オフィス・事務所の内装費用を調べると「坪10〜40万円」という広い答えが返ってきます。20坪なら200万円なのか800万円なのか——この幅では予算が組めません。幅の正体は2つあります。ひとつは費用の半分が床下(OAフロア・配線)と天井裏(空調・防災)という見えない場所に埋まっていること。もうひとつは、オフィスの費用が本当は坪ではなく「1席」あたりで動くことです。
本ページは、公開調査データ(1人あたりオフィス面積の中央値3.8坪)を使った1席単価×人数の読み方から始めて、見えない半分の内訳、間仕切りの値段表、工事区分(A・B・C工事)と原状回復の入退去トータル、セットアップオフィスとの比較、規模別(10坪・20坪・30坪・50坪)のモデル予算まで、オフィス開設・移転の「お金と図面」を1ページに通しました。
目次
- 30秒でわかる結論
- オフィス内装の費用──グレード×タイプ別の坪単価と総額
- 30秒・無料:オフィス内装の費用シミュレーター(人数→1席単価対応)
- 1席単価×人数で読む──公開データを物差しにする
- 費用の半分は床下と天井裏──見えない内訳を開く
- 間仕切りの値段表──会議室1室いくらか
- 工事区分(A・B・C)と原状回復──入退去トータルで読む
- セットアップ・居抜きオフィスという選択肢
- 規模別モデル予算──10坪・20坪・30坪・50坪
- エントランスは採用投資──受付・サインの費用
- 会議室・防音・Web会議ブース
- 見積内訳の10カテゴリとチェックリスト
- 法規と管理規約──消防・衛生基準・ビルのルール
- コストダウンの正攻法と、DIYの線引き
- 工期とスケジュール
- 内装業者の選び方と施工事例の見方
- よくある質問
- まとめ──数字の骨格をつかんだら、相見積もりへ
30秒でわかる結論
- 内装工事費の目安:ミニマム坪10〜20万円・スタンダード坪20〜40万円・ハイグレード坪40〜70万円。セットアップ/居抜きなら坪0〜15万円で入居可
- 必要な広さは人数×3.5〜4坪(公開調査の中央値3.8坪/人)。10人なら35〜40坪が標準帯
- 1席あたりの総投資=工事の持ち分+什器5〜15万円+配線2〜5万円——1席42〜180万円で読むと見積もりの漏れが浮く
- 費用の約半分は床下(OAフロア坪1〜2万円・LAN電源)と天井裏(空調・防災移設)。防災・空調はB工事(ビル指定業者)になりやすく割高
- 退去時の原状回復は坪2〜10万円級。オフィスは住宅用の原状回復ガイドラインの対象外が原則で、契約特約がすべて——入居前に出口も確定を
【早見表】オフィス内装の費用──グレード×タイプ別の坪単価と総額
最初に結論の数字です。以下は借主側で行う内装工事費(C工事=間仕切り・仕上げ・OAフロア・電源LAN・造作。什器とビル側のB工事は別枠=後述)の一般的な目安で、各カードの下段は20坪の場合の工事費目安です。
ミニマム(機能重視)
- 内容既存活用+最小間仕切り
- 20坪目安200〜400万円
スタンダード
- 内容会議室造作+OA床+意匠
- 20坪目安400〜800万円
ハイグレード
- 内容デザイン設計+造作多め
- 20坪目安800〜1,400万円
セットアップ・居抜き
- 内容内装済み区画+微調整
- 20坪目安0〜300万円
小規模(10坪台)
- 内容固定費が割り掛かり高め
- 15坪目安225〜675万円
什器・配線(別枠)
- 内容デスク椅子5〜15万+配線2〜5万
- 10席目安70〜200万円
この表の読み方
「坪10〜40万円」という世間の相場は、このグレード帯とタイプの違いをひとつのレンジに潰した数字です。自社がどのカードかを決めるだけで、幅は一気に半分以下に絞れます。さらに絞るのが次章の1席単価の読み方です。金額はいずれも一般的な目安で、ビル条件・工事区分で変動します。
目安をつかんだら、実際の金額は複数社の見積もりで確かめるのが確実です。
