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「お店が古くなってきた」「セット面を増やしてもっと回せるようにしたい」「単価の高いプライベートサロンに変えたい」——営業中の美容室を改装するとき、多くのオーナーがまず費用を調べます。ですが、すでに営業しているサロンの改装は、ゼロから作る開業とは別物です。本記事は、セット面という生産能力をどう設計し直し、シャンプー台の給排水と電気をどう扱うかという視点から、費用相場・営業しながらの可否・セット面の増減・設備の流用判断・業者選び・法令までをまとめた発注者向けガイドです。内装デザインやレイアウト・採算の詳細は美容室の内装ガイド、シャンプーの給排水費用は店舗の給排水工事費用ガイドもあわせてご覧ください。
この記事の要点
- 美容室改装は「内装の見た目」より先に、セット面=施術の生産能力(席数×スタッフ稼働)を設計し直すことから考える
- 美容室は予約制で区画・1台ずつ進めやすく、カフェ同様に営業しながら改装しやすい業態
- ただしシャンプーの給排水工事は水が止まるため、部分休業か仮店舗・シェアサロンが要る
- シャンプー台の給排水(口径・給湯・排水勾配)とセット面増設に伴う受電容量が、改装費を二分する
- セット面の増設やレイアウト変更は、美容所登録(保健所)の変更届を再トリガーすることがある
目次
美容室改装は「内装」より「セット面=生産能力」の設計から
営業中の美容室を改装するとき、最初に置くべき判断軸は「どんな内装にするか」ではありません。「セット面を何席にして、何人のスタッフで回す店にするか」という生産能力の設計です。美容室は1人のスタイリストが1つのセット面を使い、時間あたりに対応できる客数が物理的に決まります。つまりセット面を増やす改装は、内装の見た目ではなく売上の上限そのものを引き上げる工事なのです。
ここで最も誤解されやすいのが、セット面を増やしても、その席を回すスタッフがいなければ席は遊ぶという点です。2席増やしても、その2席で施術するスタイリストを採用・育成できなければ、増えたのは家賃や減価償却といった固定費だけで、売上は伸びません。だから美容室の改装は、内装を考える前に採用計画とセットで「何席に増やすか」を決めるのが正解です。
逆に、採用が難しい立地であれば、無理に席を増やさず、1台あたりを広く取って単価を上げる「減らす改装」もあります。個室感を出す、ヘッドスパ専用の空間をつくる、スパのようなシャンプーブースにする——こうした高単価化の改装は、席数を増やさなくても客単価で回収を狙えます。カフェが「常連の谷を埋める」、居酒屋が「席ミックスで宴会単価を上げる」のとは違い、美容室は施術の生産能力(席数×スタッフ稼働)を改装で設計し直すのが核心です。坪数別のセット面数の目安やレイアウト・採算の詳しい考え方は美容室の内装ガイドで扱っています。
美容室改装の費用相場・坪単価【物件・目的別】
公開されている各社の情報を整理すると、美容室改装の工事費はおおむね次のレンジが目安として共通して示されています。自店の設備を活かす改装で坪あたり20〜50万円、レイアウトや設備までやり直すスケルトン化を伴う改装で坪あたり40〜70万円が典型的な範囲です。1店舗あたりの総額としては280〜450万円前後、シャンプー台や待合の増設まで含む大規模な改装では数百万〜1,000万円規模になるケースもある、という構成が複数の公開情報で共通して見られます。
ここで開業との決定的な違いを押さえておきましょう。改装の費用は坪単価で割り切れません。開業はゼロから内装と設備を積み上げますが、改装は既存の解体・撤去・原状回復・養生・営業しながらの段取り替えといった費用が上乗せされ、現況によって大きく振れます。とくに美容室は給排水と電気が重いため、既存設備をどこまで残せるかで総額が変わります。
もう一つ重要なのが、シャンプー台・セット面・鏡といった什器・設備は、内装工事費とは別の「設備費」だという点です。「内装に含まれていると思って予算を組んだら、後からプラス100万円以上だった」という見落としが起きやすい部分です。見積書を受け取ったら、まず「①解体・原状回復」「②内装・造作」「③給排水・電気」「④シャンプー台・セット面などの設備」「⑤諸経費」に分けて、設備費がどこまで含まれているかを確認すると、各社の金額差の理由が見えてきます。
公開情報で示される一例として、15坪の美容室を改装した場合の費用配分を見てみましょう(金額は目安)。
この例では総額に対する坪単価が約33万円ですが、同じ15坪でもシャンプー台を増設したり給排水を引き直したりすれば坪単価は跳ね上がります。配分は現況と目的で変わるため、自店の数字は現地調査を踏まえた見積もりで確かめてください。
部分改装
全面・スケルトン
費用の全体像は店舗内装の費用ガイド、シャンプーの給排水工事の費用そのものは店舗の給排水工事費用ガイドでも詳しく扱っています。
