居酒屋の移転|旧店の原状回復+新店の内装を一括で進める費用相場・段取り・業者の選び方

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居酒屋の移転は、引っ越し作業ではなく「旧店の原状回復」と「新店の内装」という二つの工事を同時に走らせるプロジェクトです。しかも居酒屋は重飲食ゆえ、畳む側の費用が想像以上に膨らみます。このガイドは、移転の総額・相見積もりの効かせ方・二重家賃を抑える段取り・両方を任せられる業者の選び方を、退店と出店を一つにつないで整理します。

30秒でわかる結論

  • 移転の正体:旧店の原状回復+新店の内装=二重工事。総額の主役は「新店をいくらで作るか」より「旧店をいくらで畳むか」に振れやすい
  • 居酒屋が高い理由:大風量の排気ダクト・グリストラップ・ガス配管・防音個室の解体が乗り、原状回復は坪単価の上限寄りになりやすい
  • 相見積もりの使い分け:旧店(指定のB工事が混在)は金額の妥当性検証用、新店(自由なC工事)は業者選定用と役割が真逆
  • 二重家賃の抑え方:新店の竣工日から逆算して、旧店の解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)を合わせる
  • 業者選び:原状回復+新店内装+並行管理を一括で握れる会社が、総額と納期の両方を最小化できる

居酒屋の移転は「二重工事」——なぜ総額の主役が旧店側に逆転するのか

移転は「旧店の原状回復」と「新店の内装」という二つのプロジェクト

移転とは、旧店を賃貸借契約どおりの状態に戻す原状回復と、新店をゼロまたは居抜きから立ち上げる内装工事が並行して進む状態です。世の中の記事は、退店側だけを扱う原状回復の解説か、出店側だけを扱う居酒屋の内装の解説のどちらか一方に偏りがちですが、それでは移転の半分しか見えません。総額も納期も、両方を一度に握って初めて正確に見えます。

居酒屋の原状回復が高くなる5つのドライバー

カフェのような軽飲食と違い、居酒屋の原状回復には次の項目が乗ります。①大風量・長尺の排気ダクトの撤去 ②グリストラップの撤去・清掃 ③ガス配管の閉止・撤去 ④防音された個室や小上がりの造作解体 ⑤油が染み込んだ床・壁・天井の交換です。これらは軽飲食には無いか軽微で、坪単価を押し上げる主因になります(グリストラップや排水まわりは給排水工事の費用も参考になります)。一般に公開されている相場では、飲食店をスケルトンに戻す原状回復は坪あたり3〜10万円程度とされ、重飲食ほど上限に近づきます。

原状回復の坪単価は業態の「重さ」で変わる(公開相場の目安)。

カフェ(軽)
坪3〜5万円
居酒屋(中〜重)
坪5〜8万円
焼肉・ラーメン(重)
坪7〜10万円

退店だけ・出店だけでは総額を見誤る

多くの記事は原状回復(退店)か内装(出店)の一方だけを解説します。移転では両方が同時に発生し、しかも片方の遅れがもう片方の二重家賃に直結します。総額・納期は必ず両側を合算して見てください。

居抜きで入居した店は「承継した原状回復義務」に注意

前のテナントの造作を引き継ぐ居抜き(造作譲渡)で入居した場合、退去時の原状回復義務もそのまま承継しているケースがあります。つまり自分が作っていない部分まで、契約上はスケルトンに戻す義務を負っていることがあるということです。移転を考え始めたら、入居時の契約形態(スケルトン入居か居抜き入居か)と、契約書に書かれた「戻すべき原状」をまず確認します。ここを見落とすと、想定の倍近い原状回復費が後から判明することがあります。

移転と改装、どちらを選ぶか

立地や客層を大きく変えたい、現店舗が手狭、契約更新で条件が悪化した——こうした理由なら移転が候補になります。一方、立地に不満がなく内装の古さや動線だけが課題なら、二重工事の発生しない改装のほうが総額を抑えられることが多いです。判断の分かれ目は「立地・面積・契約条件を変える必要があるか」で、変える必要がなければ改装、変えるなら移転、と整理すると迷いにくくなります。

居酒屋移転の費用相場——旧店・新店を1つの予算表で見る

移転費用は「旧店をいくらで畳むか」と「新店をいくらで作るか」の合算です。まず3つの要素を押さえます。

坪3〜10万円
旧店の原状回復
坪15〜60万円
新店の内装(居抜き〜スケルトン)
数十万円〜
付帯(引越・什器移設・届出など)