ところで、オフィス内装の相場記事は媒体によって「坪10〜20万」から「坪40〜90万」までバラバラです。これは誤りではなく「どこまでを数えているか」の会計範囲が違うだけ。他サイトの数字と見積もりを照合するときは、次の翻訳表で範囲を揃えてから比べてください。
| よく見るレンジ | その数字が数えている範囲 | 読み方 |
|---|---|---|
| 坪10〜20万円 | 居抜き・一部内装済みのC工事のみ | 既存活用前提の最小値 |
| 坪20〜40万円 | スケルトン等のC工事一式(本記事の基準) | 間仕切り・仕上げ・OA・電源LAN込み |
| 坪40〜90万円 | ハイグレード仕様、またはB工事・什器まで込み | 「何が入っているか」の確認が必須 |
| 1席20〜80万円 | 什器・配線込みを人数で割った1席単価 | 本記事のシミュレーターと同じ物差し |
30秒・無料:オフィス内装の費用シミュレーター(人数→1席単価対応)
「うちの会社ならいくらか」を最初につかみましょう。人数を入れると必要坪数を自動換算(1人あたり3.5〜4坪・調整可)し、グレード・物件の状態・間仕切りの量を選ぶと、内装工事費に什器・配線まで合算した総額と1席あたり単価を表示します。
※金額は一般的な目安レンジに地域係数を掛けた概算です。ビル側のB工事(防災・空調の移設等)、通信機器・OA機器、敷金等の物件取得費は含みません。正確な金額は現地調査後の見積もりでご確認ください。
1席単価×人数で読む──公開データを物差しにする
オフィスの見積もりを「坪いくら」で眺めても、妥当性は判定できません。坪単価はグレードと工事範囲で3倍動くからです。実務で効くのは、1席(1人)あたりに全費用を集約する読み方です。
ステップ①:人数から広さを決める
ザイマックス不動産総合研究所の「1人あたりオフィス面積調査」(直近調査・東京23区)では、在籍1人あたりオフィス面積の中央値は3.8坪——これは執務席だけでなく会議室・受付・共用部を含んだ実際の賃借面積の実測値で、大阪市もほぼ同水準です(出典:ザイマックス総研「1人あたりオフィス面積調査」)。つまり10人の会社なら35〜40坪が世の中の標準帯。テレワーク併用でフリーアドレスにするなら在籍×出社率で席数を絞る設計もあり得ますが、出社回帰で手狭になる企業が増えているのも同調査が示す実態です。なお法定の下限として、事務所衛生基準規則は労働者1人あたり気積10m³以上(天井高2.5mなら床約4m²=約1.2坪)を求めており、これを下回る詰め込みはそもそも違法です。
ステップ②:1席に費用を集約する
内装工事費を席数で割った「工事の持ち分」に、デスク・チェア・収納(1席5〜15万円)と電源・LAN配線(1席あたりコンセント3〜4口が実務目安で2〜5万円)を足すと、1席あたり総投資42〜180万円というレンジに収まります。ミニマム構成なら1席40〜60万円、スタンダードで1席70〜110万円、ハイグレードで1席120万円超——この物差しを持つと、「20坪500万円」という見積もりが10人分の席として妥当か(1席50万円=ミニマム帯として妥当)を、その場で判定できます。
1席単価が見積もりの「漏れ」を炙り出す
相見積もりでA社だけ妙に安いとき、1席単価に直すと原因が見えます。1席30万円を切る見積もりは、OAフロアか配線かB工事調整費のどれかが「別途」に逃げていることがほとんどです。安い理由を説明できない見積もりは、安いのではなくまだ全部書かれていないだけ——次章の「見えない半分」がその正体です。
フリーアドレスなら「席数」を設計する──縮めすぎ注意
