基本居抜き物件とは
居抜き物件とは、前テナントが使用していた内装・設備・什器がそのまま残された状態で引き渡される物件のことです。飲食店であれば厨房設備やカウンター、美容室であればシャンプー台や鏡台など、業種特有の設備が残っていることが多く、初期投資を大幅に抑えられます。
造作譲渡料の相場・値引き交渉・リース品の罠・原状回復義務の帰属は居抜き改装ガイド「造作譲渡の章」にまとめています。
居抜き物件は「造作譲渡」という形で前テナントから設備を買い取る契約が一般的で、譲渡費用は数十万円〜300万円程度が相場です。ただし、設備の状態や築年数によって追加の改修費用が発生するため、物件選びの段階で設備の動作確認と経年劣化のチェックが不可欠です。
基本スケルトン物件とは
スケルトン物件とは、建物の躯体(コンクリートの壁・床・天井)がむき出しの状態で引き渡される物件のことです。内装・設備・配管・電気配線などがすべて撤去されたまっさらな状態から、自分の理想の店舗を一から作り上げることができます。
スケルトン物件の最大の魅力は「設計の自由度」です。店舗のコンセプトに合わせた間取り・動線・デザインを自在に設計できるため、ブランディングを重視する店舗や特殊な設備レイアウトが必要な業種に適しています。一方で費用は居抜きの1.5〜3倍、工期は2〜4ヶ月程度かかるのが一般的です。
スケルトン物件では、電気容量の増設(15〜50万円)、給排水管の新設(30〜80万円)、空調ダクトの設置(50〜150万円)など、居抜きでは不要なインフラ工事が発生します。その分、配管の状態が新しく、店舗の内装費用の中でも「見えない部分」の安心感が高いというメリットがあります。
- 躯体のみの状態で自由に設計可能
- 配管・電気設備をゼロから構築するため高品質
- 費用は坪単価30〜80万円が目安(業種による)
- 工期は2〜4ヶ月、大規模店舗では6ヶ月以上
- 原状回復義務はスケルトン返しが基本
比較居抜き vs スケルトン 基本比較
居抜き物件とスケルトン物件を10の観点から比較します。どちらが優れているかは業種・予算・コンセプトによって異なりますが、まずは全体像を把握しましょう。
| 比較項目 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 坪単価10〜40万円 | 坪単価30〜80万円 |
| 工期 | 2週間〜1.5ヶ月 | 2〜4ヶ月 |
| 設計の自由度 | 低い(既存レイアウト準拠) | 高い(自由設計) |
| 設備の状態 | 中古(経年劣化リスク) | すべて新品 |
| インフラ工事 | 最小限で済む | 大規模(電気・水道・ガス) |
| 原状回復 | 造作撤去 or 次テナントへ譲渡 | スケルトン返しが原則 |
| 物件の流通量 | 少ない(タイミング次第) | 多い |
| 隠れたリスク | 設備故障・配管不良 | 低い(新規施工) |
| 向いている人 | コスト重視・スピード開業 | ブランド重視・独自性追求 |
| 初期投資回収 | 6ヶ月〜1.5年 | 1.5〜3年 |
- 初期投資を30〜60%削減できる
- 最短2週間で開業可能
- 設備投資のリスクを軽減
- すでに営業実績のある立地が多い
- 前テナントの顧客を引き継げる可能性
- レイアウト変更に制限がある
- 中古設備の故障リスク
- 前テナントのイメージが残る
- 造作譲渡費用が発生する場合がある
- 希望条件に合う物件が少ない
- 理想の店舗デザインを実現できる
- 新品設備で故障リスクが低い
- ブランドイメージを自由に構築
- 物件の選択肢が豊富
- 配管・電気系統の状態が明確
- 初期費用が居抜きの1.5〜3倍
- 工期が長く、開業まで時間がかかる
- 設計・施工の知識が必要
- 退去時のスケルトン返し費用が高額
- 投資回収期間が長い
表①業種別の費用比較一覧
15業種について、居抜き物件とスケルトン物件の坪単価を比較しました。費用シミュレーターでご自身の条件に合わせた試算も可能です。削減率は「(スケルトン − 居抜き)÷ スケルトン × 100」で算出しています。
| 業種 | 居抜き坪単価 | スケルトン坪単価 | 削減率 | 主な削減ポイント |
