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寿司屋の移転は、厨房機器を新しい店に運ぶ引っ越しではなく、旧店を原状回復し、新店で職人の所作と鮨を引き立てる板場と付け台(カウンター)をつくり直す二重工事です。寿司屋の移転には他業態と決定的に違う特徴があります。旧店の原状回復は飲食店の中ではむしろ軽い一方、新店の檜カウンター造作・ネタの冷蔵・生簀が高く、費用が新店側に偏る非対称です。このガイドは、寿司移転の総額・居抜きの業種縛り・鮮度を守る設備・行政手続き・木と冷蔵を読める業者の選び方を、退店と出店を一つにつないで整理します。
30秒でわかる結論
- 移転の正体:旧店の原状回復+新店の板場・付け台=二重工事。費用は新店側に偏る非対称が寿司の特徴
- 旧店は軽い:寿司は油が少なく完全禁煙が多く路面1階が多いため、原状回復は飲食店の中で低め(坪2.5〜5万円)
- 新店が高い:檜などのカウンター造作・ネタの冷蔵ショーケース・生簀・板場の水回りで坪30〜60万円、スケルトンなら1,500万円級も
- 居抜きは業種縛り:寿司・和食の居抜きならカウンター・冷蔵を流用できるが、他業態だと一から。回転寿司はレーン・配管が別物
- 見えない急所:ネタの鮮度を守る冷蔵・給排水・換気。移転=廃業+開業の行政手続きと保健所検査も必要
寿司の移転は「板場と付け台の作り直し」——旧店は軽く、新店が高い非対称
移転は「旧店の原状回復」と「新店の板場・付け台」の二つ
寿司移転は、旧店を契約どおりの状態に戻す原状回復と、新店をゼロまたは居抜きから立ち上げる板場・付け台の造作が並行します。世の中の情報は、退店側だけの原状回復・解体の解説か、出店側だけの寿司屋の内装の解説のどちらか一方に偏りがちですが、それでは移転の半分しか見えません。寿司屋は職人の所作と鮨を引き立てるカウンターと板場そのものが商品なので、両側を合わせて初めて総額と”らしさ”の再現が見えてきます。
寿司の非対称=旧店は飲食店の中で低め、新店は高級素材で高い
寿司屋の原状回復は、調理で油を使うことが少なく完全禁煙の店が多く、路面1階に構えるケースがほとんどで搬出経路を確保しやすいため、割増が起きにくく飲食店の中ではむしろ低め(坪2.5〜5万円程度)です。ところが新店は、檜などの無垢材を使うカウンター(付け台)造作、ネタの鮮度を保つ冷蔵ショーケース、生簀、板場の水回りで坪30〜60万円程度、スケルトンからつくると1,500万円級にもなります。つまり寿司移転は、焼肉やラーメンのように旧店も新店も設備が重いのとは違い、旧店は軽く畳めるが新店の板場と付け台が高い非対称で、費用の主役は新店側に偏ります。
旧店の原状回復と新店の内装は、坪単価でこれだけ差があります(公開相場の目安)。
寿司を”重飲食と同じ”で見積もると外す
焼肉やラーメンの原状回復が高いからと寿司も同じと考えると、旧店は実際より安く、逆に新店のカウンター造作・冷蔵を軽く見積もると足りなくなります。寿司移転は旧店と新店で費用の重心が逆なので、必ず両側を分けて見てください。
寿司移転の費用相場——旧店の原状回復・新店の板場を1つの予算表で見る
寿司移転の総額は「旧店をいくらで畳むか」と「新店の板場・付け台をいくらでつくるか」の合算です。まず3つの要素を押さえます。
旧店の原状回復費用
内訳は、カウンター(付け台)造作の撤去/内装(床・壁・天井)の撤去や塗装・クロス張替え/ネタ冷蔵・生簀・板場の給排水撤去/電気設備の撤去/クリーニング/産業廃棄物の処分/原状確認の立会いです。原状回復の範囲はスケルトン戻しか居抜き退去かで変わりますが、寿司は油が少なく路面1階が多いため割増が起きにくく、坪2.5〜5万円程度と飲食店の中では低めに収まります。冷蔵・生簀まわりの給排水撤去は給排水工事の費用も参考になります。
新店の板場・付け台費用
新店の主役は板場と付け台です。檜などの無垢材を使うカウンター造作(木の厚み・節・木目で印象が変わる。奥行きは60cm、幅は一人あたり60cm程度が目安)、ネタの鮮度を保つ冷蔵ショーケース(新品で15万円程度、中古なら10万円以下のことも)、シャリの温度管理、生簀・活魚水槽、板場の水回り、鮮度と臭いを管理する換気が必要です。新店を寿司・和食の居抜きにできれば既存のカウンター・冷蔵を活かし坪15〜30万円程度に圧縮できますが、スケルトンから高級素材で作り込むと坪30〜60万円程度まで上がります。設計やグレード別の坪単価は寿司屋の内装ガイドが参考になります。
