店舗の24時間換気・給排気設計完全ガイド|業態別換気量・法令・全熱交換

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店舗の24時間換気・給排気設計とは?このガイドのゴール

店舗の空気環境は、建築基準法のシックハウス規制(24時間換気)、建築物衛生法(特定用途の床面積3000㎡以上)、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則、飲食店の厨房排気など、複数の法令・基準が絡みます。業態によって適用範囲と設計優先順位が大きく変わります。本ガイドでは、24時間換気の法的位置づけ、業態別(飲食/美容/クリニック/オフィス/物販)の給排気設計差、全熱交換機の採用判断、CO2濃度・湿度・温度の空気質管理、費用相場、物件選定段階の確認項目までを一次情報ベースで整理します。本文中の制度情報・数値は記事公開時点のものであり、実際の設計は建築士・設備士・所管行政(建築指導課・労働基準監督署・保健所等)にご相談のうえご判断ください。

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基本 店舗の「換気」が何を指すのか整理する

「換気」は住宅・店舗で意味が違います。住宅では建築基準法のシックハウス規制(24時間換気・0.5回/h以上)が中心ですが、店舗では以下の4系統が並行して必要になります。

  1. 居室換気(シックハウス対策):建築基準法に基づく全居室の0.5回/h換気
  2. 厨房換気(局所排気):飲食店の排気フード+給気、強制換気
  3. 空調換気(快適性):業務用エアコンの外気取り入れ・全熱交換
  4. 特殊換気(業態別):美容室の薬剤臭、クリニックの感染対策、タバコの分煙など
飲食店との棲み分け:飲食店の厨房排気は独立系統で、24時間換気とは別の設計になります(業務用厨房の設計・工事費用ガイド参照)。飲食店の排気設計は飲食店の排気ダクト工事完全ガイドを、本ガイドでは飲食店も含む客席・全業種の居室換気を中心に扱います。

表① 業態別 必要換気量と工事費レンジ

必要換気量は「人数×一人あたり換気量」または「床面積×必要換気回数」で算出します。以下は20坪想定の業態別目安です。

物販
換気0.5回/h|20〜60万円
学習塾
1.0〜1.5回/h|30〜80万円
美容室
1.5〜2.0回/h|40〜120万円
カフェ・バー軽
2.0〜3.0回/h|50〜150万円
クリニック
2.0〜4.0回/h|80〜250万円
飲食店客席
3.0〜5.0回/h|80〜300万円
フィットネス
4.0〜6.0回/h|120〜400万円

実務では建築基準法の最低基準(居室0.5回/h)に加え、用途に応じた快適性・衛生の観点で換気量を上乗せします。業務用エアコンは外気取り入れ能力が限られるため、換気専用設備の併用が一般的です。

業態別 飲食/美容/クリニック/オフィスの換気設計差

空気質クリティカル業態

  • クリニック:空気感染対策・陰圧室/陽圧室
  • 美容室:パーマ・カラー剤の臭気・有機溶剤
  • 飲食店客席:CO2濃度・体臭・料理臭
  • フィットネス:CO2濃度・湿度管理
  • 全熱交換機の採用推奨
  • 外気取入量は法定基準の1.5〜2倍

標準換気業態

  • 物販:来店客の滞在時間短い
  • 学習塾:人数密度が高いが一時的
  • オフィス・コワーキング:CO2管理中心
  • 業務用エアコン+換気扇で対応可
  • 全熱交換機は任意
  • 外気取入量は法定基準

法令 建築基準法・建築物衛生法・労安法の3層規制

建築基準法(シックハウス規制)

建築基準法(e-Gov法令検索)第28条の2および施行令第20条の7〜9により、原則として全ての居室に機械換気設備の設置が義務付けられ、換気回数0.5回/h以上(住宅等居室)が基準です。店舗用途の居室も対象になります。

建築物衛生法(ビル管理法)

床面積3,000㎡以上の特定用途の建築物(百貨店・事務所・学校等)は、厚生労働省:建築物環境衛生管理の基準(CO2濃度1,000ppm以下、温度18〜28℃、相対湿度40〜70%等)を満たす必要があります。小規模テナントは直接対象外ですが、ビル全体として適用される場合があります。

労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)

事務所用途の店舗(コワーキング含む)は、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則により、CO2濃度1,000ppm以下、一酸化炭素10ppm以下等の基準が適用されます。