|---|---|---|---|---|
| カフェ | 15〜35万円 | 35〜60万円 | 50〜60% | 厨房設備・カウンター・空調 |
| 居酒屋 | 20〜40万円 | 40〜70万円 | 45〜55% | 厨房・排煙ダクト・個室造作 |
| ラーメン店 | 20〜35万円 | 35〜60万円 | 40〜55% | スープ釜・製麺機・排煙設備 |
| 焼肉店 | 25〜45万円 | 50〜80万円 | 45〜55% | 無煙ロースター・排煙ダクト |
| 寿司店 | 25〜45万円 | 45〜75万円 | 40〜50% | 冷蔵ネタケース・カウンター |
| 美容室 | 15〜30万円 | 30〜55万円 | 45〜55% | シャンプー台・セット面・給排水 |
| エステサロン | 10〜25万円 | 25〜45万円 | 45〜55% | 個室間仕切り・防音・空調 |
| アパレル | 15〜30万円 | 30〜55万円 | 40〜50% | 什器・照明・フィッティングルーム |
| 雑貨屋 | 12〜25万円 | 25〜45万円 | 45〜50% | 棚什器・照明・ディスプレイ |
| クリニック | 30〜50万円 | 55〜90万円 | 40〜50% | 診察室区画・水回り・防音 |
| オフィス | 10〜20万円 | 20〜40万円 | 45〜55% | 間仕切り・OAフロア・空調 |
| ジム・フィットネス | 15〜30万円 | 30〜55万円 | 45〜50% | 床材・シャワー・空調 |
| サウナ | 35〜55万円 | 60〜100万円 | 40〜50% | サウナ室・水風呂・排水設備 |
| パン屋 | 25〜40万円 | 40〜70万円 | 40〜50% | オーブン・発酵器・排気設備 |
| バー | 15〜30万円 | 30〜55万円 | 45〜55% | カウンター・冷蔵庫・照明 |
深掘り居抜きが特にお得な業種TOP5
第1位:焼肉店(削減額:500〜1,000万円)
焼肉店が居抜きで最もお得になる最大の理由は「無煙ロースター」と「排煙ダクト」の存在です。無煙ロースターは1台15〜30万円、20席規模で10台必要とすると150〜300万円。排煙ダクトの新設は1系統あたり80〜150万円で、焼肉店では2〜3系統必要になることが多く、合計で200〜450万円かかります。さらにグリスフィルターや防火ダンパーなど付帯設備を含めると、排煙関連だけで300〜600万円の節約が可能。居抜きの焼肉店物件は非常に人気が高く、出たらすぐに押さえるのがポイントです。物件情報サイトへのアラート登録は必須で、公開後24時間以内に内見予約を入れることをおすすめします。厨房設備の費用ガイドも参考にしてください。
第2位:サウナ(削減額:400〜900万円)
サウナ施設はサウナ室の断熱工事(150〜300万円)、水風呂の防水工事(100〜200万円)、大容量の排水設備(80〜150万円)など、特殊な設備工事が集中する業種です。既存のサウナ物件を居抜きで取得できれば、これらの大規模工事がほぼ不要になります。サウナストーブの交換(50〜100万円)程度で済むケースもあり、トータルで400〜900万円の削減が見込めます。
第3位:美容室(削減額:200〜500万円)
美容室の設備で最も高額なのがシャンプー台(1台30〜50万円 × 3〜5台 = 90〜250万円)と給排水の配管工事(50〜120万円)です。セット面のミラーや椅子、パーマ機なども含めると設備だけで300〜500万円。居抜きならこれらの大半を引き継げるため、内装のリフレッシュ(壁紙張替え・照明交換)だけで開業できるケースが多いです。同業種の居抜きは内装費用の全体像を把握した上で探しましょう。
第4位:パン屋(削減額:300〜600万円)
パン屋の要となる業務用オーブン(デッキオーブン150〜400万円)、発酵器(ホイロ80〜150万円)、ミキサー(50〜100万円)は新品購入すると高額です。さらに大容量の電気工事(三相200V引き込み:30〜60万円)やガス工事、排気ダクトの設置も必要。居抜きのパン屋物件は数が少ないですが、見つかれば大幅なコスト削減が可能です。