移転総額の考え方とシミュレーション
総額=旧店の原状回復+新店の板場・付け台+付帯(引越・什器移設・造作譲渡料・新店什器・届出関連)です。下のシミュレーターで、旧店の規模と原状回復の区分、新店の規模とタイプを選ぶと概算の総額レンジが出ます。旧店と新店で金額の重心が逆になるのが分かります。
旧店の坪数:坪 / 新店の坪数:坪
旧店の原状回復:
新店のタイプ:
規模別の目安は次のとおりです(公開されている坪単価の目安で機械的に計算した概算。付帯費用は含みません)。
| 規模(旧店/新店) | 旧店の原状回復 | 移転総額の目安(新店込み) |
|---|---|---|
| 10坪/10坪 | 約40〜50万円 | 約190〜650万円 |
| 15坪/15坪 | 約60〜75万円 | 約285〜975万円 |
| 20坪/20坪 | 約80〜100万円 | 約380〜1,300万円 |
| 30坪/30坪 | 約120〜150万円 | 約570〜1,950万円 |
旧店の原状回復が総額に占める割合は小さく、新店を寿司・和食居抜きにできれば総額は下限側、スケルトンで高級素材を作り込むと上限側に振れます。新店タイプ別の内訳は上のシミュレーターで確認できます。
見落としやすい付帯費用と敷金の扱い
総額には工事費以外の付帯も乗ります。旧店からの引越し・什器の移設・新店の什器や備品・新店の保証金や敷金・常連への移転告知などです。新店を居抜きにする場合は造作譲渡料(前借主や所有者にカウンター・冷蔵などの利用料として支払う費用)も加わります。ネタケースなどは中古を早めに探せば抑えられます。さらに旧店の敷金(保証金)は償却として解約時に20〜50%、あるいは全額が差し引かれる契約が一般的で、原状回復費と相殺されると手元にほとんど戻らないこともあります。なお新店契約でフリーレント(賃料無料期間)を取れれば、その期間を板場の造作工事に充てることで実質的な二重家賃を圧縮できます。
居抜きは「寿司・和食居抜きか」で決まる——カウンター・冷蔵を流用できるか
寿司移転で新店の費用を大きく動かすのが、居抜きの業種です。寿司で高いのは檜のカウンター造作とネタの冷蔵で、これらは前店舗が寿司・和食でないと流用できないからです。
寿司・和食居抜きなら流用、他業態だと一から
前店舗が寿司や和食の居抜きなら、檜カウンター造作・ネタ冷蔵・板場の水回りを流用でき、新店の費用を大きく抑えられます。一方で前店舗が他業態(カフェやサロンなど)の居抜きだと、カウンターも冷蔵も生簀も板場も一からつくることになり、居抜きの利点が薄れます。さらに寿司は生鮮を扱うため、給排水・冷蔵・換気の容量が寿司運用に耐えるかの確認も要ります。なお回転寿司はカウンターや店内中央に回転レーンや自動注文システムなどの設備投資が必要で、配線・配管が通常の寿司屋とは全く異なるため別物として考えます。下の比較で新店の作り方を整理します。
スケルトンで作る
寿司・和食居抜き
他業態の居抜きはカウンター・冷蔵が無く結局高い
カフェやサロンなどの居抜きは、寿司に必要な檜カウンター・ネタ冷蔵・生簀・板場の水回りが無いため、結局ほぼ新設になり居抜きの利点が消えます。寿司・和食の居抜きでも、冷蔵・給排水・換気が寿司運用に耐えるかを内見時に必ず確認してください。
見えない急所——鮮度を守る冷蔵・給排水・換気と、相見積もりのB/C工事
寿司移転で見落とされがちなのが、ネタの鮮度を守る設備です。ネタの冷蔵ショーケース(4〜10℃前後の温度帯)、シャリの温度管理、生簀・活魚水槽の給排水、板場の水回り、鮮度と臭いを管理する換気は、坪単価表には出ず、移転で物件が変わると冷蔵・給排水・換気を新物件に合わせて作り直す必要があります。だから比較すべきは「カウンターの木と、冷蔵・給排水を両方読める業者か」です。
A・B・C工事の基本(寿司での例)
A工事は躯体・共用部・防災設備など建物側(貸主負担)、B工事は専有部でも給排水竪管・電気本管容量・共用換気など建物に関わる部分(ビル指定業者)、C工事は専有部の檜カウンター造作・ネタ冷蔵・生簀・板場の水回り・内装(自由に選定可)です。移転での相見積もりの効きは次のとおりです。
| 工事区分 | 業者を選べるか | 相見積もりの役割 |
