24時間換気は建築基準法の義務?——30秒の結論
はい、義務です。シックハウス対策として建築基準法(28条の2)により、居室には換気回数0.5回/h以上の24時間換気設備(機械換気)の設置が義務付けられています。店舗の売場・客席・事務室も「居室」に当たるため原則対象で、店舗ではさらに厨房排気・空気環境基準など複数の法定基準が重なります(本文で6基準を整理)。一方、納戸・倉庫など居室でない室や、既存建物で改修の内容によっては対象外・既存不遡及となるケースがあり、判断は「その部屋が居室か」「確認申請を伴う工事か」で分かれます——詳しくは本文の対象外の章へ。設計・費用の目安は下のシミュレーターで試算できます。
店舗の24時間換気・給排気設計とは?このガイドのゴール
店舗の空気環境は、建築基準法のシックハウス規制(24時間換気)、建築物衛生法(特定用途の床面積3000㎡以上)、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則、飲食店の厨房排気など、複数の法令・基準が絡みます。業態によって適用範囲と設計優先順位が大きく変わります。本ガイドでは、24時間換気の法的位置づけ、業態別(飲食/美容/クリニック/オフィス/物販)の給排気設計差、全熱交換機の採用判断、CO2濃度・湿度・温度の空気質管理、費用相場、物件選定段階の確認項目までを一次情報ベースで整理します。本文中の制度情報・数値は記事公開時点のものであり、設計の最終判断は建築士・設備士・所管行政(建築指導課・労働基準監督署・保健所等)にご相談のうえご判断ください。
給排気・換気工事も含めた店舗内装の一括見積もり
店舗内装ドットコムでは、24時間換気・全熱交換・業務用空調を含む設計・施工を、実績豊富な登録会社から無料で複数社の見積もりが取得できます。
基本 店舗の「換気」が何を指すのか整理する
「換気」は住宅・店舗で意味が違います。住宅では建築基準法のシックハウス規制(24時間換気・0.5回/h以上)が中心ですが、店舗では以下の4系統が並行して必要になります。
- 居室換気(シックハウス対策):建築基準法に基づく全居室の0.5回/h換気
- 厨房換気(局所排気):飲食店の排気フード+給気、強制換気
- 空調換気(快適性):業務用エアコンの外気取り入れ・全熱交換
- 特殊換気(業態別):美容室の薬剤臭、クリニックの感染対策、タバコの分煙など
表① 業態別 必要換気量と工事費レンジ
まず、あなたの店の必要換気量を出しましょう。業種と坪数を選ぶと、気積(部屋の空気の体積)と必要換気量を2つの物差し(換気回数法/1人あたり30m³/hの人数法)で自動算出し、対応する設備クラスと工事費の目安帯まで一度に表示します。
※一般的な目安レンジです。厨房の火力(理論排ガス量)・ダクトルート・階数で変動します。正確な必要換気量と金額は、風量計算を含む見積もりでご確認ください。
必要換気量は「人数×一人あたり換気量」または「床面積×必要換気回数」で算出します。以下は20坪想定の業態別目安です。
実務では建築基準法の最低基準(居室0.5回/h)に加え、用途に応じた快適性・衛生の観点で換気量を上乗せします。業務用エアコンは外気取り入れ能力が限られるため、換気専用設備の併用が一般的です。
業態別 飲食/美容/クリニック/オフィスの換気設計差
空気質クリティカル業態
- クリニック:空気感染対策・陰圧室/陽圧室
- 美容室:パーマ・カラー剤の臭気・有機溶剤
- 飲食店客席:CO2濃度・体臭・料理臭
- フィットネス:CO2濃度・湿度管理
- 全熱交換機の採用推奨
- 外気取入量は法定基準の1.5〜2倍
標準換気業態
- 物販:来店客の滞在時間短い
- 学習塾:人数密度が高いが一時的
- オフィス・コワーキング:CO2管理中心
- 業務用エアコン+換気扇で対応可
- 全熱交換機は任意
- 外気取入量は法定基準
法令 建築基準法・建築物衛生法・労安法の3層規制
建築基準法(シックハウス規制)
建築基準法(e-Gov法令検索)第28条の2および施行令第20条の7〜9により、原則として全ての居室に機械換気設備の設置が義務付けられ、換気回数0.5回/h以上(住宅等居室)が基準です。店舗用途の居室も対象になります。
建築物衛生法(ビル管理法)
床面積3,000㎡以上の特定用途の建築物(百貨店・事務所・学校等)は、厚生労働省:建築物環境衛生管理の基準(CO2濃度1,000ppm以下、温度18〜28℃、相対湿度40〜70%等)を満たす必要があります。小規模テナントは直接対象外ですが、ビル全体として適用される場合があります。
