店舗の開業や出店で物件を探すとき、必ず突き当たるのが「居抜き物件にするか、スケルトン物件にするか」という選択です。居抜き物件は前テナントの内装・設備が残っているため初期費用と開業期間を抑えやすい一方、設備が中古であることや、既存の配管・区画に縛られること、造作譲渡料がかかることなど、見落とすと「安いはずが割高になった」という失敗につながる落とし穴もあります。そして最も大切なのは、その居抜き物件が自分の業態で「本当に使えるか」は、図面や写真だけでは判断できず、内装業者の現地調査と複数社の見積もりではじめて分かるという点です。本記事は、これから店舗を開業・出店する発注者のために、居抜きとスケルトンの違い・造作譲渡の仕組み・契約の急所・業態別の判定・退去時の注意までを、一次情報をもとにできるだけ深く整理した完全ガイドです。
30秒でわかる結論
居抜き物件の要点
- 居抜き=前テナントの内装・設備が残る物件。初期費用・開業期間を抑えやすいが、自由度は低く設備は中古
- 居抜きの契約は「賃貸借契約」+「造作譲渡契約」の2つ。物件オーナーの承諾が必須で、譲渡料は設備・立地で大きく変わる
- 契約の急所=原状回復の範囲・契約不適合責任・譲渡リストの現地照合・リース品・厨房の防水層・前店の撤退理由
- 「本当に使えるか」は図面・写真では分からない。業者の現地調査+複数社の相見積もりで、改修費+造作譲渡料の総額で判断する
- 業態で相性が変わる(飲食は配管・ダクトを活かせる/小売は元飲食の居抜きが割高になりやすい)。最終判断は現地調査で
⚠️ ご注意:本記事は一般的な情報提供を目的としており、正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。記載の費用・造作譲渡料・期間などはあくまで一般的な目安で、物件・業態・設備の状態・契約条件によって大きく異なります。原状回復義務の範囲や契約不適合責任、許認可などの条件は、物件・契約・自治体によって異なります。具体的な費用は複数社の見積もりで、契約内容は物件オーナー・不動産業者・専門家に、許認可は所管の保健所・消防署などに、必ずご確認ください。
居抜き物件とは——スケルトン物件との違い
居抜き物件とは、前テナントが使っていた内装・厨房機器・空調設備・什器などがそのまま残された状態で貸し出される物件のことです。「内装付き物件」とも呼ばれ、床・壁・天井・厨房・トイレなど主要な設備が残っているため、少し手を加えればすぐに営業を始めやすいのが特徴です。一方、スケルトン物件は内装・設備が取り除かれ、コンクリート打ちっぱなしの骨組みだけが残った状態を指します。
両者の最大の違いは「内装・設備の有無」と、それに伴う自由度・コスト・開業期間です。居抜きは初期費用と開業期間を抑えやすい代わりに既存の形に縛られ、スケルトンは自由に設計できる代わりに費用と期間がかかります。よく「居抜きは中古車、スケルトンは新車」とたとえられます。中古車は安く買えますが前の使い方によっては設備が消耗していることがあり、新車は高いぶん当面の故障の心配が少ない、という関係です。なお、床・壁・厨房だけが残っている、厨房設備だけが残っている、といった「一部居抜き」もあり、残り具合は物件によって大きく異なります。スケルトンからの店舗づくり全般は店舗改装ガイドもあわせてご覧ください。
居抜きのメリット・デメリット
居抜き物件を選ぶかどうかは、メリットとデメリットの両面を理解したうえで、自分の業態・コンセプト・予算に合うかで判断します。
メリット:最大の利点は初期費用を大幅に抑えやすく、開業までの期間を短縮しやすいことです。スケルトンから店舗づくりをすると内装・設備工事に多額の費用と時間(一般に3〜6ヶ月程度)がかかりますが、居抜きなら残った内装・設備を活かせるぶん、浮いた費用を運転資金や販促に充てられます。前テナントの顧客を引き継げる場合もあります。とくに飲食店では、厨房・配管・ダクトといった大がかりな設備を活かせるため、初期費用を抑える効果が大きくなります。