なお、部分改装で内装材だけを張り替える場合の単価の目安(公開情報)は、壁紙(クロス)が1,000〜2,000円/㎡、床のクッションフロアが2,000〜5,000円/㎡、床タイルが3,000〜8,000円/㎡、天井クロスが1,500〜3,000円/㎡、壁の塗装が1,000〜3,000円/㎡ほどです。「壁だけ」「床だけ」といった部分的な改装では、この㎡単価から概算できます。
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サロンのタイプ・広さ・立地・改装レベルに加えて、改装する部位や手を入れる設備(シャンプー台の給排水・受電など)を選ぶと、あなたの状況に合わせて工事費の概算・内訳・想定休業・注意点までその場で変わります。美容室の改装は給排水と電気の現況で大きく振れるため、予算の当たりをつけるための目安としてお使いください。
営業しながら改装できる?区画・1台ずつ・仮店舗
美容室は予約制で、セット面を1台ずつ・区画ずつ改装できるため、カフェと同じく営業を止めずに進めやすい業態です。厨房が核心で休業前提になりやすい居酒屋とは、この点で逆になります。半分のセット面で営業しながら残りを工事し、仕上がったら入れ替える——という段取りが組みやすいのが強みです。
ただし、美容室ならではの注意点があります。シャンプーの給排水に触れる工事は、水が止まるため営業を続けられません。このとき美容室で使われるのが、仮店舗やシェアサロンを一時的に借りて予約客を受けるという方法です。内装・セット面の改装は1台ずつ進め、給排水のように水を止める工事だけ短期集中で休業するか仮店舗で受ける——と切り分けると、予約客を切らさずに改装できます。継続できる工事と休業(または仮店舗)が要る工事の線引きを押さえておきましょう。
- 【継続しやすい】セット面の什器・鏡・配線の入れ替え、内装・床壁、照明、サイン
- 【継続しやすい】区画を分けて1台ずつ・営業時間外に進める意匠工事
- 【休業or仮店舗】シャンプー台の増設・移設、給排水の引き直し
- 【休業or仮店舗】給湯器の更新、受電・分電盤など電気の幹線工事
- 【休業or仮店舗】全面解体を伴うレイアウト変更
そして見落とされがちなのが予約客への告知設計です。工事期間中の営業時間や使える席数、仮店舗の場所を事前に告知し、予約時に個別に伝えます。SNS・店頭・Googleビジネスプロフィールを更新し、「リニューアル予告」としてポジティブに発信すれば、工事期間の不便を期待感に変えられます。既存客の予約を切らさない段取りが、美容室改装では何より重要です。
セット面を増やす/減らす改装(生産能力×採用)
美容室改装でとくに相談が多いのが、セット面の増設です。前述のとおり、セット面は施術の生産能力そのものなので、増やせば売上の上限が上がります。ただし増やした席を回すスタッフを採用・育成できることが前提です。採用の見通しが立たないまま席だけ増やすと、固定費が増えるだけになりかねません。増設と採用は必ずセットで考えましょう。
増やす改装
減らす(高単価化)改装
セット面を増やすときは、1席あたりに必要な間隔と、シャンプー台・待合とのバランスも確認します。詰め込みすぎるとスタッフが動きにくく、お客様の居心地も落ちます。一般的な坪数別のセット面数の目安(たとえば10坪でセット面2席・シャンプー1〜2台、20坪でセット面4〜6席・シャンプー2〜3台など)や、レイアウト・動線の詳しい考え方は美容室の内装ガイドが参考になります。
シャンプーの給排水・受電は残す?替える?
改装費を最も大きく左右するのが、美容室の二大設備——シャンプーの給排水と、機器の電気——を残すか替えるかの判断です。シャンプー台は大量の湯水を使うため、口径の大きい給水・排水管と排水勾配、十分な給湯能力が要ります。台数を増やす・位置を動かす・サイドからバックシャンプーに替えるだけで、水回りが芋づる式に動きます。前も美容室の居抜きで配管が合えば大幅に圧縮できますが、合わなければ給排水の工事が内装を上回ることもあります。
もう一つが受電容量です。セット面を増やすと、ドライヤー・デジタルパーマ機器・スチーマーなどの同時使用で、既存の電気容量や分電盤の上限に当たることがあります。すると三相200V化や受電(契約容量)の増設が必要になり、これが見える内装より高くつくケースが出てきます。開業時にゼロから設計するなら起きにくく、既存店が改装でセット面を増やして初めてぶつかるのがこの問題です。美容室改装で確認すべきポイントを整理します。
- 給排水:口径・排水勾配・配管位置は新しいセット面数に合うか
- 給湯器:シャンプーの湯量に対して能力は足りるか。台数増なら見直し
- 受電容量・分電盤:セット面増設での同時使用に耐えるか(次の増設も見据えて)
- シャンプー台の中古活用:使用年数と保証、水栓・配管の劣化を確認
- 空調:セット面とシャンプーで快適性が変わる。能力と台数を現況に
判断のコツは、「使えるはずだから残す」ではなく、「現況の配管の口径・位置と分電盤の容量を見て、新しいセット面数・メニューに足りるか」で決めることです。これは図面と現況を見なければ判断できないため、現地調査の精度がそのまま見積もりの精度になります。給排水工事そのものの費用相場は店舗の給排水工事費用ガイドで詳しく扱っています。