第5位:居酒屋(削減額:200〜500万円)
居酒屋は厨房設備(冷蔵庫・製氷機・フライヤー・焼き台など計150〜300万円)に加え、排煙ダクト(80〜150万円)、個室の造作(1室あたり30〜50万円)など多岐にわたる設備が必要です。居抜き物件で同業態の居酒屋を引き継ぐ場合、設備の8割程度をそのまま活用でき、壁紙・看板・メニュー周りの変更だけで開業できます。
実務スケルトンが必要なケース
居抜きのコストメリットは魅力的ですが、以下のようなケースではスケルトン物件からの新規施工が適しています。
ブランドイメージを徹底的に作り込みたい場合
チェーン展開を見据えたフラッグシップ店や、デザイナーズ空間が売りの高級業態では、既存の内装が足かせになることがあります。スケルトンから作ることで、床材・壁材・天井の高さ・照明計画まで一貫したブランド世界観を実現できます。照明デザインガイドも参考にしてください。
特殊なレイアウト・動線が必要な場合
オープンキッチンの大型焼肉店、回転寿司のレーン設置、大型フィットネスジムのゾーニングなど、業種特有のレイアウトが求められる場合は、居抜き物件の既存間取りでは対応が難しいことがあります。無理に改修するとかえって費用がかさむため、スケルトンからの施工が合理的です。
法規制上の理由
用途変更(例:物販店 → 飲食店)を伴う場合、消防法・建築基準法上の改修が大規模になり、居抜きのメリットが薄れます。特に防火区画の変更や排煙設備の新設が必要な場合は、スケルトンからの施工のほうが総コストで有利になるケースがあります。
重量設備の設置が必要な場合
大型の業務用冷凍庫、医療用CT・MRI、大型プール(スイミングスクール)など、床の耐荷重を超える設備を設置する場合は、構造補強からの設計が必要です。こうしたケースでは居抜きの内装を一度撤去してから補強工事を行うことになり、結局スケルトンと同等の費用がかかります。
実務居抜き物件の探し方5ステップ
注意居抜きの注意点
居抜き物件は費用面で大きなメリットがある反面、以下の点に注意が必要です。事前に把握しておくことで、「こんなはずではなかった」を防げます。
設備の経年劣化リスク
居抜き設備は中古品のため、開業後に故障するリスクがあります。特に厨房の冷蔵庫(寿命7〜10年)、エアコン(寿命10〜15年)、給湯器(寿命8〜12年)は要注意。製造年を確認し、寿命の半分を過ぎている設備は交換費用を予算に組み込んでおきましょう。開業後に突然故障すると、営業停止で日商分の損失が発生します。
隠れた不具合(配管・電気)
見た目では分からない配管の詰まり・錆び、電気配線の老朽化は、開業後にトラブルを引き起こす代表的な問題です。特に排水管のグリストラップ(油脂分離装置)が長年メンテナンスされていないと、開業直後に排水逆流が起きることがあります。内見時に水道を全開にして排水状態を確認する、電気容量をブレーカーで確認するなどの基本チェックを怠らないでください。
原状回復義務の確認
居抜きで入居しても、退去時は「スケルトン返し」を求められるケースがあります。この場合、撤去費用として坪あたり5〜10万円が必要になり、20坪の店舗なら100〜200万円の追加出費です。入居前に大家さんと「居抜きでの退去可否」を確認し、可能であれば契約書に明記してもらいましょう。
造作譲渡費用の相場感
造作譲渡費用は0円〜300万円と幅がありますが、以下が目安です。退去急ぎの物件:0〜50万円、標準的な物件:50〜150万円、人気エリアの好物件:150〜300万円。高額な造作譲渡費用を払っても、スケルトンからの施工費用と比較すればトータルでは安くなるケースがほとんどですが、必ず総コストで比較しましょう。造作譲渡費用の交渉時には、設備の製造年やメンテナンス履歴を根拠に、「この設備は製造2018年で耐用年数の半分を過ぎているため、交換費用も考慮すると適正価格は○○万円ではないか」といった具体的な指摘が有効です。
節約スケルトンからコストを下げる7つの方法
スケルトン物件を選んだ場合でも、以下の7つの方法で費用を大幅に削減できます。品質を維持しながらコストを下げるテクニックを具体的な削減額とともに紹介します。
①設計施工一括発注で中間マージンカット(削減額:総工事費の10〜15%)