デメリット・注意点:一方で、既存の配管位置や厨房区画が決まっているため、動線や客席配置を自由に変更しにくいのが大きな制約です。無理に自分好みのデザインに変えようとすると解体費用がかさみ、結果としてスケルトンより割高になることもあります。また、譲り受ける設備は中古品のため、開業直後にエアコンや冷蔵庫が故障し、修理・交換費用が自己負担になる可能性があります。造作譲渡料が別途かかる場合があること、前テナントのネガティブなイメージ(「すぐ潰れた」など)を地域に引き継ぐ可能性があることも押さえておきましょう。「既存の形を活かせる業態かどうか」の見極めが、居抜き成功の鍵です。
造作譲渡の仕組み——「2つの契約」と譲渡料
居抜き物件で見落としやすいのが「造作譲渡」の仕組みです。居抜きの契約は、通常の賃貸借契約に加えて「造作譲渡契約」を結ぶのが一般的で、この点がスケルトン物件の契約と大きく異なります。
造作譲渡とは:前テナントが施した内装や設備を、新テナントが買い取る契約のことです。このとき支払う費用を「造作譲渡料(譲渡金)」といい、家賃や敷金とは別にやりとりされます。賃貸借契約は物件オーナー(貸主)と、造作譲渡契約は前テナント(売主)と結ぶため、2つの契約の整合性と、物件オーナーの承諾が重要になります。設備が古い場合や前テナントが急いで退去したい場合などは、0円で譲渡される「無償譲渡」や、所有権が放棄された造作が残置されているケースもあります。
譲渡の対象と譲渡料:造作譲渡の対象になりやすいのは、厨房機器・カウンター・テーブル・椅子・照明・空調・トイレ設備・内装の仕上げ・棚・仕切りなどです。一方、建物の構造に関わる部分や物件オーナー(貸主)の設備は含まれません。譲渡料は、設備の簿価(減価償却を踏まえた帳簿上の残存価値)が参考にされることもありますが、実際には見た目・使用感・故障の有無・使い回せるかといった実用的な価値や、売る側・買う側の合意で決まり、交渉で変動します。相場として一般に100万〜200万円程度とされることもありますが、設備・立地・状態で大きく変わるため、あくまで目安です。理想の金額にこだわりすぎると交渉が難航することもあります。
居抜き契約の急所——後のトラブルを防ぐ確認点
居抜き物件は、契約段階での確認を怠ると、入居後に思わぬ費用やトラブルが発生しやすい物件です。とくに次の急所は、契約前に必ず確認しましょう。
- 物件オーナーの承諾:店舗物件の契約書は「内装譲渡禁止・原状回復義務(スケルトン戻し)」が基本のため、居抜きで引き継ぐには物件オーナーの了承が必要です。テナント同士で話がついても、オーナーが了承しなければ居抜きで引き渡せません。造作譲渡契約書にオーナーの承諾が明記されているか確認します
- 原状回復の範囲:居抜きで入居しても、自分が退去するときはスケルトン状態に戻すのが基本です(契約による)。次の借主に居抜きで引き継げれば解体費をかけずに退去できるケースもあります。退去時の取り決めを契約前に把握しておきましょう
- 契約不適合責任:引き渡し後の設備故障などの責任の所在を明確にします。とくにガス設備は火災など大きな責任問題に発展する恐れがあるため、契約で明確にしておきます
- 譲渡リストの照合:造作譲渡契約書に添付される譲渡リストと現物を、現地で一つずつ照合します(「リストにあった製氷機が入居時になかった」を防ぐため)
- リース品の有無:店の機器が実は「リース品」で前オーナーがリース契約を解約していないと、知らずに引き継いでリース料の支払い義務まで負うことがあります
- 設備の動作・防水層:電気・水道・厨房設備は事前に動作確認を。築年数の古いビルでは厨房の防水層(床下の防水加工)が劣化し、階下への水漏れ事故で損害賠償につながるケースもあるため、内見時に水を流すかプロにチェックしてもらいます