テレワーク併用でフリーアドレスにする場合、席数は在籍人数×出社率×余裕係数(1.1〜1.2)で設計します。公開調査では企業の出社率は平均65%前後で安定しており、在籍20人なら 20×0.65×1.15≒15席+打合せ・集中席が現実解です。ただし同じ調査シリーズで、出社1人あたりの面積は近年縮小を続けて過去最少水準(4.7坪)となっており、出社回帰で「オフィスが手狭」に転じる企業が増えているのも実態(出典:ザイマックス総研「1人あたりオフィス面積調査」)。席数を出社率ぴったりに縮めると、採用1〜2名で作り直しになります。2年後の人数で設計するのが、結局いちばん安い設計です。
費用の半分は床下と天井裏──見えない内訳を開く
オフィス内装の見積もりで、壁紙や床材といった「見える意匠」は実は半分程度です。残り半分は、床下と天井裏に埋まっています。
床下:OAフロアと配線の幹線
OAフロア(フリーアクセスフロア)は床を二重にして配線を通す下地で、材工坪1〜2万円程度が一般的な目安です。既設のビルも多い一方、老朽ビルや住宅系物件をオフィス化する場合は新設になります。その上を走る電源・LANの配線工事が1席2〜5万円(前章)。デスクのレイアウトを後から変えるほど配線のやり直しが発生するため、レイアウト確定→配線設計の順番を守ることが、実は最大の配線コスト対策です。
天井裏:空調・防災という「動かすと高い」設備
間仕切りで部屋を作ると、天井裏では空調の吹出口・還気のバランスが崩れ、吹出口の移設・増設が発生します。さらに火災感知器・スプリンクラー・非常照明は間仕切りの位置に応じて増移設が必要で、これらは多くのビルでB工事(ビル指定業者・借主負担)に区分されます(詳細はs6)。「会議室を1部屋足すだけ」の見積もりに、パーティション代しか載っていなかったら要注意——天井裏の分が後から乗ります。
この構造を知っていれば、冒頭の言葉に戻れます。安すぎる見積もりは、意匠を削った額ではなく、床下・天井裏の書き漏らしであることが多い。1席単価と本章の項目名で、見積書を照合してください。
間仕切りの値段表──会議室1室いくらか
オフィス内装の主役工事は間仕切りです。「会議室を2つ、応接を1つ」という要望が、そのまま見積もりの骨格になります。種類ごとの単価と、6人用会議室1室あたりの目安を開きます。
選び方の軸は3つです。①遮音——人事・商談・Web会議が多いならスチール以上、雑談ゾーンの緩い仕切りならアルミで十分 ②可変性——組織が伸び縮みする会社はパーティション(移設可能)、レイアウトを固定できる会社は造作壁で意匠に投資 ③採光——窓から遠い席に光を届けたいならガラスか欄間オープン。そして図中の通り、欄間(天井までの隙間)を塞ぐかどうかが天井裏コスト(感知器・空調の増移設=多くはB工事)を左右する分岐です。全室を天井到達で作ると防災工事が膨らむため、「遮音が本当に要る部屋だけ天井まで、他は欄間オープン」というメリハリが、費用設計の定石です。
商業施設・テナントビル全般に共通する工事区分と館コストの読み方は商業施設テナントの内装費用相場(A/B/C工事区分の読み方)で詳述しています。
工事区分(A・B・C)と原状回復──入退去トータルで読む
オフィスビルには、店舗以上に厳格な工事区分のルールがあります。ここを知らずに相見積もりをすると、「安い見積もり」を選んだのに総額が膨らむ——という定番の事故が起きます。
B工事が「見積もりの外」に潜む
防災設備(感知器・スプリンクラー・非常照明)、空調の移設、給排水——これらは借主の都合で行うのにビル指定業者が施工し、借主が払う「B工事」に区分されるのが一般的です。指定業者には競争が働かないため、同じ工事でも相場の1.5〜2倍の提示は珍しくありません。対策は2つ。①図面確定前に管理会社へ工事区分表を確認し、B工事の概算を先に取る ②内装会社の見積もりに「B工事は別途・ビル見積もりによる」と明記されているかを確認し、総予算にはB工事枠(規模により数十万〜数百万円)を最初から積んでおくことです。
原状回復──オフィスは「ガイドラインの外」が原則
