要りやすい】受電・分電盤など電気の幹線工事、全面解体
そして見落とされがちなのが常連と宴会客への告知設計です。休業期間と再開日を事前に告知し、予約客には個別に連絡を入れます。SNS・店頭・Googleビジネスプロフィールを更新し、「リニューアル予告」としてポジティブに発信すれば、休業の谷を期待感に変えられます。
個室・半個室を「後から足す」改装
居酒屋改装でとくに相談が多いのが、個室・半個室の後付けです。接待・家族・宴会といった予約需要を取り込めるため、客単価を上げる改装として有効です。完全個室は1室あたり30〜80万円程度の造作費(壁・建具・空調の分岐)が目安、のれんやロールカーテンで仕切る半個室なら1箇所5〜15万円程度で「個室感」を演出できる、という範囲が公開情報で共通して示されています。
ただし、改装ならではの制約があります。開業時にゼロから設計するのと違い、後付けの個室は既存の梁・空調の分岐・排煙の経路が、壁を立てられる位置を制約します。「ここを個室にしたい」と思っても、空調の吹き出しや排煙ルートが通っていれば、思いどおりの間取りにならないことがあります。だからこそ、後付け個室は現況図面(なければ現地調査)が必須です。
完全個室
半個室
個室を増やすほど坪あたりの席数は減ります。削った席数のぶんを、個室の高い客単価と宴会受注で回収できるか——この採算の見立てが、個室化の改装では欠かせません。採算の考え方(大衆回転と個室客単価の比較)も居酒屋の内装ガイドが参考になります。
既存の厨房・排煙ダクト・グリストラップは残す?替える?
改装費を最も大きく左右するのが、居酒屋の重い設備——焼き場・揚げ場・排煙ダクト・グリストラップ・海鮮の給排水——を残すか替えるかの判断です。炭火・揚げ物・海鮮で、必要な排気量や容量はまったく違います。前店が同系の居酒屋なら既存を流用して費用を圧縮できますが、業態を変える改装では既存ダクトやグリストラップが容量不足になりがちで、引き直しに数十万〜百万単位がかかることがあります。
居酒屋改装で確認すべきポイントを整理します。
- 排煙・ダクト:焼き場・揚げ場を増やすなら、ダクトの径・経路・防火が足りるか
- グリストラップ:容量は新しいメニュー構成に合うか。床下の状況で費用が変わる
- 焼き場(炭火・グリル):備長炭の高温と大風量排気に既存設備が対応できるか
- 海鮮(生け簀・水槽):給排水・製氷・床荷重が論点。後付けは配管が要る
- 厨房機器・ガス:容量と種類が合うか。中古活用は使用年数と保証を確認
- 受電容量・分電盤:厨房機器や空調の増強で上限に当たることがある
判断のコツは、「使えるはずだから残す」ではなく、「現況の排気経路と容量を見て、新しいメニュー構成に足りるか」で決めることです。能力が足りないまま残すと、改装後に油煙・臭気・能力不足が営業を直撃します。逆に、前店と同系で容量に余裕があれば、流用で大きくコストを下げられます。これは図面と現況を見なければ判断できないため、現地調査の精度がそのまま見積もりの精度になります。
あなたの居酒屋は業者を選べる?(発注自由度と原状回復)
意外に知られていませんが、改装で「業者を自由に選べるか」は店舗の立地条件で変わります。路面店や独立した建物は、排気・ガス・給排水の幹線まで自由に選べるため、複数社で相見積もりを取って価格と提案を比較できます。とくに居酒屋は排気やガスの工事範囲が大きいぶん、相見積もりで各社の金額差が出やすく、比較する価値が大きい業態です。
一方、商業ビルや駅ビル内、地下や空中階のテナントは、意匠造作は自由でも、排気・電気増設・防災・給排水の幹線がビル指定(B工事)になりがちです。とくに排気はビルの共用シャフトや防災と絡むため、取り回しに制約が出やすく、地下や空中階では搬入・排煙の面でも費用が割高になります。
路面・独立テナント
ビル・地下・空中階