- 前店の撤退理由:短期間で何度も退去がある物件は、立地や客層に別の問題があるサインの可能性があります。前テナントの撤退理由をリサーチしましょう
居抜きが「本当に使えるか」は、現地調査と相見積もりで判定する
ここまで見てきたように、居抜き物件は「安い・早い」という見た目のメリットの裏に、設備の状態・配管・防水層・造作譲渡の妥当性・自分の業態で活かせるかといった、図面や写真だけでは判断できない要素が数多くあります。だからこそ、居抜きの最終判断は内装業者の現地調査と、複数社の相見積もりで行うのが確実です。
なぜ現地調査と相見積もりが必要か:引き継ぐ設備が正常に動くか、給排水・ガス管・電気の配置変更が必要か、厨房の防水層は大丈夫か、既存の区画で自分の業態の動線が組めるか——これらは現地を見て、専門家が診断してはじめて分かります。そのうえで、残った設備を活かすための改修費と、造作譲渡料を合わせた「総額」を複数社で比較すれば、「居抜きだから安い」という思い込みを排し、本当に居抜きが得か、いっそスケルトンの方が良いかを、根拠をもって判断できます。無理な改修でスケルトンより割高になる失敗も、この段階で防げます。
店舗内装ドットコムは、居抜き物件が使えるかどうかを判定するための現地調査・見積もりを、複数の内装業者に無料で一括依頼できるサービスです。1社だけの見積もりでは妥当性が分からないため、複数社を比べて、改修費・造作譲渡料の総額と提案内容を見極めましょう。見積もりの比べ方は見積もり比較ガイド、ビルに入る場合の工事区分(B工事・C工事)は工事区分ガイドも参考になります。
業態で変わる居抜きの相性——「既存の形を活かせるか」
居抜きが得かどうかは、業態によって大きく変わります。鍵は「前テナントの既存の形(配管・区画・設備)を、自分の業態で活かせるか」です。
飲食店:厨房・給排水・ガス・ダクトといった大がかりな設備を活かせるため、居抜きの恩恵が大きい業態です。とくに
同業態(前も飲食店)の居抜きなら、厨房区画や排気をそのまま使える可能性が高く、初期費用を大きく抑えられます。ただし異業態の飲食(前と料理ジャンルが違う)では、厨房区画・配管・排気の変更で追加工事が発生することがあるため、活かせる範囲の見極めが必要です。業態別の詳しい注意点は、
カフェ開業ガイド、
居酒屋の移転ガイド、
焼肉店の移転ガイド、
ラーメン店の移転ガイドもご覧ください。
小売・物販:商品の見せ方やブランドの世界観が売上に直結するため、自由に棚・照明を配置できるスケルトンが好まれる傾向があります。とくに元飲食店の居抜きを小売にするケースは、不要な厨房設備の撤去や埋設配管の処理に多額の費用がかかり、割高になりやすいため注意が必要です。小売で居抜きを検討するなら、同業種(元アパレル・元雑貨店など)の物件に絞って探すと、内装を活かしやすくなります。
クリニック・美容室:同じ用途の居抜き(前もクリニック・前も美容室)なら、診察室・処置室や、シャンプー台の給排水などを活かせて有利です。ただし、クリニックは診療科ごとの施設基準・放射線防護・配管が、美容室はシャンプー台の配管・電気容量が、自院・自店の規模に合うかの確認が欠かせません。
クリニック移転ガイド、
美容室の移転ガイドに、用途別の居抜き判定のポイントをまとめています。
居抜きとスケルトン、どちらを選ぶか——判断早見表
居抜きとスケルトンのどちらを選ぶかは、初期費用・開業期間・レイアウトの自由度・退去時の条件・自分が何を優先するかで決まります。
なお、近年は貸主が内装まで作って貸す「セットアップ物件」という第3の選択肢も広がっています。3タイプを同じ土俵で比べ、5問の診断で適性を判定したい方は居抜き・スケルトン・セットアップの3択比較ガイドをどうぞ。