旧店の原状回復費用

内訳は、内装解体/厨房機器の搬出・撤去(ガス台・フライヤー・製氷機・冷蔵庫などの重量物)/排気ダクト・グリストラップの撤去/ガス管の閉止/電気設備・看板の撤去/産業廃棄物の処分/原状確認の立会い、が一般的です。重量厨房機器の搬出は搬出ルート・床養生・エレベーター使用の制約で費用が増えます。居酒屋は坪3〜10万円の中でも中〜上に振れやすく、範囲やスケルトン返しの要否は原状回復の契約・範囲で必ず確認します。

新店の内装費用

新店を居抜き(厨房・ダクト・グリストラップを流用)にできれば坪15〜30万円程度、スケルトン(ゼロから)なら坪30〜60万円程度が一般的な目安です。居酒屋は厨房・排気・防音・客席造作で上振れしやすい一方、新店を居抜きにできれば移転総額は大きく下がります。新店側の設計や坪単価の詳細は居酒屋の内装ガイドが参考になります。

移転総額の考え方とシミュレーション

総額=旧店の原状回復+新店の内装+付帯(引越・什器移設・新店什器・届出関連)です。下のシミュレーターで、旧店の規模とグレード、新店の規模とタイプを選ぶと概算の総額レンジが出ます。

旧店の坪数:坪 / 新店の坪数:

旧店の原状回復グレード:

新店の物件タイプ:

旧店の原状回復
新店の内装
概算の移転総額(付帯は別途)

規模別の目安は次のとおりです(公開されている坪単価の目安で機械的に計算した概算。付帯費用は含みません)。

規模(旧店/新店) 旧店の原状回復 移転総額の目安(新店込み)
10坪/10坪 約40〜80万円 約190〜680万円
15坪/15坪 約60〜120万円 約285〜1,020万円
20坪/20坪 約80〜160万円 約380〜1,360万円
30坪/30坪 約120〜240万円 約570〜2,040万円

新店を居抜きにできれば総額は下限側、スケルトンなら上限側に振れます。新店タイプ別の内訳は上のシミュレーターで確認できます。

見落としやすい付帯費用と敷金の扱い

移転総額には工事費以外の付帯も乗ります。旧店からの引越し・什器の移設・新店の什器や備品・新店の保証金や敷金・常連への移転告知や販促などです。さらに重要なのが旧店の敷金(保証金)と原状回復費の相殺で、原状回復費は預けた敷金から差し引かれるのが一般的です。敷金を上回れば差額を追加で請求されます。重飲食の居酒屋は原状回復が高くなりやすいため、敷金だけでは足りず持ち出しになる前提で資金計画を立てておくと安全です。

相見積もりの「役割」は旧店と新店で真逆——B/C工事のどこで効くか

同じ「移転で相見積もり」でも、旧店と新店では狙いが正反対です。旧店は金額が妥当かを検証するための相見積もり、新店は業者を競わせて選ぶための相見積もりです。この違いは工事区分(A・B・C)で説明できます。

A・B・C工事の基本(移転での例)

A工事は躯体・共用部・防災設備など建物側(貸主負担)、B工事は専有部でも防火区画・幹線・防災に関わる部分(ビル指定業者で施工)、C工事は専有部の内装・厨房・排気・防音・客席造作や原状回復の解体(自由に選定可)です。移転での相見積もりの効きは次のとおりです。

工事区分 業者を選べるか 相見積もりの役割
A工事 選べない(貸主手配) 基本は対象外
B工事 選べない(指定業者) 金額の妥当性を検証して交渉
C工事 選べる(自由選定) 業者を競わせて選ぶ主戦場

工事区分の詳細はA工事・B工事・C工事の違いで確認できます。

旧店の相見積もり=金額の検証用

旧店の原状回復はビル指定のB工事が混じることが多く、業者を自由に選べない部分があります。ここでの相見積もりは「指定業者の金額が市場価格と乖離していないか」「数量や項目に重複・過剰がないか」を検証し、交渉材料にするためのものです。指定だからと丸呑みせず、内訳の数量・単価をC工事の相場と突き合わせます。

B工事の見積もりで具体的に見るのは次の3点です。数量が実際の専有面積や設備量と合っているか、単価が同種のC工事の相場とかけ離れていないか、共用部や他テナントと共通の工事費が過剰に按分されていないか。これらを根拠を添えて指摘できると、指定業者が相手でも交渉の糸口になります。