|---|---|---|
| A工事 | 選べない(貸主手配) | 基本は対象外 |
| B工事 | 選べない(指定業者) | 金額の妥当性を検証して交渉 |
| C工事 | 選べる(自由選定) | カウンター造作・冷蔵設計込みで業者を競わせる |
工事区分の詳細はA工事・B工事・C工事の違いで確認できます。
旧店は金額検証用、新店は木と冷蔵設計込みの業者選定用
旧店の原状回復は共用設備のB工事が混じり業者を選べない部分があるので、相見積もりは指定業者の金額が妥当か(カウンター撤去や水回り撤去の数量・単価)を検証する用途です。寿司は原状回復が低めなので金額は小さめですが、内訳の確認は欠かせません。新店のカウンター造作・冷蔵・生簀はC工事=自由選定なので、複数社を競わせ、檜の木と納まり、ネタ冷蔵の配置、生簀の給排水まで含めて選ぶ主戦場になります。
路面店かビルインかで寿司は搬出・設備が変わる
寿司は路面1階に構えるケースが多く、搬出経路を確保しやすいのが原状回復が低めに収まる一因です。一方で生簀・活魚なら給排水の負荷、ネタ冷蔵なら電気容量、板場の水回りなら防水床・排水と、生鮮を扱うがゆえの設備が物件選びに効きます。焼肉やラーメンのような大火力ガス・大量排気の制約は強くありませんが、冷蔵・給排水・換気を新物件で成立させられるかが移転先選びの軸になります。
冷蔵容量・給排水を読まない見積もりが鮮度トラブル・増設で高くつく
ネタ冷蔵の容量や給排水・換気を軽視した見積もりは、開店後に鮮度トラブルや増設工事で膨らみます。新物件の電気容量・給排水経路・換気が、想定するネタ冷蔵・生簀・板場に足りるか、見積もり段階で確認してください。
鮮度を切らさない移転——段取りと二重家賃スケジュール
移転で資金を最も無駄にするのが、旧店と新店の家賃が重なる二重家賃です。寿司は新店の板場・カウンター造作・冷蔵で工期が読みにくく、ここを設計しないと重複が膨らみます。
工期の非対称と、新店竣工からの逆算
旧店の原状回復は数日〜2週間ほどの短期ですが、新店は檜カウンターの造作・ネタ冷蔵・生簀・板場の水回りで工期が長くなります。旧店を先に畳めば二重家賃はほぼ回避できますが営業空白が出て常連が離れやすく、新店を先に作れば営業空白は最小ですが二重家賃が発生します。常連が支えの寿司屋は、営業空白を短くする側に寄せる価値が大きい業態です。理想は、新店の竣工日を起点に開店→数日〜2週間で旧店の原状回復→明渡し、と重ねる形で、賃貸借契約の解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)はこの逆算カレンダーの出発点になります。カウンターの木の手配や冷蔵の納期で新店の工期が読みにくいので、新店の工期が見積もりで固まってから予告を出すのが安全です。
逆算の流れと、押さえるチェックリストは次のとおりです。
- 解約予告の期限を賃貸借契約書で確認した
- 旧店の原状回復区分(カウンター造作・スケルトン戻しの有無)を把握した
- 新店のカウンター造作・冷蔵を含む工期を見積もりで確定した
- 常連への移転告知(店頭・直接案内)を計画した
- 旧店家賃と新店家賃の重複期間を最小化できているか試算した
寿司移転の進め方・行政手続きと「木と冷蔵を読めて造作まで捌ける業者」
移転は、旧店の契約確認から新店の開店、旧店の明渡しまでが一本の流れです。全体像を押さえると、相見積もりと工程の重ね方を判断しやすくなります。
届出は「旧店の廃業」+「新店の開業」の二本立て
移転は同じ屋号でも、行政上は「旧店を廃業し、新店を新規開業する」扱いになり、厳密には”移転”という手続きは存在しません。二つの手続きは並行しますが独立しているため、まとめては行えません。期限のあるものも多いので、漏れと遅れに注意してチェックリストで管理します。
旧店の廃業で必要な手続き
- 税務署へ廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出
- 保健所へ営業許可の廃業届を提出(廃業後10日以内が目安)
- 深夜0時以降に酒類を提供していた場合は警察へ廃止届
- 消防へ防火管理者の解任届(選任していた場合)
- テナントの解約予告(3〜6ヶ月前が一般的)と原状回復
- 冷蔵・什器・設備のリース契約の精算
- 電気・ガス・水道などライフラインの解約
- 常連・取引先への移転の告知
