店舗の原状回復・スケルトン戻し|費用相場・契約書の読み方・安くする3つの方法【退去までの時系列チェックリスト付き】

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店舗の退去で最初に知るべきことは、費用の相場ではありません。「解約通知を出す前と後で、選べる道の数が変わる」という事実です。通知を出す前なら、原状回復のほかに「居抜き売却」「造作譲渡」という出口があり、退去費用がゼロになる——どころか売却益が出ることさえあります。通知を出した後は、多くの場合、原状回復ほぼ一択。本ガイドは、原状回復・スケルトン戻しの費用相場と工事範囲、契約書の読み方、費用を安くする3つの方法、そして退去までの時系列チェックリストまで、店舗退去の実務を中立の立場で1ページにまとめました。

📋 30秒でわかる結論

  • 費用の目安:スケルトン戻しで、オフィス・物販は坪3〜5万円、軽飲食5〜8万円、重飲食8〜12万円。商業施設は施設条件で坪15万円超もある
  • 最重要の分岐:解約通知の「前」なら選択肢は3つ(居抜き売却・造作譲渡・原状回復)。通知の「後」はほぼ原状回復一択
  • 契約が法律より先:店舗の原状回復は賃貸借契約書の特約がすべて。居抜きで借りた店でも「スケルトン戻し特約」があれば全部壊す
  • 安くする3つの方法:①相見積もり ②指定業者なら「範囲の精査・数量の根拠・第三者査定」③造作譲渡の検討
  • 退去日から逆算:解約予告(3〜6ヶ月前が通例)→方針決定→見積もり→工事1〜2ヶ月→明け渡し立ち会い

30秒・無料:原状回復費用シミュレーター

「うちの店だと、いくらかかる?」を最初につかみましょう。業種・広さ・戻しレベルを選ぶと概算が出ます。造作譲渡が成立した場合の比較も表示します。

業種

広さ

戻しレベル

原状回復費の目安:

※標準的な概算です。階数・搬出条件・契約の特約・施設の指定条件で変わるため、最終判断は現地調査つきの見積もりで行ってください。

原状回復とスケルトン戻しの違い

原状回復とは、借りたときの状態に戻して返すこと。民法621条に定められた借主の義務で、店舗の場合は事業で使った内装・設備の撤去が中心になります。スケルトン戻し(スケルトン返し)は、その「戻す先」がコンクリート躯体むき出しの状態であること——床・壁・天井から配線・給排水・ダクトまで全部撤去する、原状回復の最も重い形です。

ここで住宅と決定的に違う点を1つ。住宅の原状回復には国土交通省のガイドライン(通常損耗は貸主負担)がありますが、店舗は「契約自由の原則」が前面に出て、賃貸借契約書の特約が事実上のルールになります。つまりあなたの原状回復義務の範囲は、法律の一般論ではなく、手元の契約書に書いてあります——本ガイドを読み進める前に、契約書の「原状回復」「明渡し」「特約」の条項を手元に置いてください。

費用相場・坪単価(業種別の早見表)

業種・物件 坪単価(スケルトン戻し) 20坪の目安
オフィス・物販・サービス 3〜5万円 60〜100万円
軽飲食(カフェ・バー等) 5〜8万円 100〜160万円
重飲食(焼肉・中華・ラーメン等) 8〜12万円 160〜240万円
商業施設テナント 15万円〜(施設条件で大きく変動) 300万円〜

同じ坪数でも金額が上下する要因は、①階数と搬出経路(エレベーターなし・夜間搬出指定は人件費が膨らむ)②造り込みの深さ(土間・防水・重量物)③施設の工事条件(商業施設は夜間工事・指定業者・養生基準で割増)④アスベスト等の調査・処理(古い建物は事前調査が義務化されており、検出されると別枠の費用)——の4つです。

業種で費用が変わる理由

原状回復費は「内装の豪華さ」ではなく「撤去する設備の重さ」で決まります。重飲食が高いのは、排気ダクト(屋上までの系統撤去)、グリストラップ(床下埋設の撤去と土間補修)、厨房防水の解体が重なるから。焼肉ラーメンの内装費が高い理由は、そのまま出口でも効いてきます。美容室は給排水(シャンプー台)の撤去と床下配管、クリニックは医療設備とX線室の遮蔽撤去が費用の主役。入口で高かった業種は、出口でも高い——これが原状回復の業種差の正体です。

工事範囲|どこまで戻すのか

スケルトン戻しの標準範囲は、①内装の解体撤去(床・壁・天井・造作・カウンター)②設備の撤去(厨房・空調・換気・電気・給排水・看板)③廃棄物の処分(マニフェスト管理)④クリーニング——です。見落としやすい注意点が3つ。