判断のヒント:費用と開業期間を抑えたい、初めての開業でリスクを抑えたい、という場合は居抜きが有力です(多少のレイアウトの不便さは工夫と運用でカバーできます)。ただし造作譲渡料が高額な場合は、改修費と合わせた総額で判断してください。一方、店舗デザインに強くこだわりたい、ブランドの世界観を一から作りたい、という場合はスケルトンが向きます。1号店は居抜きでリスクを抑え、経験を積んでから2号店・3号店でスケルトンも含めて選ぶ、という進め方もあります。いずれにせよ、初期費用だけでなく、退去時の原状回復やオープン後の維持費まで含めて検討することが大切です。
見落としやすい「退去時」のこと——スケルトン戻しとカラ家賃
居抜き・スケルトンを選ぶとき、入るときのことばかりに目が向きがちですが、「辞めるとき(退去時)」の条件も同じくらい重要です。
退去時の原状回復:スケルトン物件は、退去時にスケルトン化(原状回復)を行うのが基本で、内装・設備の解体・撤去工事や産業廃棄物処理費がかかります。居抜きで入居した場合も、自分が退去するときはスケルトンに戻すのが基本ですが、
次の借主を見つけて居抜き(造作譲渡)として引き継げれば、解体費用をかけずに退去できるケースもあります。退去時にどこまで原状回復が必要かは賃貸借契約に明記されているため、契約前に必ず確認しましょう。原状回復の詳しい考え方は
原状回復ガイドにまとめています。
カラ家賃(空家賃):工事から開業準備までには一般に数ヶ月かかり、その間も家賃は発生します。この「営業していないのに払う家賃」をカラ家賃といい、準備期間が延びるほど負担が増えます。居抜きは工事期間を短縮しやすいぶんカラ家賃を抑えやすい一方、スケルトンは工事に時間がかかるためカラ家賃も大きくなりやすい点を、資金計画に織り込んでおきましょう。また、工事期間中は騒音・振動や人・車の出入りがあるため、近隣への挨拶も忘れずに行います。
居抜き開業の進め方と、相見積もりで判定する業者選び
居抜きで開業する場合の進め方は、物件の引き継ぎ内容の確認 → 賃料・造作譲渡料の交渉 → 契約条件の確認 → 現地調査・相見積もり → 契約(賃貸借+造作譲渡) → 改装・許認可 → 開業という流れが基本です。
①引き継ぎ内容・金額の確認譲渡リスト・設備の状態・希望との差
②業者の現地調査・複数社で相見積もり改修費+造作譲渡料を総額で比較
③賃料・造作譲渡料の交渉・契約条件の確認原状回復の範囲・契約不適合責任
④契約(賃貸借+造作譲渡)・引き渡しオーナー承諾・2契約の整合性
⑤改装・許認可・開業看板架替・清掃・飲食店営業許可/消防など
許認可も忘れずに:居抜きでも、飲食店なら飲食店営業許可(保健所)、防火対象物使用開始届(消防署)、深夜に酒類を提供するなら届出(警察署 ※必要な場合)など、業態・規模に応じた許認可が必要です。前テナントの許可をそのまま使えるわけではないため、改めて取得・届出が必要になります。所管の保健所・消防署などに早めに確認しましょう。
業者選びでは現地調査と相見積もりが要です。居抜きが使えるかの判定、改修費・造作譲渡料の妥当性は、1社だけでは見極めが難しいため、複数の内装業者に現地を見てもらい、総額と提案内容を比較します。発注方式(一括・分離など)の選び方は発注方式ガイドも参考になります。
居抜きで開業する業種から探す
居抜きの判定ポイントは業態で異なります。開業・出店を検討している業種の事例やガイドから、具体的な設備・動線・居抜き判定のポイントを確認できます。
よくある質問(FAQ)
居抜き物件とスケルトン物件は何が違いますか?
最大の違いは「内装・設備の有無」と、それに伴う自由度・コスト・開業期間です。居抜きは前テナントの内装・設備が残っているため初期費用と開業期間を抑えやすい反面、既存の配管・区画に縛られ自由度が低く、設備は中古です。スケルトンは内装・設備がない骨組みだけの状態で、一から自由に設計できる反面、費用と期間(一般に3〜6ヶ月程度)がかかります。よく「居抜きは中古車、スケルトンは新車」とたとえられます。
造作譲渡料の相場はどれくらいですか?