もう一つ、改装ならではの落とし穴が原状回復義務の境界です。営業中ということは賃貸借契約の途中です。改装で個室や造作を足すと、退去時に「もともと借りたときの状態」に戻す義務に加えて、自分が新たに足した造作の分まで原状回復を負うことがあります。特に前テナントの居抜き造作の上に重ねた場合、責任範囲が複雑になります。改装の契約段階で、どこまでを誰が戻すのかを切り分けておきましょう。
自店がビル内テナントで設備がB工事縛りでも、意匠・客席・個室まわりは相見積もりで最適化できます。路面店なら全体を比較できます。どちらの場合も、複数社の見積もりを取って比べることが、改装費を適正にする近道です。
居酒屋改装の目的別 進め方
改装で失敗する典型は、目的が曖昧なまま「とりあえずきれいにする」ことです。目的を一つに絞ると、予算・範囲・工期・営業継続の可否まで自然に決まります。居酒屋改装でよくある目的を比べておきましょう。
① 老朽更新
② 業態リフレッシュ
③ 個室化テコ入れ
注意したいのは、売上が好調なら、無理に全休して改装しない判断もあるということです。タイミングを誤ると、かえって宴会の常連客が離れることもあります。「今の店の何を、なぜ変えるのか」を先に言語化しましょう。改装で起こりがちな後悔とその回避は店舗改装の失敗防止ガイドも参考になります。なお、同じ改装でも、業種が違えば核心も変わります。客席が中心で営業しながら進めやすい例としてカフェ改装ガイドもあわせてご覧ください。
改装の流れと工期・リニューアルオープン
居酒屋改装は、おおむね次の流れで進みます。改装は現況勝負のため、見積もりの前の現地調査(とくに排気経路の確認)がとりわけ重要です。
工期の目安は、客席・意匠中心の部分改装で2〜6週間、厨房・排気やレイアウトまで及ぶ全面改装で1.5〜3ヶ月、スケルトン化を伴う場合は3ヶ月以上が目安です。再開時は、予約の再受付や常連への告知、宴会シーズンに向けた集客をセットで計画すると立ち上がりがスムーズです。改装全体の進め方は店舗改装の流れガイドでも整理しています。
失敗しない業者の選び方(居酒屋改装版)
居酒屋改装で業者を選ぶときは、開業の内装業者選びとは少し見るべき点が違います。改装は現況に左右されるため、次のような観点で確認しましょう。
- 居酒屋・飲食店の改装実績があるか(新装だけでなく改装の経験)
- 現地調査が丁寧か、とくに排気経路・容量を確認してくれるか
- 既存設備(排煙ダクト・グリストラップ・焼き場)の流用可否を提案できるか
- 居抜き造作の扱いや、退去時の原状回復について説明してくれるか
- 見積もりの内訳が明確か(解体・養生・原状回復・排気まで含むか)
そして相見積もりは必須です。改装は現況依存で各社の見方が割れやすく、とくに居酒屋は排気・厨房の判断で金額が大きく動くため、1社だけでは妥当かを判断できません。複数社を比べることで、適正価格と相性の良い会社が見えてきます。見積もりの読み方や比較のコツは店舗の見積もり比較ガイドを参考にしてください。
改装の法令チェック(再トリガー)
改装では、開業時に済ませたはずの法令確認が再び必要になることがあります。居酒屋でとくに見落としやすい点を押さえておきましょう。
いずれも物件や自治体によって判断が分かれます。早い段階で、所管の特定行政庁・消防署・警察署や、専門家・施工会社に確認してください。深夜酒類・風営法との境界の詳しい解説は居酒屋の内装ガイドにもあります。
よくある質問(FAQ)
まとめ|まずは席ミックスと現地調査から
居酒屋改装は、内装の見た目より先に「大衆回転・個室・カウンターの席ミックスをどう組み替えるか」から考えるのが成功の近道です。居酒屋は厨房と排気が改装の核心で、カフェと逆に営業しながらは難しく、宴会の谷を狙って「いつ休むか」を設計するのが効きます。既存の排煙ダクト・グリストラップを残すか替えるか、個室を後から足せるか、業者を選べるか——いずれも現況を見なければ判断できません。まずは席ミックスの方針を決め、排気経路まで見る現地調査を受け、複数社の見積もりを比較することから始めましょう。
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