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バーの移転は、厨房機器を新しい店に運ぶ引っ越しではなく、旧店を原状回復し、新店で夜の世界観(バックバー・調光照明・防音)を、深夜営業が許される立地に作り直す二重工事です。バーには他業態と決定的に違う落とし穴があります。深夜0時以降に酒類を提供するなら警察への届出が店舗ごとに必要で、しかも立地によってはそもそも届出が出せません。つまり内装を作る前に「移転先で深夜に酒を出せるか」を確認しないと、店が完成しても営業できない事態になります。このガイドは、バー移転の総額・深夜酒類届の立地ゲート・バックバーと防音・行政手続き・照明と音を読める業者の選び方を、退店と出店を一つにつないで整理します。
30秒でわかる結論
- 移転の正体:旧店の原状回復+新店のバー内装=二重工事。内装より先に「深夜営業できる立地か」が効く
- 深夜酒類届は立地ゲート:深夜0時以降の酒類提供は警察へ店舗ごとに届出。住居系の用途地域では原則出せず、内装着手前に立地確認が必須
- 原状回復は軽い:バーは厨房が軽い軽飲食寄りで原状回復は低め。ただしバックバー・照明配線・防音の撤去は発生する
- 新店の主役:バックバー(ボトル陳列の造作)・無垢/御影石カウンター・調光式の間接照明・防音。坪20〜60万円
- 立地の特徴:バーは2階以上・空中階が多く、搬入・防音・近隣対策が立地で変わる。移転=廃業+開業の行政手続きも必要
バーの移転は「夜の世界観の移し替え」——内装より先に”深夜営業できる立地か”
移転は「旧店の原状回復」と「新店のバー内装」の二つ
バー移転は、旧店を契約どおりの状態に戻す原状回復と、新店をゼロまたは居抜きから立ち上げるバー内装が並行します。世の中の情報は、退店側だけの原状回復・解体の解説か、出店側だけのバーの内装の解説のどちらか一方に偏りがちですが、それでは移転の半分しか見えません。バーは夜の世界観そのものが商品で、しかも次に述べる深夜営業の届出が立地を縛るため、両側と立地を合わせて初めて移転が見えてきます。
深夜酒類届は「店舗ごと取り直し」で、立地によっては出せない
バー移転で最初に確認すべきは内装でも費用でもなく、移転先で深夜に酒を出せるかです。深夜0時以降に主に酒類を提供する店は、飲食店営業許可とは別に、警察(公安委員会)へ深夜酒類提供飲食店営業開始届を出す必要があります。これは店舗ごとの届出なので、移転すると新店で取り直しになります。さらに決定的なのは、住居系の用途地域などでは深夜営業が原則認められず、そもそも届出が出せないことです。つまり「家賃と雰囲気が良いから」と物件を決めて内装を作っても、深夜営業ができず営業計画が崩れる事態が起こり得ます。移転先選びの段階で、用途地域と近隣環境から深夜営業が可能かを確認することが、内装より先に効きます(工事区分や手続きの前提は工事区分や退店の手続きも参考になります)。
最重要:内装着手前に「深夜営業が出せる立地か」を確認する
深夜酒類提供飲食店営業開始届は店舗ごとに必要で、住居系の用途地域では原則出せません。移転先を決める前に、用途地域・近隣環境から深夜営業が可能かを必ず確認してください。内装を作ってからでは取り返しがつきません。
原状回復は軽いが、新店はバックバー・照明・防音で出る
バーは厨房が軽い(バルでなければ調理は最小限)ため原状回復は飲食店の中では低めです。ただし新店で費用が集中するのは、背面のボトル陳列棚であるバックバー(間接照明を仕込んだ造作)、無垢材や御影石のカウンター、ムードを作る調光式の間接照明(配線・調光器が密)、そして音楽バーや集合住宅近接なら防音工事です。これらは坪単価に出にくく、夜の暗さと音をコントロールする照明・防音・バックバーが新店の主役になります。
バー移転の費用相場——旧店の原状回復・新店のバックバー/照明/防音を1つの予算表で見る
バー移転の総額は「旧店をいくらで畳むか」と「新店の夜の世界観をいくらでつくるか」の合算です。まず3つの要素を押さえます。
旧店の原状回復費用
内訳は、バックバー・カウンター造作の撤去/内装(床・壁・天井)の撤去や塗装・クロス張替え/調光照明の配線撤去/防音材の撤去/産業廃棄物の処分/原状確認の立会いです。原状回復の範囲はスケルトン戻しか居抜き退去かで変わりますが、バーは厨房が軽いため飲食店の中では低めに収まります。ただし造作や照明配線が多い店、防音を施した店はその撤去分が乗ります。
新店のバー内装費用