設備・立地・状態によって大きく変わるため一概には言えませんが、一般に100万〜200万円程度とされることもあります。ただしこれはあくまで目安で、設備が古い場合や前テナントが急いで退去したい場合などは0円の無償譲渡もあります。譲渡料は簿価(減価償却を踏まえた残存価値)が参考にされることもありますが、実際には見た目・使用感・故障の有無などの実用価値や、売る側・買う側の合意で決まり、交渉で変動します。改修費と合わせた総額で判断することが大切です。
居抜き物件は本当に安いのですか?
「安い・早い」は居抜きの大きなメリットですが、必ず安くなるとは限りません。引き継いだ設備が故障して修理・交換費がかかったり、既存の区画を無理に変更して解体費がかさんだり、造作譲渡料が高額だったりすると、結果としてスケルトンより割高になることもあります。「居抜きだから安い」と早合点せず、残った設備を活かす改修費と造作譲渡料を合わせた総額を、複数社の見積もりで把握して判断することをおすすめします。
居抜き物件が自分の業態で使えるか、どう確認すればいいですか?
図面や写真だけでは、設備の状態・配管・防水層・既存区画で自分の業態の動線が組めるかは判断できません。内装業者に現地を見てもらい、引き継ぐ設備が正常に動くか、給排水・ガス・電気の配置変更が必要か、厨房の防水層は大丈夫かなどを診断してもらうことが確実です。そのうえで、改修費と造作譲渡料を合わせた総額を複数社で比較すれば、居抜きが得か、スケルトンの方が良いかを根拠をもって判断できます。
居抜きの契約で、最も注意することは何ですか?
賃貸借契約に加えて造作譲渡契約という2つの契約を結ぶ点と、その整合性です。とくに、造作譲渡に物件オーナー(貸主)の承諾があるか、退去時の原状回復の範囲はどうか、引き渡し後の設備故障の責任(契約不適合責任。特にガス設備)はどうか、を確認します。あわせて、譲渡リストと現物の現地照合、リース品の有無、設備の動作確認、築古ビルの厨房防水層の劣化なども確認しましょう。契約内容は物件オーナー・不動産業者・専門家に必ず確認してください。
退去時にもお金がかかると聞きました。本当ですか?
はい。スケルトン物件は退去時にスケルトン化(原状回復)を行うのが基本で、解体・撤去工事や産業廃棄物処理費がかかります。居抜きで入居した場合も、自分が退去するときはスケルトンに戻すのが基本ですが、次の借主を見つけて居抜き(造作譲渡)として引き継げれば、解体費用をかけずに退去できるケースもあります。退去時の条件は賃貸借契約に明記されているため、入るときに「辞めるとき」のことも必ず確認しておきましょう。
居抜き物件にリース品が含まれているとどうなりますか?
店の機器が実は「リース品」で、前のオーナーがリース契約を解約していない場合、知らずに引き継ぐとリース料の支払い義務まで引き継ぐことになりかねません。造作譲渡で譲り受けるものはリストにしてもらい、その中にリース品が含まれていないかを必ず確認しましょう。リース品が含まれる場合は、リース契約の扱い(解約・引き継ぎ・料金)を契約前にはっきりさせておくことが重要です。
飲食店と小売店で、居抜きの向き不向きはありますか?
あります。飲食店は厨房・配管・ダクトなど大がかりな設備を活かせるため居抜きの恩恵が大きく、とくに同業態(前も飲食店)の居抜きが有利です。一方、小売・物販は商品の見せ方やブランドの世界観が売上に直結するため自由なスケルトンが好まれる傾向があり、とくに元飲食店の居抜きを小売にするケースは不要な厨房設備の撤去や埋設配管の処理に多額の費用がかかり割高になりやすいため注意が必要です。小売で居抜きを検討するなら同業種(元アパレル・元雑貨店など)に絞ると活かしやすくなります。
居抜きでも許認可は取り直しが必要ですか?