新店の相見積もり=業者の選定用

新店の専有部内装はC工事=自由選定です。ここは複数社を競わせて、価格・設計力・工程管理を横並びで比較して選ぶ主戦場になります。居酒屋なら厨房・排気・防音の実力差が出やすい部分です。

路面店かビルインかで自由度が変わる

居酒屋に多い雑居ビルの2階以上や商業施設インは、B工事の比率が上がり「選べない部分」が増えます。逆に路面の独立店は指定が少なく自由度が高い傾向です。旧店・新店それぞれについて、早い段階でB工事とC工事の線引きを確認するほど、相見積もりが効く範囲が広がります。

指定のB工事でも交渉余地は残る

B工事は業者を選べなくても、見積もりの内訳・数量・単価をC工事の相場と突き合わせれば妥当性は検証できます。重複や過剰を具体的に指摘することで、適正な金額に近づける交渉が可能です。

二重家賃を圧縮する移転スケジュール——新店竣工から逆算する

移転で資金を最も無駄にするのが、旧店と新店の家賃が重なる二重家賃です。これは旧店の明渡しと新店の工事の「重なり方」で決まります。

旧店の家賃(明渡しまで)新店の家賃(契約から)二重家賃が発生する期間新店 契約・着工旧店 明渡し

工期の非対称が問題の核心

原状回復(解体)は数日〜2週間ほどの短期集中ですが、新店の内装は厨房・排気・防音で2〜3ヶ月かかります。長さが非対称だからこそ、どちらを先行させるかで「二重家賃」と「営業空白」のどちらが膨らむかが決まります。

「旧店先行」と「新店先行」のトレードオフ

新店を先に作る

二重家賃 1〜3ヶ月
営業空白ほぼ無し
二重家賃発生する
向くケース常連が強い・客足を切りたくない

旧店を先に畳む

営業空白 1〜3ヶ月
営業空白発生する
二重家賃ほぼ無し
向くケース立地を大きく変える・資金を抑えたい

最適解は「新店竣工に旧店明渡しを噛み合わせる」逆算

理想は、新店の竣工日を起点に、開店→数日で旧店の原状回復→明渡し、と重ねる形です。賃貸借契約の解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)は、この逆算カレンダーの出発点になります。予告期限を逃すと旧店の家賃が無駄に伸びるため、新店の工期が固まる前から旧店の解約タイミングを設計しておきます。

二重家賃を相殺する有力な手が、新店のフリーレント(賃料無料期間)です。新店の契約時にフリーレントを交渉できれば、その期間を内装工事に充てることで、工事中は新店の家賃が発生せず実質的な二重家賃を圧縮できます。逆に注意したいのが解約予告の罠で、予告を出した後に新店の工期が延びれば旧店の家賃だけが伸び、早く予告しすぎれば新店が間に合わず営業空白が伸びます。予告は「新店の工期が見積もりで固まってから」逆算して出すのが鉄則です。

逆算で押さえるチェックリストは次のとおりです。

  • 解約予告の期限を賃貸借契約書で確認した
  • 旧店・新店それぞれの指定業者(B工事)の有無を確認した
  • 新店の工期(厨房・排気・防音)を見積もりで確定した
  • 新店の竣工日から逆算して旧店の解約日を設定した
  • 旧店家賃と新店家賃の重複期間を最小化できているか試算した

居酒屋移転の進め方——明渡しから新店開店までの流れ

移転は、旧店の契約確認から新店の開店、旧店の明渡しまでが一本の流れです。全体像を押さえておくと、相見積もりと工程の重ね方を判断しやすくなります。

1契約確認・解約予告予告期限と原状回復範囲
2現地調査・相見積もり旧店と新店の両方
3新店 設計・着工厨房・排気・防音
4届出の準備保健所・消防・警察
5新店 竣工・開店検査・営業許可
6旧店 原状回復・明渡し解体・明渡し立会い

届出は「新店=新規開設」が原則

移転は同じ屋号でも、新店は新規開設として扱われるのが原則です。飲食店営業許可は店舗ごとなので新店で取り直し(保健所の事前相談と施設検査)、規模により食品衛生責任者・防火管理者の選任、深夜0時以降に酒類を提供するなら深夜酒類提供飲食店営業開始届(警察)が必要なケースもあります。食品衛生責任者は店舗ごとの配置なので移転先でも必要で、防火管理者は新店の収容人数や面積で要否が変わります。旧店は廃業や住所変更などの届出を行います。退店側の手続き全般は閉店・撤退の手続きも参考になります。