①入居時からあった物は原則対象外——ただし「原則」であり、契約書が優先します。②共用部に注意——店舗前の階段・共用トイレ・ファサード周りまで原状回復範囲に含まれている契約が実在します。③「どこまでがスケルトンか」は物件で違う——天井スラブ現し(むき出し)までか、軽天下地は残すのか。貸主・管理会社と工事前に範囲を文書ですり合わせ、できれば現地立ち会いをしてください。終わってから「ここも」と言われるのが、この工事で最も多い揉め方です。

契約書・特約の読み方

チェックすべきは4点です。①スケルトン特約の有無——最重要。「退去時は本物件をスケルトン状態にて返還する」とあれば、居抜きで借りた店でも全部壊して返すのが原則です(前のテナントの内装ごと)。②指定業者の条項——「原状回復工事は貸主指定の業者にて行う」とあれば相見積もりが効きません(対処は安くする3つの方法へ)。③解約予告期間——店舗は3〜6ヶ月前通知が通例。ここが全スケジュールの起点になります。④原状回復の範囲・仕様の別紙——ビル・商業施設では工事区分表(A・B・C工事)が退去時の費用も決めます。B工事で作った設備はB工事(指定業者)で撤去——入口の区分表は、出口の請求書でもあるのです。

運命の分岐点|解約通知の「前」と「後」

店舗退去で最も重要な意思決定は、業者選びではなく「解約通知をいつ出すか」です。

通知の前——選択肢は3つあります。①次のテナントに内装・設備ごと引き継ぐ居抜き売却・造作譲渡(原状回復費がゼロになり、譲渡益が出ることも)②設備の一部だけ売却して残りを撤去 ③通常の原状回復。通知の後——多くの契約で「明け渡し日」が確定し、買い手探しの時間が消えるため、実務上は原状回復ほぼ一択になります。

つまり、撤退を考え始めた瞬間にやるべきは、解体業者への電話ではなく「この店は居抜きで引き継げる状態か」の判断です。迷っている段階なら、通知はまだ出さない——これだけで、数百万円の意思決定の自由が手元に残ります。

居抜き売却・造作譲渡という選択肢

造作譲渡とは、内装・厨房・空調などの造作を次の借主(または買取業者)に有償・無償で引き継ぐこと。成立すれば原状回復費(数百万円)が消え、譲渡金が入る——退去の経済性が逆転します。

ただし万能ではありません。成立しやすい条件は、①業態の継続性(同業態がそのまま使える設備か——ラーメン店はラーメン店に売りやすい)②設備の年式(冷機10年目安・ダクトの状態)③立地(次のやり手が現れる場所か)。そして貸主の承諾が必須です(造作譲渡を認めない契約・貸主も実在します)。買い手が見つからないまま明け渡し日が迫ると、結局スケルトン戻しを短工期・割高で行う最悪パターンになるため、「◯月◯日までに買い手がつかなければ原状回復に切り替える」という撤退ラインを最初に引いておくのが実務の作法です。

「うちの契約だとどこまで戻すのか」「この見積もりは適正か」は、契約書と現地を見られるプロの目で変わります。原状回復・解体に対応できる会社のご紹介、既に取った見積もりの査定(セカンドオピニオン)を無料マッチングで承ります(ご紹介・ご相談は無料・しつこい営業なし)。
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費用を安くする3つの方法

方法①:相見積もり(指定がない場合)——原状回復・内装解体は会社による価格差が大きい工事です。同条件で2〜3社、必ず現地調査つきで比較してください。安すぎる見積もりは廃棄物処理が適正か(マニフェスト)も確認を。何社に頼むか・同条件のつくり方・断り方の文例は内装工事の相見積もり完全ガイドに実務手順をまとめています。

方法②:指定業者なら「3つの精査」——B工事と同じ構造で、指定業者の見積もりには競争が働きません。対抗は値切りではなく、(1)範囲の精査——契約上の義務範囲を超えた項目(入居時からあった設備の撤去等)が入っていないか (2)数量の根拠——㎡数・処分量の根拠を出してもらう (3)第三者査定——相見積もりは取れなくても、別の内装・解体会社に見積もりをチェックさせることは自由です。プロが見れば過剰項目は一目で分かります。