設計と施工を別々の会社に発注すると、設計料(工事費の5〜10%)に加えて施工管理費が発生します。設計施工一括発注にすれば設計料が大幅に抑えられるうえ、施工段階でのコストダウン提案(VE提案)も受けやすくなります。1,000万円の工事なら100〜150万円の削減が可能です。
②素材のグレードを最適化する(削減額:50〜200万円)
お客様の目に触れない部分(バックヤード・倉庫・天井裏)はコストを抑え、お客様の目に触れる部分(ファサード・客席・カウンター)に予算を集中させる「メリハリ戦略」が有効です。例えば、床材の選び方では、客席はタイル(坪2〜4万円)、厨房は長尺シート(坪0.5〜1万円)と使い分けることで、見た目の質を保ちながら床材だけで30〜50万円の削減が可能です。
③工期を閑散期に合わせる(削減額:総工事費の5〜10%)
内装工事の繁忙期(3〜4月、9〜10月)を避け、閑散期(1〜2月、6〜8月)に発注すると、職人の人件費が下がり値引き交渉に応じてもらいやすくなります。500万円の工事なら25〜50万円、1,000万円など50〜100万円の差が出ることがあります。
④3社以上の相見積もりを取る(削減額:総工事費の10〜20%)
内装工事の見積もりは会社によって大きく異なります。相見積もりの取り方ガイドでも解説していますが、最低3社に見積もりを依頼し、項目ごとに比較することで適正価格が見えてきます。「他社はこの項目がもっと安かった」と伝えるだけで値下げに応じてくれるケースは少なくありません。
⑤居抜き設備を一部流用する(削減額:50〜300万円)
完全なスケルトン物件でも、空調機器やダクトが残っている場合があります。また、中古の厨房機器市場やリースを活用することで、新品に比べて40〜60%のコストカットが可能です。
⑥DIYできる部分は自分でやる(削減額:30〜100万円)
壁の塗装、棚の取り付け、装飾品の設置など、専門技術が不要な作業は自分で行うことで人件費を節約できます。ただし、電気工事・ガス工事・防水工事は必ず資格を持った専門業者に依頼してください。安全に関わる部分のDIYは絶対に避けましょう。
⑦補助金・助成金を最大限活用する(削減額:50〜300万円)
小規模事業者持続化補助金(最大200万円)、事業再構築補助金(最大1,500万円)、各自治体の創業支援補助金(50〜100万円)など、内装工事に使える公的支援が多数あります。申請には事業計画書の作成が必要ですが、採択されれば工事費の1/3〜2/3が補助されます。
選び方居抜きvsスケルトンの判断フローチャート
どちらを選ぶべきか迷ったら、以下の判断基準で検討してください。
- Q1:総予算は500万円以下ですか? → はい:居抜きを優先して探す → いいえ:Q2へ
- Q2:開業まで2ヶ月以内ですか? → はい:居抜きほぼ一択 → いいえ:Q3へ
- Q3:ブランドの世界観を一から作りたいですか? → はい:スケルトン推奨 → いいえ:Q4へ
- Q4:同業種の居抜き物件はありますか? → はい:居抜きが最もコスパ良い → いいえ:Q5へ
- Q5:設備投資額が300万円を超える業種ですか? → はい:居抜き物件を粘り強く探す価値あり → いいえ:スケルトンでも費用差は小さい
失敗例よくある失敗3パターン
大阪市内でカフェを開業したAさん。居抜き物件で造作譲渡費用80万円を支払い、厨房設備一式を引き継ぎました。しかし開業3ヶ月で業務用冷蔵庫が故障(修理費15万円)、半年後にはエスプレッソマシンが故障(交換費60万円)、さらに食洗機も動かなくなり(交換費25万円)、結局100万円の追加出費が発生。設備の製造年は全て10年以上前でした。
東京都渋谷区でバーを開業したBさん。スケルトン物件で見積もり600万円のはずが、工事開始後に電気容量不足(増設40万円)、排水管の位置変更(80万円)、防音工事の追加(120万円)、消防設備の追加指導(50万円)が次々と発覚。最終的な工事費は890万円と、当初見積もりの約1.5倍に膨れ上がりました。
名古屋市で居酒屋を開業したCさん。好立地の居抜き物件に造作譲渡費用300万円を支払い入居。5年間営業した後に退去を決めましたが、契約書には「退去時はスケルトン返し」の条項があり、撤去費用として180万円が発生。造作譲渡費用と合わせると480万円の出費に。次テナントへの居抜き渡しも大家さんに拒否されました。