労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)
事務所用途の店舗(コワーキング含む)は、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則により、CO2濃度1,000ppm以下、一酸化炭素10ppm以下等の基準が適用されます。
飲食店営業許可との関係
飲食店は食品衛生法の営業許可条件として、保健所が換気設備の有無・能力を確認します。自治体ごとに基準が異なるため、設置予定地の保健所で事前相談を行うのが確実です。
3法令協議のスケジュール
物件契約前
既存換気設備の系統図・給排気口位置を確認。建物の用途(特定用途か否か)で建築物衛生法の適用範囲が変わります。
基本設計時
業態別の必要換気量を決定し、建築基準法の換気回数要件を織り込みます。労安法の事務所衛生基準規則も並行確認。
実施設計時
必要に応じて保健所・建築指導課で事前相談。飲食店は営業許可取得前の図面段階で確認が効率的。
引渡前
試運転・風量測定・CO2実測で設計通りの性能を検証。記録を保管し、将来の行政検査時の根拠とします。
法令対応に慣れた業者を複数社から比較
建築基準法・衛生法・労安法の3層規制と業態固有の衛生基準を織り込める設計は、実績ある業者選びが重要です。
3層の先へ──業種で変わる「6つ目の法定」横断表
上の3層(建築基準法・建築物衛生法・労働安全衛生法)は土台ですが、実務ではさらに業種ごとの法定が重なります。飲食の厨房は火気使用室として理論排ガス量(V=定数×K×Q)の計算が要求され、オフィスは事務所衛生基準規則が1人あたり気積10m³という「席数の上限」を課し、整骨・鍼灸などの施術所は室面積の1/7以上の外気開放(または換気装置)が構造基準、劇場・ナイト系は興行場法・風営法の許可審査に換気が含まれます。そして全業種の実務の物差しになったのが、厚生労働省が示した1人あたり30m³/hの換気量です。
使い方はシンプルです——自分の業種の行を見て、その法定を満たす設計になっているかを見積もり段階で確認する。換気の法定は1つの法律にまとまっておらず、内装会社ですら業種側の基準(1/7開放や気積10m³)を知らないことがあります。この表を要件書に貼るだけで、確認漏れが構造的に消えます。
給気 「給気が主役」──ドアが重い店は換気が壊れている
換気の相談は「排気をどうするか」から始まりがちですが、換気は出した分だけ入れて初めて成立します。給気の計画が抜けた店には、はっきりした症状が出ます——①入口のドアが異様に重い(店内が負圧になっている)②扉がバタンと大きな音で閉まる ③排気しているのに煙・匂いが客席へ回る(空気の通り道が計画されていない)。この3つは故障ではなく、給気不足のサインです。
対策は、排気量に見合う給気口・給気ファンをセットで設計すること。第1種換気(給排気とも機械)はここが最も確実で、全熱交換機と組めば外気の熱ロスも抑えられます(次章)。第3種(排気のみ機械)でコストを抑える場合も、給気口の位置と面積が計画されているかを見積もりで必ず確認してください。強力に排気する業態(焼肉・ラーメン等の重飲食)ほどこの問題は深刻で、詳しくは焼肉屋の内装費用相場の給気章でも扱っています。「排気工事はするが給気工事をしない」施工は業界に実在する典型パターン——見積書に「給気」の文字があるかが、換気を計算できる会社かどうかの最初のリトマス紙です。
換気設備の種類と選定
第1種機械換気(給排気とも機械)
給気ファンと排気ファンの両方を機械で行う方式。外気取入量が安定し、全熱交換機との組合せも可能。コストは高めだが、空気質管理が厳密に求められる業態(クリニック・フィットネス・カフェ等)で採用されます。
第2種機械換気(給気のみ機械)
給気を機械、排気は自然換気(給気圧で押し出す)。クリーンルーム等の陽圧室で採用。店舗では限定的な用途です。
第3種機械換気(排気のみ機械)
排気を機械、給気は給気口から自然流入。一般的な店舗用途では最もコスト効率が良く、小規模物販・学習塾等で採用されます。
全熱交換機(ロスナイ等)の採用判断
全熱交換機は、排気から熱(温度+湿度)を回収して給気に戻すことで、空調負荷を30〜50%削減できる省エネ設備です。業務用エアコンの消費電力削減効果が大きく、ランニングコストでは一般換気より有利なケースが多くなります。