住宅の賃貸では国土交通省の原状回復ガイドラインが通常損耗を貸主負担としますが、オフィス・事業用賃貸はこのガイドラインの主対象外が原則で、通常損耗まで借主負担とする特約も広く有効に扱われています。つまり契約書の原状回復条項がすべてです。実務の相場は坪2〜10万円級(ビルグレードが上がるほど高く、指定業者施工)。入居時に「内装にいくらかけるか」だけでなく、退去時に「いくらで戻すか」まで含めた入退去トータルで物件を比較してください。契約書の確認ポイントは賃貸契約ガイドにまとめています(契約判断は物件ごとに異なるため、重要案件は宅建士・弁護士等の専門家確認をおすすめします)。
そして退去側にも入居のB工事と同じ構造問題があります。多くのビルは原状回復を指定業者に限定しており、競争が働かないため初回見積が高く出やすい——業界団体の公開データでは、指定業者の初回見積(中央値で坪10万円前後)が適正査定を経て2〜3割下がった事例が報告されています。しかもオフィスの原状回復は住宅と違い経年劣化・自然損耗も借主負担が原則。相場は小・中規模で坪2〜5万円、大規模5〜10万円、ハイグレードビルは坪10万円超も珍しくありません。冒頭のシミュレーターはこの退去引当まで別枠で自動計算します。
最後に、意外と大きいのが発注時期の値段です。オフィス工事は期末の移転集中で1〜3月と9〜10月が繁忙期となり、同じ工事でも見積が2〜3割高く出やすい——逆に5〜7月の閑散期発注は、公開解説で50坪規模なら百万円級の節約と語られる定石です。移転日は「賃料発生日」だけでなく「工事の季節」からも逆算してください。
セットアップ・居抜きオフィスという選択肢
近年急増しているのが、貸主があらかじめ内装・会議室を作り込んだセットアップオフィスと、前テナントの内装を引き継ぐ居抜きオフィスです。内装工事費は坪0〜15万円まで圧縮でき、入居も速い——ただし「安い」ではなく「支払い方が違う」と理解するのが正確です。
セットアップ=内装費を賃料で分割払いしている
セットアップ区画の賃料は、同ビルのスケルトン区画より1〜2割高く設定されるのが一般的です。つまり初期の内装費を月額に転嫁した構造で、実効コスト=初期費用+(賃料差×入居予定月数)+退去費で比べる必要があります。2〜3年の短期利用や、資金を事業に温存したいスタートアップには合理的。5年超の長期利用なら、自前で作るほうが総額で逆転することも多い——在籍予定期間が判断軸です。
居抜きオフィス=原状回復義務ごと引き継ぐ
居抜きの注意点は店舗と同じで、①造作譲渡料の妥当性(残存価値)②原状回復義務の範囲を誰が引き継ぐかの契約明記 ③引き継ぐ間仕切りが自社レイアウトと合うか、の3点です。特に②は、前テナントの造作まで含めた回復義務を負わされると、退去時に想定外の請求になります。会議室の位置が合えば、居抜きは間仕切り工事(本記事の主役コスト)を丸ごと省ける強力な選択肢です。
「3年トータル」で比べると答えが変わる
初期費用だけで比べると、入居後の賃料プレミアムと退去時の原状回復費で逆転が起きます。30坪・3年利用の全国目安で並べると次の通りです。
| 選択肢(30坪・3年) | 初期(内装) | 期間中の上乗せ | 退去時(原状回復等) | 3年合計の目安 |
|---|---|---|---|---|
| スケルトン+C工事フル | 900〜1,800万円 | — | 180〜300万円 | 約1,080〜2,100万円 |
| セットアップオフィス | 0〜300万円 | 賃料プレミアム 約320〜650万円(坪3,000〜6,000円/月×36ヶ月) | 50〜150万円 | 約370〜1,100万円 |
| 居抜きオフィス | 300〜600万円+造作譲渡0〜200万円 | — | 0〜300万円(引継条件次第) | 約300〜1,100万円 |