新店の主役はバックバー・照明・防音です。バックバー造作(ボトルを並べ間接照明を仕込んだ背面棚)、無垢材や御影石のカウンター、調光式の間接照明、音楽バーや近隣配慮の防音、製氷機・グラス保管・シンクの水回りが必要です(水回りは給排水工事の費用も参考になります)。新店をバーの居抜きにできれば既存のバックバー・カウンター・照明を活かし坪20〜35万円程度に圧縮できますが、スケルトンから作り込むと坪30〜60万円程度まで上がります。設計やグレード別の坪単価はバーの内装ガイドが参考になります。
移転総額の考え方とシミュレーション
総額=旧店の原状回復+新店のバー内装+付帯(引越・什器移設・造作譲渡料・新店什器・届出関連)です。下のシミュレーターで、旧店の規模と原状回復の区分、新店の規模とタイプを選ぶと概算の総額レンジが出ます。
旧店の坪数:坪 / 新店の坪数:坪
旧店の原状回復:
新店のタイプ:
規模別の目安は次のとおりです(公開されている坪単価の目安で機械的に計算した概算。付帯費用は含みません)。
| 規模(旧店/新店) | 旧店の原状回復 | 移転総額の目安(新店込み) |
|---|---|---|
| 10坪/10坪 | 約50〜70万円 | 約250〜670万円 |
| 15坪/15坪 | 約75〜105万円 | 約375〜1,005万円 |
| 20坪/20坪 | 約100〜140万円 | 約500〜1,340万円 |
| 30坪/30坪 | 約150〜210万円 | 約750〜2,010万円 |
新店をバー居抜きにできれば総額は下限側、スケルトンで作り込むと上限側に振れます。新店タイプ別の内訳は上のシミュレーターで確認できます。
見落としやすい付帯費用と敷金の扱い
総額には工事費以外の付帯も乗ります。旧店からの引越し・什器の移設・新店の什器や備品・新店の保証金や敷金・常連への移転告知などです。新店を居抜きにする場合は造作譲渡料(前借主や所有者にバックバー・カウンターなどの利用料として支払う費用)も加わります。さらに旧店の敷金(保証金)は償却として解約時に20〜50%、あるいは全額が差し引かれる契約が一般的で、原状回復費と相殺されると手元にほとんど戻らないこともあります。防音を新たに施す場合はその分も見込んでおきます。なお新店契約でフリーレント(賃料無料期間)を取れれば、その期間をバックバー造作や防音工事に充てることで実質的な二重家賃を圧縮できます。
居抜きは「バー居抜きか・コンセプトが合うか」——2階以上の防音と搬入も
バー移転で新店の費用を大きく動かすのが、居抜きの業種とコンセプトです。バーで高いのはバックバー造作・調光照明・防音で、これらは前店舗がバーで、かつコンセプトが近くないと活かせないからです。
バー居抜きなら流用、他業態だと一から
前店舗がバーの居抜きなら、バックバー・カウンター・調光照明・防音を流用でき、新店の費用を大きく抑えられます。一方で前店舗が他業態(カフェや物販など)の居抜きだと、バックバーも調光照明も防音も一からつくることになり、居抜きの利点が薄れます。さらにバーは種類(オーセンティック、ショット、スタンディング、ダイニング、ミュージックなど)でレイアウトや照明・防音の要件が変わるため、前店舗のコンセプトが自店に近いかも確認が要ります。下の比較で新店の作り方を整理します。
スケルトンで作る
バー居抜き
他業態の居抜きはバックバー・防音が無く結局出る
カフェや物販などの居抜きは、バーに必要なバックバー・調光照明・防音が無いため、結局ほぼ新設になり居抜きの利点が消えます。2階以上の物件では搬入経路と階下への防音も確認が必要です。バー居抜きでも、調光照明・防音がコンセプトと合うかを内見時に確認してください。
見えない急所——バックバー・調光照明・防音と、相見積もりのB/C工事
バー移転で見落とされがちなのが、夜の世界観をつくる造作と設備です。バックバー(間接照明を仕込んだボトル陳列の造作)、調光式の間接照明(配線・調光器が密で施工に手間)、階下や隣戸・近隣への防音は、坪単価表には出ず、移転で物件が変わると新物件に合わせて作り直す必要があります。だから比較すべきは「バックバーの造作と、照明・音を両方読める業者か」です。
A・B・C工事の基本(バーでの例)
A工事は躯体・共用部・防災設備など建物側(貸主負担)、B工事は専有部でも電気本管容量・共用防音・給排水竪管など建物に関わる部分(ビル指定業者)、C工事は専有部のバックバー造作・調光照明・防音・カウンター(自由に選定可)です。移転での相見積もりの効きは次のとおりです。