実務居抜き物件の設備チェックリスト
居抜き物件を検討する際は、以下のチェックリストを使って設備の状態を漏れなく確認しましょう。このリストを内見時に持参し、できれば内装業者にも同行してもらいながらチェックするのが理想的です。
- 冷蔵庫・冷凍庫:製造年の確認(7年以上は要注意)、温度設定の正常動作、パッキンの状態、異音の有無
- コンロ・フライヤー:点火確認、火力調整の動作、油汚れの蓄積度合い、ガス管の接続状態
- 食洗機:洗浄テスト、排水の状態、ヒーターの動作、水漏れの有無
- 製氷機:製氷速度のテスト、製氷量の確認、排水管の状態、フィルターの汚れ
- 排煙設備:ファンの動作確認、フィルターの汚れ・詰まり、ダクト内部の油脂蓄積、防火ダンパーの動作
- グリストラップ:清掃状態の確認、容量の適切さ、排水の流れ具合
- 電気容量:ブレーカーの容量確認(飲食店なら最低60A、できれば100A推奨)、三相200Vの有無、コンセントの数と配置
- 給排水:全蛇口からの水圧テスト、お湯の出具合(給湯器の容量)、排水口からの逆流テスト、床下排水管の状態
- ガス:ガス種(都市ガス or プロパン)の確認、ガス管の口径(容量不足でないか)、ガスメーターの位置
- 空調:冷房・暖房の両方テスト、フィルターの汚れ、室外機の状態、ドレン排水の確認
- 防水:トイレ・厨房の床の防水層の状態、水回り周辺の壁のカビ・浮き、天井のシミ(上階からの漏水痕)
- 外壁・看板:看板設置可能箇所の確認、電源の有無、外壁の劣化状態、雨漏りの痕跡
チェックリストの中で特に重要なのが「電気容量」と「排水管の状態」です。電気容量が不足していると増設工事(15〜50万円)が必要になり、排水管の詰まりや老朽化は開業後に大きなトラブルの原因になります。これらは見た目では判断しにくいため、必ず専門業者の調査を入れましょう。調査費用は2〜5万円程度ですが、後から発覚するリスクを考えれば十分に元が取れる投資です。
資金居抜き・スケルトン別の資金調達プラン
物件タイプによって必要な初期投資額が大きく異なるため、資金調達の戦略も変わってきます。日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用する場合、自己資金の目安は初期投資額の1/3以上です。
| 項目 | 居抜き(20坪カフェ) | スケルトン(20坪カフェ) |
|---|---|---|
| 内装工事費 | 300〜700万円 | 700〜1,200万円 |
| 物件取得費 | 100〜200万円 | 100〜200万円 |
| 造作譲渡費用 | 0〜200万円 | 0円 |
| 運転資金(3ヶ月) | 150〜300万円 | 150〜300万円 |
| 予備費 | 50〜100万円 | 100〜200万円 |
| 合計 | 600〜1,500万円 | 1,050〜1,900万円 |
| 必要自己資金(1/3) | 200〜500万円 | 350〜633万円 |
居抜き物件を選ぶことで、必要な自己資金も大幅に抑えられます。自己資金200万円でも、居抜きなら600万円規模の開業が融資を活用して実現可能です。融資審査では「なぜ居抜きを選んだのか」「設備のリスクをどう管理するか」を事業計画書で明確に説明できると、審査担当者の評価が高まります。また、信用保証協会の創業融資(自治体の制度融資)を併用すると、より有利な条件で資金調達が可能になるケースもあります。複数の融資制度を組み合わせることで、手元資金に余裕を持った開業計画が立てられます。
工期居抜きとスケルトンの工期比較
物件タイプの違いは費用だけでなく、工期(開業までの期間)にも大きく影響します。工期が長いほど「空家賃」(工事中に支払う家賃)の負担が増えるため、工期の長さもトータルコストの重要な要素です。
| フェーズ | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 物件探し〜契約 | 2週間〜2ヶ月 | 2週間〜1ヶ月 |