坪単価と賃料の公開レンジからの試算例です。3年未満の短期利用ではセットアップ・居抜きが逆転しやすく、5年超ならC工事フルの自由度と減価が効いてきます。なお発注時期も総額に効きます。繁忙期(1〜3月・9〜10月)を避けた閑散期発注で、50坪級では100〜200万円の差が出るという実務情報も公開されています。
規模別モデル予算──10坪・20坪・30坪・50坪
規模別に、人数の目安(1人3.8坪換算)とスタンダード帯の工事費・総額モデルを整理します。小規模ほど坪単価が高く出るのは、トイレ・給湯・エントランスという固定要素が少ない坪数に割り掛かるためです。
10坪(2〜3人)
- 1席総投資60〜160万円
- 向き士業・SOHO・サテライト
20坪(5〜6人)
- 1席総投資75〜150万円
- 向き会議室1〜2室の標準構成
30坪(8〜10人)
- 1席総投資70〜140万円
- 向き受付+会議室2室が可能
50坪(13〜15人)
- 1席総投資75〜145万円
- 向きゾーニング設計の効果大
各レンジはスタンダード帯(坪20〜40万円)+什器・配線を含む三点の目安です。ミニマム構成なら下限をさらに3割下げられ、ハイグレードなら上限が5割伸びます。「事務所 内装」で調べている2〜5人規模の方は10坪カードが該当し、この規模ではセットアップオフィス(s7)や既存内装の活用が最有力候補になります。坪単価という指標の扱いは坪単価ガイドで詳述しています。
エントランスは採用投資──受付・サインの費用
執務席が「守り」の投資なら、エントランスは唯一の「攻め」の投資です。来客と採用候補者が会社を評価する最初の3秒がここで決まるため、近年はエントランスに予算を寄せる設計が主流になっています。
費用の目安は、ロゴサイン(切文字・箱文字)10〜40万円、受付カウンターまたは無人受付端末まわりの造作15〜60万円、ブランドウォール(意匠壁+照明)20〜150万円——一式で50〜300万円の幅です。面積のわりに単価が高いゾーンですが、写真に写るのはここと会議室だけ、という現実を踏まえると、採用ページ・SNSに載る「絵」への投資として回収筋が読めます。執務ゾーンをミニマムに絞り、浮いた分をエントランスと会議室に集中させる——これがオフィス版の「見せ場集中」です。
会議室・防音・Web会議ブース
Web会議が標準になった今、オフィスの音問題は「隣の会議室の声」から「執務席の通話音」に移りました。対策は段階制で考えます。
①吸音——会議室内の反響を抑える吸音パネルは1枚数千円〜数万円で、Web会議の音質改善としては最もコスパの良い投資です。②遮音——隣室に漏らさないには、スチールパーティション+欄間クローズ+(必要なら)間仕切り内へのグラスウール充填で、アルミ比+2〜5割の費用感。人事面談室・商談室はここまでやる価値があります。③個室ブース——1人用のWeb会議ブース(既製品)は1台100万円台〜が目安で、リース・レンタルの選択肢も豊富。造作で電話室を作るより、移転時に持っていける既製ブースが主流になりつつあります。音を「どの部屋に閉じ込めるか」を最初に決めると、全室高遮音という過剰投資を避けられます。
間仕切り・会議室の構成は、実際の施工写真で見比べるのが早道です。
見積内訳の10カテゴリとチェックリスト
相見積もりは、各社バラバラの項目を次の10カテゴリへ仕分けし直すと横並びになります:仮設・養生/軽鉄・間仕切り/内装仕上(床壁天井)/OAフロア/電気・照明/LAN・電話配線/空調・換気(移設)/防災・消防(多くはB工事)/建具・ガラス・サイン/什器・備品(別枠明記)。オフィスで特徴的なのは、間仕切り+配線系で過半を占め、水回りがほぼゼロという構成です。
オフィスの見積書チェックリスト
- B工事(防災・空調移設)が「別途」と明記され、総予算に枠を積んであるか
- 1席単価に直して42〜180万円のレンジ内か──極端に安い場合はOAフロア・配線の漏れを疑う
- 間仕切りの仕様(アルミ/スチール/ガラス・欄間の扱い)が部屋ごとに書かれているか