新店の開業で必要な手続き
- 保健所へ飲食店営業許可を申請(事前相談+施設検査)
- 食品衛生責任者を選任(必須)
- 収容人数30人超なら防火管理者を選任
- 深夜0時以降に酒類提供するなら警察へ深夜酒類提供飲食店営業開始届
- 消防検査に合格
- 生鮮を扱うネタ冷蔵・生簀・給排水・換気が保健所基準を満たすか確認
- 税務署へ開業届(新店で営業開始後)
期限が設定されている届け出が多いため、解約予告と合わせて逆算カレンダーに組み込んでおくと安全です。退店側の手続き全般は閉店・撤退の手続きも参考になります。
「木と冷蔵を読めて造作まで捌ける業者」の評価軸
移転では旧店の解体業者と新店の造作業者を別々に頼みがちです。だが旧店のカウンター撤去と新店の檜カウンター造作・冷蔵を1社が握ると、木の質・冷蔵配置・給排水の一貫性が保て、生鮮設備の見落としも一気通貫で防げます。次の観点で複数社を比較します。
- 寿司・和食の造作・内装の実績があるか
- 檜などカウンターの木と納まりを扱えるか
- ネタ冷蔵・生簀・給排水・換気を読めるか
- 旧店の原状回復と新店の板場造作の工程を重ねて管理できるか
- 旧店の原状回復から新店の板場・付け台までを一括で見積もれるか
複数社に「旧店の原状回復から新店の板場・付け台まで」をまとめて見積依頼すると、各社の総額・工程・カウンター提案・責任分界点の考え方が横並びで比較でき、価格の安さでなく「木と冷蔵を読んで造作まで捌く能力」で選べます。なお他業態の移転を検討中なら居酒屋・ラーメン・カフェの移転ガイドも同じ考え方で整理しています。
造作と設備を分けると起きやすいロス
カウンター造作の業者と冷蔵・給排水の業者を別に頼むと、木の納まりと冷蔵の配置がずれることがあります。さらに旧店の給排水・換気の図面が新店の業者に渡らず、冷蔵容量を一から検討し直すロスも起きやすくなります。
よくある質問
むしろ飲食店の中では低めです。油を使うことが少なく完全禁煙の店が多く、路面1階で搬出経路を確保しやすいため割増が起きにくく、坪2.5〜5万円程度が目安です。焼肉やラーメン(坪10万円程度)より安く済みます。ただしカウンター造作が多い店やスケルトン戻し指定だと上がります。
檜などの無垢材を使うカウンター造作、ネタの鮮度を保つ冷蔵ショーケース、生簀、板場の水回りに費用が集中するためです。スケルトンから高級素材で作り込むと坪30〜60万円、1,500万円級になることもあります。寿司移転は旧店が軽く新店が高い非対称が特徴です。
前店舗が寿司・和食ならカウンター・冷蔵・板場を流用でき大きく安くなります(坪15〜30万円)。一方でカフェやサロンなど他業態の居抜きだと、カウンターも冷蔵も一からになり利点が薄れます。回転寿司はレーン・配管が別物なので分けて考えます。
ネタ冷蔵は4〜10℃前後の温度帯で電気容量が、生簀・活魚水槽は給排水が必要です。移転で物件が変わると冷蔵・給排水・換気を新物件に合わせて作り直すため、移転先の電気容量・給排水経路・換気が想定する設備に足りるか、物件選びと見積もりの段階で確認することが重要です。
檜などの無垢材は木の厚み・節・木目で印象が大きく変わり、職人の所作と鮨を引き立てます。奥行きは60cm、幅は一人あたり60cm程度が使いやすい目安です。木の質と納まりは業者の腕で差が出るため、寿司・和食の造作実績がある業者を選ぶことが大切です。
頼めます。旧店のカウンター撤去と新店の檜カウンター造作・冷蔵を一括で扱える会社なら、木の質・冷蔵配置・給排水の一貫性が保て、生鮮設備の見落としも一気通貫で防げます。
規模・原状回復区分・新店タイプ次第です。旧店の原状回復は低め(坪2.5〜5万円)で総額への影響は小さく、新店次第で15坪なら寿司居抜きで数百万円から、スケルトンで高級素材を作り込むと1,000万円近くまで幅があります。本文のシミュレーターで概算を確認できます。
寿司屋の移転は、職人の所作と鮨を引き立てる板場と付け台を、鮮度を守りながら新しい箱に作り直すことで総額が決まります。旧店は軽く畳めるが新店のカウンター造作・冷蔵に費用が集中する非対称なので、旧店の原状回復と新店の板場を別々に頼まず、木と冷蔵を両方読める業者にまとめて相見積もりを出すところから始めるのが、最も無駄の少ない進め方です。
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