飲食店営業許可との関係

飲食店は食品衛生法の営業許可条件として、保健所が換気設備の有無・能力を確認します。自治体ごとに基準が異なるため、設置予定地の保健所で事前相談を行うのが確実です。

3法令協議のスケジュール

物件契約前

既存換気設備の系統図・給排気口位置を確認。建物の用途(特定用途か否か)で建築物衛生法の適用範囲が変わります。

基本設計時

業態別の必要換気量を決定し、建築基準法の換気回数要件を織り込みます。労安法の事務所衛生基準規則も並行確認。

実施設計時

必要に応じて保健所・建築指導課で事前相談。飲食店は営業許可取得前の図面段階で確認が効率的。

引渡前

試運転・風量測定・CO2実測で設計通りの性能を検証。記録を保管し、将来の行政検査時の根拠とします。

改修時の建築確認:用途変更・大規模改修を伴う場合、建築確認申請で換気設備も審査対象になります。居抜き物件でも用途変更(例:物販→飲食)の場合は建築確認が必要になる場合があり、設計段階から建築士との協議が推奨されます。

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建築基準法・衛生法・労安法の3層規制と業態固有の衛生基準を織り込める設計は、実績ある業者選びが重要です。

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換気設備の種類と選定

第1種機械換気(給排気とも機械)

給気ファンと排気ファンの両方を機械で行う方式。外気取入量が安定し、全熱交換機との組合せも可能。コストは高めだが、空気質管理が厳密に求められる業態(クリニック・フィットネス・カフェ等)で採用されます。

第2種機械換気(給気のみ機械)

給気を機械、排気は自然換気(給気圧で押し出す)。クリーンルーム等の陽圧室で採用。店舗では限定的な用途です。

第3種機械換気(排気のみ機械)

排気を機械、給気は給気口から自然流入。一般的な店舗用途では最もコスト効率が良く、小規模物販・学習塾等で採用されます。

全熱交換機(ロスナイ等)の採用判断

全熱交換機は、排気から熱(温度+湿度)を回収して給気に戻すことで、空調負荷を30〜50%削減できる省エネ設備です。業務用エアコンの消費電力削減効果が大きく、ランニングコストでは一般換気より有利なケースが多くなります。

全熱交換機が効果的な業態

  • クリニック・美容室:外気負荷が大きく、温度湿度管理重要
  • 飲食店客席:冷暖房負荷の大部分が外気取り入れ分
  • フィットネス:大量換気が必要で外気負荷大
  • オフィス・コワーキング:長時間営業で省エネ効果累積

初期費用とROI

  • 初期費用:天井埋込型20〜60万円、全館システム100〜300万円
  • 運用コスト削減:空調電気代30〜50%減
  • 投資回収期間:3〜7年が一般的

CO2・湿度・温度の空気質管理

良好な空気環境は来客満足度と従業員生産性に直結します。主要指標と推奨値を整理します。

  • CO2濃度:1,000ppm以下(労安法基準)。2,000ppm超で集中力低下、頭痛等の症状
  • 温度:夏24〜27℃、冬20〜23℃
  • 相対湿度:40〜60%が推奨。40%未満はウイルス感染リスク上昇、70%超はカビ繁殖
  • PM2.5:建築物衛生法で0.15mg/㎥以下
  • ホルムアルデヒド:0.1mg/㎥以下(シックハウス対策)
CO2センサーの活用:飲食店客席・学習塾・フィットネス等、人数密度が変動する空間では、CO2センサー連動の換気制御が有効です。人数に応じて自動で換気量を調整でき、エネルギー効率と空気質の両立ができます。

工事費用の内訳分解

標準内訳(20坪・第3種換気+業務用エアコン)

  • 給気口・排気口:各1〜3万円×4〜8箇所
  • 換気ファン:シロッコファン5〜20万円
  • ダクト配管:1mあたり1〜3万円
  • ダクト吊金物・保温:配管費の30〜50%
  • 業務用エアコン本体:室外機+室内機で30〜150万円
  • 空調電気配線:10〜40万円
  • 制御盤・スイッチ:5〜20万円
  • 全熱交換機(採用時):20〜100万円
  • 試運転・風量測定:3〜10万円
  • 諸経費:工事費の10〜15%

物件 契約前に確認すべき5項目

物件契約前 換気・空調 5項目チェック





居抜き 既存換気・空調設備の活用可否

居抜き物件では既存換気設備の流用で開業費を圧縮できます。ただし、前業態と現業態で必要換気量が違う場合、追加工事が必要です。

流用しやすいパターン

  • 前業態と類似(カフェ→カフェ等)
  • 排気ファンのモーター劣化なし
  • ダクト内部の油脂付着が少ない
  • 給気口・排気口の位置が合致
  • 業務用エアコンが10年以内

要追加工事パターン

  • 前業態と大幅に違う(物販→飲食等)
  • 排気ファンが騒音・振動を発生
  • ダクト内部の堆積が著しい
  • 給排気口の位置変更が必要
  • 業務用エアコンが15年超(冷媒規制対応要)