- 感知器・非常照明の増移設の要否を、間仕切り図と突き合わせたか
- 電源・LANの口数(1席3〜4口)とレイアウト図が一致しているか
- 原状回復の範囲・概算を契約前に確認したか(入退去トータル)
- ビルの工事申請・作業時間制限(夜間指定等)が工期と費用に織り込まれているか
見積もりの取り方・比べ方の全体像は見積もり比較の完全ガイドを参照してください。
もうひとつ、見積書で最初に確認すべきは「◯◯工事一式」という表記の多さです。一式表記は数量も単価も見えないため、他社比較も過剰計上の検出もできません。相見積もりの依頼時点で「項目別・数量別・単価別」の明細形式を指定するだけで、比較可能性が生まれ、公開解説では2〜3割の差が見つかった例も語られています。B工事とC工事は必ず別紙で分けてもらいましょう。
法規と管理規約──消防・衛生基準・ビルのルール
消防──間仕切りを立てた瞬間に発生する義務
天井まで届く間仕切りで部屋を作ると、その部屋にも火災感知器・非常照明・誘導灯が必要になり、増設・移設は多くのビルでB工事です。また、間仕切り変更を伴う工事では所轄消防署への届出(防火対象物工事等計画の届出など・自治体運用)が求められる場合があり、カーペット・カーテン類は防炎物品の指定が一般的です。「パーティションを立てるだけだから届出不要」と思い込まず、工事会社と管理会社に消防手続きの要否を必ず確認してください(出典:消防法。運用は自治体・所轄で異なります)。
衛生基準──「詰め込み」と「暗さ」の法定ライン
事務所衛生基準規則は、労働者1人あたりの気積10m³以上(おおむね床1.2坪が物理下限)と、作業面の照度として一般的な事務作業300ルクス以上(付随的な事務作業150ルクス以上)を義務づけています。なお快適性の設計目安としてはJISの照明基準(JIS Z 9110)が事務室でおおむね750ルクス級を推奨しており、法の最低ラインと設計の推奨値は別物——コスト削減で照明を間引く際も、300ルクスは下回れない床として覚えておいてください(出典:事務所衛生基準規則、JIS Z 9110)。
ビル管理規約──もうひとつの「法律」
工事申請の期限、作業可能時間(夜間・休日指定)、養生ルート、搬入エレベーターの予約——ビルごとの管理規約は、法律と同じ強さで工期と費用を縛ります。特に作業時間が夜間に限定されるビルでは人件費が1〜2割上がるため、見積もり前に工事会社へ規約を渡すことが、後出し増額を防ぐ最短ルートです。
コストダウンの正攻法と、DIYの線引き
正攻法:順番を間違えない
効果が大きい順に、①間仕切りを減らすレイアウト——壁の代わりに収納什器・グリーンでゾーニングすれば、間仕切り費と天井裏コストが同時に消えます ②欄間オープンの使い分け——遮音が要る部屋だけ天井到達に ③セットアップ・居抜きの検討(s7) ④中古オフィス家具——オフィス什器は中古市場が最も厚い分野で、新品の3〜5割で状態の良いデスク・チェアが流通します ⑤退去時は造作譲渡——次のテナントに内装を引き継げれば、原状回復費を相殺できます。
DIYの線引き
やってよい:壁の塗装、家具の組立・配置、吸音パネルの貼付、装飾。資格・プロが必須:電源コンセントの増設・移設(電気工事士の独占業務)、天井裏・床下に入る作業、消防設備に関わる一切。なおLANケーブルの配線自体は無資格でも可能ですが、OAフロア下や天井裏を通す施工は断線・将来のメンテ性の観点からプロに任せるのが実務の定石です。電気の素人工事は法令違反かつ火災リスク——ここだけは絶対に越えないでください。
工期とスケジュール