はい。居抜きでも、前テナントの許可をそのまま使えるわけではなく、改めて取得・届出が必要です。飲食店なら飲食店営業許可(保健所)、防火対象物使用開始届(消防署)、深夜に酒類を提供するなら届出(警察署 ※必要な場合)など、業態・規模に応じた許認可が必要になります。これらは所管の保健所・消防署などの運用によって異なるため、改装のスケジュールと並行して早めに確認してください。
前テナントが残した設備に不具合があったら、誰の責任ですか?
造作譲渡契約における「契約不適合責任」の取り決め次第です。引き渡されたものに故障や不具合があった場合の責任の所在を、契約上で明確にしておくことが重要です。とくにガス設備は火災など大きな責任問題に発展する恐れがあるため、責任の所在をはっきりさせておきます。引き渡し後すぐに主要設備が故障した場合に備え、修理費用や交換費用の取り決めを契約に含めておくと安心です。設備は事前に動作確認をしておきましょう。
居抜きとスケルトン、結局どちらを選べばいいですか?
初期費用・開業期間を抑えたい、初めての開業でリスクを抑えたい、という場合は居抜きが有力です(多少のレイアウトの不便さは工夫と運用でカバーできます)。店舗デザインに強くこだわりたい、ブランドの世界観を一から作りたい、という場合はスケルトンが向きます。1号店は居抜きでリスクを抑え、経験を積んでから2号店でスケルトンも検討する進め方もあります。いずれも、造作譲渡料が高額なら改修費と合わせた総額で、退去時やオープン後の維持費まで含めて判断することが大切です。
居抜き物件の改修や判定は、どんな業者に頼めばいいですか?
居抜き物件の現地調査ができ、引き継ぐ設備が使えるか・追加工事がどれだけ必要かを診断でき、改修費と造作譲渡料を踏まえた総額の見積もりを出せる内装業者が理想です。業態(飲食・小売・クリニック・美容室など)の設備・動線に詳しい業者だとより安心です。1社だけでは居抜きの妥当性や金額の判断が難しいため、複数の業者に現地を見てもらい、総額と提案内容・段取り力を比較して選びましょう。店舗内装ドットコムでは、居抜き判定の現地調査・見積もりを複数社に無料で一括依頼できます。
まとめ|居抜きは「総額」と「現地調査・相見積もり」で判断する
居抜き物件は、前テナントの内装・設備を活かして初期費用と開業期間を抑えられる魅力的な選択肢ですが、その実力は物件によって大きく異なります。①居抜きとスケルトンの違い(内装・設備の有無・自由度・コスト・退去時)、②造作譲渡の仕組み(賃貸借+造作譲渡の2契約・オーナー承諾・譲渡料の目安と交渉)、③契約の急所(原状回復の範囲・契約不適合責任・譲渡リスト照合・リース品・厨房防水層・前店の撤退理由)、④業態ごとの相性(飲食は配管を活かせる/小売は元飲食の居抜きが割高になりやすい)——これらを踏まえたうえで、最後は「本当に使えるか」を内装業者の現地調査で診断し、改修費+造作譲渡料の総額を複数社の相見積もりで比較して判断するのが、居抜き開業で失敗しない最大のコツです。「居抜きだから安い」と早合点せず、総額と退去時まで見据えて、根拠をもって選びましょう。費用・判定は複数社の見積もりで、契約は専門家に、許認可は所管の窓口に、必ずご確認ください。
オフィスの居抜き(セットアップオフィス含む)は近年最も流通が伸びている分野です。造作譲渡と原状回復義務の引き継ぎ、実効コストの比較式はオフィス・事務所の内装工事費用相場で解説しています。
重飲食の代表例として、ラーメン店の居抜きで見るべき「3点セット」(排気ダクトの風量・グリストラップの容量・防水床の状態)の見極め方はラーメン屋の内装工事費用相場で詳述しています。
焼肉の居抜きは全卓分のダクト資産(数百万円級)を引き継げる代表例ですが、ダクト内部の点検が必須です。判断の実務は焼肉屋・鉄板焼き屋の内装工事費用相場で詳述しています。