「住所変更で済む」と考えない

移転では新店の営業許可は取り直しが原則です。新店の図面段階で保健所に事前相談しておくと、内装と許可がかみ合い、開店の遅延を防げます。

常連を逃さないための移転告知

居酒屋の移転で売上を左右するのが、常連客の引き継ぎです。移転が決まったら早めに、旧店での店内掲示・会計時の案内・SNSやLINEでの告知を重ね、新店の場所と開店日、移転の理由(拡張やリニューアルなど前向きな表現)を繰り返し伝えます。旧店の営業最終日と新店の開店日が近いほど客足は途切れにくく、可能なら数日の重複営業や連続した開店で「閉まっている期間」を感じさせない設計が有効です。常連が強い店ほど、工事の段取りを営業空白が短くなる側に寄せる価値が高まります。

「二重工事を1社で捌ける業者」の選び方

移転では、旧店の原状回復業者と新店の内装業者を別々に頼みがちです。しかし原状回復+新店内装を1社が握ると、解体ゴミの処理と新店の着工待ち、図面・現地情報の引き継ぎといったロスが消え、逆算カレンダーで二重家賃を圧縮できます。

原状回復+新店内装+並行管理を一括できるか

「二重工事を1社で捌ける能力」とは、旧店の解体と新店の施工を同じ工程表で重ねて管理できることです。価格だけでなく、この管理力が総額と納期の両方を左右します。

業者を見極める評価軸

次の観点で複数社を比較します。

  • 重飲食(居酒屋)の原状回復の実績があるか
  • 排気・防音など新店の専門施工に対応できるか
  • 旧店の明渡しと新店の工事の工程を重ねて管理できるか
  • 旧店のB工事見積もりの妥当性を読めるか
  • 旧店の原状回復から新店の内装までを一括で見積もれるか

一括の相見積もりで起きること

複数社に「旧店の原状回復から新店の内装まで」をまとめて見積依頼すると、各社の総額・工程・責任分界点の考え方が横並びで比較できます。これにより、価格の安さだけでなく「二重工事を捌く能力」で業者を選べます。

一括で頼む場合も、原状回復と新店内装を1本の契約にまとめるか、別契約にして窓口だけ一本化するかは確認しておきます。どちらでも構いませんが、責任分界点(旧店の解体完了の定義、新店の引渡し条件、残置物の扱い)を書面で明確にしておくと、後のトラブルを防げます。

別業者に分けると起きやすいロス

旧店の解体が遅れて新店の着工が押す/解体ゴミや残置物の責任が曖昧になる/旧店の図面や現地情報が新店の業者に渡らない——こうしたロスは、両側を別々の業者に任せると起きやすくなります。

よくある質問

居酒屋の移転で原状回復は必ず必要ですか?

事業用物件では原則として必要です。範囲は賃貸借契約書と特約で決まり、スケルトンに戻す「スケルトン返し」が多く見られます。まずは契約書の原状回復条項と特約、指定業者の有無を確認してください。

新店を居抜きにすれば移転費用は安くなりますか?

新店側の費用は大きく下がります(居抜きで坪15〜30万円程度)。ただし旧店の原状回復は別に発生するため、総額は必ず旧店+新店の両方で見てください。

旧店と新店は同じ業者に頼めますか?

頼めます。原状回復から新店内装までを一括で扱える会社なら、工程を重ねて管理でき、二重家賃を圧縮しやすくなります。

二重家賃は避けられますか?

旧店を先に畳めばほぼ回避できますが、その分の営業空白が出ます。新店の竣工日から逆算して旧店の解約日を合わせると、家賃の重複期間を最小化できます。

保健所の営業許可は新店に引き継げますか?

原則として引き継げません。新店で取り直しになります。新店の図面段階で保健所に事前相談しておくと安全です。

移転総額の目安はどのくらいですか?

規模と新店タイプ次第です。15坪なら居抜き新店で数百万円から、スケルトン新店なら1,000万円前後まで幅があります。本文のシミュレーターで概算を確認できます。

指定業者の原状回復が高いと感じたら?

B工事で業者を選べなくても、見積もりの数量・単価をC工事の相場と突き合わせ、重複や過剰を指摘して交渉できます。相見積もりを「金額の妥当性検証」に使うのが有効です。

居酒屋の移転は、旧店をいくらで・いつまでに畳めるかという退店側の難所を、新店の内装と一つにつないで握れるかで総額と納期が決まります。両方をまとめて相見積もりに出すところから始めるのが、最も無駄の少ない進め方です。

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