あなたの美容室は業者を選べる?(発注自由度と原状回復)
意外に知られていませんが、改装で「業者を自由に選べるか」は店舗の立地条件で変わります。路面店や独立した建物は、給排水・受電の幹線まで自由に選べるため、複数社で相見積もりを取って価格と提案を比較できます。とくに美容室はシャンプーの給排水工事の範囲が大きいぶん、相見積もりで各社の金額差が出やすく、比較する価値が大きい業態です。
一方、商業ビルやショッピングセンター内のテナントは、意匠造作は自由でも、給排水・電気増設の幹線がビル指定(B工事)になりがちです。シャンプー台を増やすための給排水や、セット面増設のための受電増設がビル幹線に絡むため、容量の交渉が必要になります。居抜きの美容室なら、既存の配管と容量を流用して圧縮できる余地があります。
路面店・独立
ビル・SC内テナント
もう一つ、改装ならではの落とし穴が原状回復義務の境界です。営業中ということは賃貸借契約の途中です。改装でセット面や造作を足すと、退去時に「もともと借りたときの状態」に戻す義務に加えて、自分が新たに足した造作の分まで原状回復を負うことがあります。特に前テナントの居抜き造作の上に重ねた場合、責任範囲が複雑になります。改装の契約段階で、どこまでを誰が戻すのかを切り分けておきましょう。原状回復の費用相場や契約の読み方は店舗の原状回復ガイドが参考になります。
美容室改装の目的別 進め方
改装で失敗する典型は、目的が曖昧なまま「とりあえずきれいにする」ことです。目的を一つに絞ると、予算・範囲・工期・営業継続の可否まで自然に決まります。美容室改装でよくある目的を比べておきましょう。
① 老朽更新
② 席数拡大
③ 高単価サロン化
注意したいのは、売上が好調なら、無理に大きく改装しない判断もあるということです。タイミングを誤ると、かえって常連客が離れることもあります。「今の店の何を、なぜ変えるのか」を先に言語化しましょう。改装で起こりがちな後悔とその回避は店舗改装の失敗防止ガイドも参考になります。なお、同じ改装でも業種が違えば核心も変わります。客席が中心のカフェはカフェ改装ガイド、厨房が核心の居酒屋は居酒屋改装ガイドもあわせてどうぞ。
改装の流れと工期・リニューアルオープン
美容室改装は、おおむね次の流れで進みます。改装は現況勝負のため、見積もりの前の現地調査(とくに配管の位置・口径と分電盤の容量の確認)がとりわけ重要です。
工期の目安は、セット面・内装中心の部分改装で数日〜数週間、給排水やレイアウトまで及ぶ全面改装で数週間以上が目安です。区画ごとに進める場合は全体期間が延びる代わりに営業を続けられます。再開時は、予約の再受付や常連への告知、仮店舗からの戻し案内をセットで計画すると立ち上がりがスムーズです。改装全体の進め方は店舗改装の流れガイドでも整理しています。
失敗しない業者の選び方(美容室改装版)
美容室改装で業者を選ぶときは、開業の内装業者選びとは少し見るべき点が違います。改装は現況に左右されるため、次のような観点で確認しましょう。
- 美容室の改装実績があるか(新装だけでなく改装の経験)
- 現地調査が丁寧か、とくに配管の位置・口径と分電盤の容量を見てくれるか
- 既存のセット面・配管・分電盤の流用可否を提案できるか
- 区画施工や仮店舗を使った営業継続の段取りに慣れているか
- 見積もりの内訳が明確か(設備費・給排水・原状回復まで含むか)
そして相見積もりは必須です。改装は現況依存で各社の見方が割れやすく、とくに美容室は給排水・電気の判断で金額が大きく動くため、1社だけでは妥当かを判断できません。複数社を比べることで、適正価格と相性の良い会社が見えてきます。見積もりの読み方や比較のコツは店舗の見積もり比較ガイド、業者のタイプ別の選び方は店舗内装会社の選び方を参考にしてください。
改装の法令チェック(美容所登録の変更)
改装では、開業時に済ませたはずの法令確認が再び必要になることがあります。美容室でとくに見落としやすいのが、美容所登録の変更です。
いずれも物件や自治体によって判断が分かれます。早い段階で、所管の保健所・特定行政庁や、専門家・施工会社に確認してください。美容所登録の構造設備基準の詳しい解説は美容室の内装ガイドにもあります。
よくある質問(FAQ)
まとめ|まずは生産能力の設計と現地調査から
美容室改装は、内装の見た目より先に「セット面を何席にして、何人で回す店にするか」という生産能力の設計から考えるのが成功の近道です。美容室は予約制で区画・1台ずつ進めやすく、カフェ同様に営業しながら改装しやすい業態。一方で、シャンプーの給排水は水が止まるため仮店舗の検討が要り、セット面増設は受電容量の壁と美容所登録の変更に注意が必要です。いずれも現況を見なければ判断できません。まずは席数と採用の方針を決め、配管と分電盤まで見る現地調査を受け、複数社の見積もりを比較することから始めましょう。
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