全熱交換機が効果的な業態
- クリニック・美容室:外気負荷が大きく、温度湿度管理重要
- 飲食店客席:冷暖房負荷の大部分が外気取り入れ分
- フィットネス:大量換気が必要で外気負荷大
- オフィス・コワーキング:長時間営業で省エネ効果累積
初期費用とROI
- 初期費用:天井埋込型20〜60万円、全館システム100〜300万円
- 運用コスト削減:空調電気代30〜50%減
- 投資回収期間:3〜7年が一般的
空調(業務用エアコン)側の容量選定・馬力の目安・工事費内訳は店舗の空調工事費用ガイドで詳述しています。換気と空調は給排気バランスで一体設計するのが基本です。
CO2・湿度・温度の空気質管理
良好な空気環境は来客満足度と従業員生産性に直結します。主要指標と推奨値を整理します。
- CO2濃度:1,000ppm以下(労安法基準)。2,000ppm超で集中力低下、頭痛等の症状
- 温度:夏24〜27℃、冬20〜23℃
- 相対湿度:40〜60%が推奨。40%未満はウイルス感染リスク上昇、70%超はカビ繁殖
- PM2.5:建築物衛生法で0.15mg/㎥以下
- ホルムアルデヒド:0.1mg/㎥以下(シックハウス対策)
工事費用の内訳分解
標準内訳(20坪・第3種換気+業務用エアコン)
- 給気口・排気口:各1〜3万円×4〜8箇所
- 換気ファン:シロッコファン5〜20万円
- ダクト配管:1mあたり1〜3万円
- ダクト吊金物・保温:配管費の30〜50%
- 業務用エアコン本体:室外機+室内機で30〜150万円
- 空調電気配線:10〜40万円
- 制御盤・スイッチ:5〜20万円
- 全熱交換機(採用時):20〜100万円
- 試運転・風量測定:3〜10万円
- 諸経費:工事費の10〜15%
機器の値段早見──「本体」と「工事」を分けて読む
見積もりを読むときは、機器本体と取付・配管工事を分けると比較しやすくなります。目安は、一般的なダクト用換気扇の本体が0.5〜3万円、業務用の有圧換気扇が3〜8万円、フード(グリスフィルター付き)が5〜20万円、全熱交換機(ロスナイ等)が1台10〜40万円——これに配管・開口・電気の工事が乗って、章冒頭の内訳になります。機器のグレード差は静音性・耐久・熱回収効率に出るため、営業時間が長い店ほど「安い本体×高い電気代」より「熱交換で回収」が効いてきます。
階数の掛け算──屋上立ち上げと足場
工事費を最も大きく振らせるのが排気の出口までの距離です。1階で壁から直接出せる小規模店(10〜20坪)のフード+有圧扇工事は40〜70万円が目安ですが、中高層階から屋上へダクトを立ち上げると100万円〜、外部に足場が必要ならさらに20万円〜が乗ります。同じ坪数・同じ設備でも、階数と建物のダクトルートだけで数十万〜百万円級の差——物件契約の前に「排気をどこへ出せるか」を管理会社に確認することが、換気費用の最大のコントロールポイントです。
物件 契約前に確認すべき5項目
物件契約前 換気・空調 5項目チェック
居抜き 既存換気・空調設備の活用可否
居抜き物件では既存換気設備の流用で開業費を圧縮できます。ただし、前業態と現業態で必要換気量が違う場合、追加工事が必要です。
流用しやすいパターン
- 前業態と類似(カフェ→カフェ等)
- 排気ファンのモーター劣化なし
- ダクト内部の油脂付着が少ない
- 給気口・排気口の位置が合致
- 業務用エアコンが10年以内
要追加工事パターン
- 前業態と大幅に違う(物販→飲食等)
- 排気ファンが騒音・振動を発生
- ダクト内部の堆積が著しい
- 給排気口の位置変更が必要
- 業務用エアコンが15年超(冷媒規制対応要)
契約前 発注前にオーナーが確認すべき8ポイント
発注前確認8項目
失敗例 換気・空調の典型失敗3ケース
ケース1:換気不足でCO2濃度超過→集中力低下クレーム
学習塾(25坪・生徒20名同時)で、換気を建築基準法最低(0.5回/h)で設計。開業後、授業中に生徒から眠気・頭痛の訴えが発生し、CO2実測で3,000ppm超を記録。換気ファン増設とCO2センサー追加で60万円の追加工事。当初から学習塾の標準(1.0〜1.5回/h)で設計していれば防げた失敗。
ケース2:給気不足で業務用エアコン効きが悪い
30坪のカフェで、排気ファンのみ強化して給気を怠った結果、室内が負圧になりドアの開閉が困難に。業務用エアコンの能力に対して外気取り入れが不十分で、夏場の冷房効きが悪化。給気ファン追加と外気ダクト新設で45万円の追加工事。給排気のバランス設計の基本を欠いた失敗。
ケース3:全熱交換機採用見送り→光熱費が月5万円増
20坪のクリニックで、全熱交換機(追加費用60万円)を「開業費用を抑えるため」見送り。開業後、空調電気代が月5万円増で、2年で投資額を超える損失。ROI試算をしていれば合理的な判断ができた失敗例。
FAQ よくある質問
建築基準法第28条の2で、居室には原則として機械換気設備の設置が義務付けられ、換気回数0.5回/h以上(住宅等の居室)が基準です。店舗用途の居室も適用対象となります。既存建物で改修せずに使用する場合でも、用途変更時等には適合が求められます。詳細は建築指導課にご相談ください。
多くの業務用エアコンは室内空気の循環が主機能で、外気取り入れ能力は限られます。建築基準法の換気要件を満たすには、換気専用設備(換気ファン・全熱交換機等)の併用が実務上の標準です。一部の機種で換気機能付きもありますが、能力を確認のうえ採用可否を判断します。
外気負荷が大きい業態(クリニック・美容室・飲食店客席・フィットネス)や長時間営業の業態では推奨されます。初期費用20〜100万円が追加でかかりますが、空調電気代30〜50%削減で3〜7年で投資回収できるケースが多くなります。短期出店(3年未満)や外気負荷が小さい物販等では、省略も選択肢です。
事務所衛生基準規則・建築物衛生法で1,000ppm以下が基準です。学習塾・フィットネス・クリニック・飲食店客席など人数密度が変動する空間では、CO2センサーの設置で換気制御を自動化するのが実務上の推奨です。センサー本体は1〜3万円で導入可能です。
業態が類似していれば流用可能です。点検項目は①排気ファンのモーター劣化・騒音、②ダクト内部の油脂堆積・汚れ、③給気口・排気口の位置が現業態に合うか、④業務用エアコンの経年(15年超は冷媒規制で更新推奨)の4点です。開業前に設備士または内装業者の点検を受けることをおすすめします。
規模に関わらず建築基準法の換気要件は適用されます。ただし小規模店舗では既設の換気扇・給気口で足りるケースも多く、居抜き物件の場合は追加工事不要の場合もあります。内見段階で設計士・内装業者に確認してもらうと判断しやすくなります。
引渡前の試運転で風量測定を行うのが実務上の標準です。設計値と実測値の乖離を早期に発見でき、調整対応が可能です。建築物衛生法の特定建築物(3,000㎡以上)では定期測定が義務付けられますが、小規模テナントでも引渡時の実測確認が推奨されます。
次の一歩 換気・空調設計の進め方
店舗の24時間換気・給排気・空調は、業態別の必要換気量を基本設計で確定し、建築基準法・衛生法・労安法の3層規制を織り込んだうえで設備選定・施工・試運転・引渡しの流れで進みます。物件選定段階で既存換気設備・給排気経路・業務用エアコン能力を確認することで、追加工事を最小化できます。
関連ガイドとして、飲食店の排気ダクト工事完全ガイド、店舗の防音工事完全ガイド、店舗の電気容量・電気工事完全ガイド、店舗の看板・サイン工事完全ガイド、カフェ開業ガイド、居酒屋開業ガイドもあわせてご参照ください。
給排気・空調を含む店舗内装の無料一括見積もり
店舗内装ドットコムなら、24時間換気・業務用空調・全熱交換を含む設計・施工を、業態実績豊富な登録会社から無料で複数社の見積もりが取得できます。
この記事について(運営者情報)
本記事は、店舗内装ドットコム(株式会社BPBコンサルティング運営)が、公的資料・法令(建築基準法のシックハウス対策・火気使用室の換気規定、建築物衛生法、労働安全衛生法・事務所衛生基準規則〈気積10m³/人等〉、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律・柔道整復師法の各施行規則〈室面積1/7以上の開放等〉、興行場法、風営法、厚生労働省の換気に関する公表資料〈1人あたり30m³/h〉)と、複数の施工会社・メーカーの公開価格を整理して作成・更新しています。最終更新:2026年7月7日。
作成・検証の方法:記載レンジは、公開されている複数の施工会社・専門メディアの提示額を横断照合し、重なり合う帯を採用したうえで、法令・公的資料の数値と突合して作成しています。金額は一般的な目安であり、必要換気量は厨房の火力・用途で個別に算定されます。法定基準の運用は所管行政で異なるため、図面段階での確認をおすすめします。