契約前 発注前にオーナーが確認すべき8ポイント

発注前確認8項目








換気・空調設計の見積もりを比較

全熱交換機の採否判断や業務用エアコンの能力選定は複数社の提案を比較して決めるのが失敗の少ない方法です。

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失敗例 換気・空調の典型失敗3ケース

ケース1:換気不足でCO2濃度超過→集中力低下クレーム

学習塾(25坪・生徒20名同時)で、換気を建築基準法最低(0.5回/h)で設計。開業後、授業中に生徒から眠気・頭痛の訴えが発生し、CO2実測で3,000ppm超を記録。換気ファン増設とCO2センサー追加で60万円の追加工事。当初から学習塾の標準(1.0〜1.5回/h)で設計していれば防げた失敗。

ケース2:給気不足で業務用エアコン効きが悪い

30坪のカフェで、排気ファンのみ強化して給気を怠った結果、室内が負圧になりドアの開閉が困難に。業務用エアコンの能力に対して外気取り入れが不十分で、夏場の冷房効きが悪化。給気ファン追加と外気ダクト新設で45万円の追加工事。給排気のバランス設計の基本を欠いた失敗。

ケース3:全熱交換機採用見送り→光熱費が月5万円増

20坪のクリニックで、全熱交換機(追加費用60万円)を「開業費用を抑えるため」見送り。開業後、空調電気代が月5万円増で、2年で投資額を超える損失。ROI試算をしていれば合理的な判断ができた失敗例。

FAQ よくある質問

Q. 24時間換気は店舗でも必須ですか?

建築基準法第28条の2で、居室には原則として機械換気設備の設置が義務付けられ、換気回数0.5回/h以上(住宅等の居室)が基準です。店舗用途の居室も適用対象となります。既存建物で改修せずに使用する場合でも、用途変更時等には適合が求められます。詳細は建築指導課にご相談ください。

Q. 業務用エアコンと換気設備は別々に必要ですか?

多くの業務用エアコンは室内空気の循環が主機能で、外気取り入れ能力は限られます。建築基準法の換気要件を満たすには、換気専用設備(換気ファン・全熱交換機等)の併用が実務上の標準です。一部の機種で換気機能付きもありますが、能力を確認のうえ採用可否を判断します。

Q. 全熱交換機は採用すべきですか?

外気負荷が大きい業態(クリニック・美容室・飲食店客席・フィットネス)や長時間営業の業態では推奨されます。初期費用20〜100万円が追加でかかりますが、空調電気代30〜50%削減で3〜7年で投資回収できるケースが多くなります。短期出店(3年未満)や外気負荷が小さい物販等では、省略も選択肢です。

Q. CO2濃度の管理は必要ですか?

事務所衛生基準規則・建築物衛生法で1,000ppm以下が基準です。学習塾・フィットネス・クリニック・飲食店客席など人数密度が変動する空間では、CO2センサーの設置で換気制御を自動化するのが実務上の推奨です。センサー本体は1〜3万円で導入可能です。

Q. 居抜き物件の換気設備は流用できますか?

業態が類似していれば流用可能です。点検項目は①排気ファンのモーター劣化・騒音、②ダクト内部の油脂堆積・汚れ、③給気口・排気口の位置が現業態に合うか、④業務用エアコンの経年(15年超は冷媒規制で更新推奨)の4点です。開業前に設備士または内装業者の点検を受けることをおすすめします。

Q. 小規模店舗(10坪以下)でも換気工事は必要ですか?

規模に関わらず建築基準法の換気要件は適用されます。ただし小規模店舗では既設の換気扇・給気口で足りるケースも多く、居抜き物件の場合は追加工事不要の場合もあります。内見段階で設計士・内装業者に確認してもらうと判断しやすくなります。

Q. 換気量の実測・計測は必要ですか?

引渡前の試運転で風量測定を行うのが実務上の標準です。設計値と実測値の乖離を早期に発見でき、調整対応が可能です。建築物衛生法の特定建築物(3,000㎡以上)では定期測定が義務付けられますが、小規模テナントでも引渡時の実測確認が推奨されます。

次の一歩 換気・空調設計の進め方

店舗の24時間換気・給排気・空調は、業態別の必要換気量を基本設計で確定し、建築基準法・衛生法・労安法の3層規制を織り込んだうえで設備選定・施工・試運転・引渡しの流れで進みます。物件選定段階で既存換気設備・給排気経路・業務用エアコン能力を確認することで、追加工事を最小化できます。

関連ガイドとして、飲食店の排気ダクト工事完全ガイド店舗の防音工事完全ガイド店舗の電気容量・電気工事完全ガイド店舗の看板・サイン工事完全ガイドカフェ開業ガイド居酒屋開業ガイドもあわせてご参照ください。

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