方法③:造作譲渡の検討(通知前限定)——前章の通り、成立すれば費用そのものが消えます。検討の時間を確保するためにも、解約通知のタイミングは慎重に。

退去までの時系列チェックリスト

時期 やること ポイント
6ヶ月前〜 契約書の確認(解約予告・特約・指定業者)/居抜き可否の判断 通知はまだ出さない
4〜5ヶ月前 方針決定(譲渡か原状回復か)/解約通知 譲渡なら撤退ラインの日付を設定
3ヶ月前 見積もり取得(2〜3社 or 指定業者+査定)/範囲のすり合わせ 貸主と範囲を文書で確認
2ヶ月前 業者決定・工事日程確定/ライフライン解約日の調整 電気・ガスは工事完了まで残す
1ヶ月前〜 工事(2〜4週間目安) 近隣挨拶・夜間条件の確認
明け渡し日 貸主立ち会い・鍵返却・精算確認 写真を残す

工期の目安は20坪のスケルトン戻しで2〜4週間。退去日に間に合わないと日割り賃料や違約金が発生するため、逆算で動いてください。

敷金・保証金の精算との関係

店舗の保証金には「償却(敷引き)」——退去時に無条件で差し引かれる定め——があることが多く、ここに原状回復費の精算が重なります。注意すべきは二重負担の構図:自分の手配で原状回復を完了したのに、さらに保証金から「原状回復費」名目の控除をされるケースです。精算書は項目ごとに根拠を確認し、契約書の償却条項と突き合わせてください。保証金の返還時期(明け渡し後◯ヶ月)も契約で異なり、撤退後の資金繰りに直結します。

これから借りる人へ|入口で出口が決まる

このページに「開業前」にたどり着いたあなたは、数百万円を節約できる位置にいます。物件契約の前に、①スケルトン特約の有無 ②指定業者条項 ③解約予告期間 ④工事区分表——の4点を読んでください。そして事業計画の撤退ラインに「原状回復費=坪5〜12万円×坪数」を最初から計上しておく。出口コストを知らずに入口の契約書へ判を押すことが、数年後の「想定外の数百万円」の正体です。居抜き物件を検討中なら、飲食店の内装ガイドの居抜き3資産の章もあわせてどうぞ。

業者の選び方

原状回復の依頼先は、解体専門会社か、内装会社(解体も請ける)の2系統です。見るべきは3点——①店舗の原状回復実績(住宅解体と店舗は別物。ダクト・グリスト・防水の撤去経験)②マニフェスト(産廃管理票)の発行——出さない会社は論外です ③貸主・管理会社との調整力——範囲のすり合わせと立ち会いを仕切れる会社は、揉め事ごと減らしてくれます。

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よくある質問

Q1. 原状回復とスケルトン戻しは何が違いますか?
原状回復は「借りたときの状態に戻す」義務の総称、スケルトン戻しは戻す先が躯体むき出し状態である最も重い形です。どちらに当たるかは契約書の特約で決まります。

Q2. 居抜きで借りたのにスケルトン戻しと言われました。
契約書に「スケルトン状態で返還」の特約があれば、前テナントの内装ごと撤去するのが原則です。まず契約書の特約を確認し、範囲を貸主と文書ですり合わせてください。

Q3. 見積もりが相場より高い気がします。
範囲(義務外の項目が入っていないか)・数量(㎡・処分量の根拠)・単価の3点を精査してください。別の会社に査定してもらうセカンドオピニオンも有効です。

Q4. 指定業者は拒否できますか?
契約に指定条項があれば基本的に拒否できません。ただし範囲の精査・数量の根拠要求・第三者査定はいつでも可能で、それだけで金額が動くことは珍しくありません。

Q5. 工事期間はどれくらいですか?
20坪のスケルトン戻しで2〜4週間が目安です。商業施設の夜間工事指定や搬出制約があると延びます。退去日から逆算して2ヶ月前には業者を決めてください。

Q6. 造作譲渡とは何ですか?
内装・設備を次の借主に引き継ぐことです。成立すれば原状回復費が不要になり譲渡金が入ることもありますが、貸主の承諾が必須で、解約通知前に動く必要があります。

Q7. 原状回復費は敷金から引かれますか?
契約によります。自分で工事を完了した場合に別途控除されていないか、償却(敷引き)と二重になっていないか、精算書の項目を必ず確認してください。

Q8. アスベストがあると言われたら?
解体前の事前調査は法律で義務化されています。検出された場合は専門の処理が必要で費用と工期が増えるため、見積もり段階で調査の有無と費用の扱いを確認してください。

まとめ

店舗の原状回復は、①費用は「撤去する設備の重さ」で決まる(坪3〜12万円)②契約書の特約がすべて ③解約通知の前が運命の分岐点——通知前なら居抜き売却・造作譲渡で費用が消える可能性がある ④指定業者には範囲・数量・査定の3精査 ⑤退去日から逆算で2ヶ月前に業者決定——この5点で、退去の数百万円をコントロールできます。改装して続ける選択肢と迷っているなら店舗の改装・リニューアルガイドもどうぞ。

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