| 工事区分 | 業者を選べるか | 相見積もりの役割 |
|---|---|---|
| A工事 | 選べない(貸主手配) | 基本は対象外 |
| B工事 | 選べない(指定業者) | 金額の妥当性を検証して交渉 |
| C工事 | 選べる(自由選定) | バックバー造作・照明・防音設計込みで業者を競わせる |
工事区分の詳細はA工事・B工事・C工事の違いで確認できます。
旧店は金額検証用、新店は照明・防音設計込みの業者選定用
旧店の原状回復は共用設備のB工事が混じり業者を選べない部分があるので、相見積もりは指定業者の金額が妥当か(バックバー撤去や照明配線撤去の数量・単価)を検証する用途です。バーは原状回復が低めなので金額は小さめですが、内訳の確認は欠かせません。新店のバックバー造作・調光照明・防音はC工事=自由選定なので、複数社を競わせ、間接照明の配線設計、防音の納まりまで含めて選ぶ主戦場になります。
路面店か2階・空中階か——バーは立地で大きく変わる
バーは路面1階だけでなく、雑居ビルの2階以上や空中階に構えるケースが多く、隠れ家性や賃料の面で選ばれます。ただし空中階は搬入経路が複雑で原状回復が割高になりやすく、防音は階下・隣戸への配慮で増え、深夜の人の出入りや騒音で近隣対策も要ります。何より、その立地が深夜営業が可能な用途地域・近隣環境かが物件選びの最優先事項です。寿司やカフェのように路面1階前提とは違い、バーは立地のタイプが防音・搬入・原状回復・深夜営業可否を同時に左右します。
照明・防音を読まない見積もりが配線やり直し・近隣トラブルで高くつく
調光照明の配線や防音を軽視した見積もりは、開店前後に配線のやり直しや近隣からの苦情・防音追加で膨らみます。間接照明の配線設計と、階下・隣戸への防音が見積もりに織り込まれているかを確認してください。
夜の常連を切らさない移転——段取りと二重家賃スケジュール
移転で資金を最も無駄にするのが、旧店と新店の家賃が重なる二重家賃です。バーは新店のバックバー造作・調光照明・防音で工期が読みにくく、ここを設計しないと重複が膨らみます。
工期の非対称と、新店竣工からの逆算
旧店の原状回復は数日〜2週間ほどの短期ですが、新店はバックバー造作・調光照明・防音で工期が長くなります。旧店を先に畳めば二重家賃はほぼ回避できますが営業空白が出て夜の常連が離れやすく、新店を先に作れば営業空白は最小ですが二重家賃が発生します。常連が支えのバーは、営業空白を短くする側に寄せる価値が大きい業態です。理想は、新店の竣工日を起点に開店→数日〜2週間で旧店の原状回復→明渡し、と重ねる形で、賃貸借契約の解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)はこの逆算カレンダーの出発点になります。あわせて、新店の深夜酒類提供の届出は開業前に余裕をもって進めておきます。
逆算の流れと、押さえるチェックリストは次のとおりです。
- 移転先で深夜営業が可能か(用途地域・近隣)を確認した
- 解約予告の期限を賃貸借契約書で確認した
- 新店のバックバー・照明・防音を含む工期を見積もりで確定した
- 新店の深夜酒類提供の届出を開業前に進める段取りを組んだ
- 旧店家賃と新店家賃の重複期間を最小化できているか試算した
バー移転の進め方・行政手続きと「照明と音を読めて造作まで捌ける業者」
移転は、旧店の契約確認から新店の開店、旧店の明渡しまでが一本の流れです。全体像を押さえると、相見積もりと工程の重ね方を判断しやすくなります。
届出は「旧店の廃業」+「新店の開業」の二本立て
移転は同じ屋号でも、行政上は「旧店を廃業し、新店を新規開業する」扱いになり、厳密には”移転”という手続きは存在しません。二つの手続きは並行しますが独立しているため、まとめては行えません。期限のあるものも多いので、漏れと遅れに注意してチェックリストで管理します。バーは特に深夜酒類提供の届出が旧店・新店の両方に関わります。
旧店の廃業で必要な手続き
- 税務署へ廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出
- 保健所へ営業許可の廃業届を提出(廃業後10日以内が目安)
- 警察へ深夜酒類提供飲食店営業の廃止届(提出していた場合)
- 消防へ防火管理者の解任届(選任していた場合)
- テナントの解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)と原状回復