| 設計・プランニング | 1〜2週間 | 3〜6週間 |
| 各種届出・申請 | 1〜2週間 | 2〜4週間 |
| 施工工事 | 2〜4週間 | 6〜12週間 |
| 検査・引渡し | 3〜5日 | 1〜2週間 |
| 合計目安 | 1.5〜3.5ヶ月 | 3〜7ヶ月 |
| 空家賃の目安(家賃20万円の場合) | 30〜70万円 | 60〜140万円 |
居抜き物件は設計期間と施工期間の両方が短いため、物件契約から最短1.5ヶ月で開業できるケースもあります。一方、スケルトン物件は設計だけで1ヶ月以上かかることが多く、施工期間も2〜3ヶ月と長期にわたります。空家賃の差だけで30〜70万円になるケースがあり、この「見えないコスト」も物件選びの重要な判断材料です。大家さんとの交渉でフリーレント(工事期間中の家賃免除)を獲得できる場合もあるので、物件契約時には必ず交渉しましょう。フリーレントは1〜3ヶ月が一般的で、スケルトン物件の場合は特に交渉が通りやすい傾向があります。
届出物件タイプ別の届出・手続き一覧
開業に必要な届出・許認可は、居抜きでもスケルトンでも基本的に同じですが、物件タイプによって一部異なるポイントがあります。
| 届出先 | 届出内容 | 居抜きの注意点 | スケルトンの注意点 |
|---|---|---|---|
| 保健所 | 飲食店営業許可 | 前テナントの許可は引き継げない(新規申請が必要) | 設備基準を満たす設計が必要 |
| 消防署 | 防火対象物使用開届 | 設備変更がある場合は再届出 | 着工前に事前相談が必須 |
| 税務署 | 開業届 | 共通 | 共通 |
| 建築指導課 | 用途変更確認申請 | 同業種なら不要な場合が多い | 用途変更がある場合は必要 |
| 警察署 | 深夜酒類提供届(バーなど) | 共通 | 共通 |
居抜き物件で特に注意すべきは「保健所の営業許可」です。前テナントの営業許可は引き継げないため、必ず新規で申請する必要があります。設備が前テナントのものをそのまま使う場合でも、保健所の基準を満たしているか改めて確認が必要です。基準を満たさない設備がある場合は改修が必要になるため、保健所への事前相談(無料)を必ず行いましょう。消防署への届出も、内装の変更がある場合は「防火対象物使用開届」の提出が義務付けられています。着工の7日前までに届け出る必要があるため、スケジュールに組み込んでおきましょう。
事例居抜き・スケルトン活用の施工事例
実際に居抜き物件とスケルトン物件を活用して成功した開業事例をご紹介します。それぞれのメリットを最大限に活かした事例から、物件選びのヒントを得てください。
事例A:居抜き活用で300万円で開業したカフェ(東京・下北沢)
20坪の元喫茶店を居抜きで取得。造作譲渡費用50万円で厨房設備一式とカウンターを引き継ぎ、壁紙の張り替え(30万円)、照明の交換(40万円)、看板の変更(25万円)、家具の入れ替え(50万円)のみで開業。スケルトンからなら800万円以上かかる内容を、総額300万円で実現しました。前テナントの顧客の一部がそのまま来店してくれたことも、スムーズな立ち上がりに貢献しています。開業3ヶ月で月商100万円を達成し、初期投資の回収も順調に進んでいます。
事例B:スケルトンからブランド構築したアパレル(大阪・堀江)
15坪のスケルトン物件にオリジナルブランドのセレクトショップをオープン。総工事費650万円と居抜きの倍以上のコストをかけましたが、コンクリート打ちっ放しの壁に木のアクセント什器、スポットライトによる商品演出など、ブランドの世界観を完璧に表現した空間が完成。SNSで「おしゃれすぎるセレクトショップ」として話題になり、オープン初月から目標売上を達成。投資回収は2年計画ですが、ブランド認知の向上による将来的な効果も大きいと判断しています。スケルトンならではの自由な設計がブランド構築に大きく貢献した事例です。
より多くの施工事例は店舗内装ドットコムのトップページからご覧いただけます。業種・エリア・予算別に検索できるので、ご自身の開業プランに近い事例が見つかるはずです。
FAQよくある質問
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