施工そのものは居抜き・セットアップで2〜4週間、20〜30坪のスタンダードで1〜1.5ヶ月、50坪超や設計込みで2〜3ヶ月が目安です。オフィス特有のボトルネックは施工の前後にあります。前——ビル側の図面承認とB工事見積もり(2〜4週間)は着工の前提条件で、ここを並行で進めないと工期が丸ごと後ろへずれます。後——インターネット回線の開通は申込みから1〜2ヶ月かかる場合があり、「内装は完成したのにネットがない」は移転の定番事故です。そして全体の上限を決めるのは、旧オフィスの解約予告(事業用は6ヶ月前が一般的)と原状回復期間。移転は「新オフィスの工程」と「旧オフィスの出口」の2本立てで管理してください。
旧オフィス側の標準工程は、解約予告(6ヶ月前)→原状回復の指定業者見積もり(2〜4週間)→回復工事(2〜4週間)→明け渡し検査。新旧の賃料が二重にかかる期間を1〜2ヶ月に収める工程設計が、実は内装の値引き交渉より大きな金額を動かします。
内装業者の選び方と施工事例の見方
オフィスの内装は「レイアウト設計と配線設計の一体提案」「B工事・管理会社との調整経験」「会議室・OAフロアの施工品質」で会社の実力差が出ます。
会社選定の確認ポイント
- オフィスの施工実績があるか──会議室・エントランス・OAフロアの写真で確認(店舗専門とは勘所が違う)
- レイアウト図と一緒に電源・LANの口数計画まで出してくるか(1席3〜4口の設計)
- ビル管理会社・B工事業者との調整を代行した経験があるか
- 1席単価・入退去トータルという言葉で会話が成立するか
- 解体・開口後の追加費用の扱い(単価表・報告ルール)を契約前に明文化できるか
実際の空気感は写真が一番速い判断材料です。たとえば兵庫県のオフィスの内装デザイン事例や大阪府のオフィスの内装デザイン事例のように、公開されている施工事例で間仕切り・エントランス・執務ゾーンの作り方を見比べてから相談に進むと、要望が具体的に伝わります。地域の相場感とコスト圧縮の具体策は東京の店舗・オフィス内装を安くする方法・大阪の店舗・オフィス内装を安くする方法も参照してください。
見積もりは同一要件で2〜3社が基本です。要件書には、坪数と人数・グレード帯・会議室の数と遮音要否・物件の工事区分(B工事範囲)・入居希望日を明記して前提をそろえてください。前提がそろって初めて、金額差は「会社の実力差」として読めます。
オフィスの実績がある複数の会社から、同一条件で見積もりを取りましょう。発注側は無料で利用できます。
よくある質問
Q. 退去時の原状回復はいくら?
A. 小・中規模で坪2〜5万、大規模5〜10万、ハイグレードは坪10万超も。経年劣化も借主負担が原則で、指定業者の初回見積は高く出やすい構造。明細形式で精査を。
Q. いつ発注すると安い?
A. 1〜3月・9〜10月の繁忙期は2〜3割高く出やすく、5〜7月の閑散期が定石。移転日は工事の季節からも逆算を。
オフィスの内装費用は坪いくらですか?
借主側工事(C工事)の一般的な目安で、ミニマム坪10〜20万円、スタンダード坪20〜40万円、ハイグレード坪40〜70万円です。セットアップ・居抜きなら坪0〜15万円まで下がります。別枠で什器1席5〜15万円・配線1席2〜5万円、ビル側のB工事費を見込んでください。
20坪のオフィスの内装費用の総額は?
スタンダード帯で工事400〜800万円、什器・配線まで含めて450〜900万円前後が一般的な目安です。5〜6人規模に相当し、会議室1〜2室を含む構成が可能です。
1人あたり(1席あたり)で考えるといくらですか?
工事の持ち分+什器5〜15万円+配線2〜5万円で、1席あたり42〜180万円がレンジです。ミニマム構成で1席40〜60万円、スタンダードで70〜110万円が目安になります。極端に安い見積もりは配線やOAフロアの漏れを疑ってください。
10人のオフィスには何坪必要ですか?
公開調査(ザイマックス総研)の在籍1人あたりオフィス面積の中央値は3.8坪で、10人なら35〜40坪が標準帯です。フリーアドレスで席数を絞る設計もありますが、法定下限として1人あたり気積10m3以上(約1.2坪)は下回れません。
OAフロア(フリーアクセスフロア)の費用は?
材工で坪1〜2万円程度が一般的な目安です。配線をレイアウト変更に強くする下地で、既設ビルも多いため、内見時に床の仕様を確認してください。
B工事とは何ですか?なぜ高いのですか?
借主の都合で行うがビル指定業者が施工し借主が払う工事区分で、防災設備・空調移設・給排水が典型です。指定業者には競争が働かないため割高になりがちで、対策は図面確定前に管理会社へ工事区分表と概算を確認し、総予算に別枠を積んでおくことです。
オフィスの原状回復費用の相場は?
坪2〜10万円級が実務の目安で、ビルグレードが高いほど上がります。オフィスは住宅用の原状回復ガイドラインの対象外が原則で、契約特約がすべてです。入居前に範囲と概算を確認してください。
セットアップオフィスは得ですか?
初期の内装費(坪0〜15万円)を賃料上乗せで分割払いする構造です。2〜3年の短期利用や資金温存には合理的で、5年超の長期なら自前工事が総額で逆転しやすい——実効コスト=初期+賃料差×入居月数+退去費で比較してください。
会議室を1室つくる費用は?
6人用でアルミパーティション30〜60万円、スチール60〜120万円、ガラス120〜250万円が目安です。天井まで塞ぐと感知器・空調の増移設(B工事)が加わるため、遮音が必要な部屋だけ天井到達にするのが費用設計の定石です。
工期はどれくらいかかりますか?
居抜き・セットアップで2〜4週間、20〜30坪で1〜1.5ヶ月が目安です。着工前のビル承認・B工事見積もり(2〜4週間)と、回線開通(1〜2ヶ月)を並行手配しないと全体が延びます。
居抜きオフィスの注意点は?
造作譲渡料の妥当性、原状回復義務の範囲を誰が引き継ぐかの契約明記、引き継ぐ間仕切りが自社レイアウトと合うか、の3点です。条件が合えば間仕切り工事を丸ごと省ける強力な選択肢です。
見積もりは何社から取るべきですか?
同一要件で2〜3社が目安です。B工事の扱いと什器・配線の含み/別途を最初に確認し、1席単価に直してから比較すると、金額差を会社の実力差として読めます。
まとめ──数字の骨格をつかんだら、相見積もりへ
オフィスの内装費用は、①人数×3.8坪で広さを決め、②1席単価(42〜180万円)で見積もりの妥当性と漏れを判定し、③床下・天井裏とB工事という「見えない半分」を最初から予算に積み、④原状回復まで含めた入退去トータルで物件と工事を選ぶ——この4段で、「坪10〜40万円」という霧の中から自社の数字が取り出せます。
最後の精度を出すのは、現地とビル規約を見た複数社の見積もりだけです。同一要件・2〜3社・10カテゴリ仕分けで比較すれば、金額の妥当性は自分で判定できます。
気積10m³/人・CO2管理を含む換気の法定横断と、全熱交換機(ロスナイ等)の採用判断は店舗の24時間換気・給排気設計完全ガイドで詳述しています。
自分の業種の数字がつかめたら、他業種との比較で相場感を立体化できます。店舗内装費用の相場一覧(60業種の坪単価比較・シミュレーター付き)で横断できます。
要件を入力すると、オフィスの実績がある内装会社の複数見積もりを無料で比較できます。
この記事について(運営者情報)
本記事は、店舗内装ドットコム(株式会社BPBコンサルティング運営)が、当サイトに公開されている施工事例と、公的資料・規格(ザイマックス不動産総合研究所「1人あたりオフィス面積調査」、事務所衛生基準規則、消防法、JIS Z 9110 照明基準総則)を整理して作成・更新しています。記載の金額はいずれも一般的な目安であり、正確な費用はビルの工事区分・管理規約と現地調査を経た見積もりでのみ確定します。契約・法規の運用は物件・自治体ごとに異なるため、重要な判断は専門家への確認をおすすめします。
作成・検証の方法:記載レンジは、公開されている複数の施工会社・専門メディアの提示額を横断照合し、重なり合う帯を採用したうえで、公的調査・法令の数値(1人あたり面積・気積・照度基準)と突合して作成しています。制度・相場の変化にあわせて定期的に見直します。