- 什器・設備のリース契約の精算
- 電気・ガス・水道などライフラインの解約
- 常連・取引先への移転の告知
新店の開業で必要な手続き
- 保健所へ飲食店営業許可を申請(事前相談+施設検査)
- 食品衛生責任者を選任(必須)
- 収容人数30人超なら防火管理者を選任
- 深夜0時以降に酒類提供するなら警察へ深夜酒類提供飲食店営業開始届(移転先の用途地域を要確認)
- 消防検査に合格
- 近隣・階下への防音と騒音対策を確認
- 税務署へ開業届(新店で営業開始後)
期限が設定されている届け出が多いため、解約予告と合わせて逆算カレンダーに組み込んでおくと安全です。退店側の手続き全般は閉店・撤退の手続きも参考になります。
「照明と音を読めて造作まで捌ける業者」の評価軸
移転では旧店の解体業者と新店の造作業者を別々に頼みがちです。だが旧店のバックバー・照明撤去と新店のバックバー造作・調光照明・防音を1社が握ると、照明と音の設計が連続し、見落としも一気通貫で防げます。次の観点で複数社を比較します。
- バーの造作・内装の実績があるか(夜の世界観を再現できるか)
- バックバー造作と調光式の間接照明を扱えるか
- 階下・隣戸・近隣への防音を読めるか
- 旧店の原状回復と新店のバックバー造作の工程を重ねて管理できるか
- 旧店の原状回復から新店のバー内装までを一括で見積もれるか
複数社に「旧店の原状回復から新店のバー内装まで」をまとめて見積依頼すると、各社の総額・工程・照明や防音の提案・責任分界点の考え方が横並びで比較でき、価格の安さでなく「照明と音を読んで造作まで捌く能力」で選べます。なお他業態の移転を検討中ならカフェ・居酒屋・寿司の移転ガイドも同じ考え方で整理しています。
造作と照明・防音を分けると起きやすいロス
バックバー造作の業者と照明・防音の業者を別に頼むと、間接照明の配線と造作の納まりがずれることがあります。さらに旧店の照明・防音の図面が新店の業者に渡らず、配線や防音を一から検討し直すロスも起きやすくなります。
よくある質問
むしろ飲食店の中では低めです。バーは厨房が軽い軽飲食寄りで、油や排気の設備が少ないため割増が起きにくく、坪3〜5万円程度から。ただしバックバーやカウンターの造作が多い店、調光照明の配線が多い店、防音を施した店はその撤去分が乗ります。
はい。深夜0時以降に主に酒類を提供する店は、飲食店営業許可とは別に警察へ深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要で、店舗ごとの届出なので移転先で取り直しになります。開業前に余裕をもって進めてください。
できません。住居系の用途地域などでは深夜営業が原則認められず、届出自体が出せないことがあります。だから移転先を決める前に、用途地域と近隣環境から深夜営業が可能かを確認することが、内装より先に最優先で必要です。
背面のボトル陳列棚であるバックバー造作(間接照明を仕込む)、無垢材や御影石のカウンター、ムードを作る調光式の間接照明、そして音楽バーや近隣配慮の防音です。これらが夜の世界観をつくる主役で、坪20〜60万円のうち大きな割合を占めます。
前店舗がバーで、コンセプトが近ければバックバー・カウンター・照明・防音を流用でき大きく安くなります(坪20〜35万円)。一方でカフェや物販など他業態の居抜きだと、バックバーも防音も一からになり利点が薄れます。2階以上なら搬入と防音も確認します。
頼めます。旧店のバックバー・照明撤去と新店のバックバー造作・調光照明・防音を一括で扱える会社なら、照明と音の設計が連続し、配線や防音の見落としも一気通貫で防げます。
規模・原状回復区分・新店タイプ次第です。旧店の原状回復は低め(坪3〜5万円)で総額への影響は小さく、新店次第で15坪ならバー居抜きで数百万円から、スケルトンで作り込むと1,000万円前後まで幅があります。本文のシミュレーターで概算を確認できます。
バーの移転は、夜の世界観(バックバー・調光照明・防音)を、深夜営業が許される立地に作り直すことで総額と営業の可否が決まります。原状回復は軽いが新店のバックバー・照明・防音に費用が集中し、何より深夜酒類届という立地ゲートが内装より先に効くので、旧店の原状回復と新店のバー内装を別々に頼まず、まず移転先の深夜営業可否を確認したうえで、照明と音を読める業者にまとめて相見積もりを出すところから始めるのが、最も無駄の少ない